雷先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 〜絶対的の果てをめざして〜

山下敬雄

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第7話 動き出す…聖タクティクスグリフォン伝説♡

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案の定、楽天海都に言われたとおりに、月山が借りた彼のスマホの電波通信は外につながらなかった。この亜空間であるダンジョンは宇宙空間とはまた違い、何かで隔絶されており、未知の高出力なエネルギー帯でジャミングされ、地球側への通信が現在事実上まったく不可能である。それはアーメリガ帝国のWASA宇宙開発局がダンジョンを封鎖するに至る理由の小さなひとつでもあるが……。

「月山さんってテトラマーズが好きなんすよねぇ?」
「んー、好きって胸を張るぐらいじゃないけどね。だって東京の子もみんなやってるじゃんスマホでテトマズ」
「そ……っすね? 俺なんかもやってるぐらいですし? 定番ですし?」
「ふぅん楽天くんも好きなの?(あっハイスコア更新てかひく)」
「いや俺はなんというかたまにやりたくなるときがある……って程度っすね(え、ハイスコア!?あの、それもしかして後で絶対抜かせなくなるやつじゃぁ……)」
「んあー無性にやりたくなるときあんのわかるー。黒板に雑に置かれた黒板消し見たときとかね(ん?ふふふ。楽天くんひくすぎ)」
「それはあんましわからないっすけど……でもアレ助かったぁー。いきなりDスキルチップ使えるなんてすごいっすね月山さん!」
「んーよくわかんないけど楽天くんの教え方が良かったんじゃない? たしかに好きなものって(テトマズブロックとか形決まってるし)脳内イメージしやすいから一発で出来たし、2つ目もなんかちょっと頑張ったら言われた通りできたし」
「いやー(たしかあのとき先生には頭から取り出せしか言われなかったから……俺?)……俺の案ではありますねあはは。月山さんに伝わるよう上手く言語化できて良かった…かな?」
「ふんふぅん……たしかに感覚的なことだし言語化だね。えじゃあ楽天くんってクレープ? 好きなの?(東京男子高生っぽい! 意外! あっハイスコア2倍差)」
「あーえっと俺の母さんが緑蜜道の駅でクレープとか甘味売ってて……(意外え2倍!?ちょちょっとてごころ…)」
「え道の駅で?? そうなのヤバイじゃんそれすごっ!! まだ緑蜜のその辺行ってないからよく知らないけどー?(だからひくすぎ、もうすぐ3倍)」
「いやべつにヤバくは……まぁそんな感じで(3倍……データ消そうかな……)」

「「…………」」

「はぁ……」
「え……な、ナニ??(えなんか不味いこと言っちゃった??? データ消す冗談がきこえてっ)」
「飽きた。んっ、かえす」
「飽きた!?」

メガネを外しごしごしと目をこすり欠伸をしながら、ブロックの落ち続けるスマホを月山は海都にお返しした。

休憩(修行?)と高校生どうしの雑談は飽きるまでおこなわれ終わり、次へ向けて2人はまた今いるステージの探索を始めていった。

小休憩を経たその勢いは疾風怒涛の如くではないが、各々に今できることをしながら協力し手堅く、ステージを乗りつぎ乗りつぎ、2人だけの即興パーティーで鼠を順調に滅していった。

散らばった貴重なチップを手分けして拾いあつめ、海都は両手にそれぞれのせた2枚の絵柄チップを見せ、月山に確認し聞いてみた。

「なんか次ステージの切符チップが2枚見つかったみたいで。ていうのがこれなんすけど、鼠か犬……どっちいきます?」
「はぁ、なにそれ?(そんなパターンあんの?) んー楽天くんが決めて」
「いんすか月山さん?(何回かあったっすね)」
「いんすかも何も、聞いた話だと2回も無事帰還した実績のある先輩でしょ、ここの。それこそハイスコアじゃん」
「いや俺ェ、厳密にはそういう大したわけじゃ……ほとんど先生がというかなんというか。ハイスコアとかはないかと……」
「ふぅん。はぁ、なら鼠でいいじゃない。犬なんて戦ったことないし、脚速いのがいっぱい居たら2人じゃ面倒そうだし。きしょい鼠人形なら逆にちょっとは可愛くみえるぐらい私も慣れたし、手堅く消せるとこから安全にいこっ?」
「そっすね? たしかに鼠ならッ俺も、いろいろ慣れてきてるんで、あははそうっすね!」
「決まりじゃん、ふっ。いこっ」

未知の犬型モンスターを相手にするよりは、人形型の鼠の方がこれまで何体も倒し戦闘経験を積めているので、きっとマシである。そう結論付け、犬ではなく鼠の絵の描かれたステージ切符チップの方を使用することになった。








勇ましくまた次へ向かう……その前に準備は万全にしないといけない。まさにダンジョンではゲームとは違い命がかかっているのである。

メガネを外して裸眼になった月山雨楽楽は、セミロングの髪を邪魔にならないように耳にかけ、補給作業のこなれてきたフェラチオを開始した。

「はぁはぁあっ月山さんにゃんでぇあぁ……あぁ♡」
「はーへんへーひはっふふにゅしゅへかはじゃじゃいほひゃんほほはっふぇひにはふはいひほれにほのはいひふろっふへははいほへしょ?(パーセンテージMAXにしてからじゃないとじゃん怠って死にたくないしそれにこのI字ブロック消さないとでしょ?)ふふはむっ♡ぢゅぢゅ~」
「あぁあああ吸わなっアッ♡あああああああ♡♡」

