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番外編
塩オメガは発情期じゃなくてもまぐわいたい その2
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「茜祢くん」
「あ、はいなんでしょう」
経理に書類を提出しに行った帰り、営業課長に呼び止められた。
「来月の月末に、上條に1週間くらい本社出張入れても大丈夫そうかな?」
「えっと、オレに言われても……」
「いや、発情期休暇と被ったらマズくない?」
「あー……」
営業課長に言われて、オレはそのことにようやく思い至った。来月の月末は……確かに、オレの発情期の周期に当たっているかもしれない。
「ちょっと、相談しておきます」
「うん、よろしく」
オメガが社会の中で生きづらいのは、主に発情期が原因だと思う。
勉強も、仕事も、発情期の間は休まないといけないのが不利に働く。
この会社にオメガ枠採用で入社したオレは、オメガであることを最初から周りに比較的受け入れられていた。
さらに福利厚生も整っていて、とても過ごしやすい。
この制度が会社に導入されたのも、配属先で良い上司と同僚に恵まれたのも、全部、礼二さんがオレを囲い込むために整えた環境だったようなんだけど。それに関しては、礼二さんにとても感謝している。他にも社内にはオメガ枠で採用された人が居て、こんなに恵まれた会社は他にはないよねっていう話をしているのを時々聞くことがあるくらいだ。
オレは長い間、自分がオメガであることを受け入れられなかった。
他のオメガと違って、オレにはオメガらしいところなんて全然ない。発情期さえなければ、ベータとして生きていけるんじゃないかって思っていたことさえある。
それに、自分がオメガって知られたときの微妙な空気が嫌だった。見た目がオメガっぽくないせいか、まず驚かれる。そして、次にみんな判を押したように「え!? オメガだったんだ。全然見えないね」と言うのだ。
だから、礼二さんが入社説明会でオレに一目惚れしたというのが、オレには不思議でならなかった。
礼二さんはとてもカッコイイから一目見たら絶対印象に残るはずなのに、オレは説明会の日に礼二さんに会った覚えがない。だからその時のことを聞いてみたんだけど、「ロビーですれ違ったときにすごくいい匂いがして、茜祢のことに気付いたんだよ」と言われた。アルファの嗅覚スゴすぎでしょ!! ていうか、会社のロビーでたった一度すれ違っただけの学生の出身大学と名前をどうやって調べたんだよ。
礼二さんが作った巣に集められたものや写真を思い出して、礼二さんがオレの知らない間に何をしたのか、それ以上のことは怖くて聞けなかったけど。
礼二さんは、典型的なアルファが苦手なオレが(なんでそれを知っていたのかも不思議で仕方ない)気後れしないよう、今まではちょっと情けなくて親しみやすいアルファを演じるために色々なことをセーブしていたらしい。
だけど、偽ることをやめた礼二さんは、会社でとても優秀だった。礼二さんの第一営業部内での営業成績はぶっちぎりでトップをキープしている。第一営業部の取引先は大手ばかりなので、つまりそれは全社でトップの営業マンだということになる。
それから、礼二さんにはわざと書類をミスするのはやめてもらった。そしたら、オレの仕事内容は礼二さんが使う資料の作成がメインになった。礼二さんは「茜祢が作った資料を、取引先にあげちゃうなんて嫌だー」とか言っていたけれど、そんなことは知らん。まあ礼二さんのことだから、原本はこっそり隠し持っていて、コピーを先方に渡しているんじゃないかって思ってるけど。
礼二さんは、性格がちょっと変というか、オレのことが好きすぎるという以外の欠点らしい欠点がなかった。なんでこんなすごい人がオレのこと好きなんだろうって時々思うことがあるけど、その人の唯一の欠点が「好きな人がオレ」というのが、なんだかおかしすぎて愛しいと思う。
だけど、最初から自分を偽ることなく礼二さんがオレに近づいてきていたら、きっとオレは礼二さんのことを怖がって逃げてしまっていただろう。だから『見た目詐欺アルファ』な礼二さんも含めて、今は礼二さんのことが全部大好きだし、オレがオメガだったから礼二さんと出会って、番って、結婚できたので、今は自分がオメガなのもそんなに嫌ではなくなった。
