9 / 47
第三話「アドベンチャーアワー~都市伝説探検譚~」
3-1.アドベンチャーアワー~都市伝説探検譚~
しおりを挟む
うだるような暑さの昼下がり。駆人は神社に向かって歩いていた。怪奇ハンターの仕事を手伝うようになって、つまり、夏休みに入ってから数日が経ったが、比較的暇なタイプの高校生の駆人は特に用事もなく、家にいてもすることがないので足繁く神社に通っていた。天子達の家は広いし、風通しがいいし、ついでにおやつが出てくるし、いいことづくめだ。とはいっても駆人の方から押しかけているのではなく、都市伝説が現れた時にすぐに対応ができるようにと、天子の方から提案してきたものである。
駆人の家から神社までは、同じ住宅街にあるだけあって、まあまあ近い。五分もしないうちに神社にたどり着き、鳥居をくぐって中に入る。神社、神社と呼んでいるが、ここは神社の形を模しているだけで、特に名前はないらしい。よく見ると拝殿も正面から見れば立派だが横から見るとかなり薄い。そして、天子たちの住居はその拝殿とは名ばかりの張りぼての後ろに立っている。数日通えば勝手も知ったもので、引き戸をがらりと開け、中に入った。
玄関で靴を脱いで居間に向かうと、この家の主の化け狐の天子が寝転がってテレビを見ている。
「こんちは~」
「ん?おお、カルトか、ようきたのう」
「ういーす。……あれ、空子さんはいないんですか?」
居間に入った流れのままに台所にも目をやるが、空子の姿はなかった。
「空子か?空子は用事に出ちょる。まあ、そのうち帰ってくるじゃろ」
「え~。そうですか……」
露骨に残念そうな仕草でうなだれる。
「お主……。まあよい、冷凍庫にアイスモナカを冷やしてあるぞ。食べるか?」
「はーい。いただきまーす」
「わしの分も持ってきとくれ」
台所に向かい、冷凍庫を開ける。アイスモナカは器も出さなくて済むし、手も汚れにくいので、という理由で、この家には常備されているらしい。そのアイスモナカを二つ手に取ると、居間に戻り天子に一つを渡してから、ちゃぶ台の近くに敷いてある座布団の上に腰を下ろした。
この家ではいつも心地の良い風が通り抜ける。家の構造なのか、周りに茂る緑のおかげか、それとも超常的なことなのかはわからないが、居心地がいい。駆人と天子の二人は、アイスモナカを食べ、テレビを眺めながら、都市伝説や怪奇現象についての情報交換や、雑談に花を咲かせる。
ピーンポーン。
しばらくそんなことをしていると、来客を知らせるチャイムが鳴った。駆人は驚く、もちろん急になった音にではなく。
「この神社を訪ねてくる人なんているんですか?ここって霊感がある人か、怪奇存在にしか見えないんですよね?」
「そうじゃよ。ただ時々新聞屋かなんかの、たまたま霊感を持ってたりするやつがきたりするんじゃ。どれカルト、ちょっと出て断ってきてくれんか」
「それは構いませんが……。後者だったらどうするんですか」
流石に一人でお化けや妖怪と出くわしたら、と思うと不用意に近づくわけにはいかない。
「大丈夫じゃ。悪意を持った者だったらわざわざチャイムを鳴らしたりせんじゃろ」
「……それもそうか」
とりあえず納得して玄関に向かった。靴を履き、引き戸を開けると、そこには中学生くらいの少年が立っていた。袖なしのパーカーに、七分丈のカーゴパンツ。カジュアルな服装だ。気さくな感じに手をあげる。
「よお。……って、お前誰だ?」
「あ、自分この家の者ではないんですが……」
「ん?そうなのか、天子か空子さんはいないのか?」
「あれ、お知り合いなんですか」
「ああ。……んん?お前もしかしてこの家に出入りしてる都市伝説が見える人間、ってやつか?」
「えっ」
そんな問答をしていると、時間がかかっていることを疑問に思った天子が居間から出てきた。
「なんじゃなんじゃ~。新聞なら断れと言ったじゃろう」
「おお、天子やっぱりいたのか」
少年は歩いてきた天子に向かって声をかけた。やはり知り合いなのだろうか。
「ん。お主か!よくここが分かったのう。カルトよ、こやつは悪いものではないぞ。名は│ぽん吉《きち》とゆうてのう……」
こちらも知っているようで、気さくに声をかけ、駆人に紹介した。
「ぽんきち?」
「てめえ初対面の奴にそんなあだ名から教えるやつがあるか!」
ぽん吉と呼ばれた少年は少々憤るが、コホンと咳をして呼吸を落ち着けると姿勢を正し、駆人に向かって名乗ろうとした。
「あー、駆人っていうのか?俺の名前は……」
「ぽん吉でいいじゃろ」
「だからてめえ!」
ぎゃあぎゃあと駆人の頭越しに二人は言い争いを続ける。困惑しながら眺めていると、ぽん吉の後ろに人影が現れた。
「どうしたんですか騒々しい……。あ、駆人君来てたんですね。それに、ぽん吉君じゃないですか!久しぶりですね」
人影は帰ってきた空子だった。スーツ姿だが用事というのは仕事だったのだろうか。それとも、最初に駆人と会ったときにもスーツ姿で掃除をしていたので、これが普段着ということもあるのかもしれない。
ぽん吉は空子に気付くと。天子との言い争いをやめ、またもぴしりと姿勢を正した。
「あ、空子さん!お久しぶりです!俺もこの町に来たから挨拶に来ようと思ってたんですよ」
「まあ、そうなんですね。じゃあこれからはまたぽん吉君とも仕事ができるかもしれませんね。ところで、先ほどは姉さんと言い争ってたみたいですけど、また姉さんが失礼なことを言いましたか?」
「いや、いや!こやつが自分の名前がぽん吉じゃないとか言い出すもんじゃから!」
「おい!だから俺の名は……」
「え、ぽん吉君はぽん吉君じゃないんですか?」
「はい!ぽん吉です!」
即答であった。
「ど、どいつもこいつも……」
駆人の家から神社までは、同じ住宅街にあるだけあって、まあまあ近い。五分もしないうちに神社にたどり着き、鳥居をくぐって中に入る。神社、神社と呼んでいるが、ここは神社の形を模しているだけで、特に名前はないらしい。よく見ると拝殿も正面から見れば立派だが横から見るとかなり薄い。そして、天子たちの住居はその拝殿とは名ばかりの張りぼての後ろに立っている。数日通えば勝手も知ったもので、引き戸をがらりと開け、中に入った。
玄関で靴を脱いで居間に向かうと、この家の主の化け狐の天子が寝転がってテレビを見ている。
「こんちは~」
「ん?おお、カルトか、ようきたのう」
「ういーす。……あれ、空子さんはいないんですか?」
居間に入った流れのままに台所にも目をやるが、空子の姿はなかった。
「空子か?空子は用事に出ちょる。まあ、そのうち帰ってくるじゃろ」
「え~。そうですか……」
露骨に残念そうな仕草でうなだれる。
「お主……。まあよい、冷凍庫にアイスモナカを冷やしてあるぞ。食べるか?」
「はーい。いただきまーす」
「わしの分も持ってきとくれ」
台所に向かい、冷凍庫を開ける。アイスモナカは器も出さなくて済むし、手も汚れにくいので、という理由で、この家には常備されているらしい。そのアイスモナカを二つ手に取ると、居間に戻り天子に一つを渡してから、ちゃぶ台の近くに敷いてある座布団の上に腰を下ろした。
この家ではいつも心地の良い風が通り抜ける。家の構造なのか、周りに茂る緑のおかげか、それとも超常的なことなのかはわからないが、居心地がいい。駆人と天子の二人は、アイスモナカを食べ、テレビを眺めながら、都市伝説や怪奇現象についての情報交換や、雑談に花を咲かせる。
ピーンポーン。
しばらくそんなことをしていると、来客を知らせるチャイムが鳴った。駆人は驚く、もちろん急になった音にではなく。
「この神社を訪ねてくる人なんているんですか?ここって霊感がある人か、怪奇存在にしか見えないんですよね?」
「そうじゃよ。ただ時々新聞屋かなんかの、たまたま霊感を持ってたりするやつがきたりするんじゃ。どれカルト、ちょっと出て断ってきてくれんか」
「それは構いませんが……。後者だったらどうするんですか」
流石に一人でお化けや妖怪と出くわしたら、と思うと不用意に近づくわけにはいかない。
「大丈夫じゃ。悪意を持った者だったらわざわざチャイムを鳴らしたりせんじゃろ」
「……それもそうか」
とりあえず納得して玄関に向かった。靴を履き、引き戸を開けると、そこには中学生くらいの少年が立っていた。袖なしのパーカーに、七分丈のカーゴパンツ。カジュアルな服装だ。気さくな感じに手をあげる。
「よお。……って、お前誰だ?」
「あ、自分この家の者ではないんですが……」
「ん?そうなのか、天子か空子さんはいないのか?」
「あれ、お知り合いなんですか」
「ああ。……んん?お前もしかしてこの家に出入りしてる都市伝説が見える人間、ってやつか?」
「えっ」
そんな問答をしていると、時間がかかっていることを疑問に思った天子が居間から出てきた。
「なんじゃなんじゃ~。新聞なら断れと言ったじゃろう」
「おお、天子やっぱりいたのか」
少年は歩いてきた天子に向かって声をかけた。やはり知り合いなのだろうか。
「ん。お主か!よくここが分かったのう。カルトよ、こやつは悪いものではないぞ。名は│ぽん吉《きち》とゆうてのう……」
こちらも知っているようで、気さくに声をかけ、駆人に紹介した。
「ぽんきち?」
「てめえ初対面の奴にそんなあだ名から教えるやつがあるか!」
ぽん吉と呼ばれた少年は少々憤るが、コホンと咳をして呼吸を落ち着けると姿勢を正し、駆人に向かって名乗ろうとした。
「あー、駆人っていうのか?俺の名前は……」
「ぽん吉でいいじゃろ」
「だからてめえ!」
ぎゃあぎゃあと駆人の頭越しに二人は言い争いを続ける。困惑しながら眺めていると、ぽん吉の後ろに人影が現れた。
「どうしたんですか騒々しい……。あ、駆人君来てたんですね。それに、ぽん吉君じゃないですか!久しぶりですね」
人影は帰ってきた空子だった。スーツ姿だが用事というのは仕事だったのだろうか。それとも、最初に駆人と会ったときにもスーツ姿で掃除をしていたので、これが普段着ということもあるのかもしれない。
ぽん吉は空子に気付くと。天子との言い争いをやめ、またもぴしりと姿勢を正した。
「あ、空子さん!お久しぶりです!俺もこの町に来たから挨拶に来ようと思ってたんですよ」
「まあ、そうなんですね。じゃあこれからはまたぽん吉君とも仕事ができるかもしれませんね。ところで、先ほどは姉さんと言い争ってたみたいですけど、また姉さんが失礼なことを言いましたか?」
「いや、いや!こやつが自分の名前がぽん吉じゃないとか言い出すもんじゃから!」
「おい!だから俺の名は……」
「え、ぽん吉君はぽん吉君じゃないんですか?」
「はい!ぽん吉です!」
即答であった。
「ど、どいつもこいつも……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる