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021話:サンサテ
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無事巨猿、デモンエイプを討伐し帰宅。
一応毛皮を持ち帰ったけれど、かなり臭い。
剥ぐの苦労したけど、これ、使い物にならないかも。
作業中も魔物が寄ってくる気配すらなかったし。
出迎えてくれたソンチョーに近づくに連れ、その表情がこわばっていく様子を観察できました。
それくらい臭いのです。
捨ててくればよかったかな。
ちょっと後悔。
しばし休息のあと、いよいよ買い出しのための準備に入った。
まっすぐ直進、を知るための目印は、どうしても手持ちの材料や道具ではでは難しいということで断念した。
で、以後のことも考えて、時間がかかってもいいから木々を伐採して、ちょっとした道を作ってしまおうということになったわけだ。
俺とスロークがメインになって木を伐採しつつ、細めの木はクマに参加してもらってバッサリとやってもらう。
軽トラがまたげる程度の高さにしないといけないから斧で切るのは難しそう。
鋸で切れるのか?・・・大変だけど頑張ろう。
ユーキとゴン、ユーシンには真っすぐ進めているのかの確認と邪魔なものの撤去を、アオンには周囲の警戒をしてもらう。
ユーシンはいざというときのために軽トラで逃走するためのキーマンでもある。
事が起こった時には一番大変かもしれない。
あのデモンエイプが、実は弱い個体だったかもしれないってことで警戒を1レベル上げることになった。
いつでも逃げられる準備を、だ。
準備も済んで、さぁ出発、という段階で浮上したのが、クッサい毛皮問題。
「え?これ、置いていくの?」
というソンチョーの一言で、仕方なく軽トラに積み込んで出ることに。
「どっかでポイしちゃうしかないよね、これ。」
鼻をつまみながら顔をしかめるユーキ。
ごめんよぉ、防寒具の足しになればと思ったんだよぉ。
あまりにも臭いので、軽トラの幌の上に毛皮を括り付けて、捨てても良さそうな場所を求めて我慢の出発となってしまった。
軽トラはユーシンが運転するので、早速人手が減ってしまった。
前途多難だ。
「こんだけ臭いんだから、魔物除けくらいになってくれることを祈ろう。」
そう言うスロークに同意したいです。
せめてそれくらいは役に立ってくれ。
臭いさえなければ、加工して防寒具に、ひょっとしたら結構良い防具に、なんて期待したんだけどなぁ。
下手に鎧になんかしたら、この獣臭がしみついちゃうんじゃないかな、想像したくないぞ。
臭いを我慢しつつ、ひたすら体を動かすことにした。
「できればユーキには、途中で馬のような魔物がいれば封印してほしいんだけど。」
思い付きだけど、提案してみた。
「馬?」
「行きはまぁ、あまりかさばるものは無いけどさ、帰りは荷物が結構な量になるでしょ、軽トラを出せるところまでは荷車か馬車を使うようになると思うんだ。
馬型の魔物ならギリ街中で連れていてもセーフじゃないかと思うんだよね。
封印したモンスターなら、軽トラで移動中は本に入れられるしさ、幌の無い馬車なら、車輪を外せば簡易貯蔵庫か、スロークの第一貯蔵庫にしまえると思うんだ。」
人力で運ぶにはどうしても限界があるし、時間もかかる、馬とは言わなくても、鹿とか、馬車を引いてもおかしくない魔物を封印できれば、人気のある場所での行動がずいぶんと楽になるはずだ。
「わざわざ時間をとる必要はないけどさ、もし見かけたら捕まえたいよね。
ユーキにはモンスター枠を使わせてしまうことになるけど。」
「なるほど・・・良いと思いますよ。僕も、馬とか乗ってみたかったし。」
そういえば、アオンに乗って走れないかとか練習してたな、結局足が付いちゃって諦めたみたいだけど。
**
森の外への道中は、想像を大きく外して順調だった。
なぜなら、魔物の気配が全く無く作業に没頭できたからだ。
ひょっとして、デモンエイプの毛皮がマジで魔物除けになってるのか?
それ以外にも大きな誤算もあった。
なんと、クマが大活躍である。
鋸(斧)組は不要とばかりに木々をバッサバッサとなぎ倒してゆく。
しかも、地面すれすれを切ってくれるので後処理も必要ない。
ただ、倒れる方向がコントロールできないので俺とスロークはひたすらクマの切った木が邪魔にならない方向に倒れるようサポートに徹することになった。
2日目からは、クマの消耗も考えて朝から昼頃までと夕方から作業終了までを俺とスロークが担当することにした。
屈辱だが、二人がかりでもクマにはかなわず、若干ペースが落ちてしまった。
それでも想定をはるかに上回るペースで進んだけどね。
いずれは根を掘り出して、ちゃんと整地して快適な旅ができるようにしたいもんだね。
デモンエイプの毛皮は効果抜群、道中全く魔物に遭遇することが無かった。
これはもう、臭いくらいは我慢しなきゃ。
まぁ、そのせいで馬車を引けそうな魔物は封印どころか見つけることもできなかったんだけどね。
あとユーシンに負担をかけていた。
少しでも悪臭の元を離したかったから、軽トラ幌の上に括り付けたまま、つまりずっと運転席で大渋滞並みの苦労を掛けることになってしまった。
直進すること7日、ようやく森を抜けることができた。
最終日はとんでもないスコールでみんなずぶ濡れになったけど。
森を抜けて気が付いたことがある。
デモンエイプの毛皮の臭みが和らいだ、というか、変化してきたのだ。
臭いは相変わらず強いんだけど、耐えがたい獣臭さだったものが、強いミント系とペッパー系が混ざったような・・・良い臭いとはいいがたいけど、あまり不快では無い臭いに変わった。
ひょっとして、あのスコールで汚れとかが洗い流されたのか?
一度洗ってみればよかったのかなぁ。
魔物除けとしての効果は変わっていないようだった。
スコールの後も、森を出るまで魔物の気配を感じることは無かったし。
これは、結果良ければ、って言う典型になったのでは?
良かった良かった。
7日間の突貫工事、軽トラのメーターではなんと、その距離150Kmだった。
徐行にもならない速度で7日間運転席に座りっぱなしだったユーシンははさぞ大変だっただろう。
ご苦労様でした。
あれ?
なんか忘れているような・・・何だったっけ?
まぁ、忘れるくらいだから大したことでは無いんだろう。
「アオン、道を探してきて、人には近づくなよ。」
ユーキの指示で飛び出すアオン。
ずっと警戒しっぱなしだったからストレスもたまったことだろう、思いっきり発散しておいで。
150Kmか、道が整備できれば馬車や徒歩で約3日の行程になるだろう。
途中2~3か所は休憩所がいるな、道には魔物除けも必要になるだろうけど、デモンエイプの毛皮はどれくらい細かくしたら効果がなくなるだろう?
まだ道とも呼べない状態だからすぐ必要ってわけじゃないけど。
そんなことを考えこんでいる俺の横で、相変わらずユーシンとユーキが仲良く喧嘩している。
それをスルーして、スロークと元の世界でのことで談笑しながら休憩していると、遠吠えが聞こえてきた。
「道を見つけたみたいだ。」
軽トラに乗り込んでアオンが向かった方向に走り出す。
10分ほどで走ってくるアオンと合流すると、さらに10分、左右に続く街道が見えて来た。
10Km弱といったところか。
森から結構距離があるから、人里が近いのかな?たしか、ゼノ村もこれくらい離れてたよな。
都合の良いことに主要道路というわけではないようだ、見る限り通行人がいない。
「どっちに向かえばいいかな。」
さっぱりわからん。
「たぶん左っス。
なんとなく見覚えがあるんで、2~3回通ったことがあると思うっス。」
そう言ってハンドルを切ったユーシンの感はズバリ正解、1時間ほどで遠くに石造りの外壁が見えてきた。
ここで軽トラとアオンをしまって、荷を背負って徒歩で外壁を目指す。
「あぁ、やっぱり、サンサテの町っスよ、俺が行ったことのある町では一番活気があったかな。」
というユーシンの言葉通り、サンサテは人であふれていた。
移動しながら商売をする商隊でにぎわうゼノ村とは全く違った雰囲気だ。
通りに露店は無く、道にあふれるほど商品を並べた店でひしめいている。
通りを行きかう人も老若男女様々で何となく華やかだ。
まずは資金調達を、と思ったけど、ゼノ村のように一括で買い取ってくれる業者はいないらしい。
あれは、ハンターと商隊が経済の中心だったゼノならではのシステムなんだそうだ。
ということで、面倒だけど素材毎にあちこちめぐって売りまわることになった。
今回の売却品は、狩りで仕留めた魔物の皮と魔石、干し肉に薬草類を予定している。
ただし、毛皮は魔物除けに使えることが判明したデモンエイプを除く。
魔石は今のところ使い道が無いので全部売る。
干し肉は、魔素抜き実験中の失敗作から、食べられる物をチョイス。
エグみの強さで普通、旨し、美味に分けて売ってみる。
美味タイプでもそこそこエグいんだけどね。
干し肉にした後でも魔素抜きできたと思うけど、何となくやらなかったものだ。
いきなり完全に魔素抜きの干し肉を広めるのもいろいろと問題になりそうなので、エグみの残る物から売ってしまおうということで話がまとまっている。
いいものは思いっきりもったいつけないとね。
薬草は、俺が森で採取した多種多様な野草を乾燥させた物。
そして予定額に達しなかったときのために、干し肉以外の食材も少々。
多少魔素抜きしてあるけれど、これは本当に最後の手段だ。
まずは、かさばる皮の売却へ向かった。
情報が無いので、できるだけ均等に3等分して3か所に売却してみた、今後は最も高値を付けたカルソン獣皮店ってところと取引するとしよう。
見た目子供のユーキを除く3人で売却を担当して、ユーキには荷車が買える店などの情報収集を頼んである。
次に魔石の売却、これは高額になる可能性が高いので3人揃って。
なんせ目玉商品、デモンエイプの魔石があるからね。
まず人間では太刀打ちできない魔物だ、一応問い詰められたときのシミュレーションも済ませてある。
まだ目立つには早すぎると思うからね。
やってきた魔石の取引所はかなり厳重だった。
入り口には甲冑姿の警備員が2人とそろいの制服を着たガタイのいい男が二人、入店時に武装解除を求められた。
一人ひとり、簡素だけど装飾の施された頑丈な木箱に武器を入れると、代わりに木札を渡された。
退店時に引き換えになるそうだ。
店内には様々な魔石が展示されたショーケースが、サイズや色ごとにまとめられて所狭しと並んでいる。
同じ制服姿の店員が数名配置されていて、購入するとき取り出してもらうシステムのようだ。
店員に聞くと、買取は奥の別室で行っているということで案内されるままに別室へ。
狭い部屋を半分に仕切るようにカウンターがあり、カウンターの上は鉄格子。
これがガラスだったら、刑事ドラマで見たことのある刑務所の面会室みたいだ。
