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▽
0∀
▽
有金0。己に己の全てを賭けて……!
ザクッざくっと砂漠の道を刀で斬り準備は整った。
定められた後方のグリッド、スタートラインへと戻る。
「何やってるんですか王……?」
「仕込みだ」
「やっぱりフツウじゃないですね王は!」
「そうかもな。ここからは作戦通りフツウで頼むぞフライングはなしだ」
「はい王の命令は絶対です! メガミさんとイタさんがいればフツウ超え余裕です!」
「ハハ……それは助かる」
「えーっとここでこうこう……ふむむ────」
どこかテンションの高いピンク髪は父親に手渡された紙をじっくりと確認する。
意外と真面目なのか? 助かるが……。
父親は3893階でスナネコ商人から購入したレース用の砂漠羊の背に乗った。刈り取られていない砂漠の環境に適応する気のないもふもふの毛がクッションとなり良い乗り心地だ。
親切にもそういうレースがこの先あることを事前に教えてもらえたのだ。エロいゲームにしては親切だが、3893階その特定の階に止まらなければ気付きようがないので結局ふざけているとしか思えない仕様だな。1階1階しらみ潰しに登っていくか攻略情報をネットで見るしかないだろう。もっとも攻略まとめサイトや個人サイト、そしてそういったゲーム攻略サイトを勝手に扱う企業はみんなVRゲームの時代になり世界的にゲームコンテンツの価値はさらに上がっていき潰れてしまったわけだが……なぜだかは語るまい。もっとも! いつの時代もプレイヤーの口そういった輩の口に戸は立てられないわけで……そこで出来たそのゲーム公式のファンクラブ攻略サイトというものがあるゲームソフト購入代金+月額で金は100円ほど取られるがその代金は様々な追加コンテンツに使えるので損はない。そこで各々ネットを介してつながったプレイヤー、ファンたちは好き勝手にバカなことをつぶやいたり情報を蓄積していくわけである。これに対しゲーム企業も検閲閲覧編集するわけだが……このエロいゲームなぜか報告されているバグを一切直さないのである。そして暴言を吐かれようが削除せずむしろ色々と吐き返すは、バグが輩によって表に広まり公になると「ワタシはゲームをおもしろくするため必死で作ったその結果の突然変異電子のスパイス、素晴らしいことだ! 計算外とはまさに! でも君にはこの味わいが分からないようだ? ワタシはそのバグの治し方を知らない」「バグというよりはむしろ味と呼んでねこれを、そうやって荒れた土地をトンボで平面にならすようにしていくするといつまで経っても終わりようがないこの業界そういうタイプのニンゲンは珍しくないねぇ。仕事熱心なのはありがたいが。おっと、私のコーヒーが冷めてしまう失礼」という狂っているやつらで……いくら何を言おうが効果はないと思う。
「王……? いつものアレ出てます!」
「……そうか」
ともかく準備はそろったあとは……!
『サっハーラハ~ラハラ はら? ────』
軽快な音楽がどういう機能か、砂漠に響き渡る。
「…………なぜこのイカれた曲がここに流れている……。おい頼むぞ全財産賭けてんだこっちは! 今だけはゲーム通りの動きをみせろ! エロいゲーム!!」
そんな1人の電子体の不安をよそに砂漠のレースはスタートした。
砂漠に突き刺さった錆びた信号機の3つの赤いシグナルが一つずつ増え3つそろいすべてが切り替わりアオく光った。その合図を受け、一斉にスタートを切ったモンスターたち。
すると突如、前方に砂地から炎の柱がばしばしと複数本勢いよくほとばしり立ち。良いスタートを切った軟弱なモンスターたちが光の粒へと還る。
その空いたルートを。
「爆破斬!」
ミルク珈琲色の砂漠羊の毛は燃えつづけスピードを上げていく。父親の炎をその身に浴び疾走した。
少し遅めのロケットスタートを決め。
駆け抜ける。止んだ火柱の跡を。
炎の砂漠羊は続々と先頭集団を抜いて行った。炎のごぼう抜きだ。
やがて毛は燃え尽きそれにリンクするようにその爆発的な走力を失い砂漠羊のアドバンテージは消えた。
そしてレース道中突如吹いてきた大きな竜巻のシロッコに乗り。父親はフツウの砂漠羊を乗り捨て上空へと舞い上がる。
この熱砂の舞台を照らす燦々と輝く太陽を背に、金色の機体は上空を飛んでいく。
悠々と首位を独走していく遅れてスタートを切った金色の玩具の戦闘機。
「やぁまた運んでくれてサンキューな」
最短かつ計算されたタイミング。
金色の機体は独走状態むなしくその背をヤツの炎に切り刻まれ上空に爆発花火が咲き誇った。
そしてさらりと舞い降りるように着地した黒いスーツ。
「おらァぁ! 俺が先頭だ、爆王斬!!」
「ワタさねぇぞ!」
立ち止まり、男の構えた美しい刃はキラリと輝き。
モンスターが走って来るレース道に爆炎が咲き。熱砂を焼き潰していく。
石の板の上に乗った、ピンクと少し赤色の混じったポニーテールと女神石像。
石の板はこの砂漠のモンスターレースをホバーしながらそれなりの走力で駆けていく。
それを邪魔するように先行していた色とりどりのラクダたちのこぶからミサイルが発射された。
発射されたコブミサイルは追い抜こうとしてきた者たちに狙いをつけ低速で迫っている。
女神石像は石の板に指で方向の指示を出し進路を操り、その指示に従い石の板はコブミサイルを華麗に避け敵の妨害を耐え凌いでみせた。
「メガミさんイタさん今日もフツウ越えです!」
石の板はスピードを上げ風を切り今にもラクダライダーたちに並び追い抜こうとしている。
「斬りますよー! ラクダさん!」
その細い両手に持った七枝刀が横へと豪快に一閃。凄まじい剣風を起こしながらレースの障害を【凪】払っていく。
ラクダとそれに跨っていたモンスターのライダーたちは一閃され次々とその荒い刃により【凪】払われ脱落していった。
「レースってなんでしたっけ、ラクダさんを斬るのはありなのでしょうか? あははははさすが王!!」
「えとえと……この辺でしょうか? メガミさん頼みます!」
女神石像はうんうんと頷いた。
レーススタート前から溜めに溜められていた砂漠の後方に設置されたみずいろの巨大な魔法陣を媒介にし。
発動したアクアバイバイ∀。
身を反転した女神石像の勢いよく指差した方向へと。
大きなおおきな大波は砂漠のレースを逆走していき。
石の板にぶち抜かれたモンスターたちが魔法の水流に呑み込まれていく。そして光のシャワーが上空へと浮かび上がっていった。
「あはははは殺戮の天国ちょっこーレース、王に捧げますよォォ!」
その爽快な光景を目の当たりにし大声で狂った様に叫んでみせたピンク髪は、青いジーンズのポッケに折りたたんで入れたメモを見返した。
「ふむむ……合ってるよね……? 王に怒られないよね?」
▼
▽
「よしこれで俺たちが1位だ」
「ぐぴっぴっ……ぷはぁさすがにクレイジーですよ王!」
数多の参加者たちを前方と後方から蹴散らしながら砂漠レースの中途地点で無事作戦通り合流を果たした父親パーティー。
激戦のレースを制圧した各々は、この暑い太陽の下失ったまりょくと体力と水分の補給をした。
「クレイジーなのは!」
一仕事を終えたばかりの白蜜をガチャリと右手に握りしめて構えなおす。
「こいつらだろ!」
砂漠の後方彼方から見えて来た金と銀の大群。メタリックなカラーの円柱が砂漠をぴょんぴょんと跳ねている、ちくわだ。ちくわのレアモンスター!
「仕事だサム、デバフかけてきりまくれ! 経験値だ!」
「は、はい王!」
「きゅ、キュートな生物だけど仕方ないですね!! あはははは!!」
『───サっハーラハ~ラハラ はら?』
「しれっとループすんな!」
「……王?」
砂漠のレース道を逆走していく父親、女神石像、石の板、サムたち父親パーティー。フツウではない真の1位を爆走し現れた新たなモンスターたち。珍妙な熱砂のレースはまだまだ熱い爆炎を咲かせ続いていく。
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有金0。己に己の全てを賭けて……!
