なろう作家がエリート東大生に転生してみた

日本のスターリン

文字の大きさ
1 / 10

1章 冒険の始まり

しおりを挟む
 主人公・尾図羅おずら冬彦三ふゆふこさんは成績優秀な優等生の高校生であった。
 しかし、全教科オールマイティな完璧人間な訳ではなく、体育・音楽・家庭科が苦手であった。
 彼は筆記試験は得意だが、運動音痴・音痴・不器用なのである。
 彼が体育で唯一得意だったのは徒競走と長距離走ぐらいで、足の速さだけには自信があり、自称「宇宙一の逃げ足の速さ」である。
 また、天才的な頭脳を持つわけではなく、彼の優秀な成績は努力の賜物である。
 彼は典型的ながり勉タイプであり、彼は天才ではなく、秀才といった所か。
 努力の甲斐があり、去年彼は東大に入学した。
 そんな彼はなろう作家でもある。自称「異世界から東大生に転生したなろう作家」である。
 彼の作品は数十作にも上るが殆どがブクマ数2以下で、またどれも完結せずに1年以上も放置されており、彼には文才も無かったようだ。
 彼は今東大2年生で、冒険サークルに入っている。

 冒険サークルのメンバーは、冬彦三と庭塚にわづかごう黒裂木くろさき黒鈴くろすずの三人だけである。
 リーダーは冬彦三であり、サブリーダーは女性メンバーの黒鈴である。
 黒鈴は容姿端麗であり、長くて鮮血のように赤いストレートヘアーを足元まで伸ばしている。
 彼女も文武両道とはいかず、運動はめっきり駄目である。天は二物を与えなかった。
 なお、彼女も冬彦三同様、逃げ足だけは早い模様。
 そして、もう一人のメンバー庭塚は文武両道、体育・美術・音楽・家庭科全てにおいて苦手科目なし。
 全教科オール5。しかし、やはり天は二物を与え無いようで庭塚は酷く不細工である。
 不細工な顔のパーツの寄せ集めみたいな顔をしており、歯は最近矯正がとれたばかりだ。
 おまけに太っているため、冬彦三からは「微笑みデブ」「にやけデブ」等と呼ばれている。
 二人とも冬彦三の高校からの同級生だ。
 二人はリーダーの冬彦三を「委員長」というあだ名呼ぶ。
 冬彦三は高校の頃3年間毎学期、学級委員長をやっていたのだ。
 そのため同級生からは本名ではなく委員長と呼ばれる事が多かった。

「黒鈴!微笑みデブ!こんな話を知っているか?」
「知らない」
「まだ何も言っていないって!」
「どうせまた下らないガセネタでしょ」
「今回のはガチだって!朗報だぞ!」
「委員長の朗報は朗報だった試しがない」

 冬彦三は無視して話を続けた。

「マルコ・ポーロの『東方見聞録』の没案のメモが見つかったんだ!」
「没案?」

 庭塚は懐疑気味に聞いた。

「『東方見聞録』のジパングの記述・・・つまり日本の記述に、下書き用のメモにしか書かれていない、没にされた伝承があったんだ」
「どうして没にしたのかしら?」
(喰いついてきた!)
「下書きの用のメモによると、あまりにも空想的すぎて、この記述を削除しないと『東方見聞録』の信憑性を疑われかねないから没にしたようなんだ」
「それでその没案のメモにはなんて書かれてたの?」
「なんと書かれていたんだ?」
「何でも、『三つの禁呪の飴がこの日本には存在する』との事らしい」
「禁呪の飴?」
「禁呪の飴は丸のみにすると超能力を凌駕した超越能力を得られると書かれている」
「ハイパーエスパーって所か」
「禁呪の飴には3つのランクがあり、銀の飴・金の飴・白金の飴の三種類があり、後ろに行くほど強力な能力が得られるらしい
 また、禁呪の飴は一つ飲み込むと能力が定着してしまい、後から他の禁呪の飴を飲み込んでも、最初に飲んだ禁呪の飴以外の能力を得ることができないそうだ」
「どうしてそんな伝説が日本には残ってなかったのかしら?」

 冬彦三はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに得気に話した。

「禁呪の飴の起源ははっきりしていないが、神武天皇の時代に生まれたものらしい
 この伝説を知っているのは文字の読み書きができない身分の低い人たちだけの口承でのみ受け継がれていたようだ
 日本では口承でしか受け継がれていなかったから、記録が残っておらず、廃れて消えてしまったのだろう」
「そうだったの……」
「なんか信憑性はありそうだな」
「そうね。だってあのマルコ・ポーロだもの」

 黒鈴と庭塚は納得した様子だった。

「俺たちで禁呪の飴を見つけないか?」
「面白そう~!」
「にわはははは!!探そうぜ!!」
「俺たちは三人。禁呪の飴はちょうど三つ!三人で超越能力者ハイパーエスパーになろうぜ!」
「それは遠慮しとくわ」
「俺も」
「ズコー!」

 冬彦三はわざとらしくコケた。

「ノリが昭和ねえ」
「なんでだよ!なぜ!?ホワイ!?」
「私は普通の女の子で居たいの。超越能力者ハイパーエスパーになるなんて怖いわ」
「俺も。その禁呪の飴には興味があるが、別に超越能力者ハイパーエスパーにはなりたくない」
「なんだよ。シケてんなぁ。まぁいいや。禁呪の飴を探す気があるなら問題ない!みんなで探しに行こうぜ!」

 三人は冒険に出かける準備をはじめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...