それでも【運び屋】は剣を握る~ハズレ職を手に入れてしまった俺達だけど、努力と絆で最強パーティーへと成り上がる!~

一ノ瀬つむぎ

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第一章 その魔女はコーンスープが苦手

冒険ですか?

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 気分転換として、ラトナと遊びに行くことになった。
 とはいえいきなり町中に繰り出すわけにはいかないし、俺の体調も良くは見えないとの理由で、今日はよく眠れる薬(クリームのようなもの)をもらって解散となった。
 だから実際に遊びに行くのは明日とのこと。

 昨晩はさんざん悩んでいたが、結局恋愛なんて流れに任せるほかないのだろう。
 とにかく今は、結果が出ているように見える彼女の魔力制御のサポートや、友達としての生活の中で何か見つけ出せればそれでいい。
 そもそも、ラトナが俺の全く知らない誰かと結ばれる可能性もあるのだから。
 その時は全力で祝福したうえで、そのパートナーになんとか冒険の同行許可をもらうとしよう。 
 と、若干吹っ切れることができた夜。徹夜したことも相まって、それはそれは寝心地がよく感じられた。

 だがもし、俺が彼女を好きになってしまったら……。
 意識が途切れるその瞬間、そんな考えが静かに浮かんだ。
 ★

「で、場所とかって決めてあるのか?」

 いつも通りの配達品を届け終えて、並んで椅子に座りながら話す。
 彼女は既に外出準備は万端だといった様子で動きやすそうな服装に着替えていた。

 普段は肌を露出しないひらひらした格好をしていることが多いから、今日はやたらと主張をしている白い素肌が目に優しくなかった。

 明後日の方を向きつつ行き先について尋ねると、ラトナは目の前に広がる湖の向こう側を指さした。

「この湖の向こうに綺麗な山があるから、そこに行かない?」
「湖の向かいの山……レクト山脈か?」

 確か魔力を含んだ鉱石や木材がよく取れると言われている場所だったはずだ。魔力に触れたものは色合いが変化したりするからな。綺麗に見えるということもあるのだろう。

「名前はよくわからないけど、見たらきっとびっくりすると思う」
「それは楽しみだ。でも、歩くには遠すぎないか?」

 たぶん、湖を迂回するだけで半日はかかる。騎士団の訓練並みに過酷な息抜きとなりそうだが……。

 だが、彼女は心配ないと胸を張る。
 少し自慢げな顔で連れてこられたのは白塗りのガレージ。

 その内部には、簡略化かつ抽象化された大きな鳥のような何かが。

「これに乗れば、すぐに着く」
「魔道具か何かか?見たことないけど……」
「うん、私が作った」
「え、作ったのか!?」

 あまりの驚きについ声を大きくしてしまう。
 またうっかり死んでしまうかと焦りはしたが、彼女は少し震えつつもぎりぎりのところで抑えてくれたよう。魔力を抑えてる様子が目に見えて分かった。

 すぅと一つ息を吸うと、彼女は自作だという魔道具を見つつ言う。

「魔道具作成はお母さんの仕事だったから……魔女になる前は練習してた。魔女になってからも、たまに教えてもらってる」 
「なるほどな。どんな風に使うんだ?」
「乗って、空を飛ぶ」
「飛行魔道具か……」

 噂には聞いたことがある。
 有力貴族や王族が移動手段に使うとされる魔道具だ。だが、それらは数人を飛ばすのにお屋敷一戸分くらいの大きさの魔道具が必要だったはずだ。
 それに比べて今ちょうどラトナが飛び乗った魔道具は、いくら彼女が小柄だとは言え5人分くらいの大きさしかない。
 乗れる部分なんて、多分寝っ転がったら二人も入らないだろう。

 これは魔道具の質が異常なのか、はたまた使用者の力が異常なのか……。

 彼女に手招きされて俺も席に座る。
 縦に二個。一直線の座席配置だった。
 半ば密着するような形で彼女の後ろに座る。すると無機質な駆動音と共に魔道具(機体)全体が震えだす。
 ここから見える一対の翼には、複雑な幾何学紋を描く緑の光が浮かび上がっていた。

「綺麗でしょ?……お母さんと一緒に組み込んだの」
「ああ。……仲いいんだな」

 うん。と声には出さずにうなずくラトナ。
 職業差別が薄まった現代とは言え魔女の子供を避ける親の話はよく聞く。まあ、フレンから聞いた話と比べてしまえばそれでも大層優しい世界に感じてしまうが。
 そんな中でもこうして親子らしい交流を続けているのは、家族仲がいい証拠だろう。

「それじゃあ、空竜機発進……!」

 ラトナがレバーを握り操作をすると、空竜機と呼ばれた魔道具は俺たちを乗せてゆっくりと前進した。
 それに伴って優しく風が頬を撫でるが、少しづつ速度の上がる機体に反して、受ける風力は変わらなかった。
 快適な環境を保持したまま空竜機は、いつも俺達が訓練をしているウッドデッキ上を高速で駆け抜け、そのまま湖の水面へと飛び出した。

「え、ちょっと待って落ちるんじゃない……!?」

 水面と水平に進む機体は一向に空へ向かう気配を見せない。
 なんなら水面に若干近づいてきているようにも見え、俺は思わずラトナにすがる。

 唐突な死には徐々に慣れつつあった俺ではあるが、ゆっくりと迫ってくる命の危機には抗体がなかった。

 だがラトナは、落ち着いた様子で頼もしい姿を見せてくれる。

「ここからが見せ場だから、ちゃんと掴まってて」
「掴まるってどこに!?」

 この空間、椅子と操縦に関する何かしらしかないのだが。

「腰」

 彼女はそんな疑問にたった一言で答えた。
 馬みたいなものかと俺は彼女の腰に手をまわしてひと時の安心を得たが、それはホントに一瞬の物。

「飛ぶよ」

 と彼女が呟くその瞬間、湖から特大の水柱が吹き上がった。 
 
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