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8.次の街へ
しおりを挟む私は、また荷馬車に無断乗車をしていた。
「次の街は、どこですか?」
「ひぃいぃっ!」
オーランドさんが驚くのは、最早様式美ではなかろうか。荷台は、とても乗り心地がよろしくないのだが、簡単には引き返せないところに来るまでは、静かに過ごしていた。
「折角、出発前に荷台を確認したのに、確認が甘いのですよ」
「ホント、ホント」
実は、荷台チェックをしているのを遠くから見ていた。念のため、街から離れた後で、馬車が走ってる最中に魔法で飛んで追いかけて、こっそり乗り込んだのだ。油断大敵だね。おじさん。
まいたハズの翡翠について来られた私も、大きな口は叩けないが。
「お別れするんじゃなかったのかな!!」
「そのつもりでしたが、おじさんが心配になったので、護衛についてきてしまいました」
「次は、どこへ連れて行ってもらいたいのかな?!」
「護衛ですから、どこでも構いません。ただ、黒髪の村以外にして下さい。見聞を広めたいのです」
「わかったよ。でも、護衛料は払えないし、誘拐でもないからね」
「私も無賃乗車です。似た者同士ですね」
「そうだね。はぁ」
おじさんのこの説得がいらないところが、大好きだ。貴重な人材だ、できたら長生きして欲しい。ちゃんと護衛しよう。
「街に着いたよ」
荷台の上で昼寝をしていたら、いつの間にか、次の街に来ていた。やはりおじさんの馬車はいい。無駄なくお昼寝の時間が確保できる。お昼寝しなくても頑張れば夜まで起きていられるようになったけれど、お母様が、お昼寝をした方が大きく育つと言っていたからな。翡翠に、身長で負けたくない。お昼寝は、大事だ。
「んー。ここは、どこでしょうか。主産業と特産品を教えて下さい」
「え? 主産業? 普通の街だよ?」
「おじさん、それじゃーテストでバッテンつけられちゃうよー」
「おじさんは、8歳未満ですね。それでは、ここからは自由行動を致しますので、お構いなく」
街の入り口に、「やぁ、こんにちは。ここはミルクシティだよ。ミルクがとっても美味しい街なんだ。是非飲んでいってね!」みたいなことを言う人が毎回立っていてくれたら便利だと思うんだけど、そう上手くはいかないということだろう。毎日そんなことをしてたら、収入がないだろうしね。
おじさんの返事も聞かずに、馬車から飛び降りて街歩きを始めた。翡翠も後ろからついて来る。
「お兄ちゃん、どこ行くの?」
「とりあえず、ごはんを食べる。美味しい物を見つけたら、それが特産品だよ」
なんで、こんなことになってしまったのだろう。
泣き喚く女の子を前に、途方に暮れていた。
あの後、翡翠と屋台で謎麺を食べた。麺と具とスープが沢山あって、自由に選んで作る麺屋さんだった。私は、ラーメンではないかと思う麺に茶色いスープ、肉マシマシの麺料理を注文した。家でやったら、野菜も食べろと怒られるヤツだ。スープは何味かわからなかったが、肉は、鳥と猪と鹿ではないかと思われた。パパに近付けた気がして、満足した。
翡翠は、透明な麺に白いスープ、野菜と肉を彩り良く選んでいた。親がいないところでまで、バランスを気にした料理を選んでいて、えらいな、と思った。
食後のデザートに、さつまいもボール揚げをつまみながら歩いていたら、万引きで捕まっている子どもを見つけた。知り合いでもないし、どうでも良かったけど、割り増し料金を払って、許してもらえるよう交渉した。ついでに、その屋台の商品を丸ごと買い上げて、その子にあげた。友達みんなで、わいわい食べるところまでは、良かった。どうせ、私のサイフの中身は、全部あぶく銭なのだ。たかられたところで、構わない。そういう気持ちでいたのだが。
万引き犯の友だちの小さい子が、どうにもならない風情で泣きながら来たのだ。私があげたお菓子のお礼に、ペットのリスを私に見せようと連れてきて、逃してしまったそうだ。
なんだそれ。絶対、私の所為ではないと思うのに、みんなに非難がましい目で見られている。
犬や猫なら、探して見つかるかもしれないが、リスだ。難易度が高すぎる。同じ種類のリスを見つけてくればいいなら、頑張れる。代わりに金を寄越せとゆすられたら、喜んで支払いたい、そんな気分だ。
「ええと、とりあえず、逃げた場所に連れて行ってもらってもいいかな」
一本向こうの通りに、鳥かごが放置されていた。現場は、そこらしい。レンガの道に、石造りの建物が並んでいる通りだ。街路樹も下水溝もない。
「隠れられそうなところが、あるようなないような。どっちに逃げたのでしょう?」
子どもの指差す方向を見ても、もちろんリスはいない。そんなに簡単に見つからないから、泣いているのだ。
「風の精霊様、大地の精霊様、闇の精霊様、リスを探してください。、、、ひぃーーっ!!」
世界中のリス情報が、頭の中に展開された。処理しきれない。辞めてやめてやめて!!!!!
「あうぅあうあうぅ」
「お兄ちゃんから、離れなさい!」
うずくまって耐えてたら、翡翠に抱きつかれた。その途端に、情報が止まった。格好悪い! ダサい!!
「ありがとう、翡翠」
「無理しちゃダメだよ?」
「うん。風の精霊様、大地の精霊様、闇の精霊様、一番近くにいるリスは、どこにいますか?」
同じヘマは、二度はしない。一択に絞ったら、すぐ近くを指定された。最初から、そうすれば良かった。
指定された場所に行ってみたら、娼館があった。ここだ、と言わずにUターンした。翡翠には、見せたくない。
少し歩いて戻ったところにカフェを見つけたので入った。翡翠の注文を済ませて、お小遣いを握らせた。
「ごめん。少し男の社交場に行ってくる。ここで待つか、適当な場所で遊んでてくれ」
「お兄ちゃん、リスは?」
「それも見つけてくるから、また後で」
いつも可愛い翡翠の声が、よどんで聞こえた。気の所為だ。翡翠は、いつでも可愛いハズだ。父はみんな、そう言っていた。だから、大丈夫。何もない。私は、娼館に戻った。
戻ってきたのはいいが、正面から入れるだろうか。遊ぶお金は足りると思うのだが、年齢制限が問題だ。何歳から入れるのか知らないが、保護者なしの4歳を入れてくれる所だとは、思えない。ギルド証の備考欄を見せたら入れるのであれば楽勝だが、入ったところで、自由にリス探しができる店でもなさそうだ。
ひとまず裏手に回り、庭に侵入した。
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