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第四章 神山学園のレヴィアタン
その身に纏うのは(3)
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美哉とフェンリルが眠りについた深夜。夏目とヨルムンガンドは、こっそりと部屋を抜け出し習得部屋へ降りてきては小声で話し合っていた。
「起こしてないよな?」
「うん。起きてないよ」
「よし、始めよう」
「分かった」
無理をすれば恋人と相棒が必ず止めに入ることを理解していた。だが、このままでは習得に時間が掛かり過ぎて間に合わないのも事実。
そこで、フェンリルにも悟られないよう、ヨルムンガンドと念話で話し合い深夜にこっそり起きて、習得のために睡眠を削る手に出たのだ。
合体はというか融合は上手くいくが、その先が全くと言っていいほどに躓くのが現状。
五感共有をものにするためまずは、視界から慣れることに。床に座り、深呼吸を繰り返す夏目。首に巻きつくヨルムンガンドと融合する。
目蓋を開ければ、神獣が見ている景色が広がり情報が脳へ送られる。
視界共有の難しいところは、集中力が切れると夏目が見ている景色へ変わり、お互いに見えている光景が混じり合い情報処理が追いつかないこと。
結果、吐き気と気持ち悪さに解けてしまう。
これは、夏目が意識し己の視界を閉ざし続ける必要がある。想像するなら、目蓋を閉じていながら脳には景色が見える状態。自身の目で、何も見るなということだ。
言うのは簡単だが、実際に行えば難しいの言葉では収まり切らない。頭痛、目の奥が痛み、疲れているような感覚が襲う。
目元の周りの血管が浮き上がり、ヒリヒリと熱を帯び火傷に似た痛みが生じる。
「……っ!」
痛みに耐え、ゆっくりと目蓋を開け部屋の壁に貼ったアニメのポスターを視界に捉え認識できるように見つめる。明かりは点けず、暗闇の中でも見えるように目を慣らす。
『どう? 見える?』
「ああ。視野が広くて見やすいし、暗闇でも部屋の中がはっきりと分かるよ」
『じゃあ、嗅覚と聴覚もボクのを使う?』
「そうだな。俺よりもヨルムンガンドの方が優れてるし」
『いくよ』
「おう」
視界の次は他の五感を試す。一瞬、嗅覚と聴覚が一切感じられない感覚が襲うがすぐに聞き取り、部屋の匂いを感じ取れた。
閉まり切った窓から聞こえる風の音、普通なら聞こえない音だが今では確かに聞き取れる。匂いも微細なものを嗅ぎ分けられる、壁に貼ったポスターの紙の匂いはむろん部屋の中に漂う匂いも。
『大丈夫、夏目?』
「ああ、大丈夫。視界の時より平気だ。これなら、少しだけ外に出てみてもいいかも」
『夏目が平気なら行ってもいいよ』
五感はヨルムンガンドのを借り、動かすのは基本的に夏目が担うことに。
そう決めると、やはり体に慣らすため立ち上がり息を吐く。夏目の体の一部の皮膚には、ヨルムンガンドの鱗が現れていた。パーカーを着込み、足音を消し外へ。
深夜に出て行くのもどうかと思うが、一秒でも早くものにしたい夏目とヨルムンガンドは行動を起こす。
軽くストレッチをして夜の町を走る。近くの公園まで走り、帰ってくるというルートだ。
走る中、流れる景色は鮮明、耳へ入る音は遠くのものまでも拾い、様々な臭いが絶え間なく脳へ情報を送る。
鼓動を二つ感じ、自分の体にもう一つの体が全身に覆い被さる感覚、体重が倍に重く伸し掛かり走る脚が鉛のように動かし難い。
いつも見ている景色が異なり、その上で見えなかった範囲が今は鮮明に認識できる。その代わり、頭痛が増していく。それでも、集中力を欠かすわけにはいかない。
走り続け、玄関前まで戻ってくる夏目の呼吸は荒く乱れていた。
「はあっ……はあっ……」
肩で息をし全身から汗が吹き出て、手を膝につき腰を折る。音、臭い、肌に触れる感触がまるで別の何か、それさえ説明ができないものに感じ頭が狂いそうになる夏目。
『もう、やめた方がいいよ。夏目……』
「そ、そうだな……。これ以上は、胃の中のもん全部吐き出してしまいそうだ……」
融合を解き、リビングへ戻る。ソファーに倒れ込み息を整える。
「大丈夫?」
「ああ……、何とか。でも、試したお陰で掴めそうな気がする」
「本当!?」
「しーっ! 美哉たちが起きちゃう!」
「あっ、ごめん。つい……」
つい大声を上げてしまったヨルムンガンドに、人差し指を立て声を抑えてと意思表示する夏目。
「これを繰り返せば、ものにできるって思うんだ」
