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遠く差し伸べられた臆病な悪魔の手に向けるのは、いただきもの、ご愛用のレアな魔法の杖。
そして引き寄せいただくは、LIVE配信をその目に見て分析した、キーとなる相手の強みと弱点。
「しマっ……!???」
特殊な召喚魔法もどきを使い魔力のありかを分割したことで、最大魔力の薄まっていた天使色の拡声器を、魔力最大・異能全開のチカラを行使し奪取に成功。
「そろそろ【入浴】のじかんでしょーーーーーーしょっ!!!」
木浪はくすねたその拡声器で、向かって来ていた【人】【入】の2文字に【入浴】の指示を出した。
走るのをやめ、やがて立ち止まった【人】は、そういえば走り疲れた気がすると、顔を見合わせた【入】の魔力漢字へと目掛けて走っていった。
【人】が【入】へと走り向かう、珍妙でダイナミックな入浴の方法だ。目の当たりにしたまさかの光景に、彼ら文字モンスターたちの本物の主人であるGEMは、奪われた拡声器を諦め、生の大声を張り上げ別の指示を出した。
「【入るなーーーーーー!!!】……コノッ【野人】!!!」
【人】は己が本来【野人】であると思い出した。しかし、野人として汗臭いのは気にしないものの、何故か今日は久々にさっぱり【入浴】もしたい気がする。
汗を沸かし戸惑う【入】、右往左往考える【人】。次々と下されていく魔力のこもった2人の女主人からの熱い指示に──
「【入るナっつってんの!!!】」
「【入れっつってんの!!!】 ────入れや!!!」
最後は、木浪の異能で強引に引き寄せられた【人】と【入】は、がっちんこ────お互いに激しくぶつかり、バラバラに弾けながら入浴した。
しゃべりで勝り、チカラでねじ伏せる。大勝利と代償の真っ赤な鼻血を垂らしながら、木浪は笑った。
「はぁはぁ……野人でも風呂には入るでしょ、ふっ」
「ハァハァ……こっ、このっ!!? マダヨっ!!! マダここからよ! たかだか文字が二文字砕けただけじゃない! ワタシは無傷よッ! もう一回吹き飛ばしてやる! マイクがなくたって、あんたももうボロボロで魔力がヤバイんでしょーー──へっ!??」
たとえ喉が潰れ壊れてもviewtuberとしてGEMは負けない負けられない……。また腹の底にある魔力を振り絞り、声として吐き出す言葉のマジックを形作ろうとしたその時──白いマイクが、小さな羽を広げ懐へと飛んできた。
飛んできた自分の大切なモノを、しっかりとその両手にキャッチしたのはGEM。そして、ラッパ状に開いた拡声器の白い大口から、潜めていた悪意ある石ころが、持ち主の腹を目掛けて吐き出された。
ただでお返しはしない。ハイナミTVに遵守するガイドラインなどはない。小癪なやり方でも〝効いている〟ならばそれでいい。
「は──ふぐっっ!??」
「大波小波ハイナミTV! ガツってない北風はゼンブわたしのお金と餌ーーー!!!」
「マっ──マッ!???」
【古杖一閃】──。
堂々と駆けるオレンジの繰り出した大振りに、弾き飛ばされた小悪魔は、後ろに用意された石壁の硬いクッションにぶつかり、激しく地へと崩れ落ちていく。
豪快にスイングし決まった大ダメージの一撃に、石埃が舞う。敗北の色とニオイが煙たくただよう埃の中、ぼんやりと揺れ浮かぶシルエットが冷たい足音を立てて近づく。
やがて、詰め寄る影がオレンジに色づいていく。
振り上げ、振りかぶった古杖に、倒れたままGEMは目を瞑った。
「そういえばさっき思い出したんだけど? 随分久しぶりじゃん──【てんてんてんじぇるのメグちゃんねる】。はぁ……相変わらずその泣き芸。ふっ、────傑作じゃん?」
見上げ見開いた小悪魔の瞳から、やがてあふれ、黒く滲んだ涙が流れたのは、きっとチリとホコリが目に入って痛いから。
スマホのカメラを地に向けながら笑う、オレンジ髪の少女が今差し伸べた一本の杖を、被っていたメイクが溶け、情けなく倒れていたMEGは知らず掴んでいた。
viewtuber対viewtuber。そんなまだまだ無名の者たちの諍いの結末は、人々が知らぬところでも。
遠く離れたモニターの上ではなく、彼女たちはまた奇妙な舞台の上で出会った。
そして、両者の間にあったとても些細な因縁の決着を、全力と全力でつけたのであった。
「は? なにその手? これからまだシバくんだけど? あと、ひゃっぱつ」