仰向けに寝転んだ海都は既に彼女が補給行為に当たる際の女性っぽい仕草で、期待を膨らませて、硬く勃起。そんな吸いやすくなったおちんちん(I字ブロック)を慣れたように含み、ゆっくりと唾液でまとわせ包み、丁寧に舐めながら刺激を確実に与えていく。
繰り返しコツをつかんだのか歯が当たることも無くなり、持ち前のセンスでしっかりとおちんちん(I字ブロック)を自身をもって攻略していく。
まさに一皮剝けたのか……棒付きキャンディーでも味わうように、亀頭を中心に含んだり離したり、息を継ぎながらもう一度。するとまたびくびくと彼の腰が震えてきた。舐めとる我慢汁の味が濃くなってくるのを月山雨楽楽は味わい感じ……。

「あぁああああつきやまさんつきやまひゃんあぁああ♡」

(イクときにいちいち名前言うのうっさ♡ほらやっぱりもうでちゃうんだ、まじひくすぎ♡)

「ふぅんだへはぁ?」
「だめもうっでりゅうううう」

こなれてきた年頃の女子高生の補給行為に年頃の彼が耐えられる訳もなく、あえなく射精。口内にもう幾度も注がれる熱いそのミルク。口腔にびゅーびゅーと、尿道のホースから無責任に浴びせられ汚されていく……使われる雌の受動的感覚がクセになる。
甘く芳醇なオーラ入りのザーメンの臭いが鼻を打つ。
白い粘体をごくりと飲みこみ……身体に濃厚な回復オーラが直接染み渡っていく。その即効性は食べ物では味わったことのない、癒す人体への至福であり、やはり彼女の今までの人生をガラリと変え得る……そんななじみのないクセになるものであった。

恍惚と彼の味を味わっていたからか、口端からはしたなく漏れ出たザーメンと唾液をおくれて気付き拭う。彼女は笑いながら、横たわる彼の気持ちよさそうな顔をじっと覗いた。

「だから、ひくすぎ……♡」
「あぁあひもひよしゅぎぃ……あぁ」

また一段積み上げて積み上げては硬く攻略し、気持ちよくぬめらせ解消した。女子高生栃木女子としての謎の優越感を感じながら、月山雨楽楽はまた硬く復活していた眼下のI字ブロックを見て笑った。

「ちょっとぉあははまたボッキってんだけどどういうことぉ? ──もうシールド数値100じゃん? 意味ないのにあはは」
「はぁはぁ……だだってぇ」
「ふぅん、あれならシてあげてもいいけど?」
「え? いやもう、あはい、いいっす出ないんで……これ以上はちょっと喉が」
「…………」
「?? いぎっ!?? 痛がァ!??」
「カプッ──じゃ、次のステージさっさといこっ」
「痛ぁあえぇ!? 今噛んでェ!? アッ、月山さんッちょちょ!!!」

ご自慢のそそり立つモノにいきなり噛みつかれた……。ルール破りの萎えさせ方に少々悶え、慌てて身だしなみを整えた──1年D組パーティーは、ようやく例の切符チップを使い、攻略済みのステージから次のステージへと消えていった。



「バチバチ」と卵型のシールド膜が雷電を発し、力を入れたゲームの演出のように入場していく。

そして変わる景色に目撃した────だだっぴろいグレー、コンベアに運ばれていく緑の毒鼠人形、謎のせかしく点滅するガイドランプ。

そうだメガネを忘れていた。

月山雨楽楽はブレザーのポッケに差していたメガネを手に取りかけ直した。それでも景色はさっきと同じ、これはただの東京で流行っている〝伊達メガネONOFFギャップモテ女子スタイル〟であり裸眼でも別に自分の視力は悪くはないことを、彼女は思い出す。

「なにここ……?」
「鼠工場っすね……しまった……」
「はぁあ!? なんの工場ちょとおおなにそれ?? しまったぁあ!??」
「と、とにかくたしか生産機器を破壊しないといけないんで! これ全部魂の抜けた敵みたいなやつで……とと、とにかく変な装置をヤラないとダメなヤツで!!!」
「はぁ……運ばれてるこれ全部が敵の正体ってこと? ──うんうんってめっちゃ頷くじゃん……こんなんあるならだれかんの野良犬退治の方がマシじゃないっ、さいあく意味不明」
「ご、ごめんっ! 完全におれのッ」

懸念し忘れていた鼠工場の事、結果的にはこれは度重なる補給行為で浮かれていた海都の大きなミスであり、彼は状況を理解していく彼女に迅速に謝る他なかった。

しかし、彼女はそれ以上、何かを言いかけたソレを……バッと、彼の顔の前に突きだし広げた左手の平で制した。
そして、目を一度深く閉じ、2度頷く。

「はぁ。やめよ……。──ちゃんと守ってよ隣席の楽天くん、いこっ! こうやってる間にも生産されてくんでしょ! なら最悪だけど今やるしかないじゃん! 後悔はホールドして後回しもう落ちはじめたゲームは止まらないんだから! ……見据えて賢く派手に消さないとネッ!」

かけたはずの意味のないメガネは再び胸元のポッケにおもむろに仕舞い、雨楽楽の裸の青い瞳が海都に向かって笑いかけた。こんな危うい状況にも彼女は笑うことを選んだ。

「は、ハイ!!! いきます! そうだっ……そうっすね! きっと今ヤルしかない、消すしかないうおおおお」

予想通りぞろぞろと止まらず生産され湧いてきた緑の鼠人形には、怖気づいてはいられない、迷ってはいられない、この同じ緑蜜のブレザーにかけて1年D組パーティーは負けられない。

剣と銃を取り、頷き合った男女高校生2人は盛り上げたテンションをさらに上げ、ただ前へと走り出した。ここはダンジョン今本気を出し、戦って討ち取って帰りの切符2枚と勝利を掴み取るしかない。





