31 / 36
大樹の下で真実を
第29話
しおりを挟む
後ろ以外、壁に囲まれ行き場を失う。
くそっ、なんで行き止まりなんだよ!
壁の高さは三メートルくらいで飛び越えるのは可能なのに、侵入者防止の針金が邪魔で真冬を抱えて飛び越えるのは無理がある……。
「ナイ……」
「ちっ……」
後ろから屍人の声が響く。すぐにでもここへ押し寄せてくる……! どこか、逃げ道か隠れられるような場所させ見つけられたら……!
前の壁や右隣、左隣の壁に触れ逃げ道を探す。
「……っ! ここ……!」
左側の壁は住宅の隔てになっており、一箇所だけ脆い部分がある!
腰から護身用にと装備していた電流が流れる警棒を取り出し構える。
「ナイ?」
「真冬、下がってろ。この壁を壊す」
「え? 壊すってどうやって?」
「こうするんだよ!」
警棒を、脆い壁に突き出す。それを何度も繰り返し、壁にヒビが広がり小さな穴が生まれる。そこへ足で穴を広げていく。
「よしっ。真冬、先に行け」
「え、ええ!」
人一人、潜り抜けられる大きさまで壁を破壊して真冬を先に行かせる。そのあとを僕が潜り抜け、庭先にあった自転車二台を強引に穴へ突っ込み、植木鉢を自転車の前に積み重ね、道具入れの倉庫から盾にできそうな物で穴を塞ぐ。
とはいえ、数分しか保たないだろうな。
「ナイ! 次はどこへ行けばいいの⁉」
真冬の焦った呼び声。
それと同時に、穴と自転車の隙間から屍人の腕が伸びる。
『ウウウウウウウウウウウウウウウウウッ』
『ハハハァァァアアアァァガガガガガガァァアアアァァアアアアアア』
ガシャ、ガチャッ、ドンドン、と穴に群がる屍人共。
「真冬、裏手から出るぞ!」
「分かったわ!」
裏手に周るため、玄関の前を通り過ぎようとした瞬間、予期せぬことが起きた。
『ウウウウうアアアアアアアアアアアッ!』
――バンッ!
「「――っ⁉」」
玄関の扉が急に開き、勢いよくそこから屍人が一体、飛び出し先に進んでいた真冬に襲いかかる。
「真冬!」
「……っ⁉」
口を開け、腕を伸ばしその手は真冬の腕を掴もうとする。
やらせるものか!
真冬の右腕を左手で掴みこちらに引っ張る。屍人の手は空を切り、前のめりになるがすぐに体勢を整えしつこく真冬を狙う。抱きかかえ、右手に持った警棒で顔を横殴りにするがそれで怯むことはなく、汚い口と血まみれの歯が僕の腕に噛みつく。
「いっ! ああああっ!」
「ナイ!」
『フゥウウウウググググググウウウウウウウウウウッ!』
腕に噛みつき、目だけが僕を見る。ギョロっとした血走った目玉が気持ち悪いんだよ!
「……っ! い、いい加減、口を離せ!」
腕から、ミチミチと皮膚が破れ肉を千切られる音が耳に届く。それと同時に耐え難い痛みが腕から全身に走る。
いってぇ! こいつ、何があっても口を離すつもりはないってか!
『フゥゥウウウウウウウウウウウウウウウッ』
「ああっ、いぃぅぅううっ!」
「ナイから離れて!」
「ま、真冬⁉」
鞭の持ち手を逆手に持ち、噛みつく屍人の頭を何度も叩く。
「離れなさい!」
何度も叩いた結果、口が少し緩んだところに繋いでいた手は真冬から離して空いた左手で目玉に指を突き立て抉る。
『アアアギャァアァァアアアァァァッ』
痛みでも感じるのか右目から薄汚い色をした血を垂れ流し、声を張り上げ口を離した隙きに警棒でもう片目に突き立て電流を流してやった。
『アバアバアバババッ』
全身が壊れた玩具のように全方向へ揺れ、頭から黒い煙を立て焼けた臭いが鼻をつく。
「ナイ! 腕は⁉」
「いつっ……。す、少し肉を喰われただけだ……」
「酷い傷……」
腕に屍人の歯型、喰い千切られた皮膚と肉から血が流れていく。
右腕から熱をもちズキズキと痛みが走るっ……!
