偽りの神人 ~神造七代の反逆と創世~

ゆー

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第四章 神山学園のレヴィアタン

第一幕 風紀委員長の襲来(1)

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 何事もなく穏やかな日々が過ぎる五月の下旬。

 変わり映えしない授業、教室でも何か変わるうようなことは起きない。普段と同じように過ごす。



 午前の授業が全て終わりを告げるチャイムが鳴る。お昼休みだ。



「さて、どこで食べようか……」



 今日のお弁当をどこで摂るか悩む夏目。

 弁当箱が入った小さなバッグを持って教室を出ると、廊下で部活メンバーの秋山燐と東雲桜の二人に会う。



 二人は巫女だ。燐は炎を操り、桜は結界を張る能力を宿している。



「おっ、燐と桜。今から、部室で昼食なんだけ二人もどうだ?」

「夏目じゃないか。すまない、風紀委員長に呼び出されていてな」

「夏目くん。ごめん、あたしたちのことは気にせず先に食べてて」

「ん? そうだったのか。分かった、じゃあな」



 二人と別れ、部室へ。



 美哉も、生徒会長こと東雲春人に用事があると生徒会に赴いている。

 部室のソファーに座ると、ヨルムンガンドのお待ちかねのお弁当タイムだと言わんばかりに姿をさっそく見せた。



「夏目、早く早く!」

「はいはい。広げるから待った」



 テーブルの上に美哉が、夏目とフェンリルたちに作ってくれたお弁当を広げる。テーブルの上に乗り、早く食べたいヨルムンガンドの体が揺れまくる。



 弁当箱の蓋にヨルムンガンドの分を取り分ける。おにぎり、卵焼き、肉団子、ほうれん草のおひたし。

 それを目の前に持っていくと目を輝かせがっつく。



「いただきます! はぐはぐっ」



 フェンリルにも専用のお弁当を用意してくれている。丸い弁当の中身は白米の上に生姜焼きが乗った丼風だ。



「おおっ! さすが、美哉だ。いただきます」



 そう言ってこちらも、はぐはぐっと嬉しそうに食べる。夏目も、ヨルムンガンドと兼用の二段の弁当を食べ頬が緩む。



「んっ~! 美味い!」



 おにぎりの具は鮭、梅、おかかと定番だ。卵焼きも甘めでふんわり、肉団子も甘辛のタレが良い味を出し箸が止まらない。少し口の中が辛くなれば、ほうれん草のおひたしで口直し。



 そうして静かで落ち着く部室で食事を済ませお茶を啜る夏目。



「あ~、美味しかった」



 まったりした時間が流れる空間に足音が近づく。



 美哉が来たのだと思った夏目は扉に視線を向ける。すると、バンッと勢いよく部室の扉が押し開けられ中に入ってきたのは先輩女子だ。



「……っ!」



 ビクッと肩を揺らし、見知らぬ先輩を凝視する夏目。



 神山学園では、男女共に学年ごとでネクタイまたはリボンの色が異なる。目の前の夏目を見下ろし、笑う彼女のネクタイの色は二年を示す赤色。つまり、美哉と同学年だということ。



 彼女は、明るめの青色の髪に全体的にふんわりとし毛先がウェーブ、吊り目の金色の瞳がある場所を見つめる。

 その視線の先には、一般人にはただのテーブルしか映らない箇所。しかし、彼女は口の端を上げ言う。



「ふーん。綺麗に隠れるわね」

「――――っ!?」



 その一言に夏目はむろん、即座に彼の影に隠れたフェンリルとたったの一秒足らずで姿を透明化させ気配すらも消したヨルムンガンド、ここにいる全員が驚き身を固くさせた。



 そして、彼女は夏目へ視線を戻し笑みを浮かべながら言い放つ。



「連行させてもらうわ、逢真夏目。いや、二ヶ月前に覚醒した新たな神殺し」

「なっ!? なんで……!」



 目を開き、状況が読み込めない夏目へフェンリルが念話で叫ぶ。



『主、逃げよ! この女は危険やもしれぬ!』



 ヨルムンガンドも同意見のようで夏目の首に巻きつき伝える。



『逃げよう! この人、ボクが見えてるよ!』



 相棒たちの言葉にようやく体が動いた夏目は窓へ走る。ここは三階だが、神殺しの身体能力なら問題はない。



 窓から飛び降り、地面へ難なく着地し全力で逃げ出す。



 逃げ出す背中を眺めた彼女は、「ふっ、ふふはははははっ!」と高笑いに舌舐めずりをし同じく窓から飛び降り華麗に着地。



「面白いじゃない、私と鬼ごっことは。楽しませてもらうわ、逢真夏目」



 彼女の高笑いを聞き、背後を振り返り叫ぶ。



「何者なんだよ!」

『そんなことはあとだ! よいから前を向き走るがよい!』

「うわっ!? 追いかけてきたよ! 逃げて!」



 と、背後を見て焦った声で伝える。



「あはははははっ!」



 後ろから楽しげに笑う声が迫りくる。夏目からしてみれば、変人に襲われる恐怖が込み上げて何が何でも逃げ切りたい気持ちが強くなっていく。



「ちょっ!? ほんとになにっ!? 怖いって!」



 全力で逃げる羽目になった。
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