あくまで復讐の代行者

ゆーにゃん

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第四章

四人目 復讐は当事者のみならず その一

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 ある家に集まった二人の男。一人はしきりに電話をかけ続ける。しかし、電話の相手は誰一人として出ることはなかった。

「くそっ! なんで出ねえんだよ!」

 自身のスマートフォンをベッドに投げつける。不安を隠せず苛立ち、舌打ちを何度も繰り返す。少し長めの黒髪を後ろでに一つに束ねた大柄な男。

「落ち着け、康介こうすけ

 もう一人の男、康介と呼ぶ男をなだめる。

「だけどよ……!」
「ネット記事に書かれている通りだろうな。真理子も電話に出ないということは」
「誰がやったって言うんだよ! おかしいだろ、誰とも連絡が取れないなんて! 駿しゅんはそう思わねえのか⁉」

 駿と呼ばれた男は苛立ち喚き散らす佐藤康介とは打って変わり怒り散らすこともなく冷静だった。金髪に染めた短髪を刈り上げ、両耳に赤いピアスをつけている。

 一ノ瀬駿は考える。誰とも連絡が取れず、警察が動いているのに行方不明ということ以外何も分からない今の状況。そして、行方知れずの者があの件に関わっているということ。

「まさか……」

 一人だけ、思い当たる人物が頭に浮かんだ。数年前に、真理子に会いに来て邪魔だから神社の石段で突き落とし口封じしようとした弟が。

「あの弟が関係しているのか……? もし、そうなら直接会って確かめるしかない」
「なんだよ、駿? 確かめるって何を?」

 康介は、駿の独り言に首を傾げる。

「あの三人の行方を知っている可能性がある奴だよ」
「誰だそれ?」
「康介も覚えているだろ? 大磨秋乃のこと」
「ああ、大磨か。そりゃあ、覚えてるぜ。真理子が気に入らないからとかで、俺に犯してもいいって言ってきたし。あれはあれで、楽しかったからな」

 その当時のことを思い出し笑う康介。無理やり犯すのは最高だ、もっとやっておけばよかったな、などと過去を振り返る。

「その弟が俺たちに復讐しているとしたら?」
「は? 復讐って。漫画の読みすぎやアニメの観すぎだろ! キモいな!」

 駿の言葉に、馬鹿にし高笑いをする康介。

 駿も、康介の意見に賛成だがどうしても拭い切れない。あの虐めが未だに公表されていないところを見ると、大磨夏目は誰にも言っていないのだろう。そして、あの弟一人で復讐なんてできやしない。
 人を殺せば捕まる。証拠を残さないようになど不可能だ。

「なのに、なんだこの不安は……」

 次は、消えるのは己かもしれないという恐怖が波のように迫ってくる不安に心がざわつく駿だった。
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