■月山雨楽楽のDスキルチップ (オーラ色:万能のなないろ)
剣刀
【テクニカルスピン】
なんにでも使える万能凸オーラブロック。
すべての基本であり応用が利くため最初にノリで開発された。

ハンドガン
【Sショット】
S字ブロックを撃ち込み目標のスピードを低下させる、あるいは加速させる。
ただのショットではない……。

槍ハルバード
Iアイ字ランス】
I字ブロックオーラ。他の技と同様に、彼女の意思で横にも縦にも飛ばせる。


《共通概念》回転、ふんわりドロップ、瞬着しゅんちゃく、不滅、消滅、ホールド、スコア。

テトラマーズの基本ルールは、月山雨楽楽の繰り出すすべての技に根ざしている。オーラブロックは持続する分のオーラ量を失うと自然に消滅する。消滅するまでは基本的に不滅。ただし相手との力量の差オーラ量の差次第で、このオーラブロックが破壊される場合もある。
また、現段階の力量ですべての概念を使いこなせるとは限らない。
彼女の知らぬ深層に、力はまだまだ眠っている。



■楽天海都のDスキルチップ (オーラ色:回復の緑)
ハンドガン
【巻く膜クレープグレープ弾】
言わずと知れた回復技の一品。
膜を強化補修するため、回復だけではなく。ダメージに対して緑に光っている内の一定時間は頑丈になる。まさにダンジョンでの生命線であり頼りになる技であるが……。
【熱熱クレープグレープ弾】
かなりお熱い一品。
ブドウ弾から展開した膜に包んで蒸し焼くという、甘くておそろしい技。
【策咲クレープグレープ弾】
雷夏ちゃん先生のアドバイスの元にひらめいたトラップ技の一品。
白い円形クレープエリア内の敵意を聖なる槍で串刺しにする。彼が味方とみなした者には反応しない欠点がある。




どこかにある生産機器を破壊するために、冷たいグレーの床を走っていく。しかし、そんな急ぐ侵入者の2人に対し、出向き立ちふさがる緑の鼠が増えていく、そして今、接敵した。

「うおおおおおお」
「【Sショット】さらに鼠ブロックのスピードアップ!」

発動【Sショット】、ハンドガンから発射されたS字ブロックが狙いを付けた一体に刺さる。そのオーラブロックと一体となった鼠はスピードを異常に上げ吹っ飛んでいった。やがて奥に湧いてきていた鼠群とはた迷惑にクラッシュしながら効果とオーラブロックを失い、敵をまとめて滅した。

初撃で予定通りに上手く隊列を乱した今がチャンス。空いた道を弾幕を展開しながら寄る鼠を抜き去り、危うきを撃ち抜いて、駆け抜けていく。

「とにかくたどり着いて機器を壊せれば全部オーケーです! コンベアの流れでだいたいわかるんで! たぶん!」
「オッケー、いけそう! いこっ!」
「ハイッす!」

ながれる緑の【鼠弾】をもらいながらも気にしない、駆けている前方一方にガンの火力を集中する。海都を先頭に【巻く膜クレープグレープ弾】で自身のシールドを強化補修し、立ち止まらず強引に鼠の輪を抜けていく。

「【I字ランス】……ヤー!」

真っ直ぐ縦に宙を進んでいた長い水色ブロックは急に────進行方向に対し横向きになり、目の先の鼠の集団をまとめて押し飛ばし蹴散らした。

次々に状況に適した技を発揮し、2人を目指してうじゃうじゃ群がりつつある緑鼠の道を強引にかつ正しく開いていく。ここまですこぶる順調だった。危機に共に立ち向かい、今まで以上に息を合わせたペアは、やっと見えてきた紫の雷電放つ生産機器に、頷き合い更に地を蹴るその足をとばした。

寄る鼠をバンバン撃ち抜き、狂気を増し飛びかかってきた緑を剣で斬り裂く。既に2人の腕でも十分射撃可能範囲入り、いざ生産機器に総アタックを────

一瞬の油断だった。横から来てはいたが、足が遅いので月山の判断で放置していた大型の鼠人形は、己の腹を引き裂き腹綿がおかしくはみ出る。放置されている間に狡くも腹の中で十分に練り上げたオーラで……引き裂いた腹から不意に秘めていたレーザーを照射した。

ガンを構えて前を向いていた月山雨楽楽に、その毒々しく穢れた大技が迫る────

「──しまっ!?」

当たれば【鼠弾】程度ではない。大きな人形体から繰り出される鼠親分の【鼠レーザー】。馬鹿げた熱量が美少女へと────

「────痛ぇ……────い、い生きてるよな……? い、いき、あっ、ちゃんと言われた通り温存してましたコレっ月山さん!」

巻くのは自分────聖なるミドリに身体と構えた白盾は光る。汚らしい毒緑を飛沫と跳ねのけ、純白の盾は穢れてはいない。最初の約束通りに美少女・月山雨楽楽を必死の援護防御でかばい守り、楽天海都はシールド値を減らしながらも上手く敵の攻撃を凌ぎ切り健在だ。

「!!! ……じゃあ…派手にヤっちゃってよ! 楽天くん!」
「ハイ!! えっとどっちですか?」
「はぁ……もうあんなぶっといレーザー撃ったらもうMP切れでしょどうせっ!(なんか綿こげてるし) 早く終わらせて!」
「わっっかりましたぁああいきますうおおおおおおおラッキー武器ならさっきみたいに力貸せぇええええ」

MP切れで腹綿をはしたなく焦がし散らすデカブツ鼠は放置。向き直り、生産機器に向けて重いトリガーを握り引く。そして構えた盾から拡散する眩き、そのちょっと強いビームは、彼女が後ろから彼の背を肩を支え……

