GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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018話:みどり村

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  この世界に来る前は、それこそ枕が変わると寝られないくらいの"でりけぇと"な俺だったけど、この世界に来てからは、割と普通に寝られる。
 流石に樹の上は無理だったけど、いつ洗濯したのかも分からないような砦の中のベッドとか、テントの中に敷いただけの薄布の上だとか、平気で眠れるようになっていた。
 混ざった誰かの影響なのか、ユーシンが感じたようにキャラに寄った影響なのか、それとも俺が成長したからなのか、良くわからないけれど、どこでも眠れて疲れが取れるというのは良い変化だ、と思っていた。
 だからお泊りさせていただいたソンチョーのお宅、ソファーでも雑魚寝でも全然OK!
 と、思っていた。
 すいません!
 俺が間違えていました!
 サイコーでした!
 清潔なシーツ、ちょうどよい高さの枕、柔らかすぎず硬すぎない絶妙な加減のマットレス・・・昨日まで睡眠で疲れが取れていたなんて、俺の勘違いでした!
 この目覚めに比べたら、今までのは睡眠じゃない。
 そのくらい爽快な朝。
 もうこのベッドは誰にも渡さん!
 なんて思いたくなるほどの心地よさだった。
 断腸の思いでベッドから出ると、朝食を作りにキッチンへ向かった。
 朝は軽めのメニューで、というか、使える食材も少ないし調味料に至っては塩くらいしかないので工夫のしようもないんだけど。
 みんな揃ってから朝食をとっていると、ソンチョーから住人になってくれないか、との提案を受けた。
 「ちょうど、住人5人でランク2への条件が整うんです。
 他の条件はもう済ませていて、住人数だけが問題だったんですよ。
 ゲームだと、必要なクエストを消化すれば勝手に住人がやって来たんですけどね。
 全て終わってから一週間待っても何も起こらなくて、諦めるところだったんです。
 もちろん、みなさんの行動を制限したり強要するつもりはありません。
 ここを拠点としてくれるだけで十分なんですけど、どうでしょうか。」
 魔物渦巻く森の奥深く、安全地帯を拠点にできるのはレベルアップに好都合だ。
 しかも、なんといってもここにいればキャベツにニンジンにジャガイモが・・・じゅるり。
 「賛成っス、どのみちクソ猿どうにかしなきゃなんないっスからね。
 ガッツリ作戦組んで勝つまでリベンジっス。」
 ユーシンの中ではもう、巨猿との再戦が決定しているようだ。
 俺的にはとっとと諦めていなくなってほしいんだけど。
 「僕も賛成。
 外じゃアオンたちを出すのも気をつかうし・・・ここなら出しっぱなしでも問題ないよね。」
 アオンをワシワシしながらユーキも賛同した。
 わんこワシワシいいなぁ。
 俺のフェンリルは無事だろうか。
 いやいや、今はそれは置いといて、俺も賛同だ。
 メリットだらけだし。
 デメリットは・・・特に思いつかないな。
 って感じで、即決で入村決定。
 ソンチョーが目の前の何もない空間を指でポチポチ・・・うん、コンソールか何かが見えてるんだろうけど、見えない方からは挙動不審に見えるな、俺も気を付けよう。
 と、目の前に

  『入村しますか? YES/NO』

 という文字が見えた。
 「YESをポチればいいんスか?」
 「はい、よろしくお願いします。」

<<新たにユーシン・ユーキ・シンの3名が住人となりました。
 条件を達成したため、「みどりの家」はランク2「みどりの集落」に成長しました。
 補助金として、1,000,000ベルと トマトの種10 リンゴの苗木1 が送られました。
 利用可能な土地が増えました。50m×50mから100m×100mへ。
以下の設置可能施設数が拡大されました
   住宅:1から10へ 畑:4面から9面へ 井戸:1から2へ
 新たに設置可能となる施設が解放されました
   狩猟小屋:1 倉庫:1 溜池:1 作業場:1 加工場:1 
 新たに追加となる機能が解放されました
   FAX
 新たに栽培可能な農作物が増えました。
  トマト ネギ 玉ねぎ 小麦 リンゴ >>

 どこからともなく聞こえた声、ランクアップは無事成功したようだ。
 しかし、
 「FAXって・・・。」
 この世界には無いよな。
 やっぱり不思議設備か?
 「注文手段なんですよ、種とかの。
 ランク1の注文手段は手紙で、自宅前のポストに投函するんです。
 注文書が届くまで3日、届いた翌日発送されて3日後に届くっていう建前で、注文から到着まで7日かかっちゃってたんですよ。
 ランク2のFAXだと、即日注文できて、翌日出荷で3日後、注文からは4日で到着するんですごく便利になります。
 まぁ、種とか苗木、肥料や道具だけしか買えないんですけどね。」
 とソンチョー。
 いやいや、それ、ゲームの中の話でしょ。
 そもそもの疑問があるんだけど。
 「いや、届くの?」
 そういえば、と顔を見合わせるソンチョーとスローク。
 「ポストの時はちゃんと種が届いたんだよね、いつ届いたのかわからなかったけど、いつの間にか郵便受けに入ってたんだ。
 道具も玄関に置いてあったし、そんなもんなんかなぁと。」
 結構テキトーなのね・・・使えるなら何でもいいやって感じか。
 とりあえず新機能、FAXが使えるか試してみようということになった。
 家の中に入ると、なんとも懐かしい・・・昭和時代のFAXが・・・ひょっとしてこれ、ロール紙タイプか?
 感熱紙だからうっかり日向に置いておくと真っ黒になっちゃったり、時間がたつと消えちゃうんだよな。
 ゴツイFAXの横には、注文用紙の束が置かれている。
 なになに、野菜の種類に苗木、大工セット、家畜の解体セット、建築資材か。
 野菜も果実も向こうの世界のままなんだな。
 食べる分にはありがたいけど、この世界で売れるのかね?
 建築セット住宅(小)20万ベル・・・道具とかの値段からするとだいたい200万円くらいか?家だと思うと無茶苦茶安くない?
 「住宅(小)だととりあえず全員分家が作れるけど、これ、ほんとに掘っ立て小屋みたいな家なんだよね、改築できないし、結果超割高。」
 とソンチョー。
 「おすすめは住宅(中)。改築、増築ができるし、最初から3LDKなんでとりあえず3人住めるよ、後はおいおい増やしていけば。」
 「いやいや、でもこれ80万ベルとか書いてあるっスよ。20万しか残らないじゃないっスか。」
 うん、そうなんだよね。小だと3件で60万、残金が倍も違ってくる。
 「それに、このベルってどうやって稼ぐの?この国の通貨はセイルなんだけど、価値基準も違ってそうなんだよね・・・換金できるなら協力できるし、協力したいけど。」
 ユーキの疑問は重要、安全な場所を提供してもらえるだけでもありがたいのに、おんぶにだっこじゃ目覚めも悪い。
 「本来なら行商人が回ってくるはずなんだよね。
 行商人が農作物とかの買取をして、FAXじゃ注文できない家具とかを買えたり、一緒に移住希望者を連れてきたりするんだけど・・・1回も来たこと無いんだ。」
 まぁそうだよね、知られてないし、ここに来るためのルートも無いし。
 何とか道を通せば行商人がやってくるんだろうか?あ、でも通貨が違う・・・う~む。
 建物も自分たちで作れるのだろうか?それなら多少は節約できるけど。
 作るだけなら、たぶん作れるだろうけどなぁ。
 途端に壊れたり、全く機能しなかったりしたら無駄になるしな。
 「どーなってんだよ、クソ悪魔。」
 思わず声に出して愚痴ってしまった。
 「「はい、なんともひどいですね。」」
 全身が泡立つような不快感。
 もう二度と会うことは無いと・・・違うな、会いたくないと思っていた存在を知覚した。
 またしても、というか、意外とマメだな、クソ悪魔。
 俺とユーシンは2度目だけど、ほかの3人は初めてなのかその場で固まってしまっている。
 監視してるっぽいから、この件に関して説明を求めたいとは思った。
 ひょっとしたらと思ったけど、こんなにあっさり出てくるとは。
 (暇なのか?)
 「「暇ではないです。」」
 (心読めるのかよ。)
 ジトッと睨むと、笑顔で返された・・・気がする。
 相変わらず悪魔の顔面は厄介だ。
 ガッツリ見ているのに覚えられない。
 常に、こんな顔だったっけ?と言う疑問が付きまとってくる。
 「「いや、すばらしいですね、現在私的ランキングで13位ですよ、あなた。」」
 ソンチョーを指さす悪魔。
 なんだよ、私的ランキングって。
 「それ言うために出て来たんスか?ひまスねクソ悪魔。」
 2度目でずいぶん慣れたね、ユーシン。
 「「暇ではありません。」」
  はいはい、忙しそうでよかったねッと。
 「で、この不備の説明に来たんだろ、暇じゃないならとっとと説明。」
 なぜだか、この悪魔と話しているとすごくイライラするのでとっとと話を進める。
 「「申し訳ありません、あまりにもマイナーなゲームでしたので、移植ミスがあったようでして。」」
 移植ミスて・・・。
 悪びれもせず、というか、わざとだったに違いないとしか思えない態度の悪魔。
 ま、クソ悪魔だしね。
 「じゃぁ、行商人は来てくれるんですか?」
 恐る恐る質問するソンチョー。
 「「無理です。」」
  にべもない。
 「「そもそもここは誰にも知られてないじゃないですか。
 知られたとしても、道が通って安全が保てない限り、外から商いになんて誰も来ませんて。」」
 ケラケラ笑い出す悪魔。
 蹴りたい。
 じゃあなんで森の中なんかに転送したんだよって話なんだが、そうでなかったらたぶんスロークはもういないだろう。
 結果良い方向に進んだわけだが、それとこれとは話が違う。
 「なら、俺が軽トラで行商人代わりになればいいっスね。」
 ユーシンの軽トラは壊れない。
 外に出なければ魔物も問題ないってことだね。
 それでも、やっぱり安定して走れる道は必要だけど。
 それに、道があって、この村に価値があると分かれば行商人は来るってことだよね、悪魔の言い分だと。
 安全性の確保がどの程度可能かは分からないけど、傭兵を護衛に雇ってでも来たい、そう思わせられればいい。
 そして、そう思わせられる物には心当たりがある。
 気が付くと、悪魔がこちらをニヤニヤと見ている・・・気がする。
 いかんせん、顔は見えてるのに覚えられないというか、なんというか、相変わらず不愉快だし不安を掻き立てられる存在だ。
 「「それはなかなか良いお考えで、あなたも私的期待度ランキングで急上昇中ですよ。」」
 だから何のランキングだよ、それは。
 「それはどうも・・・勝手に頭の中読むなよ。
 でも、それより大きな問題があるだろ、通貨の違いはどうするんだよ。
 ベルってのはこの世界に存在するの?稼げるの?」
 「「それですそれ、私がわざわざ午後のまどろみを諦めてまで伺った理由は。
 無いんですよ、そんな通貨。
 困りましたねぇ。」」
 やっぱり暇なんじゃねぇか。
 「困ってないで何とかしろよ、ちゃちゃっとセイルに変換するとか。
 そっちがミスったんなら、慰謝料含めて誠心誠意、そんぐらい当然っスよね。」
 おお、強気だねユーシン。
 もう悪魔への恐怖心とかは吹っ切れているようだ。
 内心ビクつきながらも、舐められたらもっとひどい目に、なんて表面上強がってる俺とは雲泥の差だ。
 こういうところは、素直にすごいと思える。
  「「無理です。」」
 「無理じゃねぇ~だろ。」
 「「あなた、ずいぶんとガラが悪くなりましたねぇ。」」
 しみじみと悪魔。
 ユーシンのガラを悪くさせてるのはあなたです。
 「「後から手を加えられないんですよ。
 まぁ、2~3日午後のまどろみを諦めればできなくもないですが。」」
 「できんじゃねぇか、昼寝2~3日でできんなら気合入れりゃ1日でできんだろうが。」
