黒い月が白くなるまで

navi

文字の大きさ
20 / 20

黒い月が白くなるまで #20

しおりを挟む
第二十話 ― 夜の境界線 ―

窓の外には、静かな夜がゆったりと広がっていた。
街灯の光がぼんやりとカーテンを透かし、部屋の中は薄暗く包まれている。

優はソファに座り、仁の横顔を見つめていた。
彼の眉間にはわずかな皺が寄り、何か重いものを抱えているように見えた。

「ねえ、仁」
その声は夜の空気に溶け込むように静かだった。

「ん?」
仁が少しだけ顔を向ける。

「こんな夜が、ずっと続けばいいのにって思うこと、ある?」
優は言葉を選びながらも、率直に尋ねた。

仁は黙ってしばらく考え、やがて重い口を開く。
「……あるかもしれない。けど、そう簡単にはいかないんだよな」

優は静かに眉を寄せる。
「どうして?」

「俺の過去はまだ……消えたり、終わったりしてない」
仁の声には深い闇が滲んでいた。

「“奴ら”が、まだ動いてる」

その言葉に優の胸はぎゅっと締め付けられた。
「その“奴ら”って……?」

仁は言葉を濁し、視線を落とす。
「昔の仲間。いや、仲間なんて言葉じゃ済まない関係だ」

「それは、あなたの闇の一部だね」
優はそっと手を伸ばし、仁の手を包み込んだ。

「怖いけど、諦めないで」

仁の唇がわずかに震えた。
「諦めたくないんだよ」
「お前といると、未来がほんの少しだけ見える気がするから」

優も息を吐いた。
「私もだよ」

言葉は重なり合い、部屋の空気を震わせる。

だが、そのとき、ドアの外からかすかな物音が聞こえた。

ふたりの間に緊張が走る。

仁は素早く立ち上がり、優を守るようにドアに向かった。
「誰だ?」

返事はない。足音は近づかず、むしろ遠ざかっていく気配だった。

「……勘違いかもしれない」

優は落ち着いた声で言い、仁の背中を優しく撫でた。
「でも、これからはもっと気をつけてね」

仁は小さく頷き、ゆっくりと振り返る。
「ありがとう。お前がいてくれて本当に良かった」

優の唇が柔らかく微笑む。
「私もだよ、仁」

ふたりはまたソファに戻り、沈黙の中で手を取り合った。

闇はまだ消えていない。

だが、その夜、二人の間には新しい何かが生まれていた。

恐怖と不安の狭間で繋がる、小さな光のような信頼。

それは、これからの戦いのなかで彼らを支える力になるだろう。

夜の境界線は、まだ厚いが、ふたりはゆっくりと、その向こうへ歩みを進めていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。 その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。 全15話を予定

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...