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Side-2:最悪へと向かう風上
離別と真意
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ヴェンデッタのスラスターを吹かし、タイミングを見計らいながらベーゼンドルファーの周りを旋回し始める。
ヤツは未だに空中で停止したまま、ならば私が行くタイミングだって見つけやすくはなる……!
『消エロ……!』
先程と同じように魔法陣が展開される。数も同じ。先に動いたのはベーゼンドルファーだった。
『ニンナ! 僕に盾をくれ!……突撃する……!』
『分かった……魔力障壁は私が作る!』
「オッケー、その隙に後ろからズバーンね!」
『俺の出番なしぃ?!』
ニンナ機からランド機に、2個の盾が渡された瞬間、ランド機は突進を始める。
『おおおおおおっ!』
両腕に盾を備えたランド機が、ベーゼンドルファーに接触する———その瞬間、魔法陣よりの神力光線が、ランド機に向かって一瞬にして放たれる。
……が、ニンナが魔力障壁を展開し、それらを完全に打ち消す———その前に、私は動く!
「とったぁぁぁぁぁあっ!」
ベーゼンドルファー、その背にあるユニットコンテナ強制排出レバーへと、ヴェンデッタが手を伸ばしたその時———ベーゼンドルファーは動いた。
『———ソノ程度デ』
……あろうことか、腕部からベーゼンドルファー専用の槍を新造した。……この場で。幻想顕現魔術の類なのか———とも思ったその時、視界がぶっ飛んだ。
「っぐ、うぅぅうっ!」
『結局ダメじゃねえか! やっぱり俺がやった方が良かったんじゃないのか?!』
『———いいや、今のは読まれていた……確実に!』
甘かった、私たちは、アレを甘く見過ぎていた。そんな棒立ち前提の作戦なぞ、通じるわけもないのに。
「いいよ……そっちが槍なら、こっちは———長刀だーーーーっ!
陽動は私がやる! みんなは隙を伺って、背面にあるレバーを引いて!」
ヴェンデッタ1号機———その背面部2基のウェポンラックに(私の意向で)搭載された、2本の長刀。
ツイン持ちなんて模擬戦でもやったことないけど、今は悠長なこと言ってられないし———、
「コレが本当の切り込み隊長だぁぁぁぁぁっ!」
『でもリコちゃん、副隊長だよねーーーっ?』
「あーあーあー、うるさい、そんなの気にしない気にしない……っ!」
右腕に持った長頭が、敵の槍と拮抗し合う。上手く力がこもらないが為に、そのまま押し切られる……!
「やっぱ……両手よねっ!」
そのまま槍を押し除けるように右腕の長刀を投げ捨て、左腕に持っていた長刀を両腕で持って再度突撃する。
「ちょっとは大人しくしろーーーーっ!」
……見えた。後ろから迫るランド機。私がこのまま拮抗してれば、後はランドがやってくれる……!
『目障リダ』
『な……に……っ?!』
必死に絞り出したような、そんなか細いランドの声が聞こえる———まさかと思ってベーゼンドルファーの腕部に目をやったとき、私は思いがけない光景を見た。
胸部より生えたもう2本の腕が、とても人間の可動域とは思えない角度に曲がり、すぐ後ろにいたランド機を貫いていたのだ。
『消エロッ、貴様ニ用ハナイッ!』
気を抜いた瞬間、槍を振り払われ、のけぞるようにしてヴェンデッタは体勢を崩す。
……が、次の瞬間。
ベーゼンドルファーの振り払った槍は、ランド機のユニットコンテナ———胸部に直撃した。
「ランド……っ!」
声もあげず。その機体は、唐突に爆散した。
あまりにも一瞬で。あまりにも呆気なく。
そう言えば、と。
久しぶりに、こんな光景を間近に見たんだ。
『無駄、ダッタナ。……コレガ貴様ニカケル言葉ダ。私ノ理解者デモナイノニ、我々ニ気安ク触ッタ罰ダ』
『……何、言ってんだ……何言ってんだよ、お前っ!……一番の……一番の理解者だったろ、ランドは!