スベテをピンクに撃ち抜いていった。

────生産機器は焼き尽くされ完全に機能停止。2人に牙をむいていた鼠たちは魂が抜けたようにおとなしくなり、元のかわいい置物人形と化していった。

月山雨楽楽は当然のように両手で待っている。それの意味する次のすべき行動が分からないほど、この男子ももう鈍感ではない。

勝利のハイタッチを。

「ぱちーん」と、痛いほどに合わさり響いた。そして痛いのももうただ嬉しくて、2人は笑い合う。やってやった広がるめちゃくちゃな光景に、いつまでも笑い声は尽きなかった。








「なにこれ、ねぇ……」
「れ、れっどきゃっ! じゃなくてグリーンキャップ!?」
「はぁはぁああああ!?? ちょっとおおおお終わりじゃなかったの!?? ナニソレ終わってる雰囲気出してたじゃん楽天くんッ!!! めちゃくちゃエンドロールだったじゃん!!!」
「いやごめんッ!! その……完全に戦闘中ですっ飛んでて……」
「はぁぁ……ちょっとポカ多すぎぃい! なんでまだこんないらない情報隠してるのよ!」
「いやごめんッ!! 悪い情報なんで言わずにいたというか……もしかしたら今回は来ないとおもってたんだけど……ダメしたぁ……」
「ダメしたぁじゃないんだけど……で、アイツ倒すの? あ、次の切符チップで逃げるのは!?」
「今までの経験だと……逃げるしかないっすね……。次の切符チップもたぶんあいつが持ってて」
「はぁああ!?? どうすんの! 楽天くん! また戦う!? あ、さっきの盾ビームで!」
「……さっき拾った帰りの切符チップが一枚あるんでこれで逃げてください、青い野に着いたらコピペしたような跳び箱があるんでそれが体育倉庫につながって……ます!」
「は? それってどういう意味」
「そのままっすよ! 俺が帰るまでは引き付けてなんとかしますんで!」
「は……? 私のせいで死ぬとかなしに決まってるじゃん」
「え!? つっても、それしか!」
「はぁ?? もっとあるでしょおおおおさっきの盾とかあああどうせまた能天気にポカってんでしょ!」
「いやいやほんとに言う事をっ! さっきのラッキー武器はもうほんとに砕けてってもう来て……!」
「と、とりあえず逃げるよっ!」
「は、ハイーーーーってもう近っ!!!」

「「あっ」」

手元に1枚しかない黄色い切符チップを押し付け合い、いつまでも騒ぎいちゃつくカップルに、グリーンキャップはメインウェポンの大筆を叩きつけた。

〝べーーーーんっ!!! …………。〟

ヘドロ色に固まったハードな筆先が割れる程の大きなイチゲキがステージに響き渡った。見上げ固まっていた眼下のちいさな侵入者どもに容赦はなし。

亀裂、破砕、衝撃、粉塵。

騒がしくも静かな渦中──

その筆が力強く描いた一寸前の運命に──『【ダイヤル6】』菱形の幾多も連なったオレンジ色の鞭に、ぐるりと男女生徒ペアは引き寄せられた。胴を巻かれ、強引かつ華麗に、不意に伸びてきた鞭は勢いよく収縮し、その危険なポイントから救助対象を離れさせる。生徒たち2人は訳も分からないうちに難を逃れたのであった。

「黄金は私のものだ」

双銃から伸びた鞭をちぎり解き、今度は橙色菱形のエネルギーを銃口から撃ち放つ。凄まじい連射速度で巨人グリーンキャップの頭部パーツである緑バケツを狙い撃ち。間抜けでポップな空洞音が鳴りつづける。菱形の弾丸が突き刺さり、ガンガン削られていく大事な帽を巨人は抑え嫌がりながら、ついに怒り反撃を繰り出した。持っていた大筆を再度力任せに叩きつけた。

そんなバケツを撃たれて出てきた一直線の単純な巨人の怒りを、華麗なステップで嘲笑うように横に飛び避ける。宙で1回転しながら双銃はさらにそのまま狙い撃つ、渦巻く菱形エネルギー弾はまたバケツへと集中砲火する。ただ者にはできないテクニカルな銃撃をこなしながら、アクロバティックに舞い優雅にふわり着地した。

そしてオレンジ色にメイクされた唇は艶めき、謎めいたクールな声色で言葉を発する。

「お前程度が奪う気なのかい? バケツのサイクロプス?」

黒基調オレンジ菱形の模様が映えているマントを翻す。
瞳は星色に奥深く輝き魅惑の光を放つ。
ダイヤの涙を頬に流し、白と黒のツートンカラーの髪がヤマアラシのように派手に混ざり合っている。

生徒一同、尻餅をつき唖然とする。大ピンチに突然助けにやってきた白黒橙のミステリーダイヤが場を支配していく。海都と月山を驚かせたバケツの巨人の登場に負けじと、謎の人物が鼠工場内に忍び込み満を持して参戦した。敵か味方か……ますます混沌としたダンジョンに、止んだマントに吹く風をしれっと継ぎ足し、彼女は妖しく含み笑っている。





ダンジョンに突如参上したミステリーダイヤ。そこに並べられた煌びやかで妖しげでスタイリッシュ、白黒はっきりしないされどこれ見よがしな容姿。そんな情報の羅列によって派手に登場した謎の人物の謎は、すぐに彼に見破られ解かれることになる。未だ唖然とする女生徒をよそに楽天海都はそのマント、その髪、その技、その後ろ姿、その台詞までもを、一度も実際に見たことはないが頭の中で深く体験していて知っていた。

「あ、あれはシデン・レイラ……!」
「いたたぁ……どうなって誰アレって……──はぁ? なんて? 知り合い?」
「だからシデン・レイラっすよ! 聖タクのおお!」
「ちょっとこんなときになに言ってんの………? 頭でも打っ」
「間違いないっす! 1話はダイヤルでシャンデリアにぶら下がりながら登場、2話はルクラブでゴブリンの矢の雨を不思議な力でやり過ごすんすよ! 能力を自在に変えて、いつもピンチのグリフォン部隊をいつもナイスタイミングで助けに出てくるんすよ!」
「ダイヤル? る、ルッコラ? なにそれ、えそれがあの人なの?? え、そんなのありえないじゃん」
「ありえてるんすよおお実在したんだシデン・レイラ!!」

「あまりワタシの名を熱く呼ばないでくれないかい、よっと!」

「ごごめんなさいッ生シデン・レイラさん!」
「これほんとなの……あの意味不明な小説の、ってさっきから動きすごっ! これってホントにほんとの本物かもっ!?」

白黒橙のミステリーダイヤの正体はシデン・レイラ。「聖タクティクスグリフォン伝説」に登場するサブキャラクターと特徴が合致している。その強さも腕もまぎれもなく本物であると、冷汗を拭った生徒2人の目には映っていた。目の先の光景には──バケツの巨人の激しく描く大筆攻撃の軌道筆跡を読みながら、避けて避けて避けて、菱形の銃弾を浴びせつづけていく……そんな大空を駆るなんともスタイリッシュで自由なグリフォンの姿が────。








一難を思いもよらない助力により逃れた生徒たちが見つめるなか。そのひらりひらり舞う白黒橙の装いの人物に夢中であるグリーンキャップの猛攻が、徐々にターゲットを追い詰めていく。


「あれ……ねぇ、なんかやばそうじゃない?」
「……っすね……最初の動きのキレが落ちてきてるような……あっもしかして! 2話で執念のゴブリンヤクザの息子から左くるぶしに受けた矢傷がまだ治ってないんだ!」

「ハァハァッ──ッふふふアレは沁みたね、東の島ヒッポンの特濃薬草風呂に週7で通うハメになったよふふふ何故知っているのかな獅子くん、おかげでスタンプカードのグリフォンスタンプが溜まり過ぎてねまた行かないといけないねこれは(足がぐねってしまった……ひさびさでストレッチルーティンを怠ったのが仇となっ痛ちちちぃ……たようですね。それにこの得体の知れない巨体の圧は少々まずすぎます……なぜ筆にバケツ被りなのでしょうか? 聖タクのアイデアがこんなところに)」


ピンチを救われてこれ以上棒立ちで見学しているわけにはいかない。
“シデン・レイラを助けないと”
見学者であった2人の意は合致し呼吸を十分にととのえ深く1度頷き合った。

「回復弾撃ちますシデン・レイラさん!!!」

星色の瞳は一瞬振り返り青年と目を合わせた。ひとつ大袈裟に跳び下がったそれは合図──そして瞬時の判断で発射され受け取った──ミドリの光がひび割れた膜をなんとも言えない癒しのあたたかさで覆っていく。
そんな最中にも敵の巨人は妖しいオーラを解き放ちメイン武器の大筆が工場床のキャンバスに乱舞する。
【べべべべん粉砕ふでア~ト♡】は激しく炸裂したが……
──シデン・レイラは無事である。粉塵に紛れ菱形を垂れ流しながら翻弄、焦らしてさらなる大振りの筆を誘い危険なポイントから離脱した。

「【巻く膜クレープグレープ弾】……だまって見てるわけないっすよ! 援護させてくださいシデン・レイラさん!」
「私も! シデンレイラさんっ、でもあんなのと剣でたたかうのはちょっと絶対無理だからここから撃つよ!」

ハンドガンを構えた生徒たちがいる。その目は前でひとりで戦っていた初めましての彼女の頑張りに呼応するよう……勇ましく輝き、シデン・レイラ彼女の背を確かに頼りにしきっと気の利いた返答を待っている。

「!? ……ふふふ共闘ということかい……棘か薬か分からないのはワタシの趣味じゃないが常夏のダイヤにやっかいな一対の春風が吹いたのなら仕方ないかい!(……挫いた足が効くように? なんとこれは、ほんとうにシールドが痛みが回復しましたか? なんというこれはむかし噂にだけきいたことのある回復オーラ……出席番号15番楽天海都……そして出席番号7番月山雨楽楽、ダンジョンはこうもピンポイントで才能を引き寄せるということでしょうかオーラ持ちの隣席とは事実は小説よりもアレですねレアですね)」






この場の一番の実力者から意味ありげかつふざけているようでおふざけのない言い回しで言い渡された作戦、その…………概要は至ってシンプル。
❶シデン・レイラがグリーンキャップをなんとかその美貌で華麗に引き付ける。
❷海都と月山が援護射撃と回復に努める。万が一生徒らが近付かれたら即距離を取りつつ3人で大事そうにしていたバケツに集中砲火し動きを止め仕切り直す。
❸しかしバケツをいくら狙えど倒れてはくれないむしろやりすぎては危うい香りのする逆効果と考えられ、この作戦の最優先の狙いは破壊力と破壊範囲抜群の大筆の破壊である。

「やっぱりすごいシデン・レイラ……さん! マジで先生ぐらいすごいんじゃ!?」
「!? ……ふふふすごいすごいかいと孫のように褒められてもね孫の手でコレを倒せないことにはネ!(先生……考えられるはもちろん雷夏ただひとりですかまったく……私のことではありませんよね、ふぅ職業病でぴくりと耳を立ててしまうので先生とは呼ばないでほしいものですよ)」
「若獅子には既に師範がいましたかしかしワタシの方がすごいはずですよ! きたないヨダレとよだれかけを垂らす巨人から黄金を守るのはワタシの領分それはそれは負けていられませんね!(やはりこれが実感するブランクだというのでしょうか……それに【ダイヤル】は鞭で回避能力を立体的に補えるのはいいですがいかんせんかような大型相手には火力不足は否めないですね。【ルハート】は息切れしやすい魔法タイプで準備も必要、場に適しませんし【スペードル】は制御がむずかしく倒すことができたとしても論外……。してあの大筆のオーラ技は発動されれば今の私では100%を避けきれません。目は慣れてきましたが想像以上にあの変わり種の武器が厄介すぎます。やはり担任としてはひじょうに失格ですが生徒である楽天海都の回復と月山雨楽楽の援護射撃をあてにするしかないでしょう……しかしあの雷夏がこのような化物を倒すまでに? ……敵としては少々格上で不運ですがここはダンジョン、元ダンジョン救助隊として教師になった今もこの旅はダンジョンがある限りまだ終わってはいませんっシデン・レイラとして後日談のピンチはなんとか切り抜けそのまた私岬麗の後日談で小説のネタにするしかありません)」


「【ルクラブ3】」

構えた銅の盾は三つ葉の緑盾となり、目掛けて叩きつけられた大筆を受け止める。
しかしただのオシャレな盾それでは頼りなく……ビキビキと音を立てひび割れながら今にも砕けそうだ。

「──っ──食は愛、太陽に希望、信仰は黄金そして傷付いたぶん彼の者に幸運を」

「今日はいている、シーケンス! 【ルクラブ4】不運にも砕けるのは与えすぎたそちら様だ」

【ルクラブ3】から【ルクラブ4】へと不幸にもダメージを負い傷付きながら溜めた幸運オーラを支払い、壊れかけた三つ葉は再びミドリ鮮やかに芽吹く四つ葉の盾となる。

立場一転逆にひび割れていたのは天の者の執っていた大筆、幸を吸われ行き場を失っていた不幸が敵のブツへと伝ったのだ。


■シデン・レイラのDスキルチップ オーラ色表裏の白と黒

【ルクラブ】
不運不幸それでも転び笑いながら天に盾を掲げる庶民ガール。
失敗する程傷付く程に幸運オーラが溜まる。

ハンドガン
【ダイヤル】
高飛車スタイリッシュお嬢様。
避ける程に当てる程に舞う程にスタイリッシュオーラが溜まる。

槍ハルバード
【ルハート】
慈愛と無知と美貌の王妃。
オーラを消費する程に欲オーラは溜まる。

剣刀
【スペードル】
発動したら最後…ヤバイオーラが溜まりまくる。封印されし死のチカラ。

《共通概念》スート、数字A~K、春夏秋冬、生と死、貧と富、52と1
表裏色や万能色のオーラ色持ちはそのままではあまり強さを発揮できません。
簡単にでも共通概念を設定することで能力はおぼろげではなく蜘蛛糸のように広がり強固なものへと変貌を遂げます。
七大属性オーラ色のような派手な強さとはまたちがった魅力がありますので悲観する必要はありません。
といっても共通概念とはパーソナルな問題でありこだわりであったりまっさらよりも知らぬ深層で設定されていることがほとんどですがその場合も能力を広げることは可能でしょう。
炎雷風水のようにより奔放で神秘的で自由か、より役にのめり込んだ中の無限の選択の内の自由なのか……。
しかし設定したチカラが自己に強固に結びつく程後戻りという行為はしにくいのが常ですので気を付けてくださいね。
ふふふワタシはもう手遅れなのかい。




「──さてこれでチェッちゅメイト……かい? バケツのサイクロプス!」

筆先から柄まで亀裂が入りボロボロと破砕されていく。年季の入った色合いの大筆がダンジョンの三角片へと砕け散った。
シデン・レイラは爽快で愉快な光景に高揚し微笑う。白基調緑の葉が芽吹くリバーシブル仕様のマントを余裕をみせて翻し、三つ葉の盾を横に払った。

「先生マダっっ気を付けてください!」
「!」
「あ、じゃなくてシデン・レイラさん! そいつどうせまだ武器を隠してッ!!」

男子生徒の言う通り武器を失った巨人は穴あきバケツからつい最近彼が見たことのあるネイルガンを取り出した。そしてすぐさま怒りのテンションから一瞬で練り上げたオーラで、絶賛目立ち格好をつける恰好の的であるシデン・レイラに対し【釘の雨】を繰り出した。

「!? おっとぉおお【ルクラブ9】────っふふふおどかさないでくれないかい獅子くん、この目は節穴じゃない釘を大量に刺さなくても気付いていたさぁー。ナラ──……さぁあのときのくるぶしが何故だか痛いゴブリン城のつづきだ我慢比べといこうかい!」

三つ葉の盾が3つ宙を浮きながら回転しトツゼンの春風を巻き起こす。突然の怒りの雨をゆるりとさわやかに……幸運にも凌いでみせた。
三つ葉は彼女を守り、地に釘打たれた四つ葉は咲く。バケツの巨人はそのおどろきのアートを見て外れた顎を叩き、不思議に浮いたバケツを掴み、元に戻した。

「さ……さすがべらべらのたまいながらも冷静沈着シデン・レイラうおおおおハイーーーーーー!!!」
「なんか知らないけどわかった……!(帰ったらちゃんとソレ読も、帰れるよね?)」








「スタイリッシュオーラ全開【ダイヤル10】────────っ高飛車なお嬢様にも時にこういう勝ち方もある、らっ……来世ではsのつぶらな瞳に覚えておくんだバケツのサイクロプス……ハァハァ……」

