ポンコツ吸血鬼が淫魔に美味しく食べられちゃうお話

夏芽玉

文字の大きさ
2 / 7

2.腹ペコなのは

しおりを挟む
「えーっと……いいの?」
「なにが?」
「初対面の吸血鬼なんて家にあげちゃって……」

 俺が連れてこられたのは、彼の自宅だった。
 2階建てのアパートの上階の角部屋。ワンルームタイプなので、玄関を入れば、キッチンもベッドも全部一気に視界に入って来た。
 初対面にも関わらず、プライベートな空間に呼びこまれたことに、ドギマギと落ち着かない気持ちになる。

「いいんだよ。こっちのほうが、気兼ねなくイロイロできるから」

 そういった彼のお尻から、ニョキニョキと尻尾が生えてきた。黒くて細い尻尾の先端には逆さになったハート型のような飾りまでついている。

「は!? えっ!? なんで尻尾!?」

 ポカンと彼を見つめている間に、ポスンとベッドに押し倒された。あれ? まだ部屋に入ったばかりだと思ってたのに、俺たちはいつの間に部屋の一番奥にあるベッドまで移動したんだ!?
 俺の背中に触れるのは、ふかふかの布団。うっかり気を抜いたら、このまま永眠しちゃうんじゃないかってくらい心地良い。いや、絶対こんなところで気なんて抜かないけれど。

「血液をあげるから、かわりに精気をちょーだい。なんでもしてくれるって言ってたし。それに、あんたからなら、たっぷり搾り取れそうだ」

 彼は、ペロリと赤い舌で自分自身の唇を舐めた。その様子は酷く艶めかしい。

「え!? なに、どーゆーこと!?」
「腹ペコなのは、あんただけじゃないってこと」

 そう言った彼の頭からは小さな角が二本あらわれた。ちょっと待って。彼は人間じゃないの!? じゃあいったい何なの!?

「お、俺を食べちゃうつもり!? こ……こんなオジサンたべても美味しくないよぉ!?」

 俺は今年400歳になる。そして、俺にのしかかっている彼は随分若く見える。だから彼に比べたら、俺はだいぶ年寄りなんじゃないかな!?

「大丈夫、大丈夫! 貰うのは精気だけだから!」
「でも角が生えてて怖いっ」

 俺はカチカチと牙を鳴らした。
 夜道で見かけたときは、なんて可憐な女性が歩いているんだと思ったんだけど、俺の目はまったくの節穴だったようだ。

「まー、これでも淫魔ですから」
「ひぃぃぃ!! 淫魔っていうと、悪魔じゃないかっ!!」
「そうそう。オニーサン、物知りだね。それじゃあ、この事も知ってるよね? 『悪魔との契約は絶対だ』って」
「だ、だってキミが淫魔だなんて知らなかったんだもん!」
「だから今教えたじゃん。『何でもしてくれる』って約束だったよね。それじゃあまずは

 こんなところで契約を持ち出してくるなんてズルすぎる! しかも俺は自ら「何でもする!」と言ってしまった。自分の迂闊さを呪ってももう遅い。

「ポ……ポーシャだ」

 答えたくないと思っていても、口が勝手に動いてしまう。悪魔に名前を知られるなんて、生命を握られたに等しい。

「俺はミオ。よろしくな」

 挨拶代わりに啄むようなキスをされて、オレも相手に同じ動作を返す。俺の意思なんかじゃない。身体が勝手に動いてしまうんだ。俺はよろしくなんてしたくないのに!

「じゃ、さっそく。いただきます」

 次の瞬間、彼の着ていたものが全て消え失せた。

「え、嘘っ!?」

 彼の身体には多数の淫紋が刻まれ、背中に小さな羽が生えているのが肩越しに見えた。その姿を見て、間違いなく彼は淫魔なのだと再認識する。
 そういえば、俺のマントもいつの間にかなくなっている。二人ともベッドの上で全裸だ。

 瑞々しい身体つきの青年にふかふかのベッドで押し倒されている、干からびかけた貧弱な体型おじさん……いや、昔はもっとちゃんと筋肉とかついてたんだよ? でも、今は極限の飢餓状態だから、仕方ないじゃん。
 それに、いつもは俺が若い女性を押し倒して奪う側だ。それが、女性のような顔立ちの彼に押し倒されているだなんて……倒錯的な状況にパニックになっている間に、彼の身体が密着してくる。

「天国を見せてあげる」

 囁かれて、耳にキスを落とされた。掛かる息が擽ったい。
 吸血鬼に天国なんて見せてどーんすのっ!? そんなことされたら、俺、塵になっちゃうよ!? なんて一瞬思ったが、何かを言う前に、急に身体がムラムラし始めた。
 身体中にミオがキスを落としていくたびに、ビクンビクンと身体が跳ねる。

 このままだと本当に彼に食べられてしまう!!

 しかし、抵抗しようと思っても身体は快楽に従順な反応を示すだけで、力は全く入らない。ていうか、背中に触れるベッドの気持ち良さと、ミオから与えられる刺激で、蕩けてしまいそうだ。
 俺は触れられるだけで、はふはふと熱のこもった息を吐き続けた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!

永川さき
BL
 魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。  ただ、その食事風景は特殊なもので……。  元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師  まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。  他サイトにも掲載しています。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

オッサン織姫の受難

しづクロ
BL
天の川に隔てられた二つの里は、織姫役と彦星役が交わることで、里の繁栄を祈ってきた。 成り手のいない織姫役を長年勤めていたオッサンもついに引退。 天の川を渡り彦星に最後の別れを告げに来たのだが・・・。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

処理中です...