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第0機動小隊、結成!
ホンモノの『アホ』
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◆◆◆◆◆◆◆◆
「ではこれより、第0機動小隊部隊結成式を行う!」
そうして、部隊結成式が始まってしまった。
僕たちは特に何もなく、ただ立って話を聞いていればいいだけ……なのだ。
そう、突如僕たちの前に現れた、例の黒い甲冑に身を包んだ女騎士の話を。
「まずは自己紹介といこう……私の名前はライ。ライ・チャールストン。
最上位の近衛騎士———近衛騎士団長でありながら、第1王都近衛騎士機動小隊所属のサイドツー乗りでもある。
本計画にあたっては、貴様ら第0機動小隊の教官も務めることとなる。よろしく頼む」
……まさか教官だったとは。
そんな教官が、つい昨日『お前らは私たちの奴隷だ』などと口にしたという事実には目を瞑ろうと思う。
「次、部隊長と副隊長の紹介だ。2人、出てこい!」
そうして次に僕たちの前に出てきたのは、あの少女———リコと、もう1人の知らない少年だった。
「……轟千です、部隊長を務めさせていただきます。……気軽に、セン隊長とお呼びください」
すごい。
その少年———セン隊長の話し方と言い、立ち振る舞いと言い、どこか僕と同年代とは思い難い何かがあった。
こんな場においても妙に落ち着いている、きっとこのような場にも慣れているのだろうが……どこか既視感がある。
「……というわけで、貴様らの小隊の隊長を務める、センだ。……コイツはこの小隊の中で唯一、魔王軍前線で生身で戦ったことのある『勇者』出身だ。よって、戦闘経験の差などから即隊長に抜擢させてもらった。
……おまけに魔王軍幹部の討伐経験まで持ち合わせている。素晴らしい働きを期待しているぞ」
勇者。
たった今、教官が口にした言葉だが、言葉通りの意味の使い方ではない。
30年前より始まり、今よりたった4ヶ月前に終結した魔王軍戦争。
その戦争に、生身で兵士として赴いた魔術師や刀剣使いの事を『勇者』と呼んでいた……はずだ。
……ますますすごいなあ、あの年で生身で戦っていたんだ、信じられない。
「はいはーい! 次は私、リコ・プランク副隊長ですっ! 副隊長、副隊長になりました! よろしくお願いします!」
……っと、リコの方はそんな緊張感など微塵も感じさせない自己紹介だ、とても副隊長とは思えない。
「このアホ……失礼、とても威勢のいい子が貴様らの副隊長、リコだ。……見ての通りアホ……とても元気だが、部隊の統率力は高いだろうとのことで選抜させてもらった。………………本当にそうかは疑問が残るところだが」
もうだめだ、教官ですら『アホ』と言わしめるやべーやつだった。僕はあんな奴とつるんで行く羽目に……!
「ふっふーっ、このリコ、じつは統率力に関しては自信があるのだーっ!……統率力だけは、だけど」
「……頼むからそれ以上発言はするな、貴様のアホ度と私の選抜ミスが浮き彫りになる」
ついに教官に発言を止められたよ……!
「———それでは気を取り直して、次は人界王陛下のありがたきお言葉だ、言伝としてなので読むのは私だが、各自しかと噛み締めて聞くが良い」
……というか、僕はそんな長い話聞けるタイプじゃないんだけど、
「———えー、秋の到来が待ち遠しくあり、未だに蒸し暑さが残るこの頃ですが~~」
出だしは手紙みたいだ~などと思いつつボーッとしながら聞いていると———いつの間にか終わっていた。
寝ていたのだろうか、本当に一瞬で話が終わったかのような感覚だった。
「ケイ君、ケイくん? ケ~イく~んっ!」
「……はぅ!」
情けない声と共に戻る意識。
寝ていたわけではなかったが、どうやら完全に放心状態だったらしい。
「はーよかった、立ち往生しちゃったかと思った」
既に周りには第0機動小隊のメンバーも、教官も誰一人としておらず、僕の目に映ったのはリコの元気な笑顔のみであった。
「……ごめん、完全に話聞いてなかった……」
「とりあえず、もうすぐシュミレーション訓練始まるから急いで!……もう、戦場でそんなことされちゃ困っちゃうよ~!」
———今の言葉でハッとした。
そうだ、こんなに……多少気楽ではあるけど、僕が向かうのは戦場なんだ。
戦うのが誰なのかも分からない、『機神』を破壊する、ということ以外、何をするのかも分かっちゃいない。
それでも僕の向かうところは戦場で、一瞬の隙も油断も許されはしないのだ。
———それで、この子はその事についてちゃんと分かっているんだ。