「ねっねね粘り勝ちギリぃぃぃ…………はぁはぁしっしなずにしのいだ……」

「ふぅぅ、すごっなっなんとかなったぁ??? チップももうちょっともないし……あぁああああやばぁ勝ったんだよね私たち……今度こそ」

大筆を壊してからの作戦はルクラブと回復弾を中心に堅く雨を凌ぎ、月山雨楽楽のSショットをシデン・レイラに撃ち込みスピードを上げさらに剣槍を突き刺しながら翻弄、2つの軸を用いた耐久レースであった。

3人守るシールドもぼろぼろ、オーラ量もすっからかん、手持ちとステージに散らばるチップもほぼ使い切りなんとか総力を決して巨敵を倒した。
釘も刺せないほどにグリーンキャップのオーラを削りながら、最後は菱形のショットガンがずんぐりな巨体に突き刺さり、振り下ろす巨拳は振り下ろされず……見事に地をおおきく揺らす勝利を掴んだ。

息も絶え絶え、深く呼吸しととのえても湯気立つ高揚と胸中鼓動の速さは整わない。
まだ何かが足りない……きっとソレを求めて小さな熱源は密となった。

よろこびあったのは3人。
ハイタッチしていたのは3人。
何かに解放され浮かれていたのは3人。
命を賭した大勝利をただただ全力で分かち合い、キャッキャウフフとパーティーで喜び合っていた。

収まる頭なく舞い落ちた緑の穴あきバケツの音がポップに3人の両耳に響いた。
──静まり堪える笑い声は堪えられない。
覆われた穴あきの緑の中でいつまでも、笑顔をくしゃつかせながら3人は喜び合っていた。








大激戦の果てにグリーンキャップを討ち倒し工場にあちこち散らばっていたチップを手分けして拾い集める。
集めたものの出てきた帰りの切符チップは1枚、既に手に入れていたものと合わせて2枚、苦難を共にした3人が3人で帰るには足りない。
シデン・レイラが持ってきていたティアドロップ型のレトロな水筒を3人で飲みまわし分け合いながら、じっくりと話し合いもろもろの状況を整理していく。

あんなことやこんなことを整理。
主にセンシティブな……回復色のオーラをもつ男子生徒の取り扱い方について、こっ恥ずかしくたどたどしい遠まわしな説明をシデン・レイラはその聡い耳に聞き入れた。



(ふむふむ補給行為……それただのエッチな行為では? ──ハァ……なんという貞操の乱れ……聞いていて呆れ顔を隠すのがひどく大変でした。教師として、いえ今はシデン・レイラでした。しかし回復色オーラその精液の摂取で回復する…実際Dスキルチップでなくともオーラを纏い攻撃や身体能力を強化することは可能であり疎かにできない基本的なことです。理屈としては合っているようにも、嘘をついているようにも見えませんし月山雨楽楽と楽天海都はそういうタイプの生徒でもないでしょう。この死にかけのタイミングで2人してそのような嘘を私につくメリットがありませんね。そうして2人で補給しながらここまで無事攻略してきたのも本当でしょう)

(それに以前、楽天海都は雷夏と共に戦ったことがあるようで先程のサイクロプス戦で私に言われなくても2人とも迂闊に前には出ませんでした、力量の差を見極める判断力も優れていましたね。ここはダンジョン、それも状況はパーティーは満身創痍のぼろぼろシールド以外にも疲れがみられこのままでは雑魚戦もままなりません。しかも中でも私は現在シールドブレイク状態……そういう紙一枚の大ピンチを切り抜けた経験も無くはないですが。生存率を格段に上げれる手段が目の前にあるというのならば……私もあまり積極的には死にたくはないので仕方がありませんシデン・レイラなら……。というかシデン・レイラです、はい。ふふふシデン・レイラかい?)



その後汗を一筋垂らし待つ男子をよそに、女子2人でひそひそと話し合いをはじめた。








突如飛んでいったオーラの鞭は背後から巻き付き、ぼーっとしていた青年を手元まで華麗にあやつり手繰り寄せた。

「ぬわっ!?? え、なに!?」
「何をぼさっとしているのかい? 時は死する黄金だ手っ取り早くいこうかい」
「えっシデン・レイひゃ!?」

いきなり右耳に生暖かい感触が触れる。前触れもなく右耳にキスされ海都は思わず声を上げてしまった。

『まだまだゲームは始まったばかりさそんな声を上げていてはふふふこの先スベテ奪われてしまうよ獅子くん♡』

抱き寄せてぼそりと蠱惑的こわくてきな吐息で捕まえた彼に語り掛ける。
ゾクゾクとするような感覚が耳から伝い、これから先の期待感が勝手に膨らんでいく。
そして期待しているそれを黒レザーの膝ですりすりと高めていく。そんなシデン・レイラの御業であっという間に絡めとられた海都のペニスは準備万端に硬く……仕上げられてしまった。






丸みを帯びた尻のラインがはっきりと分かる黒いレザーパンツをおもむろに脱ぐ。
紫のパンツが形の良いおろされこれ見よがしにただの汁の染みた布切れを地に放る。
白黒千鳥格子のレトロなシャツ衣装の胸元へと彼の体は寄せられ納まり、彼女のひらいた黒いロングマントにゆっくりと包まれながら….…密着したふたりが補給行為へと移る。

緑蜜のブレザーを下敷きにし対面座位で繋がっている、その見ることの叶わない暗幕の中で蠢き…男子生徒のペニスはあたたかく絡めとられていく。
そして腰がくねりグラインドする甘い刺激に加えて──

