変態英雄が暗殺者の俺を溺愛してくる

夏芽玉

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9.殺したい男ナンバーワン

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「ねー、俺のこと好きになった?」

 どうしたらそういう発想になるのか、全く理解ができない。

「な゛る゛わ゛け゛……ね゛ーだ゛ろ゛」

 口から絞りだした声はガラガラに枯れていた。まるで別人になったみたいだ。

 あのあと、身体をひっくり返されて、向き合う形でもジルに犯された。
 ジルは俺の中に何度も精を放ち、俺もその回数以上に絶頂した。
 俺を犯している間、何度も何度も俺のことを好きだと言って、身体中噛まれまくった。
 おかげで全身が重だるくて、あちこちが痛い。
 皇帝のベッドはそんな俺の身体を優しく包み込んでくれた。

 あー、このまま寝てしまいたい。

 勿論、そんなことができるはずはないけれど……
 一刻も早く、この場を立ち去らないといけない。こんなところ見つかったらマズいどころの話ではないからだ。皇帝を暗殺しに来て、皇帝のベッドで同業者の男と交わった姿を誰かに見られるだなんて……そんなの、俺のプライドも人生も詰んでしまう。

「眠い? それならこのままここで寝ちゃっていーよ。朝になるまでは誰も来ないようにしといたから。ただ、昼には流石に誰か来ちゃうと思うから、それまでには出ていったほうがいいと思うけれど……」

 いったいこいつは何をやったんだ……
 もう突っ込む気力もない。
 彼氏ヅラして爽やかな表情で覗き込んでくる相手は、今、俺が殺したい男ナンバーワンだ。
 無防備に俺の隣で添い寝している今がチャンスなのは分かっている。
 だけどもう指一本動かせねぇ……
 こいつの言葉を信じるのは癪だけど、朝までここには誰も来ないことを祈るしかないようだ。

 はぁ、っと大きなため息をつく。

「どーしたの?」

 声を掛けられて、目の前の相手を見た。ジルの項には、大きな噛み痕がある。俺がつけたものだ。
 そのまま首筋を噛みちぎってやればよかったな。惜しいことをした。

「……そういえば、なんで俺のこと殺さねーの?」
「なんで……?」

 心底不思議だといった表情で問い返されてしまった。
 ていうか、こいつはいつまでここに居るつもりなんだ?
 俺の隣に居座ったって、誰かに見つかる確率が上がるだけなのに……

「なんでって……俺が居たら、皇帝の暗殺に邪魔だろ?」

 俺はこいつが邪魔だから殺したいのに、こいつはそうは考えていないのだろうか?
 それとも、実力が格下な俺は取るに足らない存在とでも思っている? だから、殺す必要すらない……?

「皇帝のことなら、殺したらもうロイクと会えなくなっちゃうからまだ始末してないだけだけど……それがなんで、俺がロイクを殺す話になるの?」
「は……?」
「俺はロイクのことが好きだから、とこれからもずっと一緒に居たいよ?」

 どういうことだ? 確かに、ジル程の実力があれば、俺のことを無視して皇帝を殺すのは容易いことかもしれない。それを差し置いても、こいつは俺のことを本気で殺す気がない……? それどころか、ずっと一緒に居たいだと? つまり、それは……

「……まさかとは思うけれど……俺のことが好きって、本気で言ってるのか……?」

 いやいや、まさか。そんなハズはない。
 頭では否定しているのに、口からは自分でも信じられない言葉が漏れた。

「ええっ!? 今までずっと信じてくれてなかったの!? そんな……酷いっ!」

 ずっと誠実に愛を伝えてきたつもりだったのに、などとほざいているが、誠実ってなんだ!? 今、強姦してきたばかりの奴が、一体なにを言っているんだ。

「……意味が分からない」
「初めて会った日、素敵な人だなって思ったんだ」
「はぁ……?」

 こいつと初めて会った日……
 俺は何をしていただろうか、と思い返す。
 特別なことは何もしていなかったと思うけれど……

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