白雪姫 他童話より

小野遠里

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眠りの森の美女

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 鬱蒼とした森の手前で若者は立ち止まった
 森の奥の方に何か光るものが見えたのである
 なんだろう、と不思議に思った若者は、その辺にいた木こりに
「ありゃなんだ?」と尋ねた
 木こりは、ああ、と笑う
「お城ですだ。美しいお姫様が魔女の呪いで眠ってるだ。誰かのキスで目覚めると云われてるだ。多くの者が城を求めて森に入っていっただが、帰ってきたものはいないだ」
「なるほど、なら俺も一丁挑戦してみるか」
「だめだと思うだ。あんたは不細工すぎる」
 大きなお世話だと、若者が剣を抜くと、木こりは慌てて逃げ去った

 若者は腕と力に自信があったので、自分ならばと森の奥に入っていった
 城を見つけて、門を蹴破り、絡まって来る蔦を切り裂き、襲って来る魔物を倒し、罠を避け、姫の眠る中庭のテラスに至った。
 眩いまでに美しい姫が、台の上で眠っている
 真っ黒な髪、真白な肌
 キスして起こして差し上げれば、おれと結婚してくれるだろうか? たんまりと恩賞がいただけるだろうか?
 キスしようとして、木こりの言ったことを思い出した
 姫は若く美しい王子のキスを待っているのだ
 不細工な俺の顔を見て、逃げ出すかもしれん
 結婚は愚か、恩賞も望み薄だろう
 ならば、先に褒美だけでも頂くか、と不埒にも姫の着物を脱がしにかかった
 一糸纏わぬ姫は一層美しい
 若者は姫の身体を、舐めまくり、撫でまくり、脚を広げて、えいやっと挿れる
 姫は、死んでいるわけではなく、眠っているだけだから、反応もあって、なんともいえぬ。天にも昇る心地であった
「よかった。天女を抱いたような気分だ。褒美はいただいたのだから、キスして起こしてさしあげねばならないが、もう一度やってからでも遅くはあるまい。百年も待ったのだ、もう一時間やそこら待てるだろう」
 と、一旦台を降りて水を飲んだ
 しかし、姫と姫の周りには、強力な眠りの魔法がかかっていて、若者は姫を抱いた疲れもあってか眠ってしまい、二度と目覚めることがなかった
 姫は保身の強い魔法で守られているから、歳を取ることも、餓死することも、虫や動物に食べられることも、病気になることも、腰痛になることも、妊娠することもなかったが、若者はそうではない。ひと月もせぬ間に餓死し、動物や虫に食べられ、みるみる白骨になってしまった

 それから何年かたって、また姫の処まで辿り着いた者がいたが、やはり裸身の美しい姫を見て、良からぬ気を起こし、前の若者と同じになった
 次の者もその次の者も同じであった

 そして、数百年、姫は眠り続け、犯され続けて、今に至っている
 美しき姫の裸体の周りには、白骨が折り重なっている
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