88 / 237
其は天命の刻、誰が為の決意
断線ノ復讐機
しおりを挟む
急に、意識が切れだす。ポツ、ポツと、一本の線を時間をかけて切り刻むように、断線の激痛が頭を何度も駆け巡る。
「……っ、は……っ、何だ……これ……!」
苦しみ、もがこうと体を動かすもほとんど動かない。一刻も早く激痛から解放されたいのに、身体はそれを許していないようだった。
「はぅ……は……ぁっ……あああっ!!!!」
身体は強張り、目を無意識に見開いてしまう。筋肉の筋はその全てが突っ張り、完全に身体は伸びきってしまう。ありとあらゆる箇所が悲鳴をあげているかのような激痛のみが、混濁しゆく意識を完全に支配していった。
『AACIC OS、停止を確認。エンジェルシェル出力大幅低下。代替OSの起動を確認しました』
『助けて』と呼ぼうともした瞬間、背中に刺さっていた針のようなアレが抜けた感覚を覚えた。瞬間、激痛からは完全に解放されたが、同時にヴェンデッタは、僕の思考で動かす事はできなくなっていた。
うんともすんとも言わなくなったヴェンデッタに憤って地団駄を踏もうともしたが、今はそんな時間ないとすぐに気持ちを切り替える。
「……んっ、ヴェン……デッタ、何で……動かないんだ……今、動かない……なら、今動かなくて……何になるんだよ……!!」
未だ激痛の余韻に喘ぐ両腕を意識で抑え、ヴェンデッタの操縦桿へと命からがら手を伸ばす。
「……操縦桿は……動く、シートがないけど仕方ない、やるしか……!」
もう既に、リコのサイドツーは既にそこまで迫ってきていた。……でも、諦めるわけにはいかない。まだ何もリコから聞いていないんだし、まだ何も話せていないんだから。
「耐えて…………みせるっ!」
再度互いの刃が擦れ、両機は後退しゆく。
その最中、リコの声が聞こえ出した。
『……なんで、私がここにいるのか———教えるね。ホントに、これに関しては君には関係ない話なんだけど、さ』
機体は絶えず動き続ける。だが、その最中で。お互いのあまりにも激しい動きの間———締まりきった壁と壁を伝うか細い糸のような隙間の中で、リコは語り続ける。
『ちょっと前まで友達だったスライムの子がさ、ある日———ひどく傷付いた姿で帰ってきたんだ』
優しく述べるその声とは正反対に対照的な激しい動きを持って、リコのサイドツーはこちらに斬りかかってくる。
『……で、何があったか聞いたらさ、『子供たちと遊んでたら、急に大きい人がやってきて、そして攻撃された』って、言ってた』
繰り返し、迫り来る刃をいなしながら移動を続ける。……今死んだら、ダメなんだ。この行き場のない憎しみが、誰にも受け止められずに……終わってしまう。
最初から僕の結論は1つだけだけど、それでも今は、この話を黙って受け止めるしかなかった。
『言い終わったあと、数分した後に———あの子は、破裂して死んじゃった。『もっと一緒にいたかった』って言ってたけど、やっぱりダメだった。ごめんね、って、何度も言ってあげた。けどダメだった』
「……だから、差別を———そのような風潮に何の一手も加えない人界王を、恨むのか」
『そうだよ。……いいや、私が憎んでるのはこの社会全部。全部が許せなくて、全部が憎かったけど、君は違った』
「………………僕とみんなと、一体何が違ったって言うんだよ……!」
一瞬だけ、無音無言の、本当の静寂が流れた後。
彼女は、鬼気迫る声を、混じり気のない本音を聞かせてくれた。
『本当に……本当にっ! 何も覚えていないのね、ケイっ!』
まるでしびれを切らしたかのようなその声を聞き届けた後に僕の胸に走ったのは、『悲しそうだ』という感想のみであった。
「……っ、は……っ、何だ……これ……!」
苦しみ、もがこうと体を動かすもほとんど動かない。一刻も早く激痛から解放されたいのに、身体はそれを許していないようだった。
「はぅ……は……ぁっ……あああっ!!!!」
身体は強張り、目を無意識に見開いてしまう。筋肉の筋はその全てが突っ張り、完全に身体は伸びきってしまう。ありとあらゆる箇所が悲鳴をあげているかのような激痛のみが、混濁しゆく意識を完全に支配していった。
『AACIC OS、停止を確認。エンジェルシェル出力大幅低下。代替OSの起動を確認しました』
『助けて』と呼ぼうともした瞬間、背中に刺さっていた針のようなアレが抜けた感覚を覚えた。瞬間、激痛からは完全に解放されたが、同時にヴェンデッタは、僕の思考で動かす事はできなくなっていた。
うんともすんとも言わなくなったヴェンデッタに憤って地団駄を踏もうともしたが、今はそんな時間ないとすぐに気持ちを切り替える。
「……んっ、ヴェン……デッタ、何で……動かないんだ……今、動かない……なら、今動かなくて……何になるんだよ……!!」
未だ激痛の余韻に喘ぐ両腕を意識で抑え、ヴェンデッタの操縦桿へと命からがら手を伸ばす。
「……操縦桿は……動く、シートがないけど仕方ない、やるしか……!」
もう既に、リコのサイドツーは既にそこまで迫ってきていた。……でも、諦めるわけにはいかない。まだ何もリコから聞いていないんだし、まだ何も話せていないんだから。
「耐えて…………みせるっ!」
再度互いの刃が擦れ、両機は後退しゆく。
その最中、リコの声が聞こえ出した。
『……なんで、私がここにいるのか———教えるね。ホントに、これに関しては君には関係ない話なんだけど、さ』
機体は絶えず動き続ける。だが、その最中で。お互いのあまりにも激しい動きの間———締まりきった壁と壁を伝うか細い糸のような隙間の中で、リコは語り続ける。
『ちょっと前まで友達だったスライムの子がさ、ある日———ひどく傷付いた姿で帰ってきたんだ』
優しく述べるその声とは正反対に対照的な激しい動きを持って、リコのサイドツーはこちらに斬りかかってくる。
『……で、何があったか聞いたらさ、『子供たちと遊んでたら、急に大きい人がやってきて、そして攻撃された』って、言ってた』
繰り返し、迫り来る刃をいなしながら移動を続ける。……今死んだら、ダメなんだ。この行き場のない憎しみが、誰にも受け止められずに……終わってしまう。
最初から僕の結論は1つだけだけど、それでも今は、この話を黙って受け止めるしかなかった。
『言い終わったあと、数分した後に———あの子は、破裂して死んじゃった。『もっと一緒にいたかった』って言ってたけど、やっぱりダメだった。ごめんね、って、何度も言ってあげた。けどダメだった』
「……だから、差別を———そのような風潮に何の一手も加えない人界王を、恨むのか」
『そうだよ。……いいや、私が憎んでるのはこの社会全部。全部が許せなくて、全部が憎かったけど、君は違った』
「………………僕とみんなと、一体何が違ったって言うんだよ……!」
一瞬だけ、無音無言の、本当の静寂が流れた後。
彼女は、鬼気迫る声を、混じり気のない本音を聞かせてくれた。
『本当に……本当にっ! 何も覚えていないのね、ケイっ!』
まるでしびれを切らしたかのようなその声を聞き届けた後に僕の胸に走ったのは、『悲しそうだ』という感想のみであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる