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Side-2:第一次真珠海作戦(前)

開幕の狼煙

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◆◇◆◇◆◇◆◇

『ベーゼンドルファー、反応消失しました』

 人界軍、王都司令部。
 そのレーダーは、あの場に起こった異常を感知し続けていた。

『神力反応点も、魔力反応点も消失。反転作用も無効化され、元の世界に戻っていきます』

 淡々と、その現状が報告されていく。

 ベーゼンドルファーの引き起こした異常、終わる世界の一瞬の一幕、ハイパーゾーン。

 その明らかな異常が収まり、そしてベーゼンドルファーが失踪するのを、誰もが指を咥えて見ていることしかできていない中。



 その非常事態は、間髪入れずに迫ってしまった。




『……おい、嘘だろ……?!』
『なん……なんで、コレ……?!』

 暗闇のレーダーに、湧き上がる反応点。
 次第にその数は増していき、そのあまりの異常事態に皆が皆気付いてゆく。

『神話的生命体と断定、神力波長パターン……一致しました!』
Ξクスィー標的、多数出現! 真珠海直上です!』



 Ξ標的。
 
 第一次王都防衛戦にて猛威を振るった、神力光線を放つ最強の神話的生命体。
 サイドツーパイロットとなった人界軍兵士の、その大半の命をたった2体で奪い去った、人類の仇。



 そんなΞ標的が、多数。

『数は———千っ!』
 
 多数。千体。
 たった2体で人界軍を壊滅寸前にまで追い込んだ最悪の化身が、千体。

『せ……千っ?!』
『おい! 聞き間違えてない……よな、Ξ標的……だよなぁ?!』
『嘘だろ……勝てっこないぞ、せっかくサイドツーカスタムも建造が進んだってのに……!』

 

 怨嗟に包まれる人界軍司令室。
 オペレーターの人々も、正常な判断を失いかけたその時。
 


「ヒノカグツチだ、火之迦具土神ヒノカグツチ・壱式を出すぞ!

 魔導大隊機関の試し撃ちの時だ!」

 そう発したのは、現人界王にして、人界軍総司令たる『』だった。……が、その言葉にオペレーター一同は驚愕する。

『いや……でも、アレはまだ試作段階で……』

「一応完成はした、と聞いただろう!
 試しに撃ってみるんだよ、そのためのいい的が都合よく現れてくれただろう!」

『いい的……って……』
『非常事態なの分かってて……!』



「逃げても死ぬ、進んでも死ぬ。ならばせめて進んで、行けるとこまで行って死んでみようか!」
「…………前の人界王ならば……そのようなことは言わなかったはずですよ」

 どこか熱く自論を話す黒を静止するのは、人界軍副司令たるフリー・ラナメルという名の女だった。

「せめて、せめてもう少しだけでも冷静になりましょう、現人界王。そのような特攻に近い作戦というのは———」


「ならば何もせず死を待つのみか? 冷静になって考えようと、まずはこの窮地を乗り切るのが先決なはず。

 それにな、ここまでΞ標的を放ってきたということは、敵も本気でこちらを潰しにきていることの証なんだ。

 ……だからこそ、ここで俺たちは逃げちゃいけない。ここで逃げれば、所詮はその程度のヤツらだと思われ、全戦力を投入されてお終いだ。


 強大な敵が慢心しているうちに、その隙を突く。でなければ、俺たち人界軍に勝利はない。そうだろう? フリー・ラナメル」
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