11 / 22
希望、小二。そのに
しおりを挟む
ノゾムは、影人間が見えているフリをして、ノゾミを怖がらせている。そして、怯えたノゾミの姿を見て、楽しんでいる。僕は、なんとかノゾムを止めようとしたけれど、その前にノゾミはとうとう泣き出してしまった。必死でクッションにしがみつき、声を押さえようとしている。だが、悲しい事に、声は漏れ聞こえてしまっている。そのノゾミの姿や泣き声が、ノゾムの悪戯に拍車をかけているようだ。外に遊びに行けないストレスを発散させている。ノゾムは、生き生きと、声とそこかしこを叩く力を強めている。僕は大声を上げて、ノゾムに警告した。しかし、遊びに夢中になっているノゾムには、まるで聞こえていない。僕は、ビクビクしながら、玄関の方へと向かった。すると、玄関へ向かう扉が静かに開いた。
扉の向こう側には、ママが立っていた。リビングの温度が、グッと下がったように感じた。
「ノゾム!!」
ママの怒声が飛び、一瞬にして、リビング内は静まり返った。ノゾミは、クッションを投げ捨て、ママに抱きついた。それでも、ノゾミは泣き止まず、嗚咽を漏らしている。顔面蒼白のノゾムは、俯いたまま唇を噛んでいた。
「ノゾム! なにやってたの!?」
鬼の形相のママに、僕まで背筋が凍った。ノゾムは、怯えた表情で、狼狽えている。
「なにをやっていたのかを聞いてるの!?」
ママは、ノゾミの頭を撫でながら、真っ直ぐにノゾムを見つめている。
「・・・ゆ・・・幽霊を追い出そうと思って・・・」
「本当に、幽霊が見えていたの?」
「・・・うん」
「本当に? 本当に見えていたの?」
「・・・うん」
「その割には、楽しそうに見えたけど? 幽霊が見えて嬉しかったの?」
ママの問いに、ノゾムはハッとして、俯いた。だから、僕は警告したのに。ノゾムは、遊びに夢中で、ママに見られている事に気が付かなかった。僕には、ママが帰ってくる音が、ちゃんと聞こえていた。
「ノゾム! どうなの!?」
「・・・ごめんなさい」
突然、ノゾムは泣き出し、その場でへたり込んだ。テレビとソファの間で項垂れているノゾムに、ママは厳しい視線を送る。そして、ノゾミを促して、テーブルの椅子に座らせた。
「いつもいつも、人を嫌な気持ちにさせて、なにがそんなに楽しいのよ! 馬鹿じゃないの!? 自分よりも弱い子ばかりをイジメて、本当にカッコ悪い! あんたまさか、学校でも弱い者イジメしてるんじゃないでしょうね!? そんな最低な奴は、うちの子じゃないからね! そんな奴こそ、追い出してやるわよ!」
怒りに満ちたママは、本当に怖い。僕は、火の粉が降りかからないように、頭を下げてゆっくりとノゾミの足元にやってきた。ノゾムの事も気になるけど、彼の場合は自業自得だし、今はノゾミの方が心配だ。ノゾミの足元でお座りをして、彼女を見上げる。ノゾミの泣き声が治まりだしたかと思ったら、今度はノゾムの泣き声が響いた。これで少しは反省し、ノゾミや僕に対する嫌がらせを止めて欲しいものだ。
ママは怒りが治まっていない様子だけど、それでもキッチンへ向かって、夕飯の支度を開始した。包丁でなにかを切っているようだけど、いつもより音が大きい。まるで、食材に怒りをぶつけているように感じた。
僕が、ノゾミの足元で丸くなっていると、衣擦れの音が聞こえて顔を上げた。すると、ノゾムが目元を擦りながら、玄関へと向かっていく姿が見えた。遊びにでも行くのだろうか? もうすぐ夕飯なのだが。急いで立ち上がって、玄関へと向かった。僕が玄関に着くと、ノゾムが外へ出ていこうとしていた。玄関扉を押していて、薄暗い外が見えた。
「ノゾム! どこ行くの?」
僕が、声をかけると、ノゾムは驚いた顔をして、慌てて外に飛び出していった。直感的に『これはまずいぞ』と感じた僕は、大急ぎでキッチンへと走った。ママの足元に着くと、ママに報告した。
「ビックリした! 急に吠えないでよ。ホップどうしたの? 吠えちゃダメでしょ?」
ああ、くそ! どうしたらいいんだ? 僕は、なんとかママに気づいて欲しくて、必死で訴える。ママが眉間に皺を寄せて、僕に近づいてきてしゃがんだ。そのタイミングで、僕はソファの前まで走った。先ほどまで、ノゾムがいた場所だ。そこで振り返って、また大声を出した。
「もう、どうしたのよホップ。遊んで欲しいの? 今ご飯作ってて、手が離せないからまた後でね」
それでも、僕は声を張り続けた。
「ノゾム! ホップと遊んであげて! ―――ノゾム返事くらいしなさい! はあ、まったく。ノゾミ、ちょっとお願い」
「うん」
ノゾミが椅子を引いて、立ち上がる音が聞こえた。ノゾミはソファを、回り込むようにやってきた。目を赤く腫らせたノゾミが、ハッとしたような顔を見せて、キッチンへと振り返った。
「ママ! ノゾムいないよ!」
「え!? 嘘!? あの子、どこいったのよ? 二階?」
「たぶん、行ってないと思う」