……この子がリーダーに選ばれた理由が、少しばかり分かった気がする。
「ではこれより、第0機動小隊部隊結成式を行う!」
そうして、部隊結成式が始まってしまった。
僕たちは特に何もなく、ただ立って話を聞いていればいいだけ……なのだ。
そう、突如僕たちの前に現れた、例の黒い甲冑に身を包んだ女騎士の話を。
「まずは自己紹介といこう……私の名前はライ。ライ・チャールストン。
最上位の近衛騎士———近衛騎士団長でありながら、第1王都近衛騎士機動小隊所属のサイドツー乗りでもある。
本計画にあたっては、貴様ら第0機動小隊の教官も務めることとなる。よろしく頼む」
……まさか教官だったとは。
そんな教官が、つい昨日『お前らは私たちの奴隷だ』などと口にしたという事実には目を瞑ろうと思う。
「次、部隊長と副隊長の紹介だ。2人、出てこい!」
そうして次に僕たちの前に出てきたのは、あの少女———リコと、もう1人の知らない少年だった。
「……轟千です、部隊長を務めさせていただきます。……気軽に、セン隊長とお呼びください」
すごい。
その少年———セン隊長の話し方と言い、立ち振る舞いと言い、どこか僕と同年代とは思い難い何かがあった。
こんな場においても妙に落ち着いている、きっとこのような場にも慣れているのだろうが……どこか既視感がある。
「……というわけで、貴様らの小隊の隊長を務める、センだ。……コイツはこの小隊の中で唯一、魔王軍前線で生身で戦ったことのある『勇者』出身だ。よって、戦闘経験の差などから即隊長に抜擢させてもらった。
……おまけに魔王軍幹部の討伐経験まで持ち合わせている。素晴らしい働きを期待しているぞ」
勇者。
たった今、教官が口にした言葉だが、言葉通りの意味の使い方ではない。
30年前より始まり、今よりたった4ヶ月前に終結した魔王軍戦争。
その戦争に、生身で兵士として赴いた魔術師や刀剣使いの事を『勇者』と呼んでいた……はずだ。
……ますますすごいなあ、あの年で生身で戦っていたんだ、信じられない。
「はいはーい! 次は私、リコ・プランク副隊長ですっ! 副隊長、副隊長になりました! よろしくお願いします!」
……っと、リコの方はそんな緊張感など微塵も感じさせない自己紹介だ、とても副隊長とは思えない。
「このアホ……失礼、とても威勢のいい子が貴様らの副隊長、リコだ。……見ての通りアホ……とても元気だが、部隊の統率力は高いだろうとのことで選抜させてもらった。………………本当にそうかは疑問が残るところだが」
もうだめだ、教官ですら『アホ』と言わしめるやべーやつだった。僕はあんな奴とつるんで行く羽目に……!
「ふっふーっ、このリコ、じつは統率力に関しては自信があるのだーっ!……統率力だけは、だけど」
「……頼むからそれ以上発言はするな、貴様のアホ度と私の選抜ミスが浮き彫りになる」
ついに教官に発言を止められたよ……!
「———それでは気を取り直して、次は人界王陛下のありがたきお言葉だ、言伝としてなので読むのは私だが、各自しかと噛み締めて聞くが良い」
……というか、僕はそんな長い話聞けるタイプじゃないんだけど、
「———えー、秋の到来が待ち遠しくあり、未だに蒸し暑さが残るこの頃ですが~~」
出だしは手紙みたいだ~などと思いつつボーッとしながら聞いていると———いつの間にか終わっていた。
寝ていたのだろうか、本当に一瞬で話が終わったかのような感覚だった。
「ケイ君、ケイくん? ケ~イく~んっ!」
「……はぅ!」
情けない声と共に戻る意識。
寝ていたわけではなかったが、どうやら完全に放心状態だったらしい。
「はーよかった、立ち往生しちゃったかと思った」
既に周りには第0機動小隊のメンバーも、教官も誰一人としておらず、僕の目に映ったのはリコの元気な笑顔のみであった。
「……ごめん、完全に話聞いてなかった……」
「とりあえず、もうすぐシュミレーション訓練始まるから急いで!……もう、戦場でそんなことされちゃ困っちゃうよ~!」
———今の言葉でハッとした。
そうだ、こんなに……多少気楽ではあるけど、僕が向かうのは戦場なんだ。
戦うのが誰なのかも分からない、『機神』を破壊する、ということ以外、何をするのかも分かっちゃいない。
それでも僕の向かうところは戦場で、一瞬の隙も油断も許されはしないのだ。
———それで、この子はその事についてちゃんと分かっているんだ。
……この子がリーダーに選ばれた理由が、少しばかり分かった気がする。
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