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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
Side-レイ: 業に刺す
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「———さて、来ないのですか?……私としては、いつ総帥と合流してもよろしいのですが」
総帥、おそらくイデアが口にしていたヤツのことか。
魔王軍幹部、ダークナイト———もとい、現在の名は刹那。一体なぜヤツがこんなところにいるのか、それと元魔王軍幹部のヘキも関係があるのか、ゴルゴダ機関は魔界にもスパイを送り込んでいたのか。
むしろ今は関係ないことだ、ここでコイツを確実に葬れば済む話なのだから。
「……ヤンス、魔力機関による領域中和を行ってちょうだい」
『隙を晒すことになるでヤンスよ?』
「それでもいいわ。私の読みが正しかったら、それで勝てるはず」
『リスクが高すぎないでヤンスか?』
「んもう、うるさいわね、男は黙って当たって砕けろでしょ———?!」
本当にすぐそこ、1mくらいの至近距離にて響いた鈍い激突音。
すかさずその音の方向を見た瞬間、私の身体は宙を舞った。というか蹴飛ばされた。
「んなあ……っ?!」
その2秒後に続く爆発音と突風、まさかコレは———爆剣?
『おわあぁぁぁあっ?!』
宙を舞った身体、動転した気概。
ブレた視界を必死に補正し、ようやくマトモに視認したものを認識できるようになってきた頃。
見えたのは黒い土煙、そして左腕を無くしたサイドツー。
欠けた人体を横目にしてもなお、私の身体は天井近くを舞っており、真下にはあの男、ヘキがまさかの仁王立ち。
「どこまでも余裕ね……!」
すぐさま姿勢を変えて攻撃に転じたいけど、何もしなければどうやっても壁への激突は必須。
すかさず壁を蹴った反動を利用した攻撃を行う、だなんて思考も脳裏をよぎったが、そんなものではヤツに傷1つ付けられないことはとうの昔に分かりきったことだ。
ならば1度体勢を整えるまでだ、ヤンス機が中破した以上、確認が取れるまではどこが損傷しているかも分からない、何ができるのかも分からずじまいだ。
「……当たったのは左腕、ですか……この私も、流石にコレの扱いには慣れてきた頃だとは思っていましたのに」
それにヘキはさっき、『合流』などと口にしていた。……そんなことはさせない。サナちゃんや、くいなちゃんの障害になると言うのなら、この私が死ぬまで食らいついてどこまでも邪魔してやる。
「そろそろ大人しく抵抗をやめてもいいと思うのですが……」
抵抗をやめる?
ここで戦う事をやめる?
そんな言葉に耳を貸す必要など……ない。
考えるのは、思考を巡らすのは勝利にのみ。
「シュヴァルツェスアイゼン、憑依概念機構解放!」
頭で考えなくとも、無意識に、吸い寄せられるように魔力が黒き剣へと向かう。
黒騎士の剣、あのダークナイトをもってしても『強者』と言わせてみせた本物の強者の剣。
白と戦って敗れはしたものの、その身体、その魂は未だ朽ち行かず。
「せめて時間さえ稼げれば……!」
一歩、重く鈍い足を踏み出す。
縦長の弧を描くように剣を振り下ろす、が、やはりどうやっても、その剣は男の脳天にて完全に静止してしまう。
「おや、いたんですねえ、全く気付きませんでしたよ」
「魔力探知についてはゴミみたいにヘッタクソなのに、煽りのセンスだけは成長したみたいね!」
「それはそれは光栄です、人を憤らせることには慣れておりますので」
「皮肉ってんのよぉっ!」
薄ら笑いなんか浮かべて、本っ当に気持ち悪い……っ!
