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2.腹ペコなのは
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「えーっと……いいの?」
「なにが?」
「初対面の吸血鬼なんて家にあげちゃって……」
俺が連れてこられたのは、彼の自宅だった。
2階建てのアパートの上階の角部屋。ワンルームタイプなので、玄関を入れば、キッチンもベッドも全部一気に視界に入って来た。
初対面にも関わらず、プライベートな空間に呼びこまれたことに、ドギマギと落ち着かない気持ちになる。
「いいんだよ。こっちのほうが、気兼ねなくイロイロできるから」
そういった彼のお尻から、ニョキニョキと尻尾が生えてきた。黒くて細い尻尾の先端には逆さになったハート型のような飾りまでついている。
「は!? えっ!? なんで尻尾!?」
ポカンと彼を見つめている間に、ポスンとベッドに押し倒された。あれ? まだ部屋に入ったばかりだと思ってたのに、俺たちはいつの間に部屋の一番奥にあるベッドまで移動したんだ!?
俺の背中に触れるのは、ふかふかの布団。うっかり気を抜いたら、このまま永眠しちゃうんじゃないかってくらい心地良い。いや、絶対こんなところで気なんて抜かないけれど。
「血液をあげるから、かわりに精気をちょーだい。なんでもしてくれるって言ってたし。それに、あんたからなら、たっぷり搾り取れそうだ」
彼は、ペロリと赤い舌で自分自身の唇を舐めた。その様子は酷く艶めかしい。
「え!? なに、どーゆーこと!?」
「腹ペコなのは、あんただけじゃないってこと」
そう言った彼の頭からは小さな角が二本あらわれた。ちょっと待って。彼は人間じゃないの!? じゃあいったい何なの!?
「お、俺を食べちゃうつもり!? こ……こんなオジサンたべても美味しくないよぉ!?」
俺は今年400歳になる。そして、俺にのしかかっている彼は随分若く見える。だから彼に比べたら、俺はだいぶ年寄りなんじゃないかな!?
「大丈夫、大丈夫! 貰うのは精気だけだから!」
「でも角が生えてて怖いっ」
俺はカチカチと牙を鳴らした。
夜道で見かけたときは、なんて可憐な女性が歩いているんだと思ったんだけど、俺の目はまったくの節穴だったようだ。
「まー、これでも淫魔ですから」
「ひぃぃぃ!! 淫魔っていうと、悪魔じゃないかっ!!」
「そうそう。オニーサン、物知りだね。それじゃあ、この事も知ってるよね? 『悪魔との契約は絶対だ』って」
「だ、だってキミが淫魔だなんて知らなかったんだもん!」
「だから今教えたじゃん。『何でもしてくれる』って約束だったよね。それじゃあまずは名前を教えて」
こんなところで契約を持ち出してくるなんてズルすぎる! しかも俺は自ら「何でもする!」と言ってしまった。自分の迂闊さを呪ってももう遅い。
「ポ……ポーシャだ」
答えたくないと思っていても、口が勝手に動いてしまう。悪魔に名前を知られるなんて、生命を握られたに等しい。
「俺はミオ。よろしくな」
挨拶代わりに啄むようなキスをされて、オレも相手に同じ動作を返す。俺の意思なんかじゃない。身体が勝手に動いてしまうんだ。俺はよろしくなんてしたくないのに!
「じゃ、さっそく。いただきます」
次の瞬間、彼の着ていたものが全て消え失せた。
「え、嘘っ!?」
彼の身体には多数の淫紋が刻まれ、背中に小さな羽が生えているのが肩越しに見えた。その姿を見て、間違いなく彼は淫魔なのだと再認識する。
そういえば、俺のマントもいつの間にかなくなっている。二人ともベッドの上で全裸だ。
瑞々しい身体つきの青年にふかふかのベッドで押し倒されている、干からびかけた貧弱な体型おじさん……いや、昔はもっとちゃんと筋肉とかついてたんだよ? でも、今は極限の飢餓状態だから、仕方ないじゃん。
それに、いつもは俺が若い女性を押し倒して奪う側だ。それが、女性のような顔立ちの彼に押し倒されているだなんて……倒錯的な状況にパニックになっている間に、彼の身体が密着してくる。
「天国を見せてあげる」
囁かれて、耳にキスを落とされた。掛かる息が擽ったい。
吸血鬼に天国なんて見せてどーんすのっ!? そんなことされたら、俺、塵になっちゃうよ!? なんて一瞬思ったが、何かを言う前に、急に身体がムラムラし始めた。
身体中にミオがキスを落としていくたびに、ビクンビクンと身体が跳ねる。
このままだと本当に彼に食べられてしまう!!
