見た目詐欺アルファの優しい檻~会社の先輩とアプリでマッチングしたらいつの間にかがっつり外堀埋められて囲われていました

夏芽玉

文字の大きさ
29 / 38
番外編

塩オメガは発情期じゃなくてもまぐわいたい その2

しおりを挟む
「茜祢くん」
「あ、はいなんでしょう」

 経理に書類を提出しに行った帰り、営業課長に呼び止められた。

「来月の月末に、上條に1週間くらい本社海外出張入れても大丈夫そうかな?」
「えっと、オレに言われても……」
「いや、発情期ヒート休暇と被ったらマズくない?」
「あー……」

 営業課長に言われて、オレはそのことにようやく思い至った。来月の月末は……確かに、オレの発情期ヒートの周期に当たっているかもしれない。

「ちょっと、相談しておきます」
「うん、よろしく」


 オメガが社会の中で生きづらいのは、主に発情期ヒートが原因だと思う。
 勉強も、仕事も、発情期ヒートの間は休まないといけないのが不利に働く。

 この会社にオメガ枠採用で入社したオレは、オメガであることを最初から周りに比較的受け入れられていた。
 さらに福利厚生も整っていて、とても過ごしやすい。
 この制度が会社に導入されたのも、配属先で良い上司と同僚に恵まれたのも、全部、礼二さんがオレを囲い込むために整えた環境だったようなんだけど。それに関しては、礼二さんにとても感謝している。他にも社内にはオメガ枠で採用された人が居て、こんなに恵まれた会社は他にはないよねっていう話をしているのを時々聞くことがあるくらいだ。


 オレは長い間、自分がオメガであることを受け入れられなかった。
 他のオメガと違って、オレにはオメガらしいところなんて全然ない。発情期ヒートさえなければ、ベータとして生きていけるんじゃないかって思っていたことさえある。

 それに、自分がオメガって知られたときの微妙な空気が嫌だった。見た目がオメガっぽくないせいか、まず驚かれる。そして、次にみんな判を押したように「え!? オメガだったんだ。全然見えないね」と言うのだ。

 だから、礼二さんが入社説明会でオレに一目惚れしたというのが、オレには不思議でならなかった。
 礼二さんはとてもカッコイイから一目見たら絶対印象に残るはずなのに、オレは説明会の日に礼二さんに会った覚えがない。だからその時のことを聞いてみたんだけど、「ロビーですれ違ったときにすごくいい匂いがして、茜祢のことに気付いたんだよ」と言われた。アルファの嗅覚スゴすぎでしょ!! ていうか、会社のロビーでたった一度すれ違っただけの学生の出身大学と名前をどうやって調べたんだよ。
 礼二さんが作ったアルファの巣に集められたものや写真隠し撮りを思い出して、礼二さんがオレの知らない間に何をしたのか、それ以上のことは怖くて聞けなかったけど。

 礼二さんは、典型的なアルファが苦手なオレが(なんでそれを知っていたのかも不思議で仕方ない)気後れしないよう、今まではちょっと情けなくて親しみやすいアルファを演じるために色々なことをセーブしていたらしい。

 だけど、偽ることをやめた礼二さんは、会社でとても優秀だった。礼二さんの第一営業部内での営業成績はぶっちぎりでトップをキープしている。第一営業部の取引先は大手ばかりなので、つまりそれは全社でトップの営業マンだということになる。

 それから、礼二さんにはわざと書類をミスするのはやめてもらった。そしたら、オレの仕事内容は礼二さんが使う資料の作成がメインになった。礼二さんは「茜祢が作った資料を、取引先にあげちゃうなんて嫌だー」とか言っていたけれど、そんなことは知らん。まあ礼二さんのことだから、原本はこっそり隠し持っていて、コピーを先方に渡しているんじゃないかって思ってるけど。

 礼二さんは、性格がちょっと変というか、オレのことが好きすぎるという以外の欠点らしい欠点がなかった。なんでこんなすごい人がオレのこと好きなんだろうって時々思うことがあるけど、その人の唯一の欠点が「好きな人がオレ」というのが、なんだかおかしすぎて愛しいと思う。

 だけど、最初から自分を偽ることなく礼二さんがオレに近づいてきていたら、きっとオレは礼二さんのことを怖がって逃げてしまっていただろう。だから『見た目詐欺アルファ』な礼二さんも含めて、今は礼二さんのことが全部大好きだし、オレがオメガだったから礼二さんと出会って、番って、結婚できたので、今は自分がオメガなのもそんなに嫌ではなくなった。

 そして、礼二さんとはアルファとオメガだからという理由だけじゃなくて、もっと愛情を深め合うためにも発情期ヒートじゃなくてもセックスしたいとオレは思っているんだけど……
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない

綿毛ぽぽ
BL
 アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。 ━━━━━━━━━━━ 現役人気アイドル×脱落モブ男 表紙はくま様からお借りしました https://www.pixiv.net/artworks/84182395

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?

モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。 平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。 ムーンライトノベルズにも掲載しております。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

処理中です...