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閑話ー失策ー
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「あちぃ。」
炎天下での片付け作業。
最近毎年聞いているようだが、異常気象による高温で連日エアコンの交換、修理に大忙しだ。
本日2軒目の工事を終え、軽トラックに廃棄品や使った工具を積み込んでゆく。
後輩の杉原に室外機の重い方を任せて、二人で積み込む。
以前は何の問題も無く一人で運搬できていた物も、最近は一人でやって、たびたび腰を痛めるようになってきてしまった。
労働基準法なんて、労働者を守るって建前の法律のせいで、邪魔な装備が増えてしまったこともある。
と、思う。
体感5割り増しなんだよ、装備品の重量が・・・全く、動きの邪魔にもなるし、俺の腰はこれのせいだよな。
歳のせいじゃない・・・ってことにしておこう。
仕方なく、積み込み作業は必ず二人でやるようになってしまった。
「でもなんか、飯田さん元に戻った感じでよかったですよ。」
そう言って工具を詰め込んだバッグを荷台に積み込む杉原。
「元に戻った?」
そう言えば、そんなようことを訪問先の常連さんからも言われたな。
「なんか、急に落ち着いたって言うか、年寄り臭くなってたじゃないですか。」
「年寄りって。」
確かに自覚はある。
ある日突然、熱中し続けてきたゲームに興味を持てなくなった。
日に日にプレイ時間が減り、他に好きなバンドのライブ映像を見るくらいしか趣味の無かった俺は、時間を持て余すようになっていた。
今思えば、ゲームだけじゃなくいろいろなことに興味を感じなくなっていた気がする。
ただ仕事をこなして帰って寝る日々、常に低テンションだった。
周りからはそう見えていたんだな。
「あれって、イメチェンか何かだったんですか?」
そんなわけ無いんだけど。
でも、何でだろう。
「鬱?」
「またまたぁ、飯田さんが鬱って。」
冗談だと思われたみたいだ。
まぁ、俺自身鬱って病気がどんなものかよくわかっていないんだけど、原因もなく突然あらゆるものに対する興味が薄らいでしまうなんてこと、病気以外であるんだろうか。
俺の乏しい知識では、鬱という言葉しか浮かばなかった。
「なんでなんだろうなぁ、突然なって、突然終わった感じ。」
それ以外に表現のしようがない。
大量の道具やら安全具がぶら下がっていて非常に重い腰ベルトを外して荷台に押し込む。
一気に軽くなった下半身。
一仕事終えたって感じられる瞬間だ。
まだこの後2軒回らないといけないんだけどな。
「飯田さんがぶっ倒れてからですよね、代わったっていうか、元に戻ったの、だからそれまでのあれって、イメチェンでもしてたのかって思ったんですけど。」
移動中の車の中でも話題は変わらず。
そんなにおかしかったか?俺。
仕事中は特に変わらなかったと思うんだがなぁ。
倒れてからか・・・。
俺は仕事中突然倒れて、数日間昏睡だったらしい。
医者も原因不明だと言っていた。
心臓に疾患があるし、親もその上も定年前にポックリ逝ってるから、それが原因じゃないのか?
不安しか残らない。
親の享年まで後10年か、俺もそろそろ終活始めるかな。
**
「「で、どう思います?」」
真っ黒な空間。
白いタキシード姿の男が、うずくまる黒く丸い影に声をかけた。
答えが返ってこないことは承知の上で。
「「お前が聞くべきはそっちじゃないでしょ。」」
丸い影とは逆方向にいた、真っ赤なドレスを着た女性が苛立ちを隠しもせずに吐き捨てる。
「「魂を分割するなんて方法、問題が起こらないはずがないでしょう。」」
咎めるように発せられる言葉にうんざりしながらも、白いタキシードの男、シンからクソ悪魔と呼ばれる悪魔は、反省するそぶりを見せた。
「「まったくです、あなたに相談するべきでしたよ。」」
困ったものだ、まったく想定していなかったわけではないが、こうまで顕著に現れていたとは。
選別の段階で、ヒトとのコミュニケーションに著しく適さない者、破壊衝動の強い者など、問題になりそうな者は排除したはずだった。
しかし現実はどうだ。
元の性格よりもずっと攻撃的になったり、不安定化する者が出てきている。
与えた知識に紛れ込ませる形で、魔物やヒトの死に対する拒絶感や恐怖心といった感情を和らげる処置はしたが、強くなるために同郷の仲間を躊躇なく殺せるものが出るなどとは想定していなかった。
いや、この世界のヒトなら平気で出て来ただろうが、あの世界の、平和ボケしたあの国の中から、一線を容易く超えてしまうものがあれほど出るとは。
ほとんどの者が、元の世界より積極的に、大胆に行動するようになってはいたが、この退屈な世界に活気をもたらし、悪魔たちにとって面白い世界へと変えてゆくには良い兆候だと気にしてこなかった。
今までとは全く違った、ゲームや物語に出てきそうな世界に、特殊な能力を持ってやって来たのだ、多少の変化はあって当然、程度にしか考えてはいなかった。
はみ出し者が出て暴走するのも仕方ないだろうと、多少は諦めてもいた。
ゲームという要素を強く反映させたことで、知力が元の人物とは大きくズレてしまうという問題もあったので、そういった多角的で不可避な原因によって暴走や、自身に不安を感じるものが出るのも仕方ないことだと。
しかし、今回のイレギュラーな事態によって、彼らの変化が魂の分割という行為がもたらした影響であると確定されてしまった。
分割したのにも理由はある。
第一に、1000という数字は大きいようで、世界の人口からしたら微々たる量だ。
彼の目的の一つ、世界を(面白おかしく)変えるにはこれでも少ないくらいだったが、対価が少なすぎた。
結果、全てを持ってくるのではなく1/3程度残すことでコストを削減した。
それに、元の世界へ戻ろうとする者を諦めさせる手段としても、元の世界には自分がいる、という状況は有効だと思ったからだ。
しかし、ある一人のイレギュラーな行動によって、分割され、残された魂が補填されてしまった。
「「確認ですが、元の世界のあの方を救うために送ったものは、あの方をコピーしたもの、で間違いありませんね?」」
白い悪魔の問いに、丸い悪魔は小さくうなづいた。
「「なるほど、魂の分割によって、精神(こころ)のありようも分割されてしまったようですね、しかも、それだけでは済まない面も観察できました。
これは興味深い。」」
「「興味深いで済ませるな!放置しておけん者も出ている。」」
他人事のような白い悪魔に、赤いドレスの女性が声を荒らげた。
((やれやれ、この方は真面目過ぎるんですよね、その割に大雑把なので扱いづらい。
双子対策にと引き込みましたが、失敗だったかもしれません。))
異世界から1000もの魂を引き込む。
生存率を上げ、魔素を消費し、あわよくばこの世界に変化を与えるため、彼らが馴染みやすいであろうゲームのシステムを構築して魂に組み込む。
それほどの大がかりな作業を、白い悪魔一人ではとても構築することはできなかった。
だからこそ、多くの悪魔たちを巻き込んだのだが、いつのまにか彼らの中でも最強で最悪な双子の悪魔も参加していた。
絶対に参加させたくはなかったので秘密裏に進めていたのだが、同時に絶対にかぎつけて参加するだろうと諦めてもいた。
