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禍根未だ途切れず
衝突
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◆◇◆◇◆◇◆◇
「……黒さん。黒さん、黒さん! 真面目に聞いてくださいっ!」
———後日。僕は黒司令の下へ直々に言いにいくことにした。……意外にも、人界王へのアクセスは簡単……スケジュールも空いているが、そんなものでいいのかと思いつつも。
……トゥルースのことについて、言いに来たんだ。
「こんな……朝、早くから…………何のようだ……よ……」
黒さんは椅子に深く腰掛けたまま、眠たそうに瞼を擦る。……人界王とは思えない態度だし、どうも気に食わなかった。
「あの……トゥルースって人、今すぐ人界軍から追放してください。……あの人は、多分———僕と同じ、ゴルゴダ機関より送り込まれたスパイです。
……ソレに、多分僕より———人界軍に敵意を持っている。自分の使命を優先しているんです、あの人は」
「追放…………ねぇ……使えるものは、何でも使う。今はそういう……状態だ、パイロットとしての成績は優秀……そう簡単に、追放するわけにも……」
「だから———だから内側から崩される可能性が高いって、そういうことを言ってるんですよ! 人界王……なのに、そんなとこすらも……読み取れないんですか……!」
「———ケイ」
黒さんの声色が変わる。椅子に腰掛け直し、どこか覚悟を決めた顔つきに、一瞬にして変わった。
「お前……自分がヴェンデッタのパイロットだからって、増長していないか?……自分が大人になったって、そう思い込んで———」
「僕は……増長なんてしてませんよ!……ただ、人界軍のことを想って———何より僕は英雄なんです、僕の意見に従った方がマシで………………はっ」
失言。あまりの失言。自分でさえも気付くほどなのに、ソレを言ってしまった後に気付くほど———僕は愚かになっていたのか。
「…………話は聞かん。……好きにしろ。トゥルースのことについても、現状維持のままで留める」
「———」
わざわざこんなことに付き合ってもらった礼すら言わず、僕は部屋を立ち去ってしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「僕が———ヴェンデッタのパイロット……だから……調子に乗ってるとでも言うのか……!
こんなに……こんなに、みんなを護りたくて……頑張ってるのにぃっ!」
シミュレーター。結局僕は、ここにまで戻ってきてしまっていた。
と言うのも、僕の居場所がない。ブランともリコとも、第0機動小隊のメンバーとも、あれから一切話していないんだ。
話す空気じゃない、話す理由がない———色々と理由をつけて、僕は彼らを遠ざけてしまっていた。
「僕は……僕は、間違ってるのか?!……みんなを護りたいってこの気持ちは、間違ってるとでも言うのか?!」
眼前に迫り来る、仮想敵の神話的生命体に、不満をぶつけながら。
「調子に乗ってるなら、こんなに謙虚に……努力してるわけ……ないじゃないかぁっ!」
何度も何度も、同じ敵に長刀を突き刺してを繰り返す。
もう、動いてもいないというのに。
「……っ、はあ、はあ……なんで、みんなも……着いてきて、くれないんだよ……
僕が護らないといけない……そんなの、分かってる。こうやってみんなが練習をするのがキツいのも分かってるのに……でも、でも———リコもブランも来ないんだったら———、
死ぬかも、しれないだろ……?……そんなのを……指を咥えて見てるだけなんて……嫌なんだよ、だから……だから、アイツらにも……頑張ってほしいのに……!
ただでさえ無謀なのに……なんで、なんでだよ、なんでそんなに呑気そうにしてられるんだよ、なあ!
……僕…………たち、は……捨て駒として……利用されるだけ……って言うんだぞ……なにも、何も、何も何も何も感じないのかよぉっ!」
自機は既に———事切れていた。
「すぐ死ぬ羽目になるって言うのに……もうちょっと、危機感持ってくれよ……!
