偽りの神人 ~神造七代の反逆と創世~

ゆー

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第二部 第七章 終わりの始まり

世界の崩壊後(2)

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 そして現在、わたしと遥は商業施設の地下で暮らしている。

 ここで暮らしているのは、大人や子供を合わせておよそ百人。わたしと遥は、従業員の控室を寝床にしてあと二人いるんだけど合わせて四人の共同生活。

 女四人、寝袋で雑魚寝をし大人が食料を確保しに二日ごとに外へ。

 クッションに座るわたしの黒髪を手櫛でとく遥。後ろへ一つに束ね三つ編みにしてくれる。



「できたよ」

「遥、ありがと。やっぱり、遥にしてもらう方が綺麗に仕上がるわ」

「そう?」

「うん!」



 結び終わると手鏡で確認し満足。遥は、わたしと違って手先が器用だし細かい作業とかも、もくもくとしてるんだよね。

 隣に座り直す遥を見る。同じ黒髪だけどショートに首まで切り揃え、特徴的なのが左側の横髪を鎖骨辺りまで伸ばし、毛先を赤い紐で結んでいること。金色の目に、無口のおとなし目、あまり感情を表に出さない幼なじみ。



 けれども、わたしには遥が何を考え思っているのか口に出さずとも理解できるの。

 遥のことなら何でも知ってるんだから。

 それはそうと、せっかく遥と二人きりで使える部屋だったのに……。



 わたしは、一緒にこの部屋を使っている二人を見た。

 年上、大学生くらいかな? この二人が一緒に住み始め一週間、最初は遥と二人だけで気が楽だったけど、ここへ逃げ込みどこも部屋が空いていないし、女二人で使っていることもあり四人で使ってほしいと。



 大人たちに言われて、嫌とは言えず了承するしかない。

 でも、わたしはこの二人にあまり良い印象がない。こんな状況というか、外は死ぬかもしれない世界。だから、文句を言いたい気持ちは分かる。でも、それを毎日のように同じことを口にするのはどうなの?



「なんでこんな世界になってるわけ? オタクが好きそうな世界とか気持ち悪くて嫌なんだけどー」

「それな。意味わかんないし、お風呂も入れないとか最悪」

「キモいおっさんとかいるし、子供の泣き声がうるさくて眠れないしー」

「ああ、分かる。こんな寝袋で寝ろとか、私らキャンプしに来たわけじゃないだけど」



 などと吐き出す。それを聞かされるわたしたちの身にもなってよ。

 わたしからしてみれば、うるさいの子供じゃなくてあんたたちだから。少しは黙っていてほしい。



 おまけに、手持ちのバッグの中身は食料ではなく、コスメ類ばかりで見た目を気にするあまり生きることより、男共にチヤホヤされたいようにしか見えない。

 生きるか死ぬか、の状況でそんな余裕があるのかと呆れている。というか、バカでしょ。



 今も、二人は鏡を手に持ち必死に化粧をしているのだ。爪の手入れから眉を整え、無駄にアクセサリーで着飾る。

 確かに、ここには男性の方が多く若い人もいるにはいるけど。でも、男だろうと自分の命を護れるのは己だけ。そして、その手に掴める者だけしか救えない。



「……あと、香水の匂いが嫌い」



 そう遥にしか聞こえない声で呟く。臭くて鼻につく。

 そんなわたしに遥が耳元で囁く。



「今日はどうする?」



 顔を上げると目が合う。



「行く」



 すぐ答えを出す。遥の手を取り控室を出て地下の施設を歩き回る。情報収集のため。

 歩きながら周囲を見る。お年寄り、子供連れもここに集まり身を寄せ暮らす。協力し合って生きようと掲げるのはいいけど、いつまでも続くとは限らずどこかで少しずつ狂っていくもの。



 わたしも、遥もそろそろ移動すべきと考えていると子供の泣き声が聞こえてきた。

 小さな子供が泣き、親だろう母親が慰めるけどそれでも泣き止まず、年老いた男性が怒り散らす。

 泣き声が耳障りだ、静かにしろ、と怒鳴り母親がすいませんと平謝り。子供を抱きかかえ隅の方へ移動していくのを、わたしも遥も見ているだけ。



「ここも限界かな……」

「だと思う。それに、ぼくには奏以外は助けられない」

「遥?」

「どんなに力があっても、ぼくの手は奏しか救えない。誰にでも手を差し伸べるなんて、ぼくにはできないから」

「……そう、よね。わたしも、遥しか救えないわ」



 わたしたちは、お互い以外を助けられる力なんかない。他人に優しさをかければ、それに縋って来る者や求めてくる者、思わぬ方向へ向かいどうしようもない事態に陥る可能性だってある。

 正義面するつもりはないの。二人でお互いを護り生き抜く、それしかできないからこそ何もしてやれない。

 その場を離れ、また別の場所へ歩いていると大人たちの会話が聞こえてくる。

 二人で聞き耳を立てると、



「そろそろ、食料が底を尽きそうだ……」

「飲料も残りが少ない。他にも幼児のオムツやトイレットペーパー、その他の日用品も数がない……」

「まずいな。このままだと……」

「どうする? 人数を減らすか?」

「バカッ! そんなことをすれば反感を買うだろ!」

「だったら、どうするんだよ!」

「それを今、話し合っているんだ!」



 会話の内容に、遥と目を合わせはりここに残り続けるのは危険だ、明日にでも出て行くべきと語り合う。

 バレないよう離れ、控室に戻るため引き返しているとまた別の場所から耳を疑う話が飛び込む。



「あのバカが襲ったんだ! これが露見すると騒ぎどころじゃなくなる!」



 今度はなによ? 新たな問題が起きたってこと?

 声がする方へ視線を向けると恐怖、焦りの表情を浮かべる男がメガネをかけたもう一人の男へ必死に助けを求めていた。

 メガネの男は怒りを見せながら言う。



「クソッ! あいつは何をやってるんだ! こんな状況で性欲を満たしてどうする!? バカなのか! 少しは考えて行動しろよ!」

「どうすればいい!? 女の方を隠すか!?」



 その会話だけで理解し、次に思うことは面倒ごとが起きた、と。

 ほんと、何をやってくれてるの! 狭い空間に他人と何日も過ごし、精神的に参っている時にやらかしてんじゃないわよ!



「奏、ここから早く出て行った方がいい。狙われるのは女で、襲いやすいぼくらみたいな子だ」

「そうね。ここに残ると、わたしたちが襲われるかも。生きるか死ぬかの状況で、よく強姦なんてしようって考えるわね。バカじゃない? それか、アホなのか」

「だからだと思う。死ぬ前にやりたいことをしよう、みたいな感じじゃないかな」

「なにそれ。くだらないわよ、そんな考え」

「だね」



 吐き捨てるように言うわたしの言葉に頷く遥。

 とにかく、明日に出て行くなんて言ってられない。早くここから出て行くたえの準備のために、寝泊まりしている控室に早足で戻る。
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