母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月

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41.父たちの尋問

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 強制転移で、子ども部屋に軟禁された。
 いつもだったら、私だけ拉致するお父様が、他の2人も連れてきた。どういう風の吹き回しだろうか。
「どういうことか、話を聞かせてもらおうか」
 お父様と父さんの顔が怖い。何を怒っているのだろうか。
「何のご用事ですか?」
「お前の父親が、留守番をしているという件だ」
 こちらからは、どこにいたかまったく把握していなかったが、地獄耳で盗み聞きしていたということか。
「始めにお断りしておきますが、私は自分の実父を選ぶことはできないので、どうすることもできないのですよ」
 父たちが実父でなかった場合、敵になることは想定していたが、想像していたよりも実物は恐ろしかった。
 お父様は、真顔で既に怖いのに、更に目が吊り上がっている。父さんは、これから大量殺戮を始めんばかりだし、パパはねっとりと微笑んでいる。
「お母様と文通をしているのは、ご存知ですか? そこで、いただいた文がこれなのですが」
 隠しナイフにくくりつけていた守り袋から、紙を1枚出して父さんに渡した。
 小さくたたまれた紙を広げると、「実父は鈴木さん」という文字が書かれている。日本語なので、父さんに読めるかはわからないが、お父様に見せればわかる。誰の字かもわかるだろう。
「じっぷはすずきさ、ん」
 父さんも読めたらしい。お父様から私を強奪して、抱き潰し始めた。痛い! 痛い! 痛い! お父様もパパも参戦してきた。折角めかしこんだのに、ぐちゃぐちゃにされた。死んだ。


 目が覚めても、まだ解放されていなかった。頭はパパ、胴は父さん、足はお父様の膝の上に乗っていた。3人仲良く並んで、酒盛りをしているらしい。すごい酒臭い。私は、酒まみれになっていた。折角、ドレスを新調したのに!
「くさい」
 思わず漏らした一言で、3人1度に睨まれた。怖い。
 また父さんに抱き潰され、お父様に頬擦りされて、パパにキスされる。
「痛い、痛い、やだ、やめて!」
 泣きながら、必死に声を出したら、ぴたりと嫌がらせをやめてくれた。あんまり意味はないと思うけど、転がって床に落ち、父たちから距離をとった。
「琥珀は、どうしたい? 日本で暮らすのか」
 お父様の様子が変だ。いや、お父様がまともだったことなど、1度も見たことはないが、なんだか変だ。
「日本には、緑小鬼はいないそうです。エスメラルダを連れて行けない場所に、住む予定はありません」
「学校には、通わないということか」
「既に習得したものを、もう一度習う意義を見出せません」
「わかった。行かなくていい」
 おかしい。絶対におかしい。酒の所為か? 私が学校に通わなければ、叔父に負ける。お父様は、お母様に負ける。私の才能のなさに、とうとう諦めたのか。

「琥珀、こちらにおいで。絶対に痛くしないから、抱かせて欲しい」
 パパの目は、完全にすわっている。妖気が漏れ出ている。恐怖を感じた。
 必死にドアにとりすがり、開けようと試みるが、開けられない。鍵など閉められないドアなのに、開かない。
「ニ龍様、助けて」
 魔法は見事に発動し、母が現れ、人外戦闘が始まった。私は、翡翠に助けられ、部屋から抜け出した。


