LUNA:2016-A PIECE(S) OF A JUVENILE-(COMPLETE EDITION)

神橋つむぎ

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PART 2:闘争編

21st PIECE:Good luck.

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「うああああああああっ!」
 ルナを強制的に取り込もうとするソルの呻き声が轟く。彼は膨大な熱を発していたため、彼女を助けに行こうにも陽太は近付く事が出来なかった。その間にもルナはどんどん彼の中へと吸収されていく。
「オイッ……一旦逃ゲルゾ!」
「逃げるっ……!? ルナを見捨てるのかよ! さっきの妨害電波でまた動きを止めれば……!」
「アレハモウ今日ハ使エネーヨ! 落チ着ケ! 一旦ダッテ言ッテンダロ! マダ策ハアル!」
「……ほんとか!?」
「アア! ダカラココハ一旦引ケ!」
 ガルダの言葉を信じて陽太はその場を離れる事にした。センゴクの敷地の外ではなく、さらに奥へと逃げていく。おそらくルナと一体化したソルは彼を追ってくるだろう。途中陽太は、彼に殺されたセンゴクの従業員が使っていた銃を恐る恐る拾った。
 その後ソルとルナの融合反応が沈静化を始めた。姿はほとんど一体化前のソルと変わりが無かった。ただ、髪の色はルナの持っていた水色、肌は日本人に近い黄色おうしょくに変化し、左の瞳もルナの青へと変化していた。
「……まだだ……まだ不完全……これじゃあセミコロンって言った所だ……!」
 ソルは体に違和感を覚えていた。意識ははっきりしている。融合は不完全なまま速度を落としていた。ルナの意思を無視して一方的に始めたため、本来ならおそらく半々になるべき意識の全てを彼が支配していたのである。あいつ……ヨウタはどこに行った……? まずあいつは殺しておいた方がいい……あいつを生かしておくとこれからルナがどんな反応を見せるかわからない……! 索敵を開始するが体が馴染んでいないせいで上手く機能しない……くそっ……。
 表面上は収まっているが一体化は内部で確実に進んでいる……ゆっくりでいい……いずれ完全に僕とLUNAルナが結合し、ひとつになる……そうすれば究極の兵器の誕生だ……! 陽太を追い、彼も敷地の奥へと歩き始めた。適当に建物を破壊していってもいいが、あいつは直接この手で殺す……!

 21st PIECE:「頑張れよ。」

 商品が保管されているスチールラックが立ち並ぶある倉庫の中にソルは足を踏み入れた。明かりはついておらず薄暗い。この中に陽太達が潜んでいるかもしれない。索敵が出来ないのは本当に面倒だ。
「ヨウタ~、いないの? いたら出ておいでよ。殺してあげるからさ~」
 当たり前だが返事は無い。
「……LUNAも言ってるよ? 君に会いたいってさ」
 そんな事は知らないけど。
 あの鳥……何かまだ策がある様子だった。という事は、あいつらはもう一度僕に近付いて来るはずだ。LUNAを奪い返すためか、あるいは、僕を破壊するために。
 倉庫の奥へ奥へと進んでいくにつれ闇は広がる一方だった。広い倉庫には彼の足音だけが響く。この中に奴らがいるとすればどこなのか……ラックの間の通路か、それともラックのどこかの段……段ボールの後ろにでも隠れているのか、そうだとしたら上なのか下なのか、それともここにはいないのか……。
 とあるラックの前で彼の腰ほどの高さにある段に収められている段ボール箱の後ろから鳥の尻尾の様な物が飛び出しているのをソルは見付けた……こんな単純なミスなんて、つまんないな……。
「……馬鹿だろ、お前ら」
 嘲笑ってそれに手を伸ばす。
「!」
 しかし、そこにあったのは尻尾だけだった。赤い機械鳥の本体はいない。
 気が緩んだこの一瞬の内に、彼のうなじに硬い何かが取り付いた。
「何っ……!?」

「俺ガサッキルナニヤッタミタイニマタアレニ取リ付イテ、融合ノ解除キーを打チ込ム。ソウスレバルナハ戻ッテ来ルハズダ」
 逃げながら陽太達は次の算段を整えていた。
「そんな事出来るのか……? 凄い兵器なんだろ? そんな事する前に見付けられて砲撃か銃撃かされるんじゃ……!」
「多分大丈夫ダ。融合シタ後ハシバラク体ガ馴染マナイカラ機能ガ制限サレルトカ聞イタ事ガアル。念ノタメチャフヲ撒イテオイタシナ」
「チャフ……?」
「索敵遮断ダ……受ケ取レ」
「!?」
 ガルダは突然首から上を切り離した。びっくりした陽太は慌ててそれが地面に落ちる前に拾う。
「なっ……何やってんのお前!?」
「俺ガ失敗シタ時ノタメニオ前ハ俺ノ首ヲ持ッテロ。ソノ状態デモ操作シテアレノ中ノ制御装置ヲ狂ワセテシンクロ率ヲ落トス事ガ出来ル。ソウスレバ融合ハ解カレルハズダ。ドウニカシテ奴ノ口ノ中ニデモ突ッ込メ」
「く、口の中に……!?」
 気味悪さを感じながらも陽太はガルダの首を確認した。トリガーが付いている。きっと彼が先ほど切り落とす前に体の内部から出したのだろう。
「ダケドソレハ最終手段ダ。クッツイテルノヲ無理矢理引キ離スンダカラ、ルナニ副作用ガ起コル可能性ハ十分ニアル」
「副作用……出来れば使わずにいたいよ……ていうかお前、今の首が無い状態で見えるのか?」
「サブカメラガ付イテルカラ大丈夫ダ」
「そ、そうなんだ……」
「マア、ソノ、何ダ。俺ガ失敗シタラ、オ前ダケニナルカモシレナイケド、頑張レヨ」
「……! そんな事言うなよ……!」
「モシオ前ガ成功シタラ、ソノ時ハルナヲ頼ムナ」
「だからそんな事言うなって! お前も一緒に帰ろうぜ!」
「……アア、出来レバナ」

