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第一次真珠海作戦(後)

もう二度と、失わないために

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「スタートアップ、ヴェンデッタ!

 ……行こう、僕たちで先行して終わらせる」

 
 一瞬にして地上を飛び立ち、上空へと浮かび上がる。
 浮かび上がった瞬間に、Ξ標的5体からの初期照射が訪れる。……が、このヴェンデッタならば、いくらでも振り切れる。

『コーラス7、貴様1人で行く気か?!』
「……はい、貴方たちを行かせるよりかは、僕1人の方がマシです」

 迫る最大出力照射を避けるために、機体は幾度となく旋回し、ユニットコンテナ内は絶えず動転する。

 普通はこんな機動———もっと自分自身が影響を受けてもおかしくないはずなのに、そんなことはほとんどない。

 まるで自分の体そのものがより強くなったかのように、ヴェンデッタの高機動に対する耐性が完全に付いていたのだ。

「ヴェンデッタ、ロックオン」

 5体。荷電粒子砲発射の際の生き残りと、Cキャノンハイマップフルバーストの際の生き残りのヤツらだ。

「…………造作もない」

 既にCキャノンは両腕に構えている。ビットも接着済、いつでも最大出力で撃ち出せる。

「Cキャノン、フルバースト!」

 音速をも超える超スピードでΞ標的に近づきながら、その4脚の股下を掻い潜り、直後Cキャノン最大出力を発射、冷静に撃墜していく。

「次はそっちか……!」

 6時の方向、たとえあれだけ距離が離れていようと、今のヴェンデッタならば確実にやれる。

 2体目、撃墜。

「3、4体目はひとまとめか……手間が省ける」

 2体仲良く横並びで光線をこちらに向けて放ち続けている———が、何度やろうとそれらは当たるどころか擦りすらもしない。

「消えろ、僕の前から……!」

 引き金を引いた瞬間、その2体は一瞬にして砕け散った。
 ……弱すぎる、あまりにも。



 ……でも、今までの僕たちは、こんなものにいちいち苦戦していたんだ。

 こんなものの前に、アイツは———ショーゴは、何もできず死んでいった。
 ……何の言葉も、何の活躍も残すことはできず。ただ戦場で、一方的に瞬殺された。

 そう言えば、その事で一度怒りを露わにしたことがあった。『あの死は無駄だ』という、あの人界軍のパイロットの声だ。


 ……今でも悔いている。ソイツを怒りに任せて殺してしまったのも、ショーゴを目の前で救えなかったことにも。

「5体目はどこだ———っ、リコ!」

 西の空に、ただ浮遊しているリコのヴェンデッタ。———が、その胸元には初期照射の線が伸びていた。

「見えていないのか、リコはっ!」

 ヴェンデッタを急速発進させる。
 はちきれんばかりに締まる脳の血管も、今はどこまでも関係ない、ここで失って———たまるか……!

「リコ、聞こえるかリコ! 初期照射に当たってるぞ、そのままだったら———!」
『へっ?!』

 間抜けな声。……が、こっちはそういうわけにはいかない。
 間に合うか、この距離で。

「ヴェンデッタ、速く! もっと!」

 既に限界だ、魔力機関だって出力はフル。これ以上の速さは望めない。

 それでも速く、どこまでも速く。

「もっと———間に合ええええええええっ!!!!」








 最大出力照射、その太い線が伸びた瞬間———、ヴェンデッタ・シンのビットが、リコのヴェンデッタを守り通した。


「よかった……間に合った、失わずに……済んだ……!」

『あれ、私———生きて……』

「…………無理はするなって言ったばっかじゃないか…………っ!」

『ごめん……私にもできることが、あるかと思ったから……』

「……」

 ああ、それよりも———間に合ってよかった。


 もう目の前で、二度と———失うわけにはいかないんだ。

『ご……ごめんね、ホント……ありがとう』




「いいんだ、無事に終わったのなら……それでいいよ」

 もう奪わせはしない。そのための力、そのためのヴェンデッタ。

 もう、あの時とは違う。何もできなかった、無力なあの時とは。
 自分で進むこともできず、ただ奪われただ囚われ続けていたあの時の僕にはもう、お別れしたんだ。




「やろう、ヴェンデッタ。

 正真正銘、コレは僕たちにとっての———復讐の幕開けだ」


 Cキャノンは砲身を鳴らす。
 遠くの方で1つ、衝撃が舞い上がった。





「……僕が君を最後まで護り通してみせる。絶対に、君を奪わせたりはしない。

 だから、君も最後まで、僕を信じてほしい。……信じ続ければ、その祈りはきっと届くはずだから」




『…………ケイ君、なんか大人びたね』

 そのリコからの質問に、一瞬頭を悩ます。

「そうかな?……いいや、確かにそうかもね。僕は変わったよ、あの旅のおかげで」

『ねえねえ、帰ったらさ、その旅のこと、聞かせてよ!
 何があったのか、誰と出会って、何を成したのか———聞いてみたいから!』

「ああ、もちろん。言われなくても、こっちから勝手に話し始めたと思うから」
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