ノゾミは、首を左右に振りながら、僕を見た。このタイミングだ。僕は玄関へと走って行き、玄関扉に向かって叫んだ。後ろには、ノゾミが僕についてきていて、慌ててリビングへと戻った。
「ママ! ノゾム外に行ったんじゃない!?」
扉の向こう側には、ママが立っていた。リビングの温度が、グッと下がったように感じた。
「ノゾム!!」
ママの怒声が飛び、一瞬にして、リビング内は静まり返った。ノゾミは、クッションを投げ捨て、ママに抱きついた。それでも、ノゾミは泣き止まず、嗚咽を漏らしている。顔面蒼白のノゾムは、俯いたまま唇を噛んでいた。
「ノゾム! なにやってたの!?」
鬼の形相のママに、僕まで背筋が凍った。ノゾムは、怯えた表情で、狼狽えている。
「なにをやっていたのかを聞いてるの!?」
ママは、ノゾミの頭を撫でながら、真っ直ぐにノゾムを見つめている。
「・・・ゆ・・・幽霊を追い出そうと思って・・・」
「本当に、幽霊が見えていたの?」
「・・・うん」
「本当に? 本当に見えていたの?」
「・・・うん」
「その割には、楽しそうに見えたけど? 幽霊が見えて嬉しかったの?」
ママの問いに、ノゾムはハッとして、俯いた。だから、僕は警告したのに。ノゾムは、遊びに夢中で、ママに見られている事に気が付かなかった。僕には、ママが帰ってくる音が、ちゃんと聞こえていた。
「ノゾム! どうなの!?」
「・・・ごめんなさい」
突然、ノゾムは泣き出し、その場でへたり込んだ。テレビとソファの間で項垂れているノゾムに、ママは厳しい視線を送る。そして、ノゾミを促して、テーブルの椅子に座らせた。
「いつもいつも、人を嫌な気持ちにさせて、なにがそんなに楽しいのよ! 馬鹿じゃないの!? 自分よりも弱い子ばかりをイジメて、本当にカッコ悪い! あんたまさか、学校でも弱い者イジメしてるんじゃないでしょうね!? そんな最低な奴は、うちの子じゃないからね! そんな奴こそ、追い出してやるわよ!」
怒りに満ちたママは、本当に怖い。僕は、火の粉が降りかからないように、頭を下げてゆっくりとノゾミの足元にやってきた。ノゾムの事も気になるけど、彼の場合は自業自得だし、今はノゾミの方が心配だ。ノゾミの足元でお座りをして、彼女を見上げる。ノゾミの泣き声が治まりだしたかと思ったら、今度はノゾムの泣き声が響いた。これで少しは反省し、ノゾミや僕に対する嫌がらせを止めて欲しいものだ。
ママは怒りが治まっていない様子だけど、それでもキッチンへ向かって、夕飯の支度を開始した。包丁でなにかを切っているようだけど、いつもより音が大きい。まるで、食材に怒りをぶつけているように感じた。
僕が、ノゾミの足元で丸くなっていると、衣擦れの音が聞こえて顔を上げた。すると、ノゾムが目元を擦りながら、玄関へと向かっていく姿が見えた。遊びにでも行くのだろうか? もうすぐ夕飯なのだが。急いで立ち上がって、玄関へと向かった。僕が玄関に着くと、ノゾムが外へ出ていこうとしていた。玄関扉を押していて、薄暗い外が見えた。
「ノゾム! どこ行くの?」
僕が、声をかけると、ノゾムは驚いた顔をして、慌てて外に飛び出していった。直感的に『これはまずいぞ』と感じた僕は、大急ぎでキッチンへと走った。ママの足元に着くと、ママに報告した。
「ビックリした! 急に吠えないでよ。ホップどうしたの? 吠えちゃダメでしょ?」
ああ、くそ! どうしたらいいんだ? 僕は、なんとかママに気づいて欲しくて、必死で訴える。ママが眉間に皺を寄せて、僕に近づいてきてしゃがんだ。そのタイミングで、僕はソファの前まで走った。先ほどまで、ノゾムがいた場所だ。そこで振り返って、また大声を出した。
「もう、どうしたのよホップ。遊んで欲しいの? 今ご飯作ってて、手が離せないからまた後でね」
それでも、僕は声を張り続けた。
「ノゾム! ホップと遊んであげて! ―――ノゾム返事くらいしなさい! はあ、まったく。ノゾミ、ちょっとお願い」
「うん」
ノゾミが椅子を引いて、立ち上がる音が聞こえた。ノゾミはソファを、回り込むようにやってきた。目を赤く腫らせたノゾミが、ハッとしたような顔を見せて、キッチンへと振り返った。
「ママ! ノゾムいないよ!」
「え!? 嘘!? あの子、どこいったのよ? 二階?」
「たぶん、行ってないと思う」
ノゾミは、首を左右に振りながら、僕を見た。このタイミングだ。僕は玄関へと走って行き、玄関扉に向かって叫んだ。後ろには、ノゾミが僕についてきていて、慌ててリビングへと戻った。
「ママ! ノゾム外に行ったんじゃない!?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います
こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。
※「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる