博士の作ったもの

小野遠里

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ドーナッツとんだ

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 K博士から電話があって
「面白いものを作ったから見に来てくれ」と言う
「何なんです?」
「うん、面白いんじゃが、実用化は難しそうなので、せめて君には見せておこうと思ってな」
「なるほど、すぐ行きます」

 着くと、博士は研究室内にキッチンを作って作業していた
 整理整頓には無頓着な博士にしては綺麗にしている
「キッチンはキチンとしとかんとなあ」
「はあ」
「まず、これを食べてみてくれ」
 スイッチを押すとウィーンと機械が言って、ドーナツが出てきた
「食ってみてくれ、美味いから」
 確かに美味かったが、これが面白い発明なのか、博士らしくない
「それで、これだ」
 と輪投げの的みたいなのを出してきた。下に円盤があって真ん中に棒が立っている
「数字のボタンがあるじゃろ。部屋の隅に持って行って、①を押してみてくれ」
「はいっ」
 部屋の隅にあるテーブルに置いて、①を押した
 すると、ウィーンと機械が言って、ドーナツが作られ、ポンと吐き出されて、空を飛んで輪投げの的に着地した
 食べてみるとさっきのと同じ味である
「ドーナツってるんですか?」
「・・・・ うん
 反重力の粉をまぶしてあるのだ。それを的マシンで制御している。同じ室内であれば何処でも目標に到達できるのじゃな」
「面白いじゃないですか。人件費の節約にもなるし、宙をドーナツが飛び交っているのも面白いし、味はさっきのと同じで美味しいし」
「うわっ、喰ったのか」
 と博士が驚いた
「拙かったです? 毒とか?」
「いや、消化はされないから無害だ。ただ・・・」
「ただ何です? 身体が浮いちゃうとか」
「身体は質量が大きいから、それくらいの反重力粉末は問題ではない」
「では何が拙い?」
「うん。消化されないから、明日の朝、便と一緒に排出されるのだが、便は軽いから
 つまり、ウンコが浮いてしまう
 空飛ぶウンコじゃな
 捕まえるのが大変なのじゃ」

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