ザクッざくっと砂漠の道を刀で斬り準備は整った。
定められた後方のグリッド、スタートラインへと戻る。
「何やってるんですか王……?」
「仕込みだ」
「やっぱりフツウじゃないですね王は!」
「そうかもな。ここからは作戦通りフツウで頼むぞフライングはなしだ」
「はい王の命令は絶対です! メガミさんとイタさんがいればフツウ超え余裕です!」
「ハハ……それは助かる」
「えーっとここでこうこう……ふむむ────」
どこかテンションの高いピンク髪は父親に手渡された紙をじっくりと確認する。
意外と真面目なのか? 助かるが……。
父親は3893階でスナネコ商人から購入したレース用の砂漠羊の背に乗った。刈り取られていない砂漠の環境に適応する気のないもふもふの毛がクッションとなり良い乗り心地だ。
親切にもそういうレースがこの先あることを事前に教えてもらえたのだ。エロいゲームにしては親切だが、3893階その特定の階に止まらなければ気付きようがないので結局ふざけているとしか思えない仕様だな。1階1階しらみ潰しに登っていくか攻略情報をネットで見るしかないだろう。もっとも攻略まとめサイトや個人サイト、そしてそういったゲーム攻略サイトを勝手に扱う企業はみんなVRゲームの時代になり世界的にゲームコンテンツの価値はさらに上がっていき潰れてしまったわけだが……なぜだかは語るまい。もっとも! いつの時代もプレイヤーの口そういった輩の口に戸は立てられないわけで……そこで出来たそのゲーム公式のファンクラブ攻略サイトというものがあるゲームソフト購入代金+月額で金は100円ほど取られるがその代金は様々な追加コンテンツに使えるので損はない。そこで各々ネットを介してつながったプレイヤー、ファンたちは好き勝手にバカなことをつぶやいたり情報を蓄積していくわけである。これに対しゲーム企業も検閲閲覧編集するわけだが……このエロいゲームなぜか報告されているバグを一切直さないのである。そして暴言を吐かれようが削除せずむしろ色々と吐き返すは、バグが輩によって表に広まり公になると「ワタシはゲームをおもしろくするため必死で作ったその結果の突然変異電子のスパイス、素晴らしいことだ! 計算外とはまさに! でも君にはこの味わいが分からないようだ? ワタシはそのバグの治し方を知らない」「バグというよりはむしろ味と呼んでねこれを、そうやって荒れた土地をトンボで平面にならすようにしていくするといつまで経っても終わりようがないこの業界そういうタイプのニンゲンは珍しくないねぇ。仕事熱心なのはありがたいが。おっと、私のコーヒーが冷めてしまう失礼」という狂っているやつらで……いくら何を言おうが効果はないと思う。
「王……? いつものアレ出てます!」
「……そうか」
ともかく準備はそろったあとは……!
『サっハーラハ~ラハラ はら? ────』
軽快な音楽がどういう機能か、砂漠に響き渡る。
「…………なぜこのイカれた曲がここに流れている……。おい頼むぞ全財産賭けてんだこっちは! 今だけはゲーム通りの動きをみせろ! エロいゲーム!!」
そんな1人の電子体の不安をよそに砂漠のレースはスタートした。
砂漠に突き刺さった錆びた信号機の3つの赤いシグナルが一つずつ増え3つそろいすべてが切り替わりアオく光った。その合図を受け、一斉にスタートを切ったモンスターたち。
すると突如、前方に砂地から炎の柱がばしばしと複数本勢いよくほとばしり立ち。良いスタートを切った軟弱なモンスターたちが光の粒へと還る。
その空いたルートを。
「爆破斬!」
ミルク珈琲色の砂漠羊の毛は燃えつづけスピードを上げていく。父親の炎をその身に浴び疾走した。
少し遅めのロケットスタートを決め。
駆け抜ける。止んだ火柱の跡を。
炎の砂漠羊は続々と先頭集団を抜いて行った。炎のごぼう抜きだ。
やがて毛は燃え尽きそれにリンクするようにその爆発的な走力を失い砂漠羊のアドバンテージは消えた。
