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還元作戦/越神伴奏ベーゼンドルファー
再開の神儀
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ほっと一息ついて、体からほとんどの力が抜け落ちた時。
その時、私はある些細な光景を目にすることになる。
「動いて……る……?」
ありとあらゆる体液を撒き散らし、もはや原型を留めてすらいなかった標的A ´。
その禍々しい体躯が、微弱ながらも痙攣しているのを確認した瞬間だった。
『標的A ´、再出現!……真上です、ヴェンデッタの真上に出現しましたぁっ!』
「なんだと……そんな、訳が……あるはずが……!」
標的A ´はそこにいたはずだ、上空にいることなどあり得ないと思った瞬間。
私は、今真下にいる標的A ´の液体が、吸い込まれるように地面に消えていっていることにようやく気がついた。
「往生際が……悪い、なあっ!」
ベーゼンドルファーは再発進する。
もはや動くことのない右腕を完全に棄てて、左腕のみでその標的A ´の下へ赴く———が。
もうすぐそこ、標的A ´まで目と鼻の先———とも言える距離まで迫ったその時、標的A ´は私の目を欺くように急発進した。
『まずいっ!』
『誰か止めてくれぇっ!』
「また……起こって、しまうのか……!」
もはや機体を動かす暇すらもなく。
標的A ´は、ヴェンデッタ1号機に勢いよく衝突した。
『標的A ´、ヴェンデッタ1号機に接触、同化反応始まります!』
泣き叫ぶようなその言葉が響いた直後、あの時と同じように10の虹の円環が、翼を覆うように現れる。
ヴェンデッタ1号機にへばりついた青の液体———標的A ´は、そのまま溶けるようにしてヴェンデッタの外殻からアークレイに侵入し、そのまま同化反応を起こす。
『ソルトスウェルが発生するぞ、円環の中に退避しろっ!』
空が虹色に染まる。
使徒のモノと思しき神儀は、その惨状を以て再開と相成る。
『反転領域———膨張! 再反転発生せず、反転した虹の神魔力領域のみが展開されていきます!』
……こんなところでくすぶっている場合ではない。何がなんでも、ヤツを———ヴェンデッタ1号機を止めなくては。
「新しいヘヴンズバーストの儀式が始まる前に……アイツを、片付けるっ!」
ヴェンデッタ1号機の頭上に現れ、未だ広がり続けている天使の輪。
空を仰げば、虹と黄の円環のみが空を覆い尽くしている。
今回に限っては、翼が新しく生えてこないが……どうでもいい、私のやることは同じのままだ。
———しかし。
「にぐぅ……っ! ふざけやがってぇぇぇぇえっ!」
再度空中へと飛び上がったベーゼンドルファーを、ヴェンデッタ2号機が抑えに来る。『それ以上近づくな』とでも言わんばかりに。
「やむを得ない……アレを使うのも…………! 黒、4番コンテナっ!」
『4番コンテナ投下だ、急げっ!
……他のサイドツー部隊は何をしている……!』
他のサイドツー……素体となるなんらかの生命体すらなく、微弱なものであろうとも魔力障壁を一切持たない量産型サイドツーmark.2にとって、ヘヴンズバースト発生中心地点に赴くのは自殺行為だ。
……おそらく、わざわざ誰に言われるまでもなく、それは誰もが理解している。
だからこそ、私がやるしかないんだ。
「こんのぉ……どけぇっ!」
空から降ってきた4番コンテナを掴んだ瞬間、落下の衝撃によって掴みのレバーが下され、4番コンテナの中より武器が出でる。
「ぎぃ……っ!」
4番コンテナより排出された武器———サイドツー用小銃を、今まさにベーゼンドルファーに掴みかかっているヴェンデッタ2号機に向けてこれでもかとぶっ放す。
放たれた銃弾は、ヴェンデッタ2号機の薄い装甲を軽々と越え、その全てがヴェンデッタの素体に命中する。
ヴェンデッタ本体より流れ出る血が、その受けたダメージの凄惨さを表していた———が。
「まだ動くってのぉっ?!」
何度撃とうと、何度頭部を損傷しようと、血塗れのヴェンデッタ2号機は何度でも動き続ける。まるで『死』と言う概念そのものがなくなったかのように、何度も何度も。
「本当に気味が悪い……っうぅっ?!」
『ヴェンデッタ……2号機より、正体不明の神力領域発生! 中身もどうなっているのか分かりません、ブラックボックスです!』
なんだか……とてつもない浮遊感を覚える。
未だにベーゼンドルファーはヴェンデッタ2号機にしがみつかれており、本来ならばその感覚が共有されて窮屈になるはずだと言うのに。
そんな違和感を覚えた瞬間、私はヴェンデッタ2号機が『霧』を放っていることに気が付いた。
ヴェンデッタ2号機の、傷口———銃弾の捩じ込まれたその隙間より、血と共に流れ落ちる『霧』は、私の機体を覆うどころか、いつの間にかあたり一面に充満していた。
『ハイ…………ゾーンだ、コレは…………パーゾーンだ!………………対に巻き…………れるなよ、絶———』
聞こえ続けていた通信の声すらも、だんだんとその勢いは衰えていき、ついには完全に切れてしまった。
同時に、元々の左腕と同じように、自らの四肢の感覚が消え失せた。
身体は溶けるような浮遊感に晒されたまま、頭から順番に消え失せていく。
