14 / 47
第四話「クエスチョンアワー~都市伝説選択譚~」
4-2.
しおりを挟む
そのあとは駆人がここを初めて訪れた時と同じ流れだ。天子たちの家に入ると、今に通され、説明が始まる。天子の正体、この町に起きている怪異のこと、怪奇ハンターのこと。そして、その仕事を駆人が手伝っていること。違うのはすべてを天子が説明していることだ。空子は出かけているらしい。
「……、と。こんなところじゃ。理解できたかのう?」
天子は一通り言い終え、息をつく。栞はあまりに突飛なことに、少々混乱しているようだ。無理もない、駆人は口裂け女との遭遇があったからこそ、怪異の実在を受け入れられた。栞は怪異らしい怪異にはまだであったことがないのだろう。
「話は変わるが。」
まだ整理しきれない様子の栞を見て、天子は駆人に話を振った。
「霊感を持つものがもう一人こんな身近におるとはのう。」
「ああ、最初の時に行ってましたよね。霊感を持つ人は極少ないって。実際のところどれくらいいるんですか?」
「数千人に一人おれば多い方じゃな。」
数千人。この町の人口で考えればせいぜい何十人といったところなのだろうか。
「確かお主らは学校の同じクラスじゃったな。相当偶然というかなんというか。」
駆人達の通う高校の全校生徒は数百人だから、確率で言えば一人もいなくてもおかしいことではない。その上で同じ学年で同じクラスだというのだから、その確率は大分低いことだろう。
「……あの。七生クンがこの人達と一緒に都市伝説退治してるってのは本当?」
いったん話が途切れたところで栞が発言する。すべてを信じ切ってはいないような表情だが、だからこその質問だろう。
「うん。確かに何回か都市伝説とやりあってるよ。」
「それって、危なくないの?」
「……、まあ危なくないってことはないかな。食い殺されかけたりもしたし。」
「……。」
栞はしばらく考え込んで、それから意を決してように口を開く。
「あの。私もその怪奇ハンターのお仕事を手伝うことって出来ますか。」
その発言に、残りの二人は目を見開いた。
「いや、今危ないって言ったじゃないか。」
「そうじゃそうじゃ。いくら人手が足りんからって、無暗に他人を巻き込むことはできん。」
「えっ。僕はめちゃくちゃ勧誘されましたよね。」
「お主が空子の誘惑に引っかかったんじゃろうが。」
「ちょっ!」
何か言わなくてもいいことを言われそうになったので、駆人は身を乗り出す。
「まあ、実際理由はあるんじゃよ。カルトよ、お主、わしらと出会う前にすでに都市伝説に襲われてたじゃろ。」
「……、はい。あのときも死にかけましたね。」
口裂け女の件だ。あの時がこの怪奇事件に巻き込まれるきっかけとなった。
「そういうなって。……、あのときお主とわしで口裂け女を倒したわけじゃが、その一件で都市伝説を葬ったわけじゃから、奴らに目を付けられとるんじゃよ。お主がおらんければ奴らへの対抗手段を、こちらは失うわけじゃからな。」
「え、ということはなるべくこの神社にいるようにってのも。」
「そうじゃよ。ここは他と比べれば安全じゃからな。まあお主に働いてほしい、というのももちろんあるがの。」
なるほどそういうことだったのか。ぽん吉もこの姉妹の所にいれば安心だと言っていた。それはそういう意味だったのか。自分が奴らに敵視されているとは、駆人は思いもよらなかった。
「シオリはまだ都市伝説にであっちょらんじゃろ?ならもし出会っても見えないふりをして、カルトにでも伝えい。ここのことはなるべく忘れることじゃ。もし出入りするようなことがあれば、奴らに目を付けられかねん。」
「そうだよ。自分から危険なことに首を突っ込む理由はないって。」
「で、でも……。」
問答を続けていると、玄関の戸が開く音がする。それと同時によく知った声が響いてきた。
「ただいま帰りましたー。荷物運ぶの手伝ってくださいー。」
空子の声だ。外に出ていた目的は買い物だったようで、車にもまだ荷物が積んである。
「おお。空子か。カルトよ、手伝ってやってきてくれ。」
「はーい。でへへ。」
駆人が部屋を出ていくと、残ったのは天子と栞の二人だ。
「あやつ、妙に空子に懐いちょるのう……。」
あきれる天子とは対照的に、栞はどこか不安そうな目で駆人の背を追っている。
「……。」
「お主、怪奇ハンターの仕事をやりたいというよりも、どっちかというと駆人が気になってるんじゃないのか?」
「……。」
「クラスメイトといっても、あんまり関わりなかったんじゃろ?どういう風の吹き回しじゃ?」
「……。」
「……、まあ。言いたくないこともあろうの。ただ、わしらに関わるのはあまりおすすめできんぞ。ちゃんと冷静になって考えることじゃな。」
「……。はい……。」
一区切りついたところで、ちょうど駆人が帰ってきた。
「おお、ちょうどいいところで来たのう。シオリを送って行ってやってくれ。もうそろそろ薄暗くなってきたからのう。」
「あ、そうですね。分かりました。」
「……、と。こんなところじゃ。理解できたかのう?」
天子は一通り言い終え、息をつく。栞はあまりに突飛なことに、少々混乱しているようだ。無理もない、駆人は口裂け女との遭遇があったからこそ、怪異の実在を受け入れられた。栞は怪異らしい怪異にはまだであったことがないのだろう。
「話は変わるが。」
まだ整理しきれない様子の栞を見て、天子は駆人に話を振った。
「霊感を持つものがもう一人こんな身近におるとはのう。」
「ああ、最初の時に行ってましたよね。霊感を持つ人は極少ないって。実際のところどれくらいいるんですか?」
「数千人に一人おれば多い方じゃな。」
数千人。この町の人口で考えればせいぜい何十人といったところなのだろうか。