そしてレース道中突如吹いてきた大きな竜巻のシロッコに乗り。父親はフツウの砂漠羊を乗り捨て上空へと舞い上がる。
この熱砂の舞台を照らす燦々と輝く太陽を背に、金色の機体は上空を飛んでいく。
悠々と首位を独走していく遅れてスタートを切った金色の玩具の戦闘機。
「やぁまた運んでくれてサンキューな」
最短かつ計算されたタイミング。
金色の機体は独走状態むなしくその背をヤツの炎に切り刻まれ上空に爆発花火が咲き誇った。
そしてさらりと舞い降りるように着地した黒いスーツ。
「おらァぁ! 俺が先頭だ、爆王斬!!」
「ワタさねぇぞ!」
立ち止まり、男の構えた美しい刃はキラリと輝き。
モンスターが走って来るレース道に爆炎が咲き。熱砂を焼き潰していく。
石の板の上に乗った、ピンクと少し赤色の混じったポニーテールと女神石像。
石の板はこの砂漠のモンスターレースをホバーしながらそれなりの走力で駆けていく。
それを邪魔するように先行していた色とりどりのラクダたちのこぶからミサイルが発射された。
発射されたコブミサイルは追い抜こうとしてきた者たちに狙いをつけ低速で迫っている。
女神石像は石の板に指で方向の指示を出し進路を操り、その指示に従い石の板はコブミサイルを華麗に避け敵の妨害を耐え凌いでみせた。
「メガミさんイタさん今日もフツウ越えです!」
石の板はスピードを上げ風を切り今にもラクダライダーたちに並び追い抜こうとしている。
「斬りますよー! ラクダさん!」
その細い両手に持った七枝刀が横へと豪快に一閃。凄まじい剣風を起こしながらレースの障害を【凪】払っていく。
ラクダとそれに跨っていたモンスターのライダーたちは一閃され次々とその荒い刃により【凪】払われ脱落していった。
「レースってなんでしたっけ、ラクダさんを斬るのはありなのでしょうか? あははははさすが王!!」
「えとえと……この辺でしょうか? メガミさん頼みます!」
女神石像はうんうんと頷いた。
レーススタート前から溜めに溜められていた砂漠の後方に設置されたみずいろの巨大な魔法陣を媒介にし。
発動したアクアバイバイ∀。
身を反転した女神石像の勢いよく指差した方向へと。
大きなおおきな大波は砂漠のレースを逆走していき。
石の板にぶち抜かれたモンスターたちが魔法の水流に呑み込まれていく。そして光のシャワーが上空へと浮かび上がっていった。
「あはははは殺戮の天国ちょっこーレース、王に捧げますよォォ!」
その爽快な光景を目の当たりにし大声で狂った様に叫んでみせたピンク髪は、青いジーンズのポッケに折りたたんで入れたメモを見返した。
「ふむむ……合ってるよね……? 王に怒られないよね?」
▼
▽
「よしこれで俺たちが1位だ」
「ぐぴっぴっ……ぷはぁさすがにクレイジーですよ王!」
数多の参加者たちを前方と後方から蹴散らしながら砂漠レースの中途地点で無事作戦通り合流を果たした父親パーティー。
激戦のレースを制圧した各々は、この暑い太陽の下失ったまりょくと体力と水分の補給をした。
「クレイジーなのは!」
一仕事を終えたばかりの白蜜をガチャリと右手に握りしめて構えなおす。
「こいつらだろ!」
砂漠の後方彼方から見えて来た金と銀の大群。メタリックなカラーの円柱が砂漠をぴょんぴょんと跳ねている、ちくわだ。ちくわのレアモンスター!
「仕事だサム、デバフかけてきりまくれ! 経験値だ!」
「は、はい王!」
「きゅ、キュートな生物だけど仕方ないですね!! あはははは!!」
『───サっハーラハ~ラハラ はら?』
「しれっとループすんな!」
「……王?」
砂漠のレース道を逆走していく父親、女神石像、石の板、サムたち父親パーティー。フツウではない真の1位を爆走し現れた新たなモンスターたち。珍妙な熱砂のレースはまだまだ熱い爆炎を咲かせ続いていく。
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