77 / 110
76
しおりを挟む
深夜に校長室に訪れたのは、PINEに送りつけられたメッセージに「至急──」と書かれていたからだ。
何事かと思いつつも、今日はあちこちと校内をうろつき忙しかったピネスが、呼び出された部屋の中へと来てみれば、聞かされた用件は以下の通り。
『愛用していた不黒文魂の武器【ふぅーちゃん棒SP改(刺股魔法杖)】なる装備が、新加入メンバーを優先し外されてしまった今、私にはお下がりではない次なる魂の武器が必要だ。〝だから〟ピネスくん、キミにも校長先生のその大事な武器の選定を手伝ってほしいのだよ』ということであった。
〝だから〟の意味はいまいち飲み込めずにいたピネスであったが、確かに愛用していた武器がなくなったその気持ちは理解できる。彼自身、直近の記憶でも修理したばかりの武器が粉々になったばかりだ。結果的には運良くまた剣は直してもらえたものの、だからと言ってまったくの他人事とは思えなかった。
ふぅーちゃん棒あらため刺股ダブル改は、自分の元相棒でもある。目の前にいるのはそれを自分から取り上げお下がりなど宣う張本人であるものの、少しは共感できる部分もあったので、頷いたピネスは校長の武器選びに協力することにした。
信頼を置く男子生徒からの協力を得た不黒文校長はさっそく、剣、斧、ハルバードと基本的なものを順々に構えて武器に魔力を流し試したが──
攻撃魔法と召喚術を主に扱う魔法師かつネクロマンサーであるという自負があるため、校長はいかにも前衛がするような装備には、手に取ってみてもあまりしっくりこないご様子だ。
その後も校長はダンジョンでこれまで拾った様々な種類の武器を試遊し厳選を重ねていった。
小一時間──オシャレ好きの女子の服選びに付き合うほどの待ち時間が過ぎてゆき……不黒文校長の魂の武器、その最終候補として挙がったのは、
【杖】武器に刻み込まれた魔法師らしい魔法の習得が可能、魔法の微細なコントロール、発動位置を指定したりの要素を補助しやすい。さらに近距離戦での鈍器としても非常に使いやすい。木浪も使い込んでいるスタンダードタイプ。迷ったらこれ!
【弓】味方を召喚して戦う不黒文のスタイルには合っている。しかし身体的な技量と集中力に影響されやすい武器のため、魔法と併用するのにはこなすべきタスクが多い。今までとはまったく違った練度が必要な武器である。だが、不黒文の異能との噛み合わせは悪くない。使いこなせればますますスペシャルな女性になれることだろう。ブク高のマドンナのVenus生徒も、影ながら弓の鍛錬を積んでいるのだとか……。
【サイス(鎌)】体内のどこかにある漆黒の血が騒ぐほどお好きらしい。眼帯にも似合うからとても良いらしい。校長様のお通りである。
以上の三種に加えて、もうひとつ。
「その傘をさしていてくれ」
校長にそう言われたピネスは、もらった傘をパッと天へと広げ咲かせてみたものの。
ここは室内、とくに雨など降らない。
だが、これも何か深い意味があるのだろう。そう思ったピネスは、この校長室をダンジョンの一室と見立て、頭の中でモンスターを配置しシミュレートしてみる。しかし、どうこう考えてみるも、モンスターを倒せるイメージは湧かない。ピネスにはこれを立派な武器としては、どうにも使いこなせそうもないようだ。剣のようにごっこ遊びをし扱うのが関の山だろう。
(そもそも傘は武器なのか? あぁー確かに、開いたら効果やら強度しだいでは盾にはなるかんじか? ぅーー……でもなんか俺としてはなぁ……傘だと気合いが入らないっつぅか。イメージ湧かないな)
傘をさし、数分シミュレートしてみたものの、やはりイメージは湧かない。その時何故かふと、『強くなる』そんな幼い時に言ったか、言ってないか記憶にあやふやな言葉を彼は思い出した。
「校長せんせー、あのぉー……そろそろいいでっ────」
何か妙な握り心地だ。その曲がった傘の柄から、やはりあまりいい感覚を得られないと思ったピネスは、そろそろこうして立ったまま傘をさす行為をやめていいかと、校長に尋ねた。
だが、意味のない影に覆われていたピネスは言葉途中で────ばたり。その場に突如、力なく倒れた。
「フッフ、なるほど……。そろそろ効いてきたといったところか。フッフッフ……」
「なっにっ……を……────────」
『コツ……コツ……』と音を鳴らしゆっくりと近づくヒールの音。やがて屈み伸ばされた手が、床に無造作に転がっていた傘を拾い上げた。
女は真っ黒な傘をさす……。
疼く眼を覆う眼帯をはずし、プラチナ髪がわずかに部屋に吹いた妖しげな風に流され、ユラユラと靡いている。
さした傘から落とした薄い影が、徐々に濃く染まる。妖しげに蠢きながら、まるで彼女の元へと帰るように影は重なり集っていく。
舌をなめずり微笑う黒い瞳と灰色の眼、その悪魔的な表情を最後に……。
2-D男子生徒浦木幸は、校長室の絨毯の上でへばりついたように動けず、気絶した────。
何事かと思いつつも、今日はあちこちと校内をうろつき忙しかったピネスが、呼び出された部屋の中へと来てみれば、聞かされた用件は以下の通り。
『愛用していた不黒文魂の武器【ふぅーちゃん棒SP改(刺股魔法杖)】なる装備が、新加入メンバーを優先し外されてしまった今、私にはお下がりではない次なる魂の武器が必要だ。〝だから〟ピネスくん、キミにも校長先生のその大事な武器の選定を手伝ってほしいのだよ』ということであった。
〝だから〟の意味はいまいち飲み込めずにいたピネスであったが、確かに愛用していた武器がなくなったその気持ちは理解できる。彼自身、直近の記憶でも修理したばかりの武器が粉々になったばかりだ。結果的には運良くまた剣は直してもらえたものの、だからと言ってまったくの他人事とは思えなかった。
ふぅーちゃん棒あらため刺股ダブル改は、自分の元相棒でもある。目の前にいるのはそれを自分から取り上げお下がりなど宣う張本人であるものの、少しは共感できる部分もあったので、頷いたピネスは校長の武器選びに協力することにした。
信頼を置く男子生徒からの協力を得た不黒文校長はさっそく、剣、斧、ハルバードと基本的なものを順々に構えて武器に魔力を流し試したが──
攻撃魔法と召喚術を主に扱う魔法師かつネクロマンサーであるという自負があるため、校長はいかにも前衛がするような装備には、手に取ってみてもあまりしっくりこないご様子だ。
その後も校長はダンジョンでこれまで拾った様々な種類の武器を試遊し厳選を重ねていった。
小一時間──オシャレ好きの女子の服選びに付き合うほどの待ち時間が過ぎてゆき……不黒文校長の魂の武器、その最終候補として挙がったのは、
【杖】武器に刻み込まれた魔法師らしい魔法の習得が可能、魔法の微細なコントロール、発動位置を指定したりの要素を補助しやすい。さらに近距離戦での鈍器としても非常に使いやすい。木浪も使い込んでいるスタンダードタイプ。迷ったらこれ!
【弓】味方を召喚して戦う不黒文のスタイルには合っている。しかし身体的な技量と集中力に影響されやすい武器のため、魔法と併用するのにはこなすべきタスクが多い。今までとはまったく違った練度が必要な武器である。だが、不黒文の異能との噛み合わせは悪くない。使いこなせればますますスペシャルな女性になれることだろう。ブク高のマドンナのVenus生徒も、影ながら弓の鍛錬を積んでいるのだとか……。
【サイス(鎌)】体内のどこかにある漆黒の血が騒ぐほどお好きらしい。眼帯にも似合うからとても良いらしい。校長様のお通りである。
以上の三種に加えて、もうひとつ。
「その傘をさしていてくれ」
校長にそう言われたピネスは、もらった傘をパッと天へと広げ咲かせてみたものの。
ここは室内、とくに雨など降らない。
だが、これも何か深い意味があるのだろう。そう思ったピネスは、この校長室をダンジョンの一室と見立て、頭の中でモンスターを配置しシミュレートしてみる。しかし、どうこう考えてみるも、モンスターを倒せるイメージは湧かない。ピネスにはこれを立派な武器としては、どうにも使いこなせそうもないようだ。剣のようにごっこ遊びをし扱うのが関の山だろう。
(そもそも傘は武器なのか? あぁー確かに、開いたら効果やら強度しだいでは盾にはなるかんじか? ぅーー……でもなんか俺としてはなぁ……傘だと気合いが入らないっつぅか。イメージ湧かないな)
傘をさし、数分シミュレートしてみたものの、やはりイメージは湧かない。その時何故かふと、『強くなる』そんな幼い時に言ったか、言ってないか記憶にあやふやな言葉を彼は思い出した。
「校長せんせー、あのぉー……そろそろいいでっ────」
何か妙な握り心地だ。その曲がった傘の柄から、やはりあまりいい感覚を得られないと思ったピネスは、そろそろこうして立ったまま傘をさす行為をやめていいかと、校長に尋ねた。
だが、意味のない影に覆われていたピネスは言葉途中で────ばたり。その場に突如、力なく倒れた。
「フッフ、なるほど……。そろそろ効いてきたといったところか。フッフッフ……」
「なっにっ……を……────────」
『コツ……コツ……』と音を鳴らしゆっくりと近づくヒールの音。やがて屈み伸ばされた手が、床に無造作に転がっていた傘を拾い上げた。
女は真っ黒な傘をさす……。
疼く眼を覆う眼帯をはずし、プラチナ髪がわずかに部屋に吹いた妖しげな風に流され、ユラユラと靡いている。
さした傘から落とした薄い影が、徐々に濃く染まる。妖しげに蠢きながら、まるで彼女の元へと帰るように影は重なり集っていく。
舌をなめずり微笑う黒い瞳と灰色の眼、その悪魔的な表情を最後に……。
2-D男子生徒浦木幸は、校長室の絨毯の上でへばりついたように動けず、気絶した────。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
憧れのお姉さんは淫らな家庭教師
馬衣蜜柑
恋愛
友達の恋バナに胸を躍らせる教え子・萌音。そんな彼女を、美咲は優しく「大人の身体」へと作り替えていく。「ねえ萌音ちゃん、お友達よりも……気持ちよくしてあげる」眼鏡の家庭教師が教えるのは、教科書には載っていない「女同士」の極上の溶け合い方。
女性向け百合(レズビアン)R18小説。男性は出てきません。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる