鬼将軍はムッツリ宰相に抱かれたい

夏芽玉

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2.異色で凄腕のネコ

 娼館に到着して自分の希望を伝えた後、ロビーで歓迎酒ウェルカムドリンクを振舞われた。準備が整うまで、これを飲んでくつろいでいて欲しいということだ。それからしばらくして、二階の部屋に通された。
 没落貴族の住んでいた町屋敷をそのまま買い取ったのだろう。建物はとてもいい造りで、調度品も上品なものが揃っていた。

 オレは今日ここで、初恋への未練と童貞を捨てる。

 そしたら、縁談を受けよう。
 実家は兄が継いでいるので、子供は必要ない。
 できるだけ年上の、家柄の良い人を娶ろう。
 そして穏やかな生活を送るのだ。

 そんなことを考えていたら、部屋のドアがノックされた。

「はじめまして、ダニーです。本日はお越しいただきありがとうございます」

 ドアから現れた人物に、オレは思わずソファーから転げ落ちそうになった。

「あ、あっ、あああ!? おまえっ……!! な、な、なんでだ……!?」

 身バレを防ぐためか仮面をつけているが、入って来たのは間違いなくダンカンだった。目元しか隠していない仮面では、燃えるような赤髪も緑色の目もばっちり見えている。ていうか、偽名を名乗って顔の一部を隠したくらいで、オレがダンカンを見間違うわけがない。

「本日はご指名ありがとうございます。たぁっぷりサービスしますねー」

 のっしのっしとダンカンがソファの前までやって来た。
 仁王立ちで目の前に立つ相手をオレは凝視した。

 ピンク色のスケスケのワンピースからは、筋肉質な手足がにょきりと生えている。
 なんだったら、もじゃもじゃの胸毛と立派な腹筋シックスパックも透けて見える。ちなみに彼が肌着として身に着けているのは、マイクロビキニタイプの胸当てと紐パンツだった。
 こんなメルヘンな衣装をごつい大男に着せるんじゃない。視覚的な暴力が酷すぎる。

「いやいや、ダンカン。おまえ、いったいどーゆーつもりだっ!! こんなところで何をやってんだ!!」
「さて、何のことでしょうか。私はダニーですよ」

 聞きなれない敬語に背中がムズムズする。
 つーか、はっきり言って気持ち悪いっ!!

「何をふざけたことを言ってるんだ。どっからどー見ても、おまえはダンカンだろーが!!」

 そして、おまえはこの国の将軍だろ!!
 なんでこんなところで男娼なんてやってんだ!?
 そもそも、うちの国って副業できたっけ!?
 いやいや。今はそれどころじゃない。

「ここではダニーっていう呼び名なんだから。合わせろよ」

 自分を偽ることをやめたのか、ダンカンはつけていた仮面を外して投げ捨てて、どっかりと床に胡坐をかいた。

「なんで、こんなところにおまえが居るんだ!!」
「趣味だよ、趣味」
「男漁りがかっ!?」
「んー……漁るっつーより、漁られるほうが好みだなぁ……」

 た、確かに、オレが指名したのはネコだ。
 ということは、ダンカンは抱かれる立場なのか?
 この容姿とこの体格で?

 そこで、オレは噂の真相にようやく気づいた。
 娼館に行ったら、鬼将軍がこんな格好で出てきた……なんて、口が裂けても言えるわけねぇよな……しかも、ヤってみたら穴の具合はヨいらしいし……

 ゴクリ、と喉が鳴る。

 オレはこの男を金で買った。
 ということは、今、こいつを抱く権利を有しているというわけだ。

「そんなことより。ここに来たってことは、パーシィも男はイけるクチか? そうなら、せっかくだし、ヤるか?」
「んあっ……!?」

 うっかり思考の海に沈んでいたら、ソファのすぐそばで膝立ちになったダンカンが、オレのズボンからチンコを取り出していた。しかも出てきたソレは、いつの間にか完勃ちしている。

「オレ相手じゃ勃たねーかなって思ったんだけど。そんなことはねぇよーだし?」
「おまえ……何か盛っただろ!?」

 学生の頃から、ダンカンとの触れ合いは多かった。生着替えを見たり、一緒に風呂に入ったり、一つの布団で寝るようなこともあった。だから、普段からダンカンとのちょっとした触れ合いごときであっさりと勃起してしまわないように、常に意識訓練していた。
 おかげでラッキースケベは見てないふりでチラ見しながら、全力で脳内記憶に叩きこむのが特技になった。一人になった後に克明に脳内再生できるオプションつきだ。その時までムラムラするのを我慢するなんて造作もないことだ。
 そんなオレが、短時間ダンカンと喋っただけでこんな身体になるハズがない。

「あー……ここに来た時、歓迎酒ウェルカムドリンクを飲んだだろ? あれは、ちょっとだけムラムラした気分になる酒なんだわ」
「はぁっ!?」
「まぁまぁ。違法なものじゃねーし、明日には抜けてるから心配すんなって」

 オレのチンコを握ったまま、服の上からダンカンがオレの太腿をさわさわと撫でる。

「んぐっ……さ、触るな……」

 わざと煽るような手つきで触れられると、理性がどこかに飛んでいってしまいそうだ。

「ヤりに来たんだろう?」
「違う!! あ、いや、違わねーけど……」

 オレは、ダンカンへの恋心を断ち切るために男娼とセックスをしに来たんであって、ダンカンとセックスするためにここに来たんじゃない!!

「気が乗らねぇっつーなら、手と口で抜いてやんぜ? オレ、うめぇよ?」
「んぐっ……!!」

 そんなことは知っている。なにせ、こいつはこの娼館のトップ男娼らしいからな。城内で噂になってオレの耳に入るくらいだ。
 つーか。そういえば、噂話をしていたあの下っ端兵士どもは、オレより先にダンカンを抱いたっていうのか!? ダンカンの処女を食ったのはどいつだ!! 見つけ出したら、絶対に辺境の地へと飛ばしてやる!!

 オレ以外にこいつの身体を知っている奴がいる。そう思ったら、なんだか悔しくなってきた。

「……やっぱりヤらせろ」
「おお、いーぜ」


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