嘘つきショートホープ

ふじゆう

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第七話<完>

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 殺人で最も多いのは、夫婦間だという話を聞いた事がある。
 愛情と殺意は、表裏一体という事なのだろう。独り身の俺には、理解に苦しむ。そう言えば、コブラ親子には、夫はいないのだろうか? まあ、同業者のプライベートに首を突っ込む気は、さらさらないから、尋ねたりはしない。
 今回は、オケラだったけど、命があるだけましだ。しかも、俺のクライアントを始末してくれるなら、報復行動もないだろう。色々と思うところは、無い訳ではないが、拾った幸運はありがたく頂戴する。
 命と経歴の傷を買ったと思えば、安いものだ。
「ねえねえ、ママ? サラね、すんごい頑張ったよ! ご褒美頂戴!」
「あ! そうだったわね! サラは、頑張ったものね。いいわよ。何が欲しいの? なんだって、買ってあげるわよ」
 母親が娘と視線を合わすように、しゃがみ込んだ。ん? なんだ? 気のせいだろうか? 少女が俺の事をチラチラと見ている気がする。
「サラね、えっとね。パパと妹が欲しいの」
「それは、さすがにお金では買えないわね」
 毒使いのコブラが、グリンと首を回し、俺を見た。まるで値踏みをするように、俺の事を眺めている。
「あなた今回の事は、貸しにしといてあげるわ。もろもろ、私達のお陰よね?」
「え? ああ、そうだな。この貸しはいつか必ず返す」
「今すぐに返しなさい」
 呆気にとられて茫然としていると、母親に腕を掴まれ、強引に立ち上がらされた。この華奢な腕のどこに、こんな力があるのだ。全身に痛みが走って、悲鳴を上げそうになった。母親は、片手で俺を引きずっていく。反対側の手には、娘の手が握られている。
「ど、どこに行くんだ?」
「汗と血にまみれた体なんか嫌よ。シャワーを浴びに行くわ」
 混乱する俺をよそに、母親と娘は歌を歌い始めた。
 薄暗い路地裏に、俺の悲鳴が響き渡った。
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