ランドはお前に言ったじゃねえか、『僕と君は同じだ』って!……なのに、なのに理解者でもないのにとか……お前ふざけてんのかあっ!』
『私トノタッタ数個ノ言葉ノヤリトリ如キデ、私ト我々ヲ理解シタ気ニデモナッタカ、人間。
……理解シテイタノカ、我々ノ憎シミモ、私ノ憎シミモ!』
『そう言うことじゃ……そう言うことじゃ、ねえだろ……お前がかけるべき言葉は、そんなもんじゃ———』
『我々ハ『私』ト思考ヲ共有シ、共ニ完璧ナル理解者ヘト至ッタ。モハヤ我々ヲ、私ヲ止メル者モ、邪魔スル者モコノ世ニハ存在シナイ!
……虚無ヘト返シテヤロウ。コレハ我々ノ———っぐああああああっ!』
……様子がおかしい、ベーゼンドルファーが、ブランが苦しんでいる……?
『あああああっ、っぐ……ふ……っ、ど……けぇ、俺の側に…………近づくな……ぁっ!』
……今しかない、ベーゼンドルファーからブランの乗るユニットコンテナを引き離すには、今しかないんだ。
「今、そこから出してあげるから、待っててブラン———きゃあっ!」
スラスターを吹かし、機体を発進させようとした時、ベーゼンドルファーよりの衝撃波が届く。
『…………も、う、俺……の、ことはいいんだ……! 放って、おいて、クレ……ッ!』
その言葉を言い終えた直後、ベーゼンドルファーは姿を消していた。
……終わり、だと言うのか?
コレで? こんな惨状を以て?
「ブラン……一体、どうしちゃったの……!」
『……大丈夫、秀徳くん。……ランドは———』
『……ああ、アイツは死んだ。ブランの野郎に……ベーゼンドルファーに、殺されたんだ。
俺、決めたよ。……次、アイツに会ったら———、
ぜってぇ、ブン殴る』
ヤツは未だに空中で停止したまま、ならば私が行くタイミングだって見つけやすくはなる……!
『消エロ……!』
先程と同じように魔法陣が展開される。数も同じ。先に動いたのはベーゼンドルファーだった。
『ニンナ! 僕に盾をくれ!……突撃する……!』
『分かった……魔力障壁は私が作る!』
「オッケー、その隙に後ろからズバーンね!」
『俺の出番なしぃ?!』
ニンナ機からランド機に、2個の盾が渡された瞬間、ランド機は突進を始める。
『おおおおおおっ!』
両腕に盾を備えたランド機が、ベーゼンドルファーに接触する———その瞬間、魔法陣よりの神力光線が、ランド機に向かって一瞬にして放たれる。
……が、ニンナが魔力障壁を展開し、それらを完全に打ち消す———その前に、私は動く!
「とったぁぁぁぁぁあっ!」
ベーゼンドルファー、その背にあるユニットコンテナ強制排出レバーへと、ヴェンデッタが手を伸ばしたその時———ベーゼンドルファーは動いた。
『———ソノ程度デ』
……あろうことか、腕部からベーゼンドルファー専用の槍を新造した。……この場で。幻想顕現魔術の類なのか———とも思ったその時、視界がぶっ飛んだ。
「っぐ、うぅぅうっ!」
『結局ダメじゃねえか! やっぱり俺がやった方が良かったんじゃないのか?!』
『———いいや、今のは読まれていた……確実に!』
甘かった、私たちは、アレを甘く見過ぎていた。そんな棒立ち前提の作戦なぞ、通じるわけもないのに。
「いいよ……そっちが槍なら、こっちは———長刀だーーーーっ!
陽動は私がやる! みんなは隙を伺って、背面にあるレバーを引いて!」
ヴェンデッタ1号機———その背面部2基のウェポンラックに(私の意向で)搭載された、2本の長刀。
ツイン持ちなんて模擬戦でもやったことないけど、今は悠長なこと言ってられないし———、
「コレが本当の切り込み隊長だぁぁぁぁぁっ!」
『でもリコちゃん、副隊長だよねーーーっ?』
「あーあーあー、うるさい、そんなの気にしない気にしない……っ!」
右腕に持った長頭が、敵の槍と拮抗し合う。上手く力がこもらないが為に、そのまま押し切られる……!
「やっぱ……両手よねっ!」
そのまま槍を押し除けるように右腕の長刀を投げ捨て、左腕に持っていた長刀を両腕で持って再度突撃する。
「ちょっとは大人しくしろーーーーっ!」
……見えた。後ろから迫るランド機。私がこのまま拮抗してれば、後はランドがやってくれる……!
『目障リダ』
『な……に……っ?!』
必死に絞り出したような、そんなか細いランドの声が聞こえる———まさかと思ってベーゼンドルファーの腕部に目をやったとき、私は思いがけない光景を見た。
胸部より生えたもう2本の腕が、とても人間の可動域とは思えない角度に曲がり、すぐ後ろにいたランド機を貫いていたのだ。
『消エロッ、貴様ニ用ハナイッ!』
気を抜いた瞬間、槍を振り払われ、のけぞるようにしてヴェンデッタは体勢を崩す。
……が、次の瞬間。
ベーゼンドルファーの振り払った槍は、ランド機のユニットコンテナ———胸部に直撃した。
「ランド……っ!」
声もあげず。その機体は、唐突に爆散した。
あまりにも一瞬で。あまりにも呆気なく。
そう言えば、と。
久しぶりに、こんな光景を間近に見たんだ。
『無駄、ダッタナ。……コレガ貴様ニカケル言葉ダ。私ノ理解者デモナイノニ、我々ニ気安ク触ッタ罰ダ』
『……何、言ってんだ……何言ってんだよ、お前っ!……一番の……一番の理解者だったろ、ランドは!
ランドはお前に言ったじゃねえか、『僕と君は同じだ』って!……なのに、なのに理解者でもないのにとか……お前ふざけてんのかあっ!』
『私トノタッタ数個ノ言葉ノヤリトリ如キデ、私ト我々ヲ理解シタ気ニデモナッタカ、人間。
……理解シテイタノカ、我々ノ憎シミモ、私ノ憎シミモ!』
『そう言うことじゃ……そう言うことじゃ、ねえだろ……お前がかけるべき言葉は、そんなもんじゃ———』
『我々ハ『私』ト思考ヲ共有シ、共ニ完璧ナル理解者ヘト至ッタ。モハヤ我々ヲ、私ヲ止メル者モ、邪魔スル者モコノ世ニハ存在シナイ!
……虚無ヘト返シテヤロウ。コレハ我々ノ———っぐああああああっ!』
……様子がおかしい、ベーゼンドルファーが、ブランが苦しんでいる……?
『あああああっ、っぐ……ふ……っ、ど……けぇ、俺の側に…………近づくな……ぁっ!』
……今しかない、ベーゼンドルファーからブランの乗るユニットコンテナを引き離すには、今しかないんだ。
「今、そこから出してあげるから、待っててブラン———きゃあっ!」
スラスターを吹かし、機体を発進させようとした時、ベーゼンドルファーよりの衝撃波が届く。
『…………も、う、俺……の、ことはいいんだ……! 放って、おいて、クレ……ッ!』
その言葉を言い終えた直後、ベーゼンドルファーは姿を消していた。
……終わり、だと言うのか?
コレで? こんな惨状を以て?
「ブラン……一体、どうしちゃったの……!」
『……大丈夫、秀徳くん。……ランドは———』
『……ああ、アイツは死んだ。ブランの野郎に……ベーゼンドルファーに、殺されたんだ。
俺、決めたよ。……次、アイツに会ったら———、
ぜってぇ、ブン殴る』
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