「ふぇ────!??」
そして引き寄せいただくは、LIVE配信をその目に見て分析した、キーとなる相手の強みと弱点。
「しマっ……!???」
特殊な召喚魔法もどきを使い魔力のありかを分割したことで、最大魔力の薄まっていた天使色の拡声器を、魔力最大・異能全開のチカラを行使し奪取に成功。
「そろそろ【入浴】のじかんでしょーーーーーーしょっ!!!」
木浪はくすねたその拡声器で、向かって来ていた【人】【入】の2文字に【入浴】の指示を出した。
走るのをやめ、やがて立ち止まった【人】は、そういえば走り疲れた気がすると、顔を見合わせた【入】の魔力漢字へと目掛けて走っていった。
【人】が【入】へと走り向かう、珍妙でダイナミックな入浴の方法だ。目の当たりにしたまさかの光景に、彼ら文字モンスターたちの本物の主人であるGEMは、奪われた拡声器を諦め、生の大声を張り上げ別の指示を出した。
「【入るなーーーーーー!!!】……コノッ【野人】!!!」
【人】は己が本来【野人】であると思い出した。しかし、野人として汗臭いのは気にしないものの、何故か今日は久々にさっぱり【入浴】もしたい気がする。
汗を沸かし戸惑う【入】、右往左往考える【人】。次々と下されていく魔力のこもった2人の女主人からの熱い指示に──
「【入るナっつってんの!!!】」
「【入れっつってんの!!!】 ────入れや!!!」
最後は、木浪の異能で強引に引き寄せられた【人】と【入】は、がっちんこ────お互いに激しくぶつかり、バラバラに弾けながら入浴した。
しゃべりで勝り、チカラでねじ伏せる。大勝利と代償の真っ赤な鼻血を垂らしながら、木浪は笑った。
「はぁはぁ……野人でも風呂には入るでしょ、ふっ」
「ハァハァ……こっ、このっ!!? マダヨっ!!! マダここからよ! たかだか文字が二文字砕けただけじゃない! ワタシは無傷よッ! もう一回吹き飛ばしてやる! マイクがなくたって、あんたももうボロボロで魔力がヤバイんでしょーー──へっ!??」
たとえ喉が潰れ壊れてもviewtuberとしてGEMは負けない負けられない……。また腹の底にある魔力を振り絞り、声として吐き出す言葉のマジックを形作ろうとしたその時──白いマイクが、小さな羽を広げ懐へと飛んできた。
飛んできた自分の大切なモノを、しっかりとその両手にキャッチしたのはGEM。そして、ラッパ状に開いた拡声器の白い大口から、潜めていた悪意ある石ころが、持ち主の腹を目掛けて吐き出された。
ただでお返しはしない。ハイナミTVに遵守するガイドラインなどはない。小癪なやり方でも〝効いている〟ならばそれでいい。
「は──ふぐっっ!??」
「大波小波ハイナミTV! ガツってない北風はゼンブわたしのお金と餌ーーー!!!」
「マっ──マッ!???」
【古杖一閃】──。
堂々と駆けるオレンジの繰り出した大振りに、弾き飛ばされた小悪魔は、後ろに用意された石壁の硬いクッションにぶつかり、激しく地へと崩れ落ちていく。
豪快にスイングし決まった大ダメージの一撃に、石埃が舞う。敗北の色とニオイが煙たくただよう埃の中、ぼんやりと揺れ浮かぶシルエットが冷たい足音を立てて近づく。
やがて、詰め寄る影がオレンジに色づいていく。
振り上げ、振りかぶった古杖に、倒れたままGEMは目を瞑った。
「そういえばさっき思い出したんだけど? 随分久しぶりじゃん──【てんてんてんじぇるのメグちゃんねる】。はぁ……相変わらずその泣き芸。ふっ、────傑作じゃん?」
見上げ見開いた小悪魔の瞳から、やがてあふれ、黒く滲んだ涙が流れたのは、きっとチリとホコリが目に入って痛いから。
スマホのカメラを地に向けながら笑う、オレンジ髪の少女が今差し伸べた一本の杖を、被っていたメイクが溶け、情けなく倒れていたMEGは知らず掴んでいた。
viewtuber対viewtuber。そんなまだまだ無名の者たちの諍いの結末は、人々が知らぬところでも。
遠く離れたモニターの上ではなく、彼女たちはまた奇妙な舞台の上で出会った。
そして、両者の間にあったとても些細な因縁の決着を、全力と全力でつけたのであった。
「は? なにその手? これからまだシバくんだけど? あと、ひゃっぱつ」
「ふぇ────!??」
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