唯一その最悪を御せるのが、この赤いドレスの悪魔。
当然最初から双子対策として巻き込み済みだったのだが、真面目で大雑把な彼女もまた悩みの種だった。
「「その問題のある方、お任せしてよろしいでしょうか。
ただし、あなたが直接命を奪うことだけは許容できません、その段階でガイゼルベルグとの契約も破綻してしまいます。
それに、問題ある者でも、一応魔素を減らすという建前はなしています、一線を超えるまでは静観でお願いしたいのですが。」」
彼女が問題だと言い出した以上、すでに白い悪魔では静止できない。
だが、せめて釘をさすくらいはしておかなければならない。
「「いいだろう。」」
そう言って、赤いドレスの悪魔は踵を返し、次の瞬間には消えていた。
「「全く、どうしてこう次々と問題が起こるのでしょう・・・とても素晴らしい。」」
ニヤリと笑みを浮かべた白い悪魔。
((詳しくデータを取らないといけませんね、彼らの変容がどの程度で、どのように変わったのか。
うまくいけば、もう一つ新しい遊びが出きそうだ。))
ブツブツと何かをつぶやきながら消えた白い悪魔の後を追うように、丸い悪魔の地響きにも似た深いため息が黒い空間に響いた。
炎天下での片付け作業。
最近毎年聞いているようだが、異常気象による高温で連日エアコンの交換、修理に大忙しだ。
本日2軒目の工事を終え、軽トラックに廃棄品や使った工具を積み込んでゆく。
後輩の杉原に室外機の重い方を任せて、二人で積み込む。
以前は何の問題も無く一人で運搬できていた物も、最近は一人でやって、たびたび腰を痛めるようになってきてしまった。
労働基準法なんて、労働者を守るって建前の法律のせいで、邪魔な装備が増えてしまったこともある。
と、思う。
体感5割り増しなんだよ、装備品の重量が・・・全く、動きの邪魔にもなるし、俺の腰はこれのせいだよな。
歳のせいじゃない・・・ってことにしておこう。
仕方なく、積み込み作業は必ず二人でやるようになってしまった。
「でもなんか、飯田さん元に戻った感じでよかったですよ。」
そう言って工具を詰め込んだバッグを荷台に積み込む杉原。
「元に戻った?」
そう言えば、そんなようことを訪問先の常連さんからも言われたな。
「なんか、急に落ち着いたって言うか、年寄り臭くなってたじゃないですか。」
「年寄りって。」
確かに自覚はある。
ある日突然、熱中し続けてきたゲームに興味を持てなくなった。
日に日にプレイ時間が減り、他に好きなバンドのライブ映像を見るくらいしか趣味の無かった俺は、時間を持て余すようになっていた。
今思えば、ゲームだけじゃなくいろいろなことに興味を感じなくなっていた気がする。
ただ仕事をこなして帰って寝る日々、常に低テンションだった。
周りからはそう見えていたんだな。
「あれって、イメチェンか何かだったんですか?」
そんなわけ無いんだけど。
でも、何でだろう。
「鬱?」
「またまたぁ、飯田さんが鬱って。」
冗談だと思われたみたいだ。
まぁ、俺自身鬱って病気がどんなものかよくわかっていないんだけど、原因もなく突然あらゆるものに対する興味が薄らいでしまうなんてこと、病気以外であるんだろうか。
俺の乏しい知識では、鬱という言葉しか浮かばなかった。
「なんでなんだろうなぁ、突然なって、突然終わった感じ。」
それ以外に表現のしようがない。
大量の道具やら安全具がぶら下がっていて非常に重い腰ベルトを外して荷台に押し込む。
一気に軽くなった下半身。
一仕事終えたって感じられる瞬間だ。
まだこの後2軒回らないといけないんだけどな。
「飯田さんがぶっ倒れてからですよね、代わったっていうか、元に戻ったの、だからそれまでのあれって、イメチェンでもしてたのかって思ったんですけど。」
移動中の車の中でも話題は変わらず。
そんなにおかしかったか?俺。
仕事中は特に変わらなかったと思うんだがなぁ。
倒れてからか・・・。
俺は仕事中突然倒れて、数日間昏睡だったらしい。
医者も原因不明だと言っていた。
心臓に疾患があるし、親もその上も定年前にポックリ逝ってるから、それが原因じゃないのか?