「こ、ここから早く逃げるぞ……」
「で、でも傷が……」
「ここから離れたら手当てを頼む……」
「え、ええ……」
真冬の手を掴み、裏手に周る。自転車や植木鉢なんかで塞いだ穴も、もう保たいないはず。こんな狭く囲まれた場所に流れ込まれると今度こそ喰われる……!
裏手から道に出て柵を閉める。真冬を連れてある程度、群れから距離が開くと真冬を抱き寄せお姫様抱っこの格好で民家の屋根に飛び乗り、また高さのある家の屋根へと飛び移る行為を繰り返し、家の次はビルへと変え屋上に飛び降り立つ。
真冬を下ろすと、僕は腕の痛みと秋斗との戦いで負った傷が開きその場に倒れ込む。
「ナイ!」
「はあ、はあ、はあ……」
「血が……!」
「だ、大丈夫だ……。少し休めばまた動ける……」
「そんな風には見えないわよ!」
「ぼ、僕のリュックから救急キットがある。それを出してくれ……」
「分かったわ!」
念のためにと、木藤から渡されリュックの中にはキットが入っている。リュックを肩から下ろしキットを取り出してもらう。
キットの中には消毒液、包帯、ガーゼも入っていた。まず、腕から消毒液を垂らしガーゼで押さえ包帯を真冬に巻いてもらう。その次に、脇腹だ。
服の裾を上げ口で噛む。巻いていた包帯とガーゼを取り新しい物に変える。
「これでいいの?」
「ああ……」
心配そうな真冬の頭を撫でる。
「ナイ?」
「大丈夫。僕が必ず、大樹の下まで護りながら案内するから」
「……っ! ええ……」
ぎこちない笑みを浮かべる真冬。
「とりあえず、ここからは隠れながらゆっくり進んでいくしかない」
「そうね……」
少し休憩を挟み、これからを話し合う僕と真冬だった。
くそっ、なんで行き止まりなんだよ!
壁の高さは三メートルくらいで飛び越えるのは可能なのに、侵入者防止の針金が邪魔で真冬を抱えて飛び越えるのは無理がある……。
「ナイ……」
「ちっ……」
後ろから屍人の声が響く。すぐにでもここへ押し寄せてくる……! どこか、逃げ道か隠れられるような場所させ見つけられたら……!
前の壁や右隣、左隣の壁に触れ逃げ道を探す。
「……っ! ここ……!」
左側の壁は住宅の隔てになっており、一箇所だけ脆い部分がある!
腰から護身用にと装備していた電流が流れる警棒を取り出し構える。
「ナイ?」
「真冬、下がってろ。この壁を壊す」
「え? 壊すってどうやって?」
「こうするんだよ!」
警棒を、脆い壁に突き出す。それを何度も繰り返し、壁にヒビが広がり小さな穴が生まれる。そこへ足で穴を広げていく。
「よしっ。真冬、先に行け」
「え、ええ!」
人一人、潜り抜けられる大きさまで壁を破壊して真冬を先に行かせる。そのあとを僕が潜り抜け、庭先にあった自転車二台を強引に穴へ突っ込み、植木鉢を自転車の前に積み重ね、道具入れの倉庫から盾にできそうな物で穴を塞ぐ。
とはいえ、数分しか保たないだろうな。
「ナイ! 次はどこへ行けばいいの⁉」
真冬の焦った呼び声。
それと同時に、穴と自転車の隙間から屍人の腕が伸びる。
『ウウウウウウウウウウウウウウウウウッ』
『ハハハァァァアアアァァガガガガガガァァアアアァァアアアアアア』
ガシャ、ガチャッ、ドンドン、と穴に群がる屍人共。
「真冬、裏手から出るぞ!」
「分かったわ!」
裏手に周るため、玄関の前を通り過ぎようとした瞬間、予期せぬことが起きた。
『ウウウウうアアアアアアアアアアアッ!』
――バンッ!
