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1.文学少女、堤防で失敗する
しおりを挟む「…………読めない」
常に吹きかける風と、木陰とはいえ眩しいばかりの日光。とても本を読む状況ではない。
街中にある一等河川の堤防に置かれたベンチ。そこに適当に中古で買ったミステリー小説を読もうとしたのだが…
「あの人達どうやって読んでたんだろう?」
よくあるシチュエーション。川の堤防脇で原っぱに寝っ転がりながら待ち合わせをしたり、漫画を読んだりする光景。誰もが一瞬だけ考えてやめる光景だが、長い長い夏休み。
折角だからやってやろうと思い、読みかけの小説を持ってきた今日此の頃。
まず天気が良くない。何処までも澄み渡る青い空。
次に季節だ。絶っっっ対に夏にやるべきことではない。
次に風。空気が流れているので木陰だと少し涼しいものの、紙の本を読むのに適してなさすぎる。
次に持ってきた本。日中の外で読むのに向いてない。続きが気になったから持ってきたものの、なんで私は外でミステリー小説を読んでるんだ?
そもそも私は結構なインドア派であまりスポーツとかはせず、クーラーのガンガン効いた部屋で過ごすのが大好きな女学生。小説や漫画の舞台にいた子達はどうしてわざわざこんな場所で本を読んでるんだ???
「あー喉乾く」
鞄じゃ荷物が入らなかったから背負ってきたリュックから水筒を出して口に運ぶ。
「あっっっつ!」
冷蔵庫にあった緑茶を持ってきた筈なのに、日光にあたってあた中身はポットで沸かしたかの様だった。まだ春だぞ!
冷たい飲み物が飲みたい!
衝動が湧いてくる。私はその欲望のまま自販機に向かった。
この辺りはよく来るので自販機が置いてある場所も知ってる。春休みのこの時期、堤防の近くは人通りが多い。私はコースから外れたベンチから、トイレや自販機が置かれている人通りが多い場所に向かう。
ほとんどが散歩やジョギングに来、ジャージや動きやすい格好をしている人達の中、纏めていないロングの髪型と膝丈のスカートを履いている私は少し浮いていた。
運動をしにきたのではない。私は本を読みに来たのだ! ……後悔してるけど
何を買うべきか少し迷う。順当に考えればお茶なのだが、家に帰ればまた作ればいいし、わざわざコンビニとかスーパーよりも高いお金を払って買うのもなぁ…
と、言うことで黒い炭酸水を買う。何に気を使ってなのかゼロカロリーの方。健康には気を使わないとね!
自販機から出したペットボトルは冷たかったものの、夏の気温にさらされてとてつもない水滴を出していた。炭酸のジュースといえば温くなると【炭酸抜きうんたらかんたら】になってただの砂糖水になってしまう。つまりすぐに飲めってこと。
熱湯しか来なかった喉に冷たい物が流し込まれ、体の中から生き返る。
喉が渇いていたのもあって、少し休みながらも500mLのペットボトルを即座に開けた私はそのまま隣にあるゴミ箱に捨てた。
トイレに行きたいな…少し生理現象が気になりトイレの方を見る。
「すご……」
女子トイレは結構並んでいた。一等河川の堤防脇の広場で、春休み期間、自販機もトイレもあるとあれば人が混みだすのは仕方がない。並ぶのは別にいいが、今の最後尾は木陰からも離れた日光下。近寄りたくない。
「まあ後でいいかな」
限界って程でもないので広場から抜けて元々座っていた場所に歩き出す。
一瞬、本も読めないし、暑いし、家に帰ろうかと思ったけど、今日はなんというか…まだ家に帰る気分ではない。家でやれる娯楽になんか飽きてこんなシチュエーションをやろうと思ったのだ。帰ってもやりたいことが無い。
折角の春休みなのにすることが無いなと思いながら歩いていると、口の中の先程飲んだジュースの砂糖感が気になり、熱湯になった水筒のお茶を飲む。口当たりは最悪だが、ベタベタする口内を洗うには丁度いい。
幸いなことに? さっきまで座って本を読んでいたベンチはまだ空いていた。リュックを隣に置き、読みかけていた本のしおりを取り出してもう一度読めるか試してみる。
瞬間吹いた風
ちゃんと持ってなかった私も悪いが、広げた本は風に煽られたためにページが捲られ、どこまで読んだか分からなくなってしまった。
「…………」
ジトッとした目線で本を見つめるが、読んでいた箇所は帰ってこない。最悪だ。
なんかもうこんな状況で読む気にならなくなってきた。暑いし。風強いし
適当にSNSを巡回しながら流れる川をぼうっと見る。散々「本が読めねえ」と不平不満を言っていたが、この場所は木陰で風も吹いており、人目もあるので治安が悪い訳でもない。
本を読まないという選択をしただけで、堤防脇のこの場所は圧倒的な好条件へと変化していた。ひょっとするとあの登場人物達も本を読んでいたのではなく、黄昏れていたのだろうか。
物語上で大事なのは本を読む行為では無く、そこに【居た】という事実なのではないか?