不安しか残らない。
親の享年まで後10年か、俺もそろそろ終活始めるかな。
**
「「で、どう思います?」」
真っ黒な空間。
白いタキシード姿の男が、うずくまる黒く丸い影に声をかけた。
答えが返ってこないことは承知の上で。
「「お前が聞くべきはそっちじゃないでしょ。」」
丸い影とは逆方向にいた、真っ赤なドレスを着た女性が苛立ちを隠しもせずに吐き捨てる。
「「魂を分割するなんて方法、問題が起こらないはずがないでしょう。」」
咎めるように発せられる言葉にうんざりしながらも、白いタキシードの男、シンからクソ悪魔と呼ばれる悪魔は、反省するそぶりを見せた。
「「まったくです、あなたに相談するべきでしたよ。」」
困ったものだ、まったく想定していなかったわけではないが、こうまで顕著に現れていたとは。
選別の段階で、ヒトとのコミュニケーションに著しく適さない者、破壊衝動の強い者など、問題になりそうな者は排除したはずだった。
しかし現実はどうだ。
元の性格よりもずっと攻撃的になったり、不安定化する者が出てきている。
与えた知識に紛れ込ませる形で、魔物やヒトの死に対する拒絶感や恐怖心といった感情を和らげる処置はしたが、強くなるために同郷の仲間を躊躇なく殺せるものが出るなどとは想定していなかった。
いや、この世界のヒトなら平気で出て来ただろうが、あの世界の、平和ボケしたあの国の中から、一線を容易く超えてしまうものがあれほど出るとは。
ほとんどの者が、元の世界より積極的に、大胆に行動するようになってはいたが、この退屈な世界に活気をもたらし、悪魔たちにとって面白い世界へと変えてゆくには良い兆候だと気にしてこなかった。
今までとは全く違った、ゲームや物語に出てきそうな世界に、特殊な能力を持ってやって来たのだ、多少の変化はあって当然、程度にしか考えてはいなかった。
はみ出し者が出て暴走するのも仕方ないだろうと、多少は諦めてもいた。
ゲームという要素を強く反映させたことで、知力が元の人物とは大きくズレてしまうという問題もあったので、そういった多角的で不可避な原因によって暴走や、自身に不安を感じるものが出るのも仕方ないことだと。
しかし、今回のイレギュラーな事態によって、彼らの変化が魂の分割という行為がもたらした影響であると確定されてしまった。
分割したのにも理由はある。
第一に、1000という数字は大きいようで、世界の人口からしたら微々たる量だ。
彼の目的の一つ、世界を(面白おかしく)変えるにはこれでも少ないくらいだったが、対価が少なすぎた。
結果、全てを持ってくるのではなく1/3程度残すことでコストを削減した。
それに、元の世界へ戻ろうとする者を諦めさせる手段としても、元の世界には自分がいる、という状況は有効だと思ったからだ。
しかし、ある一人のイレギュラーな行動によって、分割され、残された魂が補填されてしまった。
「「確認ですが、元の世界のあの方を救うために送ったものは、あの方をコピーしたもの、で間違いありませんね?」」
白い悪魔の問いに、丸い悪魔は小さくうなづいた。
「「なるほど、魂の分割によって、精神(こころ)のありようも分割されてしまったようですね、しかも、それだけでは済まない面も観察できました。
これは興味深い。」」
「「興味深いで済ませるな!放置しておけん者も出ている。」」
他人事のような白い悪魔に、赤いドレスの女性が声を荒らげた。
((やれやれ、この方は真面目過ぎるんですよね、その割に大雑把なので扱いづらい。
双子対策にと引き込みましたが、失敗だったかもしれません。))
異世界から1000もの魂を引き込む。
生存率を上げ、魔素を消費し、あわよくばこの世界に変化を与えるため、彼らが馴染みやすいであろうゲームのシステムを構築して魂に組み込む。
それほどの大がかりな作業を、白い悪魔一人ではとても構築することはできなかった。
だからこそ、多くの悪魔たちを巻き込んだのだが、いつのまにか彼らの中でも最強で最悪な双子の悪魔も参加していた。
絶対に参加させたくはなかったので秘密裏に進めていたのだが、同時に絶対にかぎつけて参加するだろうと諦めてもいた。
唯一その最悪を御せるのが、この赤いドレスの悪魔。
当然最初から双子対策として巻き込み済みだったのだが、真面目で大雑把な彼女もまた悩みの種だった。
「「その問題のある方、お任せしてよろしいでしょうか。
ただし、あなたが直接命を奪うことだけは許容できません、その段階でガイゼルベルグとの契約も破綻してしまいます。
それに、問題ある者でも、一応魔素を減らすという建前はなしています、一線を超えるまでは静観でお願いしたいのですが。」」
彼女が問題だと言い出した以上、すでに白い悪魔では静止できない。
だが、せめて釘をさすくらいはしておかなければならない。
「「いいだろう。」」
そう言って、赤いドレスの悪魔は踵を返し、次の瞬間には消えていた。
「「全く、どうしてこう次々と問題が起こるのでしょう・・・とても素晴らしい。」」
ニヤリと笑みを浮かべた白い悪魔。
((詳しくデータを取らないといけませんね、彼らの変容がどの程度で、どのように変わったのか。
うまくいけば、もう一つ新しい遊びが出きそうだ。))
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