「確かお主らは学校の同じクラスじゃったな。相当偶然というかなんというか。」
駆人達の通う高校の全校生徒は数百人だから、確率で言えば一人もいなくてもおかしいことではない。その上で同じ学年で同じクラスだというのだから、その確率は大分低いことだろう。
「……あの。七生クンがこの人達と一緒に都市伝説退治してるってのは本当?」
いったん話が途切れたところで栞が発言する。すべてを信じ切ってはいないような表情だが、だからこその質問だろう。
「うん。確かに何回か都市伝説とやりあってるよ。」
「それって、危なくないの?」
「……、まあ危なくないってことはないかな。食い殺されかけたりもしたし。」
「……。」
栞はしばらく考え込んで、それから意を決してように口を開く。
「あの。私もその怪奇ハンターのお仕事を手伝うことって出来ますか。」
その発言に、残りの二人は目を見開いた。
「いや、今危ないって言ったじゃないか。」
「そうじゃそうじゃ。いくら人手が足りんからって、無暗に他人を巻き込むことはできん。」
「えっ。僕はめちゃくちゃ勧誘されましたよね。」
「お主が空子の誘惑に引っかかったんじゃろうが。」
「ちょっ!」
何か言わなくてもいいことを言われそうになったので、駆人は身を乗り出す。
「まあ、実際理由はあるんじゃよ。カルトよ、お主、わしらと出会う前にすでに都市伝説に襲われてたじゃろ。」
「……、はい。あのときも死にかけましたね。」
口裂け女の件だ。あの時がこの怪奇事件に巻き込まれるきっかけとなった。
「そういうなって。……、あのときお主とわしで口裂け女を倒したわけじゃが、その一件で都市伝説を葬ったわけじゃから、奴らに目を付けられとるんじゃよ。お主がおらんければ奴らへの対抗手段を、こちらは失うわけじゃからな。」
「え、ということはなるべくこの神社にいるようにってのも。」
「そうじゃよ。ここは他と比べれば安全じゃからな。まあお主に働いてほしい、というのももちろんあるがの。」
なるほどそういうことだったのか。ぽん吉もこの姉妹の所にいれば安心だと言っていた。それはそういう意味だったのか。自分が奴らに敵視されているとは、駆人は思いもよらなかった。
「シオリはまだ都市伝説にであっちょらんじゃろ?ならもし出会っても見えないふりをして、カルトにでも伝えい。ここのことはなるべく忘れることじゃ。もし出入りするようなことがあれば、奴らに目を付けられかねん。」
「そうだよ。自分から危険なことに首を突っ込む理由はないって。」
「で、でも……。」
問答を続けていると、玄関の戸が開く音がする。それと同時によく知った声が響いてきた。
「ただいま帰りましたー。荷物運ぶの手伝ってくださいー。」
空子の声だ。外に出ていた目的は買い物だったようで、車にもまだ荷物が積んである。
「おお。空子か。カルトよ、手伝ってやってきてくれ。」
「はーい。でへへ。」
駆人が部屋を出ていくと、残ったのは天子と栞の二人だ。
「あやつ、妙に空子に懐いちょるのう……。」
あきれる天子とは対照的に、栞はどこか不安そうな目で駆人の背を追っている。
「……。」
「お主、怪奇ハンターの仕事をやりたいというよりも、どっちかというと駆人が気になってるんじゃないのか?」
「……。」
「クラスメイトといっても、あんまり関わりなかったんじゃろ?どういう風の吹き回しじゃ?」
「……。」
「……、まあ。言いたくないこともあろうの。ただ、わしらに関わるのはあまりおすすめできんぞ。ちゃんと冷静になって考えることじゃな。」
「……。はい……。」
一区切りついたところで、ちょうど駆人が帰ってきた。
「おお、ちょうどいいところで来たのう。シオリを送って行ってやってくれ。もうそろそろ薄暗くなってきたからのう。」
「あ、そうですね。分かりました。」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
異世界ランドへようこそ
来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。
中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。
26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。
勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。
同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。
――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。
「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。
だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった!
経営者は魔族、同僚はガチの魔物。
魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活!
やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。
笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。
現代×異世界×職場コメディ、開園!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる