Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

文字の大きさ
255 / 256
最終章・前編〜間隙〜(三人称)

255話-AGE18608(太陽暦2808年):12月27日

しおりを挟む
********

「…………コーラスリーダー了解。……それは本当か?……未確認飛行物体……サイドツーの可能性は」

『さあ……紅い機体だ、って言ってたけど……サイドツーつっても、Mark.3以上の性能の機体を、あっちが密かに作ってる……とか?』

「なるほど…………消えたヴェンデッタ、ってのもありそうな線ではあるけど……どうだろうね。

 いずれにせよ、今回が初陣だ。まずはここをしっかりこなさないと」

『おいおいよ、初陣はねえだろ初陣は……俺たちゃあんだけ、命張ってでもオリュンポスと戦ったんだぜ?』

「それは5年前の話だろう。……それに、人相手は———ほぼ……」

『ほぼ、じゃねえだろ。5年前の人界軍クーデター、その時だって人とはやり合ったはずだ。

 ……なんだ隊長、まさか今更、人を殺すのが怖いってか?……そんなケイみたいなことをさ……』


「………………コーラス3、次にその話題を出そうなら、僕が君を———、


 …………ケイは人を殺すのが怖かったんじゃない、殺したくなかったんだ。その辺、あまり誤解しないでもらいたいものだが」

『へ~いへい……あ、ドア開きそうっすよ』

 格納庫の前方のドアが開き、外より眩しい光が漏れ出す。

「発進許可は降りた。……行こう。レイス・ヴェルグ隊———発進」

 

 岩肌の中。切り立った崖の穴の中より、サイドツーが5機発進する。

 その中にて、一番先頭に位置する、青と黄色に塗られたサイドツー……それに乗るのが、コーラス1……レイス・ヴェルグ隊の隊長を務める、センであった。


「目的地……既にレーダーに出ているな、とりあえず直進だ。まだ第4基地は攻撃されていない。


 ……しかし、戦争の在り方も、随分変わってしまったな……」

『戦争の在り方ぁ?……俺ぁそんなの分かんないね、日ノ國からトランスフィールドの移民だからさ』

「……元々、僕たちは全員生身で戦ってた。サイドツーなんて人形機動兵器……ロボットなんて使わずともよかったのに」

『でも、もう今はよほど強いやつ以外はサイドツーの使用がほぼ必須だろ?……生身で使い物になる人間なんて、ほとんどいやしねえだろうが』

「……そうだね、サナさんとか……レイさんとか…………イデア、さん……とか、



 ———白さん、とか。


 その辺の人ぐらいしか、今は生身じゃやっていけない。……もちろん僕もだけどね……

 サイドツーの操縦技術がないとやっていけないなんて、まさかこんなことになるとは思ってもいなかったよ」

『ああ俺も、全く思ってなかったことが起きやがった。…………オリュンポスとの戦争が終わったと思ったら、なぁんで人類同士で戦争が始まっちゃうかねえ』

「……話が逸れすぎていないか?」

『気にすんなよ~~、どうせ暇なんだし———』





『コーラス3。無駄口を叩いてる暇は、ないかもしれない』

 こちらも落ち着いた声だったが、もう1人の男の声が聞こえ始める。

『おおっブラン! ようやく喋り始めたか!』

秀徳ひでのり、コールサインで呼ぶ。……当たり前だろう、コーラス3』

『でも今秀徳つったじゃんよぉっ!』



『……それよりも隊長、1時の方向、距離36000より、未確認熱源体、及び魔力反応点が———接近中です』

『俺の話聞いてぇっ?!』

『マーカーはあるものの、リンクはされていない……とならば……』


「まさか、アレは敵機?!……でも、単騎じゃないか、単騎で……単騎で?!」

 敵のマーカー。隊全員のレーダー状に赤く表示されたその点は、徐々に隊に向けて向かいつつあった。

「ちょっと待って……まずい、確実にここを目的にしてる!

 全機散開、正面からは僕が受ける!」

『『『『了解っ!』』』』


「行くぞ……サイドツー・フリートウィングス、魔力翼展開っ!」

 センがそう口にした瞬間、センのサイドツーの両側に、緑色の魔力の翼が、一瞬にして形成される。

 翼———と言っても簡易的なものであり、鳥のソレのような羽を模した複雑な形状はしていなかったのだが。

『……アレか……噂に聞いた、紅い機体……?!』

「迎撃開始っ!」

 センの合図に合わせ、そちらに飛んでくる紅い機体に向け、銃弾の弾幕が浴びせられる。小銃を使う者もいれば、ブランの乗るこれまた赤いサイドツーは、スナイパーライフルによる狙撃を実行していた。

 ———が。

『敵機、魔力濃霧を散布!
 同時にミサイルも飛んできました!』

「即座に撃ち落とせ! 全機後退しながらだ、濃霧との距離を近寄らせるな!』

『ミサイル、迎撃成功!……ってえ、ミサイルからも魔力濃霧が!』

「そっちは気にするな、どうせ前方の濃霧とは混ざり合わない!

 以前後退しろ! 濃霧の中から何が飛んでくるか分からない、魔力障壁の展開準備は怠るな!」


 ……一通り銃声が鳴り止んだ後。その戦場は、静寂に包まれた。

『………………出てこない?』

「出てくれば蜂の巣にされるだけだからな……出てこなくても、いずれそうなるだろうが」

『レーダーにも、後退していくような様子は映っていません。引き続き、監視を行います』


 ……がしかし、1分経っても何の動きもなく。


「…………妙だ。もう少し距離を取ろう。どこか不気味だ、嫌な予感が当たる気がする」

『———っ、なんでそこっ———』
『コーラス3っ!』

 全員のレーダーから、コーラス3……秀徳機のマーカーが消え失せる。
 ……とはいえ、その方向を向くと……空にパラシュートを広げたユニットコンテナが。

『コーラス3、ベイルアウト!』
『……ちょっと待て、そりゃおかしいだろ……!』


 先程、紅い機体が入り込んだはずの、前方の魔力濃霧。
 ……だが、そこから離れた位置———紅い機体のミサイルより散布された、離れた位置の魔力濃霧から———紅い機体は出でた。

「…………まさ、か、転移…………いや、そんなことをできる人は……この世界に…………クさんぐらいしか……」

『隊長、何をボケっと!』
「……ああ、すまない———とにかく距離を取って撃ち続けろ! ヤツは今のところ、ハンドカノン以外に攻撃力のある遠隔兵装を持ち合わせていない! こちらの火力で押し切る!」

『敵機、ハンドガンを撃ってきました!』
「そんなもので……僕たちのカスタムシリーズが破れるとでも思ってぇっ!」


 センの駆るサイドツー・フリートウィングスは、その背中より刀を取り出し、一直線に紅い機体へ向かう。

 紅い機体も、その腕と思しき部分より魔力で形作られた刃を以て応戦する、が———、

「……素人か」

 フリートウィングスの方が、その反応速度の速さにより、紅い機体に先手を喰らわせた。

 甲羅の如き装甲に、深い切り傷を付けられた紅い機体は浮力を失い落下。……したはいいものの、また例の魔力濃霧を散布し———、

「待て、アレを逃がしちゃいけない! 集中砲火だ、何としてでも、堕とさなければ———、」

 ……が、その弾幕が届く前に、紅い機体は魔力濃霧の中へと到達。



「…………いや、いい。。今回は、僕たちの負けだ」

 
 センはその魔力濃霧の中を調べるまでもなく、自らの敗北を主張する。
 そんな彼の心の中は、疑問で埋め尽くされていた。……しかしそれでも。

「とりあえず、レイス・ヴェルグ隊全機は、ベイルアウトしたコーラス3を救出、保護した後、速やかに第2基地に帰投、今回の出来事を説明しろ。

 本来の作戦行動、第4基地への援軍は———僕1人で引き受ける。……それを、全て伝えておいてくれ」

『『『了解!』』』


 そうしてセンはただ1人、ここから少し遠く離れた第4基地へ向かい始める。

 ……その胸の内に、限りない疑問を抱きながら。
しおりを挟む
感想 203

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...