しかし、抵抗しようと思っても身体は快楽に従順な反応を示すだけで、力は全く入らない。ていうか、背中に触れるベッドの気持ち良さと、ミオから与えられる刺激で、蕩けてしまいそうだ。
俺は触れられるだけで、はふはふと熱のこもった息を吐き続けた。
「なにが?」
「初対面の吸血鬼なんて家にあげちゃって……」
俺が連れてこられたのは、彼の自宅だった。
2階建てのアパートの上階の角部屋。ワンルームタイプなので、玄関を入れば、キッチンもベッドも全部一気に視界に入って来た。
初対面にも関わらず、プライベートな空間に呼びこまれたことに、ドギマギと落ち着かない気持ちになる。
「いいんだよ。こっちのほうが、気兼ねなくイロイロできるから」
そういった彼のお尻から、ニョキニョキと尻尾が生えてきた。黒くて細い尻尾の先端には逆さになったハート型のような飾りまでついている。
「は!? えっ!? なんで尻尾!?」
ポカンと彼を見つめている間に、ポスンとベッドに押し倒された。あれ? まだ部屋に入ったばかりだと思ってたのに、俺たちはいつの間に部屋の一番奥にあるベッドまで移動したんだ!?
俺の背中に触れるのは、ふかふかの布団。うっかり気を抜いたら、このまま永眠しちゃうんじゃないかってくらい心地良い。いや、絶対こんなところで気なんて抜かないけれど。
「血液をあげるから、かわりに精気をちょーだい。なんでもしてくれるって言ってたし。それに、あんたからなら、たっぷり搾り取れそうだ」
彼は、ペロリと赤い舌で自分自身の唇を舐めた。その様子は酷く艶めかしい。
「え!? なに、どーゆーこと!?」
「腹ペコなのは、あんただけじゃないってこと」
そう言った彼の頭からは小さな角が二本あらわれた。ちょっと待って。彼は人間じゃないの!? じゃあいったい何なの!?
「お、俺を食べちゃうつもり!? こ……こんなオジサンたべても美味しくないよぉ!?」
俺は今年400歳になる。そして、俺にのしかかっている彼は随分若く見える。だから彼に比べたら、俺はだいぶ年寄りなんじゃないかな!?
「大丈夫、大丈夫! 貰うのは精気だけだから!」
「でも角が生えてて怖いっ」
俺はカチカチと牙を鳴らした。
夜道で見かけたときは、なんて可憐な女性が歩いているんだと思ったんだけど、俺の目はまったくの節穴だったようだ。
「まー、これでも淫魔ですから」
「ひぃぃぃ!! 淫魔っていうと、悪魔じゃないかっ!!」
「そうそう。オニーサン、物知りだね。それじゃあ、この事も知ってるよね? 『悪魔との契約は絶対だ』って」
「だ、だってキミが淫魔だなんて知らなかったんだもん!」
「だから今教えたじゃん。『何でもしてくれる』って約束だったよね。それじゃあまずは名前を教えて」
こんなところで契約を持ち出してくるなんてズルすぎる! しかも俺は自ら「何でもする!」と言ってしまった。自分の迂闊さを呪ってももう遅い。
「ポ……ポーシャだ」
答えたくないと思っていても、口が勝手に動いてしまう。悪魔に名前を知られるなんて、生命を握られたに等しい。
「俺はミオ。よろしくな」
挨拶代わりに啄むようなキスをされて、オレも相手に同じ動作を返す。俺の意思なんかじゃない。身体が勝手に動いてしまうんだ。俺はよろしくなんてしたくないのに!
「じゃ、さっそく。いただきます」
次の瞬間、彼の着ていたものが全て消え失せた。
「え、嘘っ!?」
彼の身体には多数の淫紋が刻まれ、背中に小さな羽が生えているのが肩越しに見えた。その姿を見て、間違いなく彼は淫魔なのだと再認識する。
そういえば、俺のマントもいつの間にかなくなっている。二人ともベッドの上で全裸だ。
瑞々しい身体つきの青年にふかふかのベッドで押し倒されている、干からびかけた貧弱な体型おじさん……いや、昔はもっとちゃんと筋肉とかついてたんだよ? でも、今は極限の飢餓状態だから、仕方ないじゃん。
それに、いつもは俺が若い女性を押し倒して奪う側だ。それが、女性のような顔立ちの彼に押し倒されているだなんて……倒錯的な状況にパニックになっている間に、彼の身体が密着してくる。
「天国を見せてあげる」
囁かれて、耳にキスを落とされた。掛かる息が擽ったい。
吸血鬼に天国なんて見せてどーんすのっ!? そんなことされたら、俺、塵になっちゃうよ!? なんて一瞬思ったが、何かを言う前に、急に身体がムラムラし始めた。
身体中にミオがキスを落としていくたびに、ビクンビクンと身体が跳ねる。
このままだと本当に彼に食べられてしまう!!
しかし、抵抗しようと思っても身体は快楽に従順な反応を示すだけで、力は全く入らない。ていうか、背中に触れるベッドの気持ち良さと、ミオから与えられる刺激で、蕩けてしまいそうだ。
俺は触れられるだけで、はふはふと熱のこもった息を吐き続けた。
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