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20話 発情期休暇
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面談室は四人も入ればいっぱいになるような小部屋で、人事部の廊下の先にあった。
オレは先に室内に通されて、鳴瀬課長がドアを閉めた。
「オレ、明日から発情期休暇なんですけど」
オレはくるりと振り返って、鳴瀬課長の方を向く。
鳴瀬課長に近寄るとフェロモンの香りが漂って来た。すごくイイ匂いだ。思わず抱き着いてしまいたくなるのをオレはグッとこらえた。
「明日から一週間、一緒に過ごしてくれる人を探してるんです」
鳴瀬課長のフェロモンに誘発されて、オレからもフェロモンが出るのがわかる。
「く、倉持くん……!?」
「鳴瀬課長の明日からの仕事、調整してもらうことはできませんか?」
全力で落とすって思ってたのに、鳴瀬課長のフェロモンを嗅いだら、駆け引きも何もかも吹っ飛んだ。気を抜くと発情テロを起こしてしまいそうなくらい身体が昂っている。自分から大量のフェロモンが溢れ出てしまわないように気を付けながら、オレはなんとかそう言った。
「ちょ、ちょっと待ってて。すぐ戻るから。絶対にここから出ちゃダメだよ。あと、内側から鍵を掛けててね」
そんなオレの様子を見て、鳴瀬課長は慌てて会議室のドアを開けた。
もしかしたら、発情期はもう始まってるのかもしれない。
鳴瀬課長が出て行ってからも、オレは面談室に残されたフェロモンの残り香に酔いしれていた。
イスに座ってテーブルの上に身体を横たえていると、外からノックする音が聞こえた。
時計を見ると、鳴瀬課長が出て行ってから30分が経過していた。
「あ、あの倉持くん……緊急抑制剤は持ってる? 持ってないなら、薬局で買ってくるけど……」
「さっき普通の抑制剤は飲みましたけど全然効いてないし、多分、緊急抑制剤も効かないと思うので要らないです」
「えっ、ええっ……!?」
「それより、なんでドアの外から話してるんですか?」
早く、鳴瀬課長に抱き着いて、フェロモンの匂いを嗅ぎたいのに。
「だって……開けたら、倉持くんのこと襲っちゃいそうだし……」
「襲っていいですよ」
「え?」
「だって、オレ、すごーく鳴瀬課長とセックスしたいんです。だから、中に入ってきてください」
「ほ、本気で言ってるの?」
「本気ですよ。オレは明日からの発情期を、鳴瀬課長と一緒に過ごしたいです」
「で、でも……えぇと、それじゃあ、あともうちょっとだけ待ってて」
それから五分ほどして、再び鳴瀬課長が戻ってきた。
「ど、ドア開けるね?」
ガチャガチャと鍵を回す音がしたあと、ガツンとドアが揺れた。そして、またガチャガチャと鍵を回す音がして、今度はちゃんとドアが開いた。
そんな様子があまりにも鳴瀬課長らしくて、おもわずフフッと笑ってしまった。
「鍵、掛けてなかったの?」
そういえば、鍵を掛けるように言われていたなとその時になって思い出した。
面談室に入ってきた鳴瀬課長は、自分の荷物らしきものの他に、オレのジャケットとカバンを持っていた。
鳴瀬課長が近寄ってきたので、オレは身体を起こした。
「あ、あの……前と同じところは既に予約が入っていてダメだったんだけど……他に、どこか希望はある?」
「じゃあ、鳴瀬課長の自宅で」
「えっ!?」
申し訳なさそうな表情で言われて、オレは即答した。
「オレは鳴瀬課長のおうちに行きたいです」
オレは先に室内に通されて、鳴瀬課長がドアを閉めた。
「オレ、明日から発情期休暇なんですけど」
オレはくるりと振り返って、鳴瀬課長の方を向く。
鳴瀬課長に近寄るとフェロモンの香りが漂って来た。すごくイイ匂いだ。思わず抱き着いてしまいたくなるのをオレはグッとこらえた。
「明日から一週間、一緒に過ごしてくれる人を探してるんです」
鳴瀬課長のフェロモンに誘発されて、オレからもフェロモンが出るのがわかる。
「く、倉持くん……!?」
「鳴瀬課長の明日からの仕事、調整してもらうことはできませんか?」
全力で落とすって思ってたのに、鳴瀬課長のフェロモンを嗅いだら、駆け引きも何もかも吹っ飛んだ。気を抜くと発情テロを起こしてしまいそうなくらい身体が昂っている。自分から大量のフェロモンが溢れ出てしまわないように気を付けながら、オレはなんとかそう言った。
「ちょ、ちょっと待ってて。すぐ戻るから。絶対にここから出ちゃダメだよ。あと、内側から鍵を掛けててね」
そんなオレの様子を見て、鳴瀬課長は慌てて会議室のドアを開けた。
もしかしたら、発情期はもう始まってるのかもしれない。
鳴瀬課長が出て行ってからも、オレは面談室に残されたフェロモンの残り香に酔いしれていた。
イスに座ってテーブルの上に身体を横たえていると、外からノックする音が聞こえた。
時計を見ると、鳴瀬課長が出て行ってから30分が経過していた。
「あ、あの倉持くん……緊急抑制剤は持ってる? 持ってないなら、薬局で買ってくるけど……」
「さっき普通の抑制剤は飲みましたけど全然効いてないし、多分、緊急抑制剤も効かないと思うので要らないです」
「えっ、ええっ……!?」
「それより、なんでドアの外から話してるんですか?」
早く、鳴瀬課長に抱き着いて、フェロモンの匂いを嗅ぎたいのに。
「だって……開けたら、倉持くんのこと襲っちゃいそうだし……」
「襲っていいですよ」
「え?」
「だって、オレ、すごーく鳴瀬課長とセックスしたいんです。だから、中に入ってきてください」
「ほ、本気で言ってるの?」
「本気ですよ。オレは明日からの発情期を、鳴瀬課長と一緒に過ごしたいです」
「で、でも……えぇと、それじゃあ、あともうちょっとだけ待ってて」
それから五分ほどして、再び鳴瀬課長が戻ってきた。
「ど、ドア開けるね?」
ガチャガチャと鍵を回す音がしたあと、ガツンとドアが揺れた。そして、またガチャガチャと鍵を回す音がして、今度はちゃんとドアが開いた。
そんな様子があまりにも鳴瀬課長らしくて、おもわずフフッと笑ってしまった。
「鍵、掛けてなかったの?」
そういえば、鍵を掛けるように言われていたなとその時になって思い出した。
面談室に入ってきた鳴瀬課長は、自分の荷物らしきものの他に、オレのジャケットとカバンを持っていた。
鳴瀬課長が近寄ってきたので、オレは身体を起こした。
「あ、あの……前と同じところは既に予約が入っていてダメだったんだけど……他に、どこか希望はある?」
「じゃあ、鳴瀬課長の自宅で」
「えっ!?」
申し訳なさそうな表情で言われて、オレは即答した。
「オレは鳴瀬課長のおうちに行きたいです」
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