「あーーきしゅあっあっ♡しでんれいひゃさんひゃめええ」

「この黄金はワタシのものだしっかりと体中にワタシの印をしよう」
「あっあっあああああああ」
「狙ったお宝は逃がさないそれがシデン・レイラさ覚えておくんだな獅子くん」

首筋、ほっぺ、耳元、鎖骨、次々と妖しい橙のルージュに染めていく。
もはや彼女から逃れる術はなく、まんまとその美貌に誘惑されマントの中に捕まってしまった海都は身体にキスされる度にあえいでしまう。

ずっと抱き合い繋がり合いながらシデン・レイラはシデン・レイラ節に乗りのたまう。

「大丈夫さ鷲ちゃんは向こうでテトマズという積み木遊びをしているみたいさ♡獅子くんはワタシにバケツのサイクロプスの討伐に協力した対価を支払わなければならない。死の予感のベルを鳴らしワタシをこんな危険地帯にまで動かすというのはそういうことさ♡」
「あああああああぁふあぁぁ……」
「私の身体は物好きな各国のスケベな王族がこぞって金貨と懸賞金を積み上げ喉から手が出る程欲しがっているのさ、それをこうも幸運にも味わえるというんだ獅子くんはとんだ果報者かい?♡」
「今はそのなさけない表情もスベテワタシのものだ安心するといい」
「このように勃起させてふふふいけない子だな。ふーーはぁぁ」
「あああああ」
「何度も男を骨抜きにしてきた性技だ。ふかく溺れて安心してメロメロになるがいいさ」

熱い暗幕のなかで汗ばんでいく。妖しくエロティックに語り掛けられ熱帯びていく耳先からつま先までが……シデン・レイラと繋がり彼女の色に染まっていく。
揺らされながらまるで抱かれながらシデン・レイラの名器に硬くなった肉棒が擦れていく、その甘い大人の蜜にもみくちゃに溺れるような快楽に楽天海都が耐えられるはずもなく……

「だめあああひでんひゃんだめぇでっでりゅうううううう」

射精した。スベテをひりだすように、お互いの体温で熱く蒸された暗幕の中、シデン・レイラの蜜壺の中へと。
収縮する膣は彼の硬いやる気をみせるペニスを逃がさない、甘い蜜で絡めとり膣壁をぴったりとよせて……中が白濁で満たされていく。
貴重な彼のオーラが染み渡っていくのがわかる。即効性のある回復効果がシデン・レイラの全身を特濃薬草風呂よりも濃く甘い多幸感で満たしあたためていく。

「っん♡────……ハァハァなんとも雄々しく特濃だ♡はらませる気かい獅子くん♡」
「あぁあぁ♡♡……ひもひぃ……あぁ」
「もうデレデレのメロメロかい? ふふふこのシデン・レイラの肉体は若い獅子くんにはまだまだはやかったようだ♡」
「あぁぁ……しでんれいらひゃん……♡あっ♡」

補給行為を終えたシデン・レイラはまた耳に軽くキスをした。依然マントでやさしく脱力し自分にメロメロになった男子生徒を抱き濡れた肉と肉で繋がりながら。
そして手首に巻いていた自前のDウォッチを確認した。


「────なんと数値は100……じゃなくまだ10%かい、あれほど頑張ったシールドブレイクからの復帰だから仕方ないね。ふむむワタシの表裏オーラの生と死はまだまだ死の予感の方が濃いようだ……とするとこのままつづけてシデン・レイラの肉体をこの頼りない男子生徒の身体に味わわせないといけなくなったようだ、未来を生きるためさ今宵はおどけることなく腹をくくろう♡……果報者の獅子くんはワタシのまつ毛の数をじーっと数えながら休んでいるといい♡」

ふわり春風に押されて地に面していた。
夏陽に蒸されたような暑い身体は離れ、むわりとこもっていた白湯気がひろがる……汗でびしょびしょになったお互いがいる。
また蠱惑的で異世界の存在のようなシデン・レイラが映る、彼女は濡れてきもちわるくなった千鳥格子のレトロシャツを脱ぎ……。

再び挿入されていく。
先程漏らした特濃のザーメンがこぼれてきている……その蜜壺にかまわず今──栓をした。
一気に女の生尻を落とし訪れた甘くながい瞬間に、おもわず雄は腰を突き上げてしまう。

なにもかんがえられない海都はいわれたとおりにだんだんと近くなった星色の瞳、その綺麗な星にあるまつ毛の数をかぞえていく。そうするともうアヤウイまじないにかかり雄という生物は彼女から逃げられなくなる。

白と黒が交わる長い三つ編みの尾を左首筋から垂れ下げながら、黄金の守り人シデン・レイラはワラう。

ぱんぱんっ、腰を尻肉を叩きつけいやらしい水音がはねる。

「獅子くん♡そんなに喘いでいたら……またゲーム早々にすぐ達してしまうというのかい?」
「そういえばまだインをしていなかったね、獅子くんのスベテをこれ♡で全身あますことなくメロメロにしてほしいのかい? ちゅっチュ、ヂュ」
「あっあぁあああアアアアア♡♡♡♡」

人差し指でゆっくりさし示した唇の……吸い付くキスの雨が降り注ぐ。
オレンジに若い肌色を汚されていきながら、ペニスがまたいきり勃ちあっという間にキスした分だけ無防備に受けて追い込まれていく。



一方──
プレイするテトラマーズは本日二度目のハイスコアを更新。既にその終わりのないゲームには飽き、遠目に映る淫靡な光景をかるく赤面しながらこっそりズームしていく。
暇を持て余していた月山雨楽楽は隣席の彼と会ったばかりの綺麗な女性に……預かった彼のスマホを向けたまま、ドキドキとする得体の知れない鼓動を速めていった。
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