自分と、自分の輪郭と、周りにあるものの区別が何一つつけられなくなる。
溶けて、溶けて。
どこまでも深く落ちて、溶けて、喪ってしまった。
その時、私はある些細な光景を目にすることになる。
「動いて……る……?」
ありとあらゆる体液を撒き散らし、もはや原型を留めてすらいなかった標的A ´。
その禍々しい体躯が、微弱ながらも痙攣しているのを確認した瞬間だった。
『標的A ´、再出現!……真上です、ヴェンデッタの真上に出現しましたぁっ!』
「なんだと……そんな、訳が……あるはずが……!」
標的A ´はそこにいたはずだ、上空にいることなどあり得ないと思った瞬間。
私は、今真下にいる標的A ´の液体が、吸い込まれるように地面に消えていっていることにようやく気がついた。
「往生際が……悪い、なあっ!」
ベーゼンドルファーは再発進する。
もはや動くことのない右腕を完全に棄てて、左腕のみでその標的A ´の下へ赴く———が。
もうすぐそこ、標的A ´まで目と鼻の先———とも言える距離まで迫ったその時、標的A ´は私の目を欺くように急発進した。
『まずいっ!』
『誰か止めてくれぇっ!』
「また……起こって、しまうのか……!」
もはや機体を動かす暇すらもなく。
標的A ´は、ヴェンデッタ1号機に勢いよく衝突した。
『標的A ´、ヴェンデッタ1号機に接触、同化反応始まります!』
泣き叫ぶようなその言葉が響いた直後、あの時と同じように10の虹の円環が、翼を覆うように現れる。
ヴェンデッタ1号機にへばりついた青の液体———標的A ´は、そのまま溶けるようにしてヴェンデッタの外殻からアークレイに侵入し、そのまま同化反応を起こす。
『ソルトスウェルが発生するぞ、円環の中に退避しろっ!』
空が虹色に染まる。
使徒のモノと思しき神儀は、その惨状を以て再開と相成る。
『反転領域———膨張! 再反転発生せず、反転した虹の神魔力領域のみが展開されていきます!』
……こんなところでくすぶっている場合ではない。何がなんでも、ヤツを———ヴェンデッタ1号機を止めなくては。
「新しいヘヴンズバーストの儀式が始まる前に……アイツを、片付けるっ!」
ヴェンデッタ1号機の頭上に現れ、未だ広がり続けている天使の輪。
空を仰げば、虹と黄の円環のみが空を覆い尽くしている。
今回に限っては、翼が新しく生えてこないが……どうでもいい、私のやることは同じのままだ。
———しかし。
「にぐぅ……っ! ふざけやがってぇぇぇぇえっ!」
再度空中へと飛び上がったベーゼンドルファーを、ヴェンデッタ2号機が抑えに来る。『それ以上近づくな』とでも言わんばかりに。
「やむを得ない……アレを使うのも…………! 黒、4番コンテナっ!」
『4番コンテナ投下だ、急げっ!
……他のサイドツー部隊は何をしている……!』
他のサイドツー……素体となるなんらかの生命体すらなく、微弱なものであろうとも魔力障壁を一切持たない量産型サイドツーmark.2にとって、ヘヴンズバースト発生中心地点に赴くのは自殺行為だ。
……おそらく、わざわざ誰に言われるまでもなく、それは誰もが理解している。
だからこそ、私がやるしかないんだ。
「こんのぉ……どけぇっ!」
空から降ってきた4番コンテナを掴んだ瞬間、落下の衝撃によって掴みのレバーが下され、4番コンテナの中より武器が出でる。
「ぎぃ……っ!」
4番コンテナより排出された武器———サイドツー用小銃を、今まさにベーゼンドルファーに掴みかかっているヴェンデッタ2号機に向けてこれでもかとぶっ放す。
放たれた銃弾は、ヴェンデッタ2号機の薄い装甲を軽々と越え、その全てがヴェンデッタの素体に命中する。
ヴェンデッタ本体より流れ出る血が、その受けたダメージの凄惨さを表していた———が。
「まだ動くってのぉっ?!」
何度撃とうと、何度頭部を損傷しようと、血塗れのヴェンデッタ2号機は何度でも動き続ける。まるで『死』と言う概念そのものがなくなったかのように、何度も何度も。
「本当に気味が悪い……っうぅっ?!」
『ヴェンデッタ……2号機より、正体不明の神力領域発生! 中身もどうなっているのか分かりません、ブラックボックスです!』
なんだか……とてつもない浮遊感を覚える。
未だにベーゼンドルファーはヴェンデッタ2号機にしがみつかれており、本来ならばその感覚が共有されて窮屈になるはずだと言うのに。
そんな違和感を覚えた瞬間、私はヴェンデッタ2号機が『霧』を放っていることに気が付いた。
ヴェンデッタ2号機の、傷口———銃弾の捩じ込まれたその隙間より、血と共に流れ落ちる『霧』は、私の機体を覆うどころか、いつの間にかあたり一面に充満していた。
『ハイ…………ゾーンだ、コレは…………パーゾーンだ!………………対に巻き…………れるなよ、絶———』
聞こえ続けていた通信の声すらも、だんだんとその勢いは衰えていき、ついには完全に切れてしまった。
同時に、元々の左腕と同じように、自らの四肢の感覚が消え失せた。
身体は溶けるような浮遊感に晒されたまま、頭から順番に消え失せていく。
自分と、自分の輪郭と、周りにあるものの区別が何一つつけられなくなる。
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