対面には品のよさそうなオジサマがいる。
おっさんと言ってはいけない。
そんな感じだ。
カウンターには中央に四角い穴が開いていて、穴の下は箱状になっている。
なるほど、ここに魔石を入れるのね。
とりあえずデモンエイプ以外の魔石を箱の中へ。
すると、スッと箱が奥に引っ込んで格子の先にいるオジサマから取り出せる位置に。
結構な数だけど、表情一つ変えずに査定を始める、さすがプロ。
提示された価格も満足のいく額だったので即決でOKした。
ただ嘘でも喜んではいけない。
まだデモンエイプが控えている。
魔石を入れた箱が戻ってくる。
中には、魔石の代わりに売却額が貨幣ごとに分けられて積まれていた。
うほぉ~。
イカンイカン、能面能面ッと。
では、いよいよメインイベントだ。
お金を受け取ると、次にデモンエイプの魔石を入れて箱を押す。
オジサマの表情が変わる。
なんか勝った気分。
「失礼ですが、これはどちらで。」
やっぱり来たか。
「森だ。
2日ほど奥に入った場所で、瀕死の巨猿を見つけた。
3mを超える猿だ。
俺も長くハンターやってるが、あんなのは見たことも無かった。」
「3mを超える巨大な猿ですか・・・まさか、デモンエイプですかな。」
と言ってオジサマに告げられた特徴は、まさにデモンエイプだった。
こういうところには情報もあるんだね。
「たぶん権力争いに敗れて逃げ出した個体でしょう。
本来なら森の深奥に群れで住む魔物ですが、過去に権力争いに破れたらしい個体がこの付近まで逃げて来たという記録がありました。
幸いにもその時はすでに死んでいたようですが、それから逃げた魔物が森から一斉に溢れ出て大変なことになったものです。」
へぇ、こちらの用意したシナリオに都合のいい実例があったんだな。
「自分たちが見つけたときは足も腕もズタズタだったが、それでも3人やられた。
二度と会いたくはないな。」
と打ち合わせ通りに伝えるスローク。
見た目では断然リーダーっぽい、渋いオッサンだから説得力もあるだろう。
こっちの方はオッサンと言っていい。
オジサマとオッサン。
なんか、そんな差のある二人だ。
品と野性味とでも言うのか。
「なるほど、今回のあれは、それが原因だったということのようですね。」
あれそれつぶやいてるけど、たぶんこちらと同じことを考えたかな?氾濫の原因。
実際には大したケガも無く元気なままでやって来たから大氾濫になったんだろうけど。
そして出された提示額は。
うわお。
いかん、にやけてしまう。
仲間を失ったばかりの設定が・・・。
こらえなければ。
ユーシンは後ろを向いてプルプルしてる。
スロークは、さすがのポーカーフェイス。
かと思ったら、太ももをつねってる。
三人とも演技は無理だな。
「ありがたい、これなら死んだ奴らの家族も当面は過ごせるだろう。」
そう言うが早いか、バレないうちに売却金を受け取り立ち去る。
なんと、出口は入り口と離れた場所だった、徹底してるなぁ。
その後薬草とか骨なんかを売りさばき、ここまでの収入は軽く300万セイルを超えていた。
大半がデモンエイプの魔石のおかげだけどね。
とりあえずメインイベント、魔石の売却が完了して一息、あぁ、何か気が疲れた。
小休止をはさんで、ここで一度スロークと別行動をとることに。
スロークにはユーキと合流してもらって、荷車や食材の買い出しを担当してもらう。
俺とユーシンは、最後の売却品、干し肉を捌きに向かう。
とはいえ、一般的に干し肉はそれぞれの店が加工するので買取はしていないらしい。
ちょっと当てが外れてしまったが仕方ない。
今後魔素抜き食材の販売を計画している以上は、エグみの少ない干し肉という武器を知ってもらうだけでもしておかないとな。
ここは、用意した3種類の失敗作の中から“美味”を餌にして、試食させて食いつかせるしかないかもしれん。
干し肉に興味を持たせることができれば、今後の取引の大きな戦力になってくれるはずだから。
道がちゃんと整備されるまでは村にヒトを呼び込むことは難しいだろうけれど、じわじわと美味い飯を浸透させていって、護衛を雇ってでも行きたいと思わせられればしめたものだ。
資金には余裕ができたから、今回売却額は一般的な干し肉の卸し価格でもいいかな。
問題はどこに持ちかけるかだけど。
活気のある店は、自分たちの味に自信をもってそうで相手にしてくれないかも。
かといって人気のない店だと売れなくて広まらない可能性も・・・村に興味を持っても、買い付けに来る余裕が無かったりしたら意味がないし・・・う~む。
難しいな。
なんて悩んでいたら、
「シンさ~ん、試してくれるってとこ見つけたっスよ~。」
ユーシンのコミュ力を侮っていたようだ。
そういえば、一人の時も運送業なんか始めてたもんね、意外と起業家としての才能があったりして。
連れられて行った先は食堂だった。
なるほど、そういう手もあったか。
時間的に客のいない店内に、体格のいいエプロン姿のおばちゃんが一人。
「この人がここのオーナーでベリッサさんッス。」
肝っ玉母ちゃんという表現がしっくりくる。
「とりあえず味は見させてもらうけど、あるだけ全部買うからよろしく頼むよ。」
あら、そんなところまで話が進んでるの?
「調理担当の旦那さんが腰をやっちまったそうで、ピンチらしいっス。
加工済みは高くて採算割れになるそうで、ちょっと安めで話しちゃいましたけど。」
なるほどね、問題無いです。
さっそく試食用の“美味”干し肉を食したまえ。
「なんだいこれ!」
予想どうりの反応アザッス。
「信じられない、どうやって作ったんだい。」
この後しばし質問攻めにあってしまった。
が、まだ試作段階で安定してできないこと、今回は市場の反応を見るために持ち込んだことを説明して、次回もこの店に卸すことで何とか納得してもらった。
オバちゃんパワーはこっちでも同じか。
失敗“美味”レベルの干し肉なら、魔素抜きの時間を半分くらいにすれば似たような感じになるかな。
当面売りに来るのはそれで行こう、別の食材は今回は保留だ。
次売りに来る日の予約まで取らされてしまったけれど、なんとか解放されました。
こうして、すべて売り終えると別行動だったスローク、ユーキと合流する。
すでに荷車と食材の購入は済んでいて、積み込みをしている最中だった。
荷車は、軽トラの荷台くらいのサイズの標準的なものだ。
「これなら、ひっくり返して幌の上に乗っけていけないかなって思ったんだけど。
壊れないんでしょ?あれ。」
とユーキ、彼はこういった思い付きがすごい。
うまく乗れば車輪外して貯蔵庫に押し込む手間が省けるな。
食材の積み込みを任せて、俺とユーシンは薪と防寒具を手分けして買い込む。
終わるころにはすっかり日も暮れていた。
「どうしよう、荷物があるから泊まるのは不安だけど。」
スロークが悩むのも無理はない、夜の旅はこの世界では自殺行為、しかもユーシンに負担をかけてしまう。
あ!
思い出した!
「ユーシン、俺にも運転できるかな?」
もしできるなら、ユーシンの負担もぐっと減る。
と思う。
試しておかないとって思っていたんだった。
「あぁ、試したことなかったっスね。」
ということで、夜だけど出発。
レベルが上がったこともあって、荷車を引くのも苦にならない。
すでにこの世界の住人の基準を軽く超え始めてるのかもしれないな。
とはいえ非常識が過ぎるのも何なんで、4人でえっちらおっちらな演技でサンサテ離脱。
そっちの方がなかなかに疲れた。
町から十分離れたところで軽トラを召喚、まず俺が運転してみる。
おお、問題無いぞ。
今後を考えて何パターンか実験してみたけど、どうやらユーシンが車に乗ってさえいれば、他人が運転しても問題ないようだ。
行幸行幸。
これで免許の無いスロークを除く3人が運転できるので、村までは交代で進むとしよう。
実験が終わったらさっそく購入品を軽トラに積み替える。
傷む心配のない防寒具や薪は簡易貯蔵庫へ、荷車もうまく幌の上に乗せることができた。
荷台組はちょっと狭いだろうけど。
村まで170Kmほどの行程、それほど速度は出せないだろうから、日が昇る前には着くかな。
まずは、免許取りたてで運転経験があまり無いというユーキが、森の入り口までの比較的なだらかな工程を運転することに。
荷台には俺とスロークが、大量に積み上げられた荷物の隙間に入り込む。
「バイクの免許は持ってるんだけど、維持費も高いし車はとらなかったんだ。
仕事でも使うのはバイクばかりだったから・・・。」
申し訳なさそうに言うスローク、問題ないです。
大商人を取ってるあなたは希望の星なんです。
倉庫代わりに、なんて口が裂けても言えないけど。
第四貯蔵庫が開放されれば、荷車なんかまとめて入れられるし、第三貯蔵庫からは時間による劣化が一切なくなる。
俺より遥かに早く開放されるだろうからね。
森に入ってからは俺とユーシンの二人で、多少でも疲れたら交代ってことにしてかわりばんこで運転した。
夜中の森の中、なかなかに神経を使うドライブだったよ。
一応毛皮を持ち帰ったけれど、かなり臭い。
剥ぐの苦労したけど、これ、使い物にならないかも。
作業中も魔物が寄ってくる気配すらなかったし。
出迎えてくれたソンチョーに近づくに連れ、その表情がこわばっていく様子を観察できました。
それくらい臭いのです。
捨ててくればよかったかな。
ちょっと後悔。
しばし休息のあと、いよいよ買い出しのための準備に入った。
まっすぐ直進、を知るための目印は、どうしても手持ちの材料や道具ではでは難しいということで断念した。
で、以後のことも考えて、時間がかかってもいいから木々を伐採して、ちょっとした道を作ってしまおうということになったわけだ。
俺とスロークがメインになって木を伐採しつつ、細めの木はクマに参加してもらってバッサリとやってもらう。
軽トラがまたげる程度の高さにしないといけないから斧で切るのは難しそう。
鋸で切れるのか?・・・大変だけど頑張ろう。
ユーキとゴン、ユーシンには真っすぐ進めているのかの確認と邪魔なものの撤去を、アオンには周囲の警戒をしてもらう。
ユーシンはいざというときのために軽トラで逃走するためのキーマンでもある。
事が起こった時には一番大変かもしれない。
あのデモンエイプが、実は弱い個体だったかもしれないってことで警戒を1レベル上げることになった。
いつでも逃げられる準備を、だ。
準備も済んで、さぁ出発、という段階で浮上したのが、クッサい毛皮問題。
「え?これ、置いていくの?」
というソンチョーの一言で、仕方なく軽トラに積み込んで出ることに。
「どっかでポイしちゃうしかないよね、これ。」
鼻をつまみながら顔をしかめるユーキ。
ごめんよぉ、防寒具の足しになればと思ったんだよぉ。
あまりにも臭いので、軽トラの幌の上に毛皮を括り付けて、捨てても良さそうな場所を求めて我慢の出発となってしまった。
軽トラはユーシンが運転するので、早速人手が減ってしまった。
前途多難だ。
「こんだけ臭いんだから、魔物除けくらいになってくれることを祈ろう。」
そう言うスロークに同意したいです。
せめてそれくらいは役に立ってくれ。
臭いさえなければ、加工して防寒具に、ひょっとしたら結構良い防具に、なんて期待したんだけどなぁ。
下手に鎧になんかしたら、この獣臭がしみついちゃうんじゃないかな、想像したくないぞ。
臭いを我慢しつつ、ひたすら体を動かすことにした。
「できればユーキには、途中で馬のような魔物がいれば封印してほしいんだけど。」
思い付きだけど、提案してみた。
「馬?」
「行きはまぁ、あまりかさばるものは無いけどさ、帰りは荷物が結構な量になるでしょ、軽トラを出せるところまでは荷車か馬車を使うようになると思うんだ。
馬型の魔物ならギリ街中で連れていてもセーフじゃないかと思うんだよね。
封印したモンスターなら、軽トラで移動中は本に入れられるしさ、幌の無い馬車なら、車輪を外せば簡易貯蔵庫か、スロークの第一貯蔵庫にしまえると思うんだ。」
人力で運ぶにはどうしても限界があるし、時間もかかる、馬とは言わなくても、鹿とか、馬車を引いてもおかしくない魔物を封印できれば、人気のある場所での行動がずいぶんと楽になるはずだ。
「わざわざ時間をとる必要はないけどさ、もし見かけたら捕まえたいよね。
ユーキにはモンスター枠を使わせてしまうことになるけど。」
「なるほど・・・良いと思いますよ。僕も、馬とか乗ってみたかったし。」
そういえば、アオンに乗って走れないかとか練習してたな、結局足が付いちゃって諦めたみたいだけど。
**
森の外への道中は、想像を大きく外して順調だった。
なぜなら、魔物の気配が全く無く作業に没頭できたからだ。
ひょっとして、デモンエイプの毛皮がマジで魔物除けになってるのか?
それ以外にも大きな誤算もあった。
なんと、クマが大活躍である。
鋸(斧)組は不要とばかりに木々をバッサバッサとなぎ倒してゆく。
しかも、地面すれすれを切ってくれるので後処理も必要ない。
ただ、倒れる方向がコントロールできないので俺とスロークはひたすらクマの切った木が邪魔にならない方向に倒れるようサポートに徹することになった。
2日目からは、クマの消耗も考えて朝から昼頃までと夕方から作業終了までを俺とスロークが担当することにした。
屈辱だが、二人がかりでもクマにはかなわず、若干ペースが落ちてしまった。
それでも想定をはるかに上回るペースで進んだけどね。
いずれは根を掘り出して、ちゃんと整地して快適な旅ができるようにしたいもんだね。
デモンエイプの毛皮は効果抜群、道中全く魔物に遭遇することが無かった。
これはもう、臭いくらいは我慢しなきゃ。
まぁ、そのせいで馬車を引けそうな魔物は封印どころか見つけることもできなかったんだけどね。
あとユーシンに負担をかけていた。
少しでも悪臭の元を離したかったから、軽トラ幌の上に括り付けたまま、つまりずっと運転席で大渋滞並みの苦労を掛けることになってしまった。
直進すること7日、ようやく森を抜けることができた。
最終日はとんでもないスコールでみんなずぶ濡れになったけど。
森を抜けて気が付いたことがある。
デモンエイプの毛皮の臭みが和らいだ、というか、変化してきたのだ。
臭いは相変わらず強いんだけど、耐えがたい獣臭さだったものが、強いミント系とペッパー系が混ざったような・・・良い臭いとはいいがたいけど、あまり不快では無い臭いに変わった。
ひょっとして、あのスコールで汚れとかが洗い流されたのか?
