母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月

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15.全てお父様の所為だった

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 村に帰ったら、家族は全員いなかった。メイジーさんはいたが、みんな旅行に出かけた、と言われただけだった。4歳の息子が1月も留守にしてたのに、誰にも気にされていなかった。

 お父様の家で、泣きながら自習をしていたら、3日後に帰ってきた。
「おかえりなさい」
「貴様は、何を考えている!!」
 挨拶をしただけで、怒鳴られた。お父様の怒りは、まったくとけていなかった。むしろ、家を空ける前より悪化していた。眼光が鋭すぎる。怖い。気にされていないのではなく、捨てられた後だったのか。
「どうした?」
 私は、怖くて泣くことしかできなかったが、お父様の声を聞きつけたのだろう、父さんも家にあがってきた。そして、私を見るなりナイフを抜いた。
 お父様相手に、ナイフなど役に立たない。間違いなく、私相手に抜いている。父さんにまで、そんな扱いをされるなんて、ショックだ。

「琥珀、目をつぶれ。すぐに済む」
 父さんが、こちらに近付く気配をみせた。
「地! 壁!」
 父さんがどこを狙っているかは知らないが、私は、魔法で壁を作り出し、それを防いだ。
「何をしてるんだ。危ないだろう。それは、駆除指定モンスターだぞ。わかってるのか?」
「わかっていないから、壁を作ったのだろう」
 壁の向こうで、父二人が何かを言っている。駆除指定モンスター? 私は、モンスターではないと思う。であるならば。
 私は、土壁を消した。
「エスメラルダは、私の大切な方です。倒すなら、せめて私を先にやって下さい」
「、、、、、エスメラルダ? 名前を付けたのか?」
 父さんは、ナイフを収めてくれた。殺気も感じない。話せば分かってくれそうだ。
「はい。とても可愛いらしいでしょう? 私の理想を具現化したような存在なのです。紹介したいと思い、連れてきました」
 何か誤解があったようだが、エスメラルダの素晴らしいところを話して聞かせないといけない。
「シュバルツ、俺は、この現象を知っている。猫と同じだ。認めてやらないと、琥珀はこの後、毒キノコを食べるぞ」
「なんでも俺の所為にするな」
「翡翠にすら、お前の所為だと言われていたろう。次の子の養育には、口を出すなよ」
「教育は必須だ」
「勉強だけ担当してろ。だがその前に、これをなんとかしろよ」
「わかった」
 お父様は、部屋から出て行った。
「琥珀、エスメラルダは、どう見ても緑小鬼にしか見えない。村人が怖がるから、しばらくはこの家から出すなよ。悪いようにはしないから」
「はい」
 なんだかよくわからないが、解決したようだ。
 毒キノコなんて食べる予定はなかったけれど、何の話だったんだろうか。


 次の朝、エスメラルダに髪の毛が生えていた。生え替わりの時期だったのだろうか。言うのも失礼かと思って、気付かないフリをした。
 次の日は、顔からシワがなくなっていた。水や食べ物が変わったからだろうか? 具合が悪いのでなければいいのだが。エスメラルダのために、森で暮らした方がいいだろうか。
 次の日は、エスメラルダが人語をしゃべった。
「こ、はく、さま」
 しゃべっても、何を言ってるのか全くわからないところが良かったのに、なんでだ!

「お父様、エスメラルダに何をしたんですか? 毎日毎日やめてください!」
 ここ数日、私の勉強を放ったらかしで、実験室にこもりっきりのお父様に、苦情を申し立てに行った。
「俺は、何もしていない。その緑小鬼は、通常個体より賢いだけだろう」
 無表情で、堂々とした態度だが、言ってるそばから、謎の液体をエスメラルダに渡していた。
「だったら、その黒い液体は、何なのですか!」
「本来なら、これはお前がやらなければならない作業だ」
 黒い液体を飲んだエスメラルダは、少し手足がふっくらした。


「エスメラルダは、琥珀の大切な存在だと言ったな?」
「はい」
 子ども部屋に戻って、説教が始まってしまった。これは、とても長そうだ。
「エスメラルダは、本当に琥珀の理想なのか? 理想を押し付けているだけじゃないのか?」
「エスメラルダは、とても可愛い顔立ちで、料理が得意で、優しいのです。弱くて、細くて、壊れてしまわないか、とても心配なのですが、側にいてくれるだけで幸せな気分になれるのです」
「、、、、、」
 無表情だったお父様の顔色が、真っ青になっている。どうしたのだろうか。拾い食いが大好きなお父様だが、変な物でも食べたのだろうか。
「そ、そこまで想っているのであれば、エスメラルダの幸せも考えろ。このままでは、駆除指定モンスターだ。お前と共にあるだけで、死と隣り合わせだ。共にあるために、人に近付こうと努力をしている相手を、琥珀は否定するのか? 見目が変われば、冷める程度の思いなのか?」
「そんな軽い気持ちではないつもりですが、見た目も大好きなのですよ。できたら、変わって欲しくはありません」
「、、、、、大丈夫だ。その気持ちが本物なら、見た目がどう変わろうと愛せる。最初は戸惑うが、しばらくすれば、慣れる。それよりも、エスメラルダの幸せを考えてやれ」
 なんだかよくわからないが、お父様がお母様のためにした過去の経験談の話を沢山された。
 お母様が欲しいと言ったから、蛇口からお湯が出るようにしたという話は聞いたことがあったが、序の口だった。お母様が分裂して2人に増えたから、両方愛することにしたとか、お母様の幸せを思って自殺をしたら、生き返れとお願いされて生き返ったとか、お母様の理想郷を作るために念のために世界征服計画を用意しているなどと言われても、何の参考にしたらいいのだろう。エスメラルダは分裂しないし、私が死ぬ必要もなさそうだし、世界征服はただのお父様の趣味だろう。
 一通りよくわからない話をして満足したのか、俺の所為だった、と言い残して、お父様は実験室に帰って行った。
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