「……しかし、これではいつまで経っても戦闘が終わりませんね、ならば……」
何をする気か分からない、妨害などできるかどうかも分からないが、とにかく必死に、がむしゃらに黒剣を振り続ける。
一振り毎、あまりにも硬すぎるヘキの皮膚にて受け流される度に、剣と腕に重い感触と衝撃が伝わり響き続ける。
狼狽える様子はない。この男は、私たちを無視しようと思えば先に進めるのだろう、こんなところで油を売らなくとも、目的を達成できるだけの実力がある。
それでも、単なる興味本位でも私に構うのだとしたら……ならば、せめてサナたちの為にも、ここで時間稼ぎだけでもしてみせ———。
「魔力解放、刺突残照」
総帥、おそらくイデアが口にしていたヤツのことか。
魔王軍幹部、ダークナイト———もとい、現在の名は刹那。一体なぜヤツがこんなところにいるのか、それと元魔王軍幹部のヘキも関係があるのか、ゴルゴダ機関は魔界にもスパイを送り込んでいたのか。
むしろ今は関係ないことだ、ここでコイツを確実に葬れば済む話なのだから。
「……ヤンス、魔力機関による領域中和を行ってちょうだい」
『隙を晒すことになるでヤンスよ?』
「それでもいいわ。私の読みが正しかったら、それで勝てるはず」
『リスクが高すぎないでヤンスか?』
「んもう、うるさいわね、男は黙って当たって砕けろでしょ———?!」
本当にすぐそこ、1mくらいの至近距離にて響いた鈍い激突音。
すかさずその音の方向を見た瞬間、私の身体は宙を舞った。というか蹴飛ばされた。
「んなあ……っ?!」
その2秒後に続く爆発音と突風、まさかコレは———爆剣?
『おわあぁぁぁあっ?!』
宙を舞った身体、動転した気概。
ブレた視界を必死に補正し、ようやくマトモに視認したものを認識できるようになってきた頃。
見えたのは黒い土煙、そして左腕を無くしたサイドツー。
欠けた人体を横目にしてもなお、私の身体は天井近くを舞っており、真下にはあの男、ヘキがまさかの仁王立ち。
「どこまでも余裕ね……!」
すぐさま姿勢を変えて攻撃に転じたいけど、何もしなければどうやっても壁への激突は必須。
すかさず壁を蹴った反動を利用した攻撃を行う、だなんて思考も脳裏をよぎったが、そんなものではヤツに傷1つ付けられないことはとうの昔に分かりきったことだ。
ならば1度体勢を整えるまでだ、ヤンス機が中破した以上、確認が取れるまではどこが損傷しているかも分からない、何ができるのかも分からずじまいだ。
「……当たったのは左腕、ですか……この私も、流石にコレの扱いには慣れてきた頃だとは思っていましたのに」
それにヘキはさっき、『合流』などと口にしていた。……そんなことはさせない。サナちゃんや、くいなちゃんの障害になると言うのなら、この私が死ぬまで食らいついてどこまでも邪魔してやる。
「そろそろ大人しく抵抗をやめてもいいと思うのですが……」
抵抗をやめる?
ここで戦う事をやめる?
そんな言葉に耳を貸す必要など……ない。
考えるのは、思考を巡らすのは勝利にのみ。
「シュヴァルツェスアイゼン、憑依概念機構解放!」
頭で考えなくとも、無意識に、吸い寄せられるように魔力が黒き剣へと向かう。
黒騎士の剣、あのダークナイトをもってしても『強者』と言わせてみせた本物の強者の剣。
白と戦って敗れはしたものの、その身体、その魂は未だ朽ち行かず。
「せめて時間さえ稼げれば……!」
一歩、重く鈍い足を踏み出す。
縦長の弧を描くように剣を振り下ろす、が、やはりどうやっても、その剣は男の脳天にて完全に静止してしまう。
「おや、いたんですねえ、全く気付きませんでしたよ」
「魔力探知についてはゴミみたいにヘッタクソなのに、煽りのセンスだけは成長したみたいね!」
「それはそれは光栄です、人を憤らせることには慣れておりますので」
「皮肉ってんのよぉっ!」
薄ら笑いなんか浮かべて、本っ当に気持ち悪い……っ!
「……しかし、これではいつまで経っても戦闘が終わりませんね、ならば……」
何をする気か分からない、妨害などできるかどうかも分からないが、とにかく必死に、がむしゃらに黒剣を振り続ける。
一振り毎、あまりにも硬すぎるヘキの皮膚にて受け流される度に、剣と腕に重い感触と衝撃が伝わり響き続ける。
狼狽える様子はない。この男は、私たちを無視しようと思えば先に進めるのだろう、こんなところで油を売らなくとも、目的を達成できるだけの実力がある。
それでも、単なる興味本位でも私に構うのだとしたら……ならば、せめてサナたちの為にも、ここで時間稼ぎだけでもしてみせ———。
「魔力解放、刺突残照」
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