 酒臭さを抜くために、風呂場で籠城した。
 お祖母様の家のお風呂は、温泉がひかれている。魔法なしでお湯使い放題の極楽風呂だ。翡翠に結界を張るように頼んだ後は、ひたすらお風呂を満喫していた。
「お母様が侵入しようとしてるけど、通していい? 私じゃ勝てないんだけど」
「風呂を覗きたいんじゃなければ、入って来ないで、って伝えて」
「言い方」
「一言一句、そのままでいいよ」
「そういう意味じゃないけど、わかった。だけど、お風呂を出た後は、どうするの? いろんなところで、惨事が起きてるけど」
 翡翠も、地獄耳なのか。翡翠の結界のおかげで、私には結界内の音しか聞こえないが、翡翠には外の音も聞こえるようだ。
「そうだなぁ。ドレスは諦めるけど、バラカちゃんの酒抜きはしたいな」
「それ、惨事の中で、比較的マシなヤツ。魔法でなんとかできるから」
「それ以上に、大事なことはない!」
「お母様が劣勢なのと、お兄ちゃんに熱烈な結婚の申込みがきてる件は?」
「結婚?」
 お父様たちがケンカをした結果、なんで私が結婚しないといけないのか。意味がわからない。
「お兄ちゃんが、普段からドレス着てるとか、女を匂わせた挙句、さっき霰もない姿で泣きながら歩いてるのを見た変な男1号2号がさ、傷モノでもいいから娶るって、騒いでるけど」
「私は、4歳な上に男だ。か、関係ないな。パパの息子なら、よくある出来事の1つと言えるだろう」
 パパは、幼少期からわりと最近まで、女装をしていると男に追いかけられて、見合いの申込みが来た、と言っていた。私もパパの子なのだ。そんなものを継ぐ気はなかったが、受け継いでしまうこともあるに違いない。
「4歳で男でも構わないから、大量ぬいぐるみ事件が起きたんだよ。変わらないと思う」
「なんで、一緒にいたのに翡翠の方に行かないんだ?」
 翡翠は、女装した女だ。年齢は同じだ。普通に考えたら、翡翠の方へ行くべきだろう。ずっと隣にいたのだから、視界に入っていただろうに、何故だ。
「ケンカを売るなら、結界といてあの2人を入れるからね」


 あまり長湯をしてものぼせるだけなので、一通り満喫したら、お風呂からあがった。翡翠が適当にワードローブから出してきた天色のドレスでめかしこむ。
「なんでまた化粧してんの?」
「これが私の最大の武器だからだ」

 ドアを開けたところに、親が4人並んでいた。人外大戦争は、終わったらしい。
「琥珀、話は聞いたよ。あんな話をして、何がしたかったのかな?」
 珍しくお母様が1番に出てきた。怒っちゃいけない、怒っちゃいけない、という副音声が聞こえてくるような顔をしている。隠そうとしているようだが、まったく隠せていない。まだまだ修行が足りないな。
「お母様こそ、私との約束を、きちんと一言一句覚えていらっしゃるのでしょうか?」
 あの手紙が書かれた経緯は、私が父親が3択しかないのを嫌がったからだった。実は日本の男だった説を猛プッシュし、それを信じて生きても良い、という許可を取った流れで書かれた物である。事実なんて関係ない。今の私の心の実父は、日本の男、鈴木さんなのである。私は、おかしなことなど何も言っていない。
「父さん達は知らないでしょうが、日本には、お母様好みの男が、それはもううじゃうじゃいるんですよ。父さん達が気安く遊びに行けないのですから、やりたい放題ですよね?」
 私は、真実を語っていないかもしれないが、すべて事実に基づいた話をしている。これが事実として扱われてしまうのは、お母様の日頃の行いの所為だ。私に不満を言う前に、自分の行動を振り返ってみたらいい。
「お前は、シャルルの好みを知ってるのか?」
「ええ。お母様のお好みは、仕事のできる男でしょう。便利で役に立つ人物であれば、容姿年齢性別性格その他、何も気になりません。なんなら、夫は3人くらいいてもいい」
「そうだな」
「違うよ。琥珀のお父さんは!」
 往生際が悪い。
「それが、父親不明の子どもを産むということですよ。今更言って、誰が信じるのですか? 今更聞いて、どんな気持ちで付き合っていったらいいのですか?」
 私は、お母様を置き去りにして、誕生会に戻った。
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