【短編未満集】かけらばこ

Kyrie

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僕のレークス かけら

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ここでやっと両親は慌てて、レネの頭を上げさせ、

「真人の両親です。
こちらこそお世話になっています」

と頭を下げている。

「先日のデートで体調を崩した原因は私にあります。
大切な息子さんなのに、ご心配をおかけしました。
あの時は本当に申し訳ありませんでした」

「いいえ、ケーキの五つや六つで気分が悪くなるのがいけないんです。
私の息子なのに、情けないんですから」

ママ、あなたと一緒にしないでください。

レネはレークスでするように恭しく白い箱をママに渡した。

「真人さんは素晴らしい舌と感性の持ち主ですよ。
私が甘いものが好きでたくさん食べるのです。
それにつき合わせて無理をさせてしまいました」


うちのケーキを食べていただいているのも嬉しく思います。
今日もお持ちしました。
お好きなのがあるといいのですが」

ママは顔を輝かせて箱を開く。

「レークスのケーキは全部好きなんです。
あら、初めて見るケーキばかり」

僕も横から箱を覗いてみる。
一つ、僕も見たことがないケーキがあった。
僕がそれを見入っていると、レネが嬉しそうに僕にウィンクをした。

「真人もこれは知らないだろう?
新製品の試作品だよ。
今日は感想をお聞きしようと、未完成で恥ずかしいが持ってきたんだ。
どうですか、食べていただけますか?」

「ええ、もちろん!」

ママはいそいそとお皿を準備し始めた。
パパも紅茶を淹れるために席を立った。
レネはママの後を追い、慣れた手つきで優しくケーキを箱から出して皿に持って行く。

「真人、どのケーキにする?」

ママの声かけに僕も席を立ちケーキの箱を見てみると、すでにママは一番に試作品を取り、パパもママが好きなケーキを選んでいた。
また後で半分あげるんだ、きっと。
僕はオレンジのムースにした。
レネも勧められたけど、「自分はいつでも食べられるからみなさんにしっかり召し上がってほしい」と断り、ママが用意していた粒あんが美味しくて有名な饅頭を食べることになった。

再びソファーに四人が座ると、さっそく甘い時間が始まった。



20170115





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