「……っ!」
 ソルの目の前にあるラックのすぐ後ろで陽太は段ボールと中板との隙間から様子を窺っていた。
 頼むから、成功してくれ……!
「……お前……鳥か……!」
 ソルはすぐにその手でガルダをがしりと掴む。
「解除キーヲ打チ込ンデルンダヨ! モウ半分ハクリアーシタゼ! 俺ヲ撃ツカ!? オ前ノ顔モ吹ッ飛ンジマウカモナ! マダ制御ガ出来ナインダロ!?」
「わざわざ撃たなくってもこのまま握り潰せばいいだけだろ!」
 彼の手に力が入る。ミシミシとガルダの体が唸り始めた……早くしろガルダ! じゃないとお前……! 陽太は見ている事しか出来なかった。もし彼が今出て行っても、ソルに斬られるか撃たれるかするだけだ。下手すれば一撃で死んでしまう可能性も十分にある。それではただの犬死にだ。
「グッ……! アト少シダゾ……ルナ……グググググ……ッ!」
「鳥のくせにうざったいんだよおっ!」
 ソルはいきり立ち力を強める……ガルダ……!
「安っぽい機械はさっさと壊れちまえっ!」
「グググギギギギギギガガガガガガガガ……!」
 ガルダの声が乱れていた。音声機能に狂いが生じてきたのかもしれない。早くしろよっ……! そして……!
「ガガガガガガガゲゲゲゲゲゴゴゴギャギギャギョグルゲゲゲ……ル……ナ……!」
 その小さなメタリック・レッドの硬い体は、空き缶の様にぐしゃりと潰れて爆散した。この時、ソルが目を瞑っているのを陽太は見逃さなかった。
 ……っ! くそおおっ……!
「ガルダアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
 涙を流し陽太は友の名前を叫びながら飛び出た。そのまま反応が遅れたソルの口の中に彼から受け取った頭部をじ込む。
「うぐあっ!?」
「いい加減ルナを返せええええええええええええええええっ!」
 トリガーを引くとソルはうろたえ始めた。
「うごおあっ……!? やっ……やめろっ……! うあああああああっ!」
 苦しみその場に倒れ込む。そんな彼を陽太はただ茫然と見ていた。これで、ルナが……戻って来る……のか……?
 しかし、ソルは息を切らしつつ立ち上がった。融合が解ける様子は無い。失敗した……!?
「残念…………出力不足だったみたいだね……! はは……! はーっはっはっ……!」
 だが、そう高らかに彼が笑った途端、彼の胸部が突如爆発を起こした。
「がはっ!」
 吐血が陽太の顔に飛び散る。何が起こっているのかわからなかった。やっぱり成功したのか……!?
 そしてルナが、初めて出会ったあの日と同じ一糸纏わぬ状態で彼の中から解き放たれた。陽太はそれをしっかりと抱き留める。
「……! ルナッ……!」
「……よ……陽太……」
「なっ……何だ……! 修復が追い付かない……!」
 体にぽっかりと穴が開いたままのソルは再び倒れた。そこからは大量の血液が流出していた。
「こ……れ……は……!」
「私の核と君の核を内部で反応させて爆発を起こしたの……!」
「な……動力炉が破壊……された……!? そ、それ……じゃあ……それじゃあ僕……は……!」
「もう……活動が出来ない……!」
「そ……んな……何も……機能しない……! こ……壊れ……………………」
 少年はぴくりとも動かなくなった。
「……! し……死んじゃったの……!?」
 震えながら陽太は弱っているルナに尋ねる。彼女は彼を少しでも安心させようと一度笑顔を作った後表情を暗くして答えた。
「……うん……私が殺しちゃった……」
「……! ちょっと待って……! 君の核とソルの核を反応させたって言った……!?」
「……うん……」
「……!」
 彼は言葉が出なかった。認めたくない。信じたくない。こんな、こんな結末……。
「私も……もうすぐ止まっちゃう……」
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