GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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071話:空の旅

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 寒い。
 うかつだった。
 空の旅がこんなに寒いとは。
 人に騒がれないようにと、かなりの高度を飛んでいるからそのせいもあるけど。
 何とか取り出した毛布でゴブ吉君と一緒にくるまっているけどやっぱり寒い。
 時速100Km近い速度ってことは、風速28mの向かい風を受け続けているのと同じこと・・・うっかりしてると転げ落ちてしまうし、目も明けていられない 
 大失敗じゃぁ~。
 グリフォンの飛行は、基本的に滑空なのでまだいいけどさ。
 最初に羽ばたいて高度を取ると、後はしばらく滑空状態、高度が落ちてきたら羽ばたいて上昇、また滑空って感じ。
 羽ばたきが少ないから安定してるし、座り心地も悪くない。
 でも、もろに受ける強い向かい風が寒いし辛い。
 明日はゴーグルと防寒具を準備しないとな。
 空の上で苦労しながら軽食を取りつつ、飛行そのものは実に順調。
 時折遥か下を飛ぶ鳥型の魔物が見えるけど、グリフォンに気が付くと一目散に逃げてゆく。
 ぶっちゃけ、グリフォンはブリザードウルフのフブキとほぼ同格だからちょっかいをかけてくる奴なんて、ワイバーンとかドラゴンレベルだろう。
 案内役のゴブ吉君の方向感覚とやらは目に頼らないようだ。
 時折方向を確認する時に彼の指さす方向は一切迷いが無いけど、彼は頭まですっぽりと毛布をかぶったままだもん。
 ダイジョウブナノカ?
 うん、まぁ信じることにしよう。
 日が傾くころには着地して簡易拠点を展開、しっかり休息をとった。
 翌日の準備も忘れずに。
 ゴブ吉君、直接会話はできないけれど、こちらの言葉は分かっているみたいで意思の疎通は問題無くできる。
 どうやら目的地には明日の昼前に着きそうだ。
 一応念のため、明日は火焔窟のマスクも装備していこう。
 ガスマスクがウイルスや細菌にも効果があるのかは不明だけど。
 そうそう、薬の方のチェックして、すぐに取り出せるようにショートカット登録しておく。
 これ、スキル商会の管理機能の一つで、よく使うものをすぐ取り出せるように、1~9までの呼び出しキーを割りつけられるっていう機能だ。
 俺みたいに何でもかんでも詰め込む貧乏性にとってはとてもありがたい機能なのだ。
 1~9までしか無いってのが不満だけどさ。
 エイルヴァーンにおけるステータス異常の病気は、主にイベント用。
 だから病気の治療につかうアイテム、万能薬もあまり使用頻度が高くない。
 正直俺も、熟練上げの効率が良いから大量に造って、そのまま使わずに持ってるってだけのものだ。
 必要な素材集めが多くて、素材レベルが高い上に調合の難易度も高くて良く失敗するなどと、とにかく面倒でさ、採集スキルの熟練上げと一緒にやったんだよな。
 イベントで高値で売れるからって多くのプレイヤーにとって中盤の資金稼ぎになってたみたいだけどね、俺、こういうのなんか処分できないで貯めこんじゃうんだよね。
 ちなみにこの万能薬、毒や麻痺、錯乱と言った状態異常にも効果があるんだけど、それらには専用の薬がはるかに安い価格で買えるし作れるから、よほどのことが無い限り万能薬をそれらの目的に使うことも無いんだよ。
 結果、スタック上限99個がそのまま貯蔵庫に残っているわけだ。
 なつかしいなぁ、完全に単純作業になるから、好きだったアーティストや芸人のライブ映像見ながら黙々とやってたっけ。
 なんて懐かしんでいるうちに寝込んでしまったようだ。
 いかん、ちゃんと休めなかった。
 
    **
 
 「うわわわわ!ちょ、はや、まってぇえぇえ~。」
 どうしてあの時、自分自身ではなくゴブ吉を推薦したんだろう。
 カタオカは、出発してわずか1時間ほどで自分の選択を後悔していた。
 馬への騎乗はコツもいるし視線も高くなるから慣れている方が良いだろうとウシオ氏が乗ることになり、ゴブゾウ、ゴブスケがウシオ氏の後ろに乗った。
 そして、もう一頭の狼には自分とゴブノシンが乗ることになった。
 そこまでは良かったんだけど・・・。
 速すぎる。
 いくらなんでも早すぎる。
 振り落とされないように必死にしがみつくのがやっとだ。
 しかも、彼らは道を全く無視して一直線に突き進む。
 もう、自分たちがどこにいるのかもわからない。
 こんなんでたどり着けるのかと聞いたら、魔導地図なるものをシン氏から借り受けていて、そこには持ち主であるシン氏の方角が表示されているんだそうだ。
 昼食のために小休止をする頃には、体中が悲鳴を上げていた。
 「う~ん、発掘ダンジョン王国って、主人公に当たるキャラが登場しないんですよ。
 私の外見も元のままだし、たぶん私自身は普通の人と変わりないと思います。」
 ウシオ氏は、レトロゲームが能力の起源らしいけれど、ゲーム中戦う描写は無いという。
 しかし、拳銃の扱いに長けていて命中精度もかなりのものだと言う。
 ゲームそのものではなく、腕利きのスパイと言う設定から来ているのではないかとシン氏から聞いているそうで、私自身にもそう言った力があるかもしれないとアドバイスを受けたところだった。
 が、残念なことに発掘ダンジョン王国では、主人公には名前すら無いのである。
 スマホ用の低価格売り切りゲームとはいえ、せめてなんかしらの設定でもつけていてくれれば・・・。
 いや、贅沢は言うまい。
 村には怪獣になってしまった仲間もいるのだ。
 人間だっただけでも幸運だったというべきだろう。
 「そうかぁ、そう言えば、シンさん達の村にも、ハリネズミだったりアスクラのキャラまんまだったりって人もいたって言ってたもんなぁ。」
 どうやら犠牲者は怪獣のアラキ君だけじゃないようだ。
 ホント、自分って運が良かったなぁ。
 一日ズレていたら・・・やめよう、考えるのは。
 「とりあえず、移動中に必要なものはこのバッグに入れてくれてるみたいなんだよね。」
 そう言ってウシオ氏が馬の鞍に取り付けられたバッグを開くと、中から大きめのバスケットを取り出した。
 「あ、サンドイッチだ。これ美味いんだよね。」
 さんどうぃっち!?
 まさか、この世界でそんなものが・・・。
 のぞき込んだバスケットの中には、確かにうまそうなサンドイッチが詰め込まれていた。
 「まじか・・・。」
 思わず声が出た。
 この世界に来てからと言うもの、何を食べてもエグくてまともに食事なんてできなかった。
 見た目はどう見てもサンドイッチだが、これもたぶんエグいんだろう。
 ホント、見た目は完ぺきに元居た世界のサンドイッチだけど。
 恐る恐る一口・・・あぁ・・・。
 視界がにじむ。
 まさか、美味しさに涙を流すことになるなんて。
 あまりのエグさにえづいて涙が出たことはあったけど。
 生きてきてよかった。
 「これ、シンさんがゲーム時代に作った食料アイテムらしいんですよ、凄いですよね。」
 「え?じゃぁ、もう作れないってことですよね?」
 あまりの美味しさに、ついつい手が出てバスケットの中はもう空っぽだ。
 とんでもないことをしてしまったんじゃないかと背筋が凍る。
 「あ、いっぱいあるから大丈夫だって言ってましたよ。
 それに、シンさん達の村にはエグみを完全に取れる技術を持った人とか、本物の料理人だった人とかもいるそうだから、気にしないで食べてくれって。」
 ホッとした。
 というか、そんなすごい人たちがいるのか。
 自分たちの村も自慢できるくらいの村だと思っていたけれど、食に関しては完全敗北だ。
 これは是非とも交流したい。
 ワープポータルを造るにはまだレベルが足りないけれど、遠く離れた村どうしでの取引には絶対必要だ、急いでレベル上げに励まなければ。
 