一度洗ってみればよかったのかなぁ。
魔物除けとしての効果は変わっていないようだった。
スコールの後も、森を出るまで魔物の気配を感じることは無かったし。
これは、結果良ければ、って言う典型になったのでは?
良かった良かった。
7日間の突貫工事、軽トラのメーターではなんと、その距離150Kmだった。
徐行にもならない速度で7日間運転席に座りっぱなしだったユーシンははさぞ大変だっただろう。
ご苦労様でした。
あれ?
なんか忘れているような・・・何だったっけ?
まぁ、忘れるくらいだから大したことでは無いんだろう。
「アオン、道を探してきて、人には近づくなよ。」
ユーキの指示で飛び出すアオン。
ずっと警戒しっぱなしだったからストレスもたまったことだろう、思いっきり発散しておいで。
150Kmか、道が整備できれば馬車や徒歩で約3日の行程になるだろう。
途中2~3か所は休憩所がいるな、道には魔物除けも必要になるだろうけど、デモンエイプの毛皮はどれくらい細かくしたら効果がなくなるだろう?
まだ道とも呼べない状態だからすぐ必要ってわけじゃないけど。
そんなことを考えこんでいる俺の横で、相変わらずユーシンとユーキが仲良く喧嘩している。
それをスルーして、スロークと元の世界でのことで談笑しながら休憩していると、遠吠えが聞こえてきた。
「道を見つけたみたいだ。」
軽トラに乗り込んでアオンが向かった方向に走り出す。
10分ほどで走ってくるアオンと合流すると、さらに10分、左右に続く街道が見えて来た。
10Km弱といったところか。
森から結構距離があるから、人里が近いのかな?たしか、ゼノ村もこれくらい離れてたよな。
都合の良いことに主要道路というわけではないようだ、見る限り通行人がいない。
「どっちに向かえばいいかな。」
さっぱりわからん。
「たぶん左っス。
なんとなく見覚えがあるんで、2~3回通ったことがあると思うっス。」
そう言ってハンドルを切ったユーシンの感はズバリ正解、1時間ほどで遠くに石造りの外壁が見えてきた。
ここで軽トラとアオンをしまって、荷を背負って徒歩で外壁を目指す。
「あぁ、やっぱり、サンサテの町っスよ、俺が行ったことのある町では一番活気があったかな。」
というユーシンの言葉通り、サンサテは人であふれていた。
移動しながら商売をする商隊でにぎわうゼノ村とは全く違った雰囲気だ。
通りに露店は無く、道にあふれるほど商品を並べた店でひしめいている。
通りを行きかう人も老若男女様々で何となく華やかだ。
まずは資金調達を、と思ったけど、ゼノ村のように一括で買い取ってくれる業者はいないらしい。
あれは、ハンターと商隊が経済の中心だったゼノならではのシステムなんだそうだ。
ということで、面倒だけど素材毎にあちこちめぐって売りまわることになった。
今回の売却品は、狩りで仕留めた魔物の皮と魔石、干し肉に薬草類を予定している。
ただし、毛皮は魔物除けに使えることが判明したデモンエイプを除く。
魔石は今のところ使い道が無いので全部売る。
干し肉は、魔素抜き実験中の失敗作から、食べられる物をチョイス。
エグみの強さで普通、旨し、美味に分けて売ってみる。
美味タイプでもそこそこエグいんだけどね。
干し肉にした後でも魔素抜きできたと思うけど、何となくやらなかったものだ。
いきなり完全に魔素抜きの干し肉を広めるのもいろいろと問題になりそうなので、エグみの残る物から売ってしまおうということで話がまとまっている。
いいものは思いっきりもったいつけないとね。
薬草は、俺が森で採取した多種多様な野草を乾燥させた物。
そして予定額に達しなかったときのために、干し肉以外の食材も少々。
多少魔素抜きしてあるけれど、これは本当に最後の手段だ。
まずは、かさばる皮の売却へ向かった。
情報が無いので、できるだけ均等に3等分して3か所に売却してみた、今後は最も高値を付けたカルソン獣皮店ってところと取引するとしよう。
見た目子供のユーキを除く3人で売却を担当して、ユーキには荷車が買える店などの情報収集を頼んである。
次に魔石の売却、これは高額になる可能性が高いので3人揃って。
なんせ目玉商品、デモンエイプの魔石があるからね。
まず人間では太刀打ちできない魔物だ、一応問い詰められたときのシミュレーションも済ませてある。
まだ目立つには早すぎると思うからね。
やってきた魔石の取引所はかなり厳重だった。
入り口には甲冑姿の警備員が2人とそろいの制服を着たガタイのいい男が二人、入店時に武装解除を求められた。
一人ひとり、簡素だけど装飾の施された頑丈な木箱に武器を入れると、代わりに木札を渡された。
退店時に引き換えになるそうだ。
店内には様々な魔石が展示されたショーケースが、サイズや色ごとにまとめられて所狭しと並んでいる。
同じ制服姿の店員が数名配置されていて、購入するとき取り出してもらうシステムのようだ。
店員に聞くと、買取は奥の別室で行っているということで案内されるままに別室へ。
狭い部屋を半分に仕切るようにカウンターがあり、カウンターの上は鉄格子。
これがガラスだったら、刑事ドラマで見たことのある刑務所の面会室みたいだ。
対面には品のよさそうなオジサマがいる。
おっさんと言ってはいけない。
そんな感じだ。
カウンターには中央に四角い穴が開いていて、穴の下は箱状になっている。
なるほど、ここに魔石を入れるのね。
とりあえずデモンエイプ以外の魔石を箱の中へ。
すると、スッと箱が奥に引っ込んで格子の先にいるオジサマから取り出せる位置に。
結構な数だけど、表情一つ変えずに査定を始める、さすがプロ。
提示された価格も満足のいく額だったので即決でOKした。
ただ嘘でも喜んではいけない。
まだデモンエイプが控えている。
魔石を入れた箱が戻ってくる。
中には、魔石の代わりに売却額が貨幣ごとに分けられて積まれていた。
うほぉ~。
イカンイカン、能面能面ッと。
では、いよいよメインイベントだ。
お金を受け取ると、次にデモンエイプの魔石を入れて箱を押す。
オジサマの表情が変わる。
なんか勝った気分。
「失礼ですが、これはどちらで。」
やっぱり来たか。
「森だ。
2日ほど奥に入った場所で、瀕死の巨猿を見つけた。
3mを超える猿だ。
俺も長くハンターやってるが、あんなのは見たことも無かった。」
「3mを超える巨大な猿ですか・・・まさか、デモンエイプですかな。」
と言ってオジサマに告げられた特徴は、まさにデモンエイプだった。
こういうところには情報もあるんだね。
「たぶん権力争いに敗れて逃げ出した個体でしょう。
本来なら森の深奥に群れで住む魔物ですが、過去に権力争いに破れたらしい個体がこの付近まで逃げて来たという記録がありました。
幸いにもその時はすでに死んでいたようですが、それから逃げた魔物が森から一斉に溢れ出て大変なことになったものです。」
へぇ、こちらの用意したシナリオに都合のいい実例があったんだな。
「自分たちが見つけたときは足も腕もズタズタだったが、それでも3人やられた。
二度と会いたくはないな。」
と打ち合わせ通りに伝えるスローク。
見た目では断然リーダーっぽい、渋いオッサンだから説得力もあるだろう。
こっちの方はオッサンと言っていい。
オジサマとオッサン。
なんか、そんな差のある二人だ。
品と野性味とでも言うのか。
「なるほど、今回のあれは、それが原因だったということのようですね。」
あれそれつぶやいてるけど、たぶんこちらと同じことを考えたかな?氾濫の原因。
実際には大したケガも無く元気なままでやって来たから大氾濫になったんだろうけど。
そして出された提示額は。
うわお。
いかん、にやけてしまう。
仲間を失ったばかりの設定が・・・。
こらえなければ。
ユーシンは後ろを向いてプルプルしてる。
スロークは、さすがのポーカーフェイス。
かと思ったら、太ももをつねってる。
三人とも演技は無理だな。
「ありがたい、これなら死んだ奴らの家族も当面は過ごせるだろう。」
そう言うが早いか、バレないうちに売却金を受け取り立ち去る。
なんと、出口は入り口と離れた場所だった、徹底してるなぁ。
その後薬草とか骨なんかを売りさばき、ここまでの収入は軽く300万セイルを超えていた。
大半がデモンエイプの魔石のおかげだけどね。
とりあえずメインイベント、魔石の売却が完了して一息、あぁ、何か気が疲れた。
小休止をはさんで、ここで一度スロークと別行動をとることに。
スロークにはユーキと合流してもらって、荷車や食材の買い出しを担当してもらう。
俺とユーシンは、最後の売却品、干し肉を捌きに向かう。
とはいえ、一般的に干し肉はそれぞれの店が加工するので買取はしていないらしい。
ちょっと当てが外れてしまったが仕方ない。
今後魔素抜き食材の販売を計画している以上は、エグみの少ない干し肉という武器を知ってもらうだけでもしておかないとな。
ここは、用意した3種類の失敗作の中から“美味”を餌にして、試食させて食いつかせるしかないかもしれん。
干し肉に興味を持たせることができれば、今後の取引の大きな戦力になってくれるはずだから。
道がちゃんと整備されるまでは村にヒトを呼び込むことは難しいだろうけれど、じわじわと美味い飯を浸透させていって、護衛を雇ってでも行きたいと思わせられればしめたものだ。
資金には余裕ができたから、今回売却額は一般的な干し肉の卸し価格でもいいかな。
問題はどこに持ちかけるかだけど。
活気のある店は、自分たちの味に自信をもってそうで相手にしてくれないかも。
かといって人気のない店だと売れなくて広まらない可能性も・・・村に興味を持っても、買い付けに来る余裕が無かったりしたら意味がないし・・・う~む。
難しいな。
なんて悩んでいたら、
「シンさ~ん、試してくれるってとこ見つけたっスよ~。」
ユーシンのコミュ力を侮っていたようだ。
そういえば、一人の時も運送業なんか始めてたもんね、意外と起業家としての才能があったりして。
連れられて行った先は食堂だった。
なるほど、そういう手もあったか。
時間的に客のいない店内に、体格のいいエプロン姿のおばちゃんが一人。
「この人がここのオーナーでベリッサさんッス。」
肝っ玉母ちゃんという表現がしっくりくる。
「とりあえず味は見させてもらうけど、あるだけ全部買うからよろしく頼むよ。」
あら、そんなところまで話が進んでるの?
「調理担当の旦那さんが腰をやっちまったそうで、ピンチらしいっス。
加工済みは高くて採算割れになるそうで、ちょっと安めで話しちゃいましたけど。」
なるほどね、問題無いです。
さっそく試食用の“美味”干し肉を食したまえ。
「なんだいこれ!」
予想どうりの反応アザッス。
「信じられない、どうやって作ったんだい。」
この後しばし質問攻めにあってしまった。
が、まだ試作段階で安定してできないこと、今回は市場の反応を見るために持ち込んだことを説明して、次回もこの店に卸すことで何とか納得してもらった。
オバちゃんパワーはこっちでも同じか。
失敗“美味”レベルの干し肉なら、魔素抜きの時間を半分くらいにすれば似たような感じになるかな。
当面売りに来るのはそれで行こう、別の食材は今回は保留だ。
次売りに来る日の予約まで取らされてしまったけれど、なんとか解放されました。
こうして、すべて売り終えると別行動だったスローク、ユーキと合流する。
すでに荷車と食材の購入は済んでいて、積み込みをしている最中だった。
荷車は、軽トラの荷台くらいのサイズの標準的なものだ。
「これなら、ひっくり返して幌の上に乗っけていけないかなって思ったんだけど。
壊れないんでしょ?あれ。」
とユーキ、彼はこういった思い付きがすごい。
うまく乗れば車輪外して貯蔵庫に押し込む手間が省けるな。
食材の積み込みを任せて、俺とユーシンは薪と防寒具を手分けして買い込む。
終わるころにはすっかり日も暮れていた。
「どうしよう、荷物があるから泊まるのは不安だけど。」
スロークが悩むのも無理はない、夜の旅はこの世界では自殺行為、しかもユーシンに負担をかけてしまう。
あ!
思い出した!
「ユーシン、俺にも運転できるかな?」
もしできるなら、ユーシンの負担もぐっと減る。
と思う。
試しておかないとって思っていたんだった。
「あぁ、試したことなかったっスね。」
ということで、夜だけど出発。
レベルが上がったこともあって、荷車を引くのも苦にならない。
すでにこの世界の住人の基準を軽く超え始めてるのかもしれないな。
とはいえ非常識が過ぎるのも何なんで、4人でえっちらおっちらな演技でサンサテ離脱。
そっちの方がなかなかに疲れた。
町から十分離れたところで軽トラを召喚、まず俺が運転してみる。
おお、問題無いぞ。
今後を考えて何パターンか実験してみたけど、どうやらユーシンが車に乗ってさえいれば、他人が運転しても問題ないようだ。
行幸行幸。
これで免許の無いスロークを除く3人が運転できるので、村までは交代で進むとしよう。
実験が終わったらさっそく購入品を軽トラに積み替える。
傷む心配のない防寒具や薪は簡易貯蔵庫へ、荷車もうまく幌の上に乗せることができた。
荷台組はちょっと狭いだろうけど。
村まで170Kmほどの行程、それほど速度は出せないだろうから、日が昇る前には着くかな。
まずは、免許取りたてで運転経験があまり無いというユーキが、森の入り口までの比較的なだらかな工程を運転することに。
荷台には俺とスロークが、大量に積み上げられた荷物の隙間に入り込む。
「バイクの免許は持ってるんだけど、維持費も高いし車はとらなかったんだ。
仕事でも使うのはバイクばかりだったから・・・。」
申し訳なさそうに言うスローク、問題ないです。
大商人を取ってるあなたは希望の星なんです。
倉庫代わりに、なんて口が裂けても言えないけど。
第四貯蔵庫が開放されれば、荷車なんかまとめて入れられるし、第三貯蔵庫からは時間による劣化が一切なくなる。
俺より遥かに早く開放されるだろうからね。
森に入ってからは俺とユーシンの二人で、多少でも疲れたら交代ってことにしてかわりばんこで運転した。
夜中の森の中、なかなかに神経を使うドライブだったよ。
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