死なせたくないんだ、死んでほしく、ないんだよ……誰にも………………っ!」
その時。ガタッ、と音が、自分の背後で響いた———気がした。
「疲れ……てんのかな……?」
自分自身の声すらも、震えていることがよく分かった。
よくよく考えてみれば僕は、ここ数日間———彼らと口をきかないだけじゃなく、いつも夜3時までシミュレーター詰めだった。
そりゃあ、疲れも溜まるもんだ。
「……寝よ」
「……黒さん。黒さん、黒さん! 真面目に聞いてくださいっ!」
———後日。僕は黒司令の下へ直々に言いにいくことにした。……意外にも、人界王へのアクセスは簡単……スケジュールも空いているが、そんなものでいいのかと思いつつも。
……トゥルースのことについて、言いに来たんだ。
「こんな……朝、早くから…………何のようだ……よ……」
黒さんは椅子に深く腰掛けたまま、眠たそうに瞼を擦る。……人界王とは思えない態度だし、どうも気に食わなかった。
「あの……トゥルースって人、今すぐ人界軍から追放してください。……あの人は、多分———僕と同じ、ゴルゴダ機関より送り込まれたスパイです。
……ソレに、多分僕より———人界軍に敵意を持っている。自分の使命を優先しているんです、あの人は」
「追放…………ねぇ……使えるものは、何でも使う。今はそういう……状態だ、パイロットとしての成績は優秀……そう簡単に、追放するわけにも……」
「だから———だから内側から崩される可能性が高いって、そういうことを言ってるんですよ! 人界王……なのに、そんなとこすらも……読み取れないんですか……!」
「———ケイ」
黒さんの声色が変わる。椅子に腰掛け直し、どこか覚悟を決めた顔つきに、一瞬にして変わった。
「お前……自分がヴェンデッタのパイロットだからって、増長していないか?……自分が大人になったって、そう思い込んで———」
「僕は……増長なんてしてませんよ!……ただ、人界軍のことを想って———何より僕は英雄なんです、僕の意見に従った方がマシで………………はっ」
失言。あまりの失言。自分でさえも気付くほどなのに、ソレを言ってしまった後に気付くほど———僕は愚かになっていたのか。
「…………話は聞かん。……好きにしろ。トゥルースのことについても、現状維持のままで留める」
「———」
わざわざこんなことに付き合ってもらった礼すら言わず、僕は部屋を立ち去ってしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「僕が———ヴェンデッタのパイロット……だから……調子に乗ってるとでも言うのか……!
こんなに……こんなに、みんなを護りたくて……頑張ってるのにぃっ!」
シミュレーター。結局僕は、ここにまで戻ってきてしまっていた。
と言うのも、僕の居場所がない。ブランともリコとも、第0機動小隊のメンバーとも、あれから一切話していないんだ。
話す空気じゃない、話す理由がない———色々と理由をつけて、僕は彼らを遠ざけてしまっていた。
「僕は……僕は、間違ってるのか?!……みんなを護りたいってこの気持ちは、間違ってるとでも言うのか?!」
眼前に迫り来る、仮想敵の神話的生命体に、不満をぶつけながら。
「調子に乗ってるなら、こんなに謙虚に……努力してるわけ……ないじゃないかぁっ!」
何度も何度も、同じ敵に長刀を突き刺してを繰り返す。
もう、動いてもいないというのに。
「……っ、はあ、はあ……なんで、みんなも……着いてきて、くれないんだよ……
僕が護らないといけない……そんなの、分かってる。こうやってみんなが練習をするのがキツいのも分かってるのに……でも、でも———リコもブランも来ないんだったら———、
死ぬかも、しれないだろ……?……そんなのを……指を咥えて見てるだけなんて……嫌なんだよ、だから……だから、アイツらにも……頑張ってほしいのに……!
ただでさえ無謀なのに……なんで、なんでだよ、なんでそんなに呑気そうにしてられるんだよ、なあ!
……僕…………たち、は……捨て駒として……利用されるだけ……って言うんだぞ……なにも、何も、何も何も何も感じないのかよぉっ!」
自機は既に———事切れていた。
「すぐ死ぬ羽目になるって言うのに……もうちょっと、危機感持ってくれよ……!
死なせたくないんだ、死んでほしく、ないんだよ……誰にも………………っ!」
その時。ガタッ、と音が、自分の背後で響いた———気がした。
「疲れ……てんのかな……?」
自分自身の声すらも、震えていることがよく分かった。
よくよく考えてみれば僕は、ここ数日間———彼らと口をきかないだけじゃなく、いつも夜3時までシミュレーター詰めだった。
そりゃあ、疲れも溜まるもんだ。
「……寝よ」
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