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屍山血河〜王都防衛戦〜
Side-レイ:絶望再来
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◆◇◆◇◆◇◆◇
新Ξ標的。
その4脚の脚とその上に乗った球体からなる巨体と相対するは、4機もの白銀に塗られた、近衛騎士軍のサイドツー。そしてもう1機———その名はヴェンデッタ。
新型機体でもあり、サイドツーMark.3の在り方を決定する試作機体。
そして、そのヴェンデッタに搭乗するパイロットでもある、女騎士レイ・ゲッタルグルト。
近衛騎士長にして、ある理由からこの機体の操縦を任された、精鋭たるパイロットだ。
********
「アヴェンジ1よりアヴェンジ小隊各機、陽動を開始せよ。繰り返す、陽動を開始せよ」
『レイ隊長、魔力支援砲の使用許可をいただきたい』
「……そうだな、真っ先に狙われるが、それでもいいなら使うがいい」
『了解』
そう放った瞬間、新Ξ標的の周りを旋回していた4機のサイドツーのジェットパックが発光し、それらの飛行スピードが急激に上がり始める。
同時にサイドツー4機に対してそれぞれ1本ずつ、追尾するかのようにΞ標的より光の線が伸びる。
陽動は成功だ。
「出力安定———120mm魔神力障壁貫通式徹甲概念弾、装填完了」
画面の右下に兵装情報が表示される。生産性の都合上、この弾は僅か3発しか供給されていない。
その3発を、1発も無駄にしないように、丁寧にマガジンに入れ装填する。
するりと流れるようにマガジンが挿入されたのは、青き風貌を持つ新型兵器『C-キャノン』。
概念法術———名称、現象、場所、風景、心情———など、言の葉で表されたなんらかの概念を固形物に付与する魔術を用いて製作された『概念弾』を存分に活用するための射出機構を備えている。
名前の由来も『Concept』の頭文字からとった冒頭の『C』が含まれている。
「魔力機関連結完了、魔力器官同期完了、照準———捉えた」
見据えるはその巨体、深く腕部を前に突き出し、発射する。
「———っ!」
だがしかし、本当の戦いは1発目が命中してからだ。
当然の如く、神力障壁を一部破壊されたΞ標的の視線は完全にこちらへ傾く。
「全機散開! ここからは私もやるっ!」
すぐさまスラスターを吹かし、空へ。
まるでこちらを挟むようにして左右から光線が迫りくるが、前に突撃して確実にかわす。
「次弾装填、確実に当てるっ!」
旋回しつつ、偏差も含めた照準を合わせ、もう1発ぶっ放す。
「———見えた!」
その弾が神力障壁に激突した瞬間、ようやく可視化される神力障壁。
なおも旋回し続け、3発目の準備を固める。
「アヴェンジ小隊各機に告ぐ、次で神力障壁は確実に破壊する。突撃の準備を始めろ、繰り返す、総員突撃準備!」
『了解!』
4つに重なったやかましい声が聞こえた瞬間、3発目の概念弾を射出する。
見事にそれは命中、神力障壁は綺麗な神力粒子の粉となり舞い落ち、雪景色のような幻想的な光景が作り出された。
———と。
『こちら第0機動小隊指揮官機より、作戦司令部、およびアヴェンジ小隊に告ぐ。先程、旧Ξ標的の完全無力化が達成された。繰り返す、旧Ξ標的の完全無力化が達成された!』
聞こえたのは女の声———第0機動小隊指揮官機なら、その声の主はライさんだろう。
ならば、後はこっちがやるだけだ。
「聞いていたなアヴェンジ小隊各機! 後の獲物はコイツだけだ、存分に食べ尽くし、皿の隅まで舐め尽くせっ!」
『『了解っっ!!!!』』
一瞬にして士気は昂揚する。
『第1発射口、無力化に成功しました!』
僅か1秒後。もう既に1つ目の発射口の破壊報告が為される。
『第2発射口、同様に———』
『第3発射口、同じく破壊に———』
続く2つの破壊報告、残る発射口は1つ。
『第4発射口、完全破壊に成功しました!』
———来た!
「サイドツー各機、離散! この機体で最後は締めるっ!」
長刀を背面部ブレードマウントから取り出し、スラスターを最速で吹かして舞い上がる。
もはやあれほどまでに恐れていた神力光線は来ない、ならば確実に勝ち———、
『な———第2発射口、再起動を確認っ!』
「なんだと?!」
『隊長、照射来ますっ!』
スラスターを左に持っていき、すぐさま右に移動する。
「———第2発射口は破壊したはずじゃなかったのか?!」
『はい、発射口に長刀を突き刺したはずですが———』
ならばなぜだ、どうして発射口は再起動した……?