「「――っ⁉」」
玄関の扉が急に開き、勢いよくそこから屍人が一体、飛び出し先に進んでいた真冬に襲いかかる。
「真冬!」
「……っ⁉」
口を開け、腕を伸ばしその手は真冬の腕を掴もうとする。
やらせるものか!
真冬の右腕を左手で掴みこちらに引っ張る。屍人の手は空を切り、前のめりになるがすぐに体勢を整えしつこく真冬を狙う。抱きかかえ、右手に持った警棒で顔を横殴りにするがそれで怯むことはなく、汚い口と血まみれの歯が僕の腕に噛みつく。
「いっ! ああああっ!」
「ナイ!」
『フゥウウウウググググググウウウウウウウウウウッ!』
腕に噛みつき、目だけが僕を見る。ギョロっとした血走った目玉が気持ち悪いんだよ!
「……っ! い、いい加減、口を離せ!」
腕から、ミチミチと皮膚が破れ肉を千切られる音が耳に届く。それと同時に耐え難い痛みが腕から全身に走る。
いってぇ! こいつ、何があっても口を離すつもりはないってか!
『フゥゥウウウウウウウウウウウウウウウッ』
「ああっ、いぃぅぅううっ!」
「ナイから離れて!」
「ま、真冬⁉」
鞭の持ち手を逆手に持ち、噛みつく屍人の頭を何度も叩く。
「離れなさい!」
何度も叩いた結果、口が少し緩んだところに繋いでいた手は真冬から離して空いた左手で目玉に指を突き立て抉る。
『アアアギャァアァァアアアァァァッ』
痛みでも感じるのか右目から薄汚い色をした血を垂れ流し、声を張り上げ口を離した隙きに警棒でもう片目に突き立て電流を流してやった。
『アバアバアバババッ』
全身が壊れた玩具のように全方向へ揺れ、頭から黒い煙を立て焼けた臭いが鼻をつく。
「ナイ! 腕は⁉」
「いつっ……。す、少し肉を喰われただけだ……」
「酷い傷……」
腕に屍人の歯型、喰い千切られた皮膚と肉から血が流れていく。
右腕から熱をもちズキズキと痛みが走るっ……!
「こ、ここから早く逃げるぞ……」
「で、でも傷が……」
「ここから離れたら手当てを頼む……」
「え、ええ……」
真冬の手を掴み、裏手に周る。自転車や植木鉢なんかで塞いだ穴も、もう保たいないはず。こんな狭く囲まれた場所に流れ込まれると今度こそ喰われる……!
裏手から道に出て柵を閉める。真冬を連れてある程度、群れから距離が開くと真冬を抱き寄せお姫様抱っこの格好で民家の屋根に飛び乗り、また高さのある家の屋根へと飛び移る行為を繰り返し、家の次はビルへと変え屋上に飛び降り立つ。
真冬を下ろすと、僕は腕の痛みと秋斗との戦いで負った傷が開きその場に倒れ込む。
「ナイ!」
「はあ、はあ、はあ……」
「血が……!」
「だ、大丈夫だ……。少し休めばまた動ける……」
「そんな風には見えないわよ!」
「ぼ、僕のリュックから救急キットがある。それを出してくれ……」
「分かったわ!」
念のためにと、木藤から渡されリュックの中にはキットが入っている。リュックを肩から下ろしキットを取り出してもらう。
キットの中には消毒液、包帯、ガーゼも入っていた。まず、腕から消毒液を垂らしガーゼで押さえ包帯を真冬に巻いてもらう。その次に、脇腹だ。
服の裾を上げ口で噛む。巻いていた包帯とガーゼを取り新しい物に変える。
「これでいいの?」
「ああ……」
心配そうな真冬の頭を撫でる。
「ナイ?」
「大丈夫。僕が必ず、大樹の下まで護りながら案内するから」
「……っ! ええ……」
ぎこちない笑みを浮かべる真冬。
「とりあえず、ここからは隠れながらゆっくり進んでいくしかない」
「そうね……」
少し休憩を挟み、これからを話し合う僕と真冬だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
包帯妻の素顔は。
サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる