魔王軍に召喚された俺の相手は当然チート勇者

ユーカン

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二章「異世界に召喚された俺も当然少しは役に立ちたい」

10-5.end

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 視界がゆがむ感覚を越え、ツルギの目の前に現れたのは謁見の間の風景。
「ここは……。帰ってこれたのか
「はい。移動魔法の発動に成功しました」
 周りを見れば、魔王、フレア、アスタの三人もいる。無事に帰ってこれたようだ。
「……。すいません。調子に乗って勇者に近づきすぎました」
 悲痛な面持ちで頭を下げるツルギ。正体をバラす前に逃げるタイミングはあったかもしれない。しかし功名心がそうさせなかった。
「よいのだ、ツルギ君。想定外のことが起こることは想定内、だ。とは言っても、相手が勇者だとは思わなかったがな」
「でも俺が勇者に比類する力を持たないこともバレてしまいましたよ」
「それも遅かれ早かれバレることだったのだ。そうと分かれば新たな戦略を立てねばならない。フレア君、アスタ君、ツルギ君。早速、作戦会議だ」
「ちょ、ちょっと待ってください。勇者にバレたということは向こうの軍にも、そうしたら魔界軍の皆にもバレるということです。俺はもう『魔界軍の切り札』じゃないんですよ。ここにいるわけには……」
 焦って言うツルギに対して、他の三人はキョトンとした顔。
「そんなこと気にしてたのか。ツルギ君には四天王を続けてもらうよ」
「え、でも……」
 うじうじしているツルギの前に、今度はフレアが立った。
「それに、今回も正体がバレるほど近づいたのですから。成果がなかったというわけではないでしょう」
「それは……。確かに弱点らしきものは掴めた気がする。物理的な物じゃなくて、内面的、精神的な物だけど」
「それはあなたにしかできなかったことです。これからもあなたにしかできないことがあるはずです」
 フレアの表情はいつも通りの無表情。だからこそ、いつも通りに安心する。
 うむうむ、と頷きながら魔王が口を開く。
「それにだ。君がいなくなったら我が夜中にお手洗いに行くとき誰がついてきてくれるというのだ」
「え。魔王さんもツルギくんについてきてもらってんの」
「ん? 『も』? まさかアスタ君も……」
「あ!」
 口を滑らせたアスタは顔を赤くしてバタバタと手を振って暴れ回る。
「ちょっと! ツルギくん! 誰にも言わないでって言ったじゃん!」
 ツルギは何も言っていない。
「このお城が不気味なのが悪いんだよ!」
「それは我も思う」

 じゃれあう二人から離れて、フレアはツルギにやさしく語りかけた。
「『魔界軍の切り札』でなくても、ツルギさんはツルギさん。あなたはこの城にはもうなくてはならない存在なのです。どこにも行かせるわけにはいきません」
「……。分かったよ。ありがとう」
「いえ。ですが兵の中からは反発もあるでしょう。覚悟はしておいてください」
「うん。それも、分かってる」
 この後、ツルギに最初に命じられた仕事が四天王の寝室周りの廊下のリフォーム設計であったことは言うまでもない。
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