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いつもの

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 あー、やだやだ。雨じゃない。せっかくシフォンケーキ沢山焼いたのに、だあれも来ないわ。
 もうこの世界に来て一年だし、何か特別なことでもしたいけど、こうも雨が続くとなんにもやる気出ないのよね…

 はぁ… こんなことならお家でお尻ズボズボしてたいわよ!!アタシだってね!働かなくていいなら働いてないのっ!
 でも、お店をするのは大好きだし、お客さんもいいひとばっかりだから、続けちゃうのよっ…!

 もうっ、ただでさえ1週間ディーさんにあえてなくて気分下がってるのに、雨でお客さんも来ないんじゃ、今日はおしまいにしようかしら?

 勿体ないけど、シフォンケーキは騎士団の駐屯所に差し入れ決定ね。

 そうと決まれば出かける準備を…

ーーカランカラン


「いらっしゃい。今日はおしまいにするとこな……の…って、ディーさん!!」

「よぉ、俺に会えなくて泣いてんじゃねえかと思ったが、元気そうじゃねえか。つまんねえな。」

「何言ってんだ、メグ姐ってばココ最近元気無さすぎたぜ。昨日なんてどんよりしすぎてコーヒー飲んでるのになんか口ん中しょっぱくなっちまったんだ。」

「やっだ、もうシルバさんやめてよぉ!それからね、コーヒーはシルバさんがお砂糖と間違えてお塩入れて飲んでたからしょっぱかったのよ。」

「おいこら、旦那の前で他の男にベタベタしてんじゃねえ。」

「何言ってるのよ…まだ恋仲でもないのに…!// 
 …それよりもっ!今日はディーさんとシルバさんしか来なさそうだし、表片付けちゃうわね。座ってて。」

「ん、いつものな。」

「あ、俺も!」

「ハイハイ、ちょっと待ってなさい。」


 今日来るなら来るで、一報欲しかったわ!疲れて萎れたみっともない顔見せちゃった…!
 それに昨日はバタバタしてお肌の手入れちゃんとしてなかったのにぃ!もう!ディーさんのバカぁ!

 お尻キュンキュンさせるあたしもバカぁ…ふぇーん…




 、、、キモイわね。




 表の看板をopenからclosedにかえ、ドアの内側から夜の臨時休業の張り紙をする。この世界は科学が発展せずに魔法が主流になってるんだけど、アタシは練習してないからロウソク入りのランタンをドアの横にかけてるの。もちろん外ね。中の火を消したらドアの鍵を閉めて、店の中の電気を半分消す。コレはスイッチ式の魔道具よ。この世界に来てすぐの頃、空腹でぶっ倒れてた今の常連さんを助けたら、お礼だって好意で取り付けてくれたの。今でも彼は整備を担ってくれてるわ。

 閉店作業が終われば、今度は2人のオーダーを進めるわ。ディーさんはオムレツのサラダセット、シルバさんはホットサンドのスープセット。

 さっさと作ってコーヒーと出したら、アタシは自分の紅茶を入れてディーさんの横へ。
 ディーさんはセクハラ魔人だけど、それを期待して座ってるなんて言葉にしないわ。態度には出すけどね。

 ディーさんはね?アタシが雄っぱいを寄せて谷間を作りながら、彼の腕とか背中に押し付ける仕草が大好きなの。それをしないと怒るくらい。可愛いとこもあるでしょう?

 でもきっとディーさんはからかってるのよ。オネエで自分を狙ってる事を隠しもしないアタシにちょっかいかけて、ニヒルに嗤うの。その顔がセクシーでかっこよくてお尻濡れちゃうわよ、ホントに。


「ねえ、ディーさん…今日のオムレツ頑張ったの。褒めて?」

「ん、ありがとな。今日も美味いぞ。あわよくばこいつも味見したいもんだな。」

「んっ、ぁんっ、もぉ、おっぱいもんじゃダメぇん…」

「あいっかわらずデイモンドにはデロデロだなぁ、メグ姐。なんで付き合ってねえんだよ。」

「ディーさんはまだ本気じゃないもの。アタシね、将来を誓ったヒトにしかこの身体は開かないって決めてんのよ。」

「へぇー、今どき硬派だね。じゃあ、あれか?童貞・処女なのか?」

「やあね、シルバさんのえっち!ま、そうなんだけどね、ふふっ。」

「…」

「ちょっと、ディーさんったら無言でお尻弄らないでよっ、変態なんだから。」

「早く俺のもんになりゃいいんだよ。」

「あら、オンナを口説く時はね、贈り物と甘い言葉で溶かして溶かして、最後に真面目な顔で『愛してる、結婚しよう』って言わなきゃダメなのよ。それから、毎日顔を見て『可愛い』とか『綺麗だ』とか褒めなきゃいけないわ。小さな変化にも気づけないとダメね。肌荒れしてたら注意するんじゃなくて心配して欲しいの。クマが出来てたら無言で添い寝するくらい気が利かなきゃね。それから、、、…」

「わかったから、お前は俺のそばで一生笑ってりゃいいんだよ。何も心配せずにな。」

「やあねぇ、好きな人の心配くらいさせてよ…」

「ん、やっと俺の事好きって言ったな。シルバよぉ、俺ぁ結婚するぞ。コイツとだ。婚姻届書かねえと。あー、あとあれだ。式はいつがいい?なあ、メグ?」

「気が早いのよ、バカぁ…!」

「そうだぞ、デイモンド。まずはお前んとこの家どうにかしろよ。」

「家…?なぁに、ディーさんの家って?」


 聞けばディーさんは元々、公爵家の嫡男だったらしい。勘当覚悟で冒険者になって今ではSランク!凄い!でもそれを知ったお家が『満足しただろう』って戻ってこいコールをしてるらしいの。

 公爵家にディーさんが戻るってなったら、アタシは二度と会えない。何それ悲しすぎるわ。絶対行かせてやんないんだからっ!



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