『隊長っ! おかしい……おかしいです……!』
「一体何がどうした、答えろアヴェンジ4!」
『———全発射口の、再起動を…………確認っ!』
「何ぃいっ?!……ちくしょう、早すぎるにも程があるっ!………………いや待て、ということはあっちも……!」
新Ξ標的。
その4脚の脚とその上に乗った球体からなる巨体と相対するは、4機もの白銀に塗られた、近衛騎士軍のサイドツー。そしてもう1機———その名はヴェンデッタ。
新型機体でもあり、サイドツーMark.3の在り方を決定する試作機体。
そして、そのヴェンデッタに搭乗するパイロットでもある、女騎士レイ・ゲッタルグルト。
近衛騎士長にして、ある理由からこの機体の操縦を任された、精鋭たるパイロットだ。
********
「アヴェンジ1よりアヴェンジ小隊各機、陽動を開始せよ。繰り返す、陽動を開始せよ」
『レイ隊長、魔力支援砲の使用許可をいただきたい』
「……そうだな、真っ先に狙われるが、それでもいいなら使うがいい」
『了解』
そう放った瞬間、新Ξ標的の周りを旋回していた4機のサイドツーのジェットパックが発光し、それらの飛行スピードが急激に上がり始める。
同時にサイドツー4機に対してそれぞれ1本ずつ、追尾するかのようにΞ標的より光の線が伸びる。
陽動は成功だ。
「出力安定———120mm魔神力障壁貫通式徹甲概念弾、装填完了」
画面の右下に兵装情報が表示される。生産性の都合上、この弾は僅か3発しか供給されていない。
その3発を、1発も無駄にしないように、丁寧にマガジンに入れ装填する。
するりと流れるようにマガジンが挿入されたのは、青き風貌を持つ新型兵器『C-キャノン』。
概念法術———名称、現象、場所、風景、心情———など、言の葉で表されたなんらかの概念を固形物に付与する魔術を用いて製作された『概念弾』を存分に活用するための射出機構を備えている。
名前の由来も『Concept』の頭文字からとった冒頭の『C』が含まれている。
「魔力機関連結完了、魔力器官同期完了、照準———捉えた」
見据えるはその巨体、深く腕部を前に突き出し、発射する。
「———っ!」
だがしかし、本当の戦いは1発目が命中してからだ。
当然の如く、神力障壁を一部破壊されたΞ標的の視線は完全にこちらへ傾く。
「全機散開! ここからは私もやるっ!」
すぐさまスラスターを吹かし、空へ。
まるでこちらを挟むようにして左右から光線が迫りくるが、前に突撃して確実にかわす。
「次弾装填、確実に当てるっ!」
旋回しつつ、偏差も含めた照準を合わせ、もう1発ぶっ放す。
「———見えた!」
その弾が神力障壁に激突した瞬間、ようやく可視化される神力障壁。
なおも旋回し続け、3発目の準備を固める。
「アヴェンジ小隊各機に告ぐ、次で神力障壁は確実に破壊する。突撃の準備を始めろ、繰り返す、総員突撃準備!」
『了解!』
4つに重なったやかましい声が聞こえた瞬間、3発目の概念弾を射出する。
見事にそれは命中、神力障壁は綺麗な神力粒子の粉となり舞い落ち、雪景色のような幻想的な光景が作り出された。
———と。
『こちら第0機動小隊指揮官機より、作戦司令部、およびアヴェンジ小隊に告ぐ。先程、旧Ξ標的の完全無力化が達成された。繰り返す、旧Ξ標的の完全無力化が達成された!』
聞こえたのは女の声———第0機動小隊指揮官機なら、その声の主はライさんだろう。
ならば、後はこっちがやるだけだ。
「聞いていたなアヴェンジ小隊各機! 後の獲物はコイツだけだ、存分に食べ尽くし、皿の隅まで舐め尽くせっ!」
『『了解っっ!!!!』』
一瞬にして士気は昂揚する。
『第1発射口、無力化に成功しました!』
僅か1秒後。もう既に1つ目の発射口の破壊報告が為される。
『第2発射口、同様に———』
『第3発射口、同じく破壊に———』
続く2つの破壊報告、残る発射口は1つ。
『第4発射口、完全破壊に成功しました!』
———来た!
「サイドツー各機、離散! この機体で最後は締めるっ!」
長刀を背面部ブレードマウントから取り出し、スラスターを最速で吹かして舞い上がる。
もはやあれほどまでに恐れていた神力光線は来ない、ならば確実に勝ち———、
『な———第2発射口、再起動を確認っ!』
「なんだと?!」
『隊長、照射来ますっ!』
スラスターを左に持っていき、すぐさま右に移動する。
「———第2発射口は破壊したはずじゃなかったのか?!」
『はい、発射口に長刀を突き刺したはずですが———』
ならばなぜだ、どうして発射口は再起動した……?
『隊長っ! おかしい……おかしいです……!』
「一体何がどうした、答えろアヴェンジ4!」
『———全発射口の、再起動を…………確認っ!』
「何ぃいっ?!……ちくしょう、早すぎるにも程があるっ!………………いや待て、ということはあっちも……!」
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