「じゃあ、頑張らないとだね」
「ああ、そうだな」
夏目が右手の拳を突き出せば、ヨルムンガンドも頭をコツと当て笑い合うのだった。
「起こしてないよな?」
「うん。起きてないよ」
「よし、始めよう」
「分かった」
無理をすれば恋人と相棒が必ず止めに入ることを理解していた。だが、このままでは習得に時間が掛かり過ぎて間に合わないのも事実。
そこで、フェンリルにも悟られないよう、ヨルムンガンドと念話で話し合い深夜にこっそり起きて、習得のために睡眠を削る手に出たのだ。
合体はというか融合は上手くいくが、その先が全くと言っていいほどに躓くのが現状。
五感共有をものにするためまずは、視界から慣れることに。床に座り、深呼吸を繰り返す夏目。首に巻きつくヨルムンガンドと融合する。
目蓋を開ければ、神獣が見ている景色が広がり情報が脳へ送られる。
視界共有の難しいところは、集中力が切れると夏目が見ている景色へ変わり、お互いに見えている光景が混じり合い情報処理が追いつかないこと。
結果、吐き気と気持ち悪さに解けてしまう。
これは、夏目が意識し己の視界を閉ざし続ける必要がある。想像するなら、目蓋を閉じていながら脳には景色が見える状態。自身の目で、何も見るなということだ。
言うのは簡単だが、実際に行えば難しいの言葉では収まり切らない。頭痛、目の奥が痛み、疲れているような感覚が襲う。
目元の周りの血管が浮き上がり、ヒリヒリと熱を帯び火傷に似た痛みが生じる。
「……っ!」
痛みに耐え、ゆっくりと目蓋を開け部屋の壁に貼ったアニメのポスターを視界に捉え認識できるように見つめる。明かりは点けず、暗闇の中でも見えるように目を慣らす。
『どう? 見える?』
「ああ。視野が広くて見やすいし、暗闇でも部屋の中がはっきりと分かるよ」
『じゃあ、嗅覚と聴覚もボクのを使う?』
「そうだな。俺よりもヨルムンガンドの方が優れてるし」
『いくよ』
「おう」
視界の次は他の五感を試す。一瞬、嗅覚と聴覚が一切感じられない感覚が襲うがすぐに聞き取り、部屋の匂いを感じ取れた。
閉まり切った窓から聞こえる風の音、普通なら聞こえない音だが今では確かに聞き取れる。匂いも微細なものを嗅ぎ分けられる、壁に貼ったポスターの紙の匂いはむろん部屋の中に漂う匂いも。
『大丈夫、夏目?』
「ああ、大丈夫。視界の時より平気だ。これなら、少しだけ外に出てみてもいいかも」
『夏目が平気なら行ってもいいよ』
五感はヨルムンガンドのを借り、動かすのは基本的に夏目が担うことに。
そう決めると、やはり体に慣らすため立ち上がり息を吐く。夏目の体の一部の皮膚には、ヨルムンガンドの鱗が現れていた。パーカーを着込み、足音を消し外へ。
深夜に出て行くのもどうかと思うが、一秒でも早くものにしたい夏目とヨルムンガンドは行動を起こす。
軽くストレッチをして夜の町を走る。近くの公園まで走り、帰ってくるというルートだ。
走る中、流れる景色は鮮明、耳へ入る音は遠くのものまでも拾い、様々な臭いが絶え間なく脳へ情報を送る。
鼓動を二つ感じ、自分の体にもう一つの体が全身に覆い被さる感覚、体重が倍に重く伸し掛かり走る脚が鉛のように動かし難い。
いつも見ている景色が異なり、その上で見えなかった範囲が今は鮮明に認識できる。その代わり、頭痛が増していく。それでも、集中力を欠かすわけにはいかない。
走り続け、玄関前まで戻ってくる夏目の呼吸は荒く乱れていた。
「はあっ……はあっ……」
肩で息をし全身から汗が吹き出て、手を膝につき腰を折る。音、臭い、肌に触れる感触がまるで別の何か、それさえ説明ができないものに感じ頭が狂いそうになる夏目。
『もう、やめた方がいいよ。夏目……』
「そ、そうだな……。これ以上は、胃の中のもん全部吐き出してしまいそうだ……」
融合を解き、リビングへ戻る。ソファーに倒れ込み息を整える。
「大丈夫?」
「ああ……、何とか。でも、試したお陰で掴めそうな気がする」
「本当!?」
「しーっ! 美哉たちが起きちゃう!」
「あっ、ごめん。つい……」
つい大声を上げてしまったヨルムンガンドに、人差し指を立て声を抑えてと意思表示する夏目。
「これを繰り返せば、ものにできるって思うんだ」
「じゃあ、頑張らないとだね」
「ああ、そうだな」
夏目が右手の拳を突き出せば、ヨルムンガンドも頭をコツと当て笑い合うのだった。
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