そして、礼二さんとはアルファとオメガだからという理由だけじゃなくて、もっと愛情を深め合うためにも発情期じゃなくてもセックスしたいとオレは思っているんだけど……
「あ、はいなんでしょう」
経理に書類を提出しに行った帰り、営業課長に呼び止められた。
「来月の月末に、上條に1週間くらい本社出張入れても大丈夫そうかな?」
「えっと、オレに言われても……」
「いや、発情期休暇と被ったらマズくない?」
「あー……」
営業課長に言われて、オレはそのことにようやく思い至った。来月の月末は……確かに、オレの発情期の周期に当たっているかもしれない。
「ちょっと、相談しておきます」
「うん、よろしく」
オメガが社会の中で生きづらいのは、主に発情期が原因だと思う。
勉強も、仕事も、発情期の間は休まないといけないのが不利に働く。
この会社にオメガ枠採用で入社したオレは、オメガであることを最初から周りに比較的受け入れられていた。
さらに福利厚生も整っていて、とても過ごしやすい。
この制度が会社に導入されたのも、配属先で良い上司と同僚に恵まれたのも、全部、礼二さんがオレを囲い込むために整えた環境だったようなんだけど。それに関しては、礼二さんにとても感謝している。他にも社内にはオメガ枠で採用された人が居て、こんなに恵まれた会社は他にはないよねっていう話をしているのを時々聞くことがあるくらいだ。
オレは長い間、自分がオメガであることを受け入れられなかった。
他のオメガと違って、オレにはオメガらしいところなんて全然ない。発情期さえなければ、ベータとして生きていけるんじゃないかって思っていたことさえある。
それに、自分がオメガって知られたときの微妙な空気が嫌だった。見た目がオメガっぽくないせいか、まず驚かれる。そして、次にみんな判を押したように「え!? オメガだったんだ。全然見えないね」と言うのだ。
だから、礼二さんが入社説明会でオレに一目惚れしたというのが、オレには不思議でならなかった。
礼二さんはとてもカッコイイから一目見たら絶対印象に残るはずなのに、オレは説明会の日に礼二さんに会った覚えがない。だからその時のことを聞いてみたんだけど、「ロビーですれ違ったときにすごくいい匂いがして、茜祢のことに気付いたんだよ」と言われた。アルファの嗅覚スゴすぎでしょ!! ていうか、会社のロビーでたった一度すれ違っただけの学生の出身大学と名前をどうやって調べたんだよ。
礼二さんが作った巣に集められたものや写真を思い出して、礼二さんがオレの知らない間に何をしたのか、それ以上のことは怖くて聞けなかったけど。
礼二さんは、典型的なアルファが苦手なオレが(なんでそれを知っていたのかも不思議で仕方ない)気後れしないよう、今まではちょっと情けなくて親しみやすいアルファを演じるために色々なことをセーブしていたらしい。
だけど、偽ることをやめた礼二さんは、会社でとても優秀だった。礼二さんの第一営業部内での営業成績はぶっちぎりでトップをキープしている。第一営業部の取引先は大手ばかりなので、つまりそれは全社でトップの営業マンだということになる。
それから、礼二さんにはわざと書類をミスするのはやめてもらった。そしたら、オレの仕事内容は礼二さんが使う資料の作成がメインになった。礼二さんは「茜祢が作った資料を、取引先にあげちゃうなんて嫌だー」とか言っていたけれど、そんなことは知らん。まあ礼二さんのことだから、原本はこっそり隠し持っていて、コピーを先方に渡しているんじゃないかって思ってるけど。
礼二さんは、性格がちょっと変というか、オレのことが好きすぎるという以外の欠点らしい欠点がなかった。なんでこんなすごい人がオレのこと好きなんだろうって時々思うことがあるけど、その人の唯一の欠点が「好きな人がオレ」というのが、なんだかおかしすぎて愛しいと思う。
だけど、最初から自分を偽ることなく礼二さんがオレに近づいてきていたら、きっとオレは礼二さんのことを怖がって逃げてしまっていただろう。だから『見た目詐欺アルファ』な礼二さんも含めて、今は礼二さんのことが全部大好きだし、オレがオメガだったから礼二さんと出会って、番って、結婚できたので、今は自分がオメガなのもそんなに嫌ではなくなった。
そして、礼二さんとはアルファとオメガだからという理由だけじゃなくて、もっと愛情を深め合うためにも発情期じゃなくてもセックスしたいとオレは思っているんだけど……
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