 「「健康に良くないじゃあ無いですか、疲れるんですよ、とても。
 あと、レベルとかもろもろ、最初からやり直しになるけどよろしいですよね。
 もちろん全員が、ですけど。」」
 おいおい・・・脅しにかかってきやがったぞ、こいつ。
 「それって、ここにいる全員、って意味じゃないよな。」
 聞きたくないけど確認しないわけにいかない。
 「「ええ、もちろん全員です。
 ご招待した皆様の中で生き残っていらっしゃる皆さま全員という意味です。
 いきなりレベルが1に戻って、どれだけの方が対応できますでしょうねぇ・・・それはそれでまた興味深いですが。」」
 このヤロウ・・・
 「そんなのだめだよ・・・たかがこの村のためだけにみんなを危険にさらすわけにはいかない。」
 だよなぁ、ソンチョーならそうなっちゃうよね。
 そうなっちゃうのが分かってて言ってるんだろうけど。
 「いっそ、両替機でもあればいいのにね。」
 ぽつりとつぶやいたユーキ。
 うん、良い案だ。
 「「・・・な、なるほど、それは良いかもしれません・・・ね・・・チッ」」
 ?!
 こいつ、今小さく舌打ちしやがった?
 「「ということで、設置させていただきました。」亅
 感情なく告げられた。
 悪魔に連れられて外へ、ソンチョー宅の玄関脇には、自動販売機のような機械があった。
 何とも場違いな、派手なカラーリングだ。
 「「さして手間もかからず、良い提案でした、ほめて差し上げましょう。」」
 面白くなさそうに告げた悪魔。
 やっぱり、最初から用意してたな、これは。
 もったいつけてたらユーキに先を越されて面白くないんだろう、器が小さいぞ。
 「ほめてくれなくていいから、せめて性別を何とかしてよ。」
 あ、忘れてた。
 ユーキにはそれも重要だよね・・・ってか、ユーキももう慣れた?順応速いね、若さか?
 「「はい?あ、なるほど、あなた、ネカマちゃんですか。」」
 「ち、が、う!絶対違う!」
 このイジリはユーキには鬼門のようだね、気を付けよう。
 もちろんわかってて言ったんだろうけどね、このクソ悪魔は。
 「「その程度、そのうちお仲間が何とかしてくれるでしょう。
 気長にお待ちなさい。」」
 そのうちお仲間に?あ、ひょっとしてアレのことか?
 他人にも、ってかゲーム違っても使えるのか?
 悪魔を見ると、ニヤニヤしている・・・ような気がする。
 たぶんビンゴか。
 「嘘じゃないだろうな。」
 ジト目で悪魔を睨むユーキ。
 さすがにまだユーシンみたいには凄めないようだ。
 「「ええ、もちろん。
 私は嘘が大嫌いですから。
 もったいぶったり、ごまかしたり、からかったりは大好きですが。」」
 たちが悪いことこの上ないな。
 ここ、なんでガスとか水道とか使えるの?なんて質問が喉まで出かかるけど我慢した。
 ミスったから戻すなんて言われた日にはせっかくの快適さが失われてしまう。
 「「ふふ、賢明な方は嫌いじゃないですよ。」」
 また読まれた。
 やりづらいなぁ、ホントに。
 「「では、またお会いできることを楽しみにしております。」」
 悪魔がいなくなった。
 消えたとかそんな感じとは何か違う。
 言葉にできないのがもどかしいけど、いなくなる時まで不快にさせる。
 ふぅ。
 頭に直接響く声はかなり疲れる。
 何と言ったらいいか、ちゃんと聞こえてるし、なんと言っているかも正確にわかるのに、どんな声だったのかは全く思い出せない。
 なのに聞いた瞬間あいつだと分かるという。
 不快だ。
 ムカつく。
 イラつく。
 ドタマにくる。
 とりあえず二度と会いたくない奴ランキング一位にしておいてやろう。
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