一口お茶を飲む。持ってきた水筒も無くなりかけていた。
欠伸が出、瞼が重くなっていく。ずっと使っていた少し暑くなってきたスマホをポケットに入れる。寝るという意志を感じると、防犯のため抱え込んだリュックが丁度いい枕になることに気がついた。まだ昼間だし少し寝るの…も………いいか……………な
━━◇
「ん~っ」
目が覚める。寝起きの視界には真っ赤になり始める光。もう夕方になったらしい。手元のリュックは盗まれずにある。隣にリュックを降ろし、口元によだれが付いてないか触った所で下半身の重さに気がついた。
おしっこしたい
思い返せばトイレに行きたいと思った時、運動している人達の行列で諦めたのだった。今なら昼間の人達と夕方から来る人達の隙間時間で人通りも少ないし、空いていそうな気がする。
その時、完璧にリュックの中に戻せてなかったのか、それとも抱えていた手でずっと固定されていたのか、自由になったしおりが風でベンチ横に飛ばされた。
「あ、ちょ!
ショョョョ
んぁ!」
勢いよく動いた瞬間、水音と、こんな気温なのにも関わらず少しパンツが暖かくなる。
え、ちびった!?
今度は体を、揺らさないようにゆっくりと動きながら落ちたしおりをなんとか取り、リュックの中に入れる
おしっこちびっちゃった。
顔が赤くなる。今、確かに自分にしか聞こえない程でも出口から水音がしたし、暖かみを感じた。それに股の辺りもなんだか湿ってるような気がする。
見たら事実を認めることになるとは思いつつも誰も見られないからいいやと適当に履いてきた白色のパンツを見れば、確かにおしっこの出口あたりから丸く濡れ、染みができている。
やばいという実感。実際にパンツが濡れている所を見、出していい場所だと認識してしまった水門をスカート越しに押さえる。やめてほしい。ここは解放していい場所ではない。
「ん、くぅぁ」
声が出る。
スカートにシワが出来てしまい傍からみれば、おしっこを我慢していることが丸わかりなポーズだったが、完全にトイレに居るという認識になった水門を抑えるには必要な行為だった。
しばらく完全なおしっこ我慢のポーズをしていると、ようやくここが解放していい場所ではないと気付いたらしく尿意が治まってくる。
「ど、どうしよう」
それでも出したいという要求は尿道を攻撃し、括約筋を疲弊させていく。何時もは動かない場所がひくひくと動き、早く解放させろと告げてくる。
もはや堤防で本を読んでいる意味わからん人達のことを考えている場合ではない。なんでここからはなれてトイレに行きたいなとお持った時に帰ろうと思わなかったのか? 別にまたここに来て、しかも昼寝する必要性はなかっただろう。
トイレに行くにせよ、ここで漏らさないために何かをするには、座っているベンチから立ち上がらなければならない。何も動けない幼い子供ではない。何か行動しなければ、この状態で待っていても誰も助けに来ない。
この状態で?
まずベンチから立ち上がるためには、この前を押さえてる手をどけて足に力を入れなければならない。その状態のままリュックも背負う。
何もなければ簡単なことが、おしっこがしたいという要求だけで何もできなくなってしまうなんて考えたことがなかった。前を押さえる手はもはや尿意をコントロールしてる。足に力を入れれば別の場所にも力が入るし、リュックも水筒や本等で軽いものではない。
かと言って座ったままおしっこが漏れるのを待つというのも変な話。私ももう中学2年生だし、無抵抗のまま漏れるまで待つのもおかしいだろう。
どうすればいいのか。時間が経過すればおしっこは溜まっていくだけだ。
ちょっとだけ。
ちょっとだけ出せば楽になるかな?
悪魔の誘い。それでも何か行動に移さなければ無抵抗のままおしっこを垂れ流す子供と同じだ。
ちょっとだけ。
ちょっとだけ出す。
少し尿意が収まった瞬間、押さえていた手を離す。
シュルルル
「あ、ちょ、やばいって」
明らかにさっきよりも多い水量がパンツの中で暴れ、染み込んでいく。
私は股の力でもおもらしを防いでいたと思っていたが、違った。おしっこをしたいという感覚を今止めているのは手の力のみだった。
一瞬迷い、スカートの上からではなく直接パンツの方を押さえる。真正面からおシッコで濡れたパンツが丸前になるものの、少しでも衣服へのダメージを押さえたかった。
「やだ、もうパンツがグチョグチョなんだけど」
もうおもらしと言ってもいいのかもしれない。手で触った場所は水洗いしたかのように濡れていた。
でも幸運なことに少し解放したからか、分厚いスカート越しではなく直接パンツで押さえたのが良かったのか、先程までの尿意は来ていない。このまま立ち上がれるかもしれない。
私はベンチから立つ。膝丈のスカートは直接パンツを押さえてる影響でパンツのすぐ下まで捲れてるし、ベンチには確かに濡れてる跡がある。明らかにここで我慢できずにおもらしした人だが、確かに私はベンチから立てたのだ。
だからどうした?
ここはトイレでは無い。ただベンチから立っただけ。トイレはここから数分歩かなければならないが、そんなに持つわけがない。
手に温かいおしっこらしきものが溢れ
太ももに幾筋もの水流が流れるのを感じる
「や、ヤダ」
私はとっさにベンチに向かってしゃがみ込み、所謂和式便所のポーズを取る。あれだけ我慢してたのにおしっこの勢いはなく、チョロチョロ流れるだけだった。あそこの、感覚は何も残っておらず、勢いづかせる事も出来ない。
「早く終わってよ!」
少し遠めに見れば何でもない変な人だけど、近づけばおしっこの匂いと水の音で何をしているか直ぐにバレる!
チョロチョロ…
「もうヤダ…」
ずっと溜め込んでたからか長かった放尿はようやく終わる。
明らかにあそこから出たであろう形でベンチに残る水跡と、下の地面にある水たまり。何より太ももに這っていた水流とグチョグチョになったパンツ。手にもまだおしっこで濡れた感じが残っている
この状況全てが堤防で本を読んでやろうと軽い気持ちで来た私の失敗を全て表していた。
いや、急がなければ。私は証拠隠滅を図る。リュックに入れたティッシュを取り出して手を拭き、スカートの中に手を入れて太ももに残る水分を取り、ベンチの上に残る水跡を消す。これだけでここで何があったのか一瞬わからない。
おしっこで濡れたパンツも脱ぎたかったが、流石に外でパンツを脱ぐという行為まではしたくなかった。
立ち上がる。あれだけおしっこが漏れそうでどうしようもなかった時が嘘のようだ。でもあれだけ我慢したからなのか、まだ股のあたりはジンジンと違和感を感じていた
この辺りの道は舗装されていないので、ベンチの下には草が生い茂っている。よく見なければ水が溜まっていることにも気づかないだろう。
置いてあるリュックを持ち、あれだけ行きたかったトイレへと向かう。あの時程の欲は無いものの、歩くたびにグチョグチョ鳴るパンツを脱ぎたかったし、手も洗いたい。
自販機とトイレのエリアにつく。そこにあったのは、未だに減らない女子トイレの列だった。おもらししたパンツは歩くたび濡れていることを知らせて来るし、直接おしっこを触った手も洗いたかったが、あの列に並びたくは無い。
結果的には良かったのかもしれない。帰路につきながら思うあの列の中、他人の目がある中で股を押さえ、そのまま漏らすのであれば誰も近くにいないあそこで漏らした方が被害が少ない。
いや、違う
そもそも幼い子どもでもないのに漏らしてはいけないのだ。
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