    **
 
 ゴブ吉君が指さす方角に、村が・・・村?
 明らかに小さな近代都市が見えるんですけど?
 いやだってさ、小規模だけどどう見てもアスファルトの道路に、5階建てのマンションっぽい建築物に・・・スゲェなこれ。
 クリエシティとか、それ系の近代都市開発ゲームかな?
 高度を下げて村に近づいて行く。
 お、村人がこっちに気づいたかな?
 って・・・マズくね?
 大騒ぎになってるように・・・見える。
 たいそう立派な城壁の上には、数人の人影が慌ただしく集まりだした。
 いや、あれ歓迎だよね?
 ね?
 「うおっ!」
 いきなり火の玉が飛んできて緊急回避。
 「ゴブ吉君、誤解といて早く!」
 毛布にくるまったままのゴブキチ君を揺さぶる。
 ゴブ吉君も、なんだか両手を広げて攻撃をやめるようにアピールしてるっぽいけど・・・ダメだよ君、そのまんまじゃただの毛布男だ。
 慌ててゴブ吉君の毛布を剥ぎ取る。
 これでようやく誤解も・・・取れないじゃないかぁ~。
 ビュンビュン飛んでくる火球。
 矢だの石だのまで追加されてるんですけど。
 いきなりグリフォンで接近はマズかったか?
 いやだって、同じ転生者(?)じゃん。
 察しろよぉ~。
 なかなか近づけないでいると、
 「ぶっ殺せぇ~。」
 とか
 「死んでも落とせぇ~。」
 なんて物騒な叫び声。
 ちんちくりんなケモミミ少年が拳を振り上げて騒いでいる。
 火球を出してるのはあいつか。
 「タイチョ~、本当に確かめないでいいんですかぁ~。」
 なんて声も聞こえてくるんですけど・・・。
 気の弱そうなゴブリンの兵士がオタついているな・・・あれじゃ説得は期待できそうもない。
 ええい、こうなったら。
 「当たったフリしてに突っ込んでやろう。」
 振り返ったゴブ吉君が魔王を見るような目をしていたけど、気のせいだよね。
 タイミングを見計らって突っ込もうとしたけれど、残念ながら決行はされなかった。
 パーンっていう小気味よい音とともに、ケモミミ少年は別の人物によって張り倒されていた。
 少年を張り倒した、あの白い武器はまさか・・・。
 「・・・芸人かよ。」
 なんでハリセンなんて用意してるんだよ、こいつら。
 全然悲壮感を感じないんだけど・・・。
 本当に伝染病で苦しんでるの?この人たち。
 「ご~め~ん~な~さ~い~!ゴ~ブ~キ~チ~く~ん~に~き~が~つ~か~な~く~て~。」
 ハリセンを持った人物、フードとマスクで分からないけれど声からすると女性かな?謝罪を叫んできたので反撃は保留にしましょう。
 どうやら、そのまま誘導してくれるようだ。
 ケモミミ少年は・・・いやなんで伸びてるんだよ・・・あ、ひょっとしてあれって、スタン系付与されてるゲームの武器なの?
 誘導されるまま城壁の上、少し広い場所へとグリフォンが着地すると、俺はゴブ吉君を担いで飛び降りた。
 「ごめんなさい、あのバカ、何度言っても聞かなくて。」
 そう言ってフードとマスクを取ったハリセンの人は、褐色の肌、額から2本の短い角、尖った耳、左目の下に入れ墨の入った、ザ・魔族って感じの少女だった。
 「カタオカから連絡受けてます、どうかこちらへ。」
 うんうん、ちゃんとまともな人もいるんだね、ちょっと安心。
 少女の後に続いて、城壁の端へと向かう。
 「すいません、私カタシナって言います。今朝早くに高速鳥っていうモンスターから連絡を受け取っていたんですけど、まさかグリフォンで来るなんて思わなくて。」
 と言いつつ、俺をチラチラと見る。
 あ、この火焔窟のマスクも原因?カッコいいじゃん。
 それに、感染予防のつもりだし、取らないよ。
 「キチセ、あのケモミミのバカですけど、止めたのにアレは間違いなく敵襲だなんて言って飛び出しちゃって。」
 再びチラリと・・・あ、ひょっとして欲しいとか?あげないよ。
 「あ~、いいタイミングでしたよ、あのハリセン、もうワンテンポ遅かったらあのケモミミ、グリフォンのおやつにしてるところでした。」
 なんて、すこしだけブラックを絡めたジョーダンかましてみたけど、ドン引きされました。
 ハリセン使いなら察しろよ~。
 城壁を降りて村、と言うか、これもう立派な現代日本の風景に見える町並みを進む。
 魔物達はチラホラ見るけど、人はいない。
 「最初は、行商人からだったんです。
 調子悪そうだなぁとは思ってたんですけど、取引の最中に突然血を噴出して倒れてしまって。
 結局2日後に亡くなっちゃったんですけどね、その後1週間くらいしてから、行商人と接触していた人たちが次々に倒れだして・・・。
 発症してから2日ほどで瀕死の状態です。
 一応ポーションで1~2日は持ち直すんですけどね、症状の改善はしません。
 私たちとかモンスターたちは、発症しても2週間くらいポーションでしのげば回復するんですけど、この世界の人たちは全く回復しなくて。」
 ということでカタオカ君が旅立ったのだそうだ。
 噂に聞く不思議な村を目指して。
 いや、この村もたいがいだと思うけど。
 なんて思いつつ、どう見ても純和風な提灯に目をやる。
 「あ、やっぱり気になります?これ、仲間の能力なんですけどね、そのせいで同じ形の建物ばっかりだし、なんか、この世界に合わない感じですけど。」
 そうやって話を聞きながら、俺たちはひときわ大きな建物にたどり着いた。
 「それと、やっぱりこれだけは言っとかなきゃならないと思うんですけど・・・。」
 そう言ってカタシナは振り返った。
 「この村は、10日後に戦争状態に入ります。」
 ・・・
 ・・
 ・
 え、マジ?
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