GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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075話:仕切る?

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 準備万端・・・とはとても言えないが、何とか100近い戦力を確保できた。
 そのうち5人と6体は過剰戦力だし、ゴブリン&コボルト80体もそれなりにレベルアップができたから、作戦次第では3倍以上の差をひっくり返せるんじゃないだろうか。
 「シンさん、ポーション配り終わったけど、残りはどこに持って行けばいいの?」
 「ん?あぁ、ハシモト君だっけ?レースゲームの、彼に渡してください。」
 直接戦力として考えられないのが惜しいが、ワンダーレーサーをプレイしていたハシモトはキタガワの設置した張りぼての車に乗ることで、チュートリアルに当たる最初のレースが発動した。
 ちょっとした思い付きで言ってみただけなんだけどね、まさか中身の無いジオラマ素材の車が、ハシモトが触れた途端に動き出すなんてねぇ・・・。
 いや、俺が勧めておいてなんだけどさ。
 チュートリアルからいきなりF1レースに出るわけじゃなく、色々なレースで順位を稼いでいかなくてはならないらしい。
 今回はそれが功を奏した。
 使える車両はラリー仕様の4WD車、ユーシンのチートな車みたいに無敵仕様じゃあ無いけれど、戦場でも動き回れる。
 今回は機動性を活かしてポーションとかの補給物資の運搬や負傷者の回収を任せることになった。
 っていうか・・・何で俺に聞くの?
 次から次へと聞かれるままに何となく答えてるけどさ、なんかおかしくね?
 「シンさぁ~ん、ゴブリンたちの配置なんだけど・・・」
 ほらぁ、タカオカまで。
 「いや、なんで俺に聞くのさ。」
 「へ?」
 へ?じゃなくてさ・・・
 「俺、一応部外者よ?素人だしさ、なのに何で俺が仕切ってる風になっちゃってんの?」
 そこで考えこむなよ・・・凄くまっとうなことを言ったつもりなんだけど?
 「でも、みんなこういうことには詳しくなくて・・・何をどうすればいいのか分からないんだけど・・・」
 だから早く指示してくれ、なんて言わんばかりなんですけど・・・俺だって詳しいわけじゃないぞ。
 「最初からバリバリ仕切ってたじゃん。」
 いや、そんなことは無い・・・はずだぞ。
 ってか、いつ来たんだキチセ。
 「ハッキリ言ってさぁ、病気のこともあって、俺たちみんな覚悟決めてたんだ。
 あ、カタオカさん以外はね。
 俺たちだけなら逃げ出すこともできたんだけど・・・ってか、実際逃げ出したやつらもいるんだけどさ、俺たちを受け入れてくれて、村に参加してくれた連中を見殺しにできないじゃん。」
 逃げ出した連中居たんだ・・・。
 「せっかく覚悟決めてたのにぶち壊してくれたんだから、最後まで責任取ってくれよな。」
 横暴!
 ちょっと前までチビっこだったくせに。
 「あ、俺一応元社会人だから、ちっさかったのはキャラがそうだったからだからな、頼ってくれてもいいぞ。」
 とドヤるキチセ。
 ・・・スマン少年、もとい青年。
 「俺アラフィフ。」
 「え?」
 年齢マウントでも取りたかったのかもしれないけどな、俺、たぶん君の親と同世代。
 その後・・・。
 キチセの態度が少し丁寧になった。
 
    **
 
 おかしい。
 エースに乗って上空から偵察に出た俺は、黒犬騎士団を発見すると同時に違和感を感じた。
 ぞろぞろと行軍を続けている騎士団。
 確か、黒犬騎士団は少なくとも300以上はいるって話だったけど、ザッと見で200くらいしかいないんじゃないか?
 伏兵がいるにしても、これはなんだか・・・どいつもこいつもなんかボロッちいぞ。
 まるで、一戦やらかした直後みたい。
 当然士気はガタガタに見える。
 悪名高い、存在しないはずの騎士団を襲撃するような力を持った組織があるとは思えないけれど。
 行軍速度もひどく鈍い。
 これは、すぐに行動を起こせば”虚”をつけるんじゃないか?
 元々こちらの立てていた作戦はひどく単純だった。
 戦うのに有利な地域を選定して、偵察から割り出した敵の行軍速度を元に接敵時間を推測、戦闘前の体調管理が可能なギリギリまで訓練して戦力を高めたら、俺とエース、チュンターず以外は正面からぶつかる。
 オレはエースに乗って、チュンターずと一緒に、上空から回り込んで敵の大将を直接狙う。
 いくらならず者とはいえ、大将首を上げられたらちょっとは動揺するんじゃないかってね。
 さすがに何倍もの兵と戦うなんて、いくらチート級が揃っていたって無謀だ。
 無双系プレイヤーでもいれば派手に蹴散らして相手の戦意を挫けるかもしてないけれど、残念ながら無双系のゲーマーはいない。
 延々と続く敵との戦いを続けるのは精神的に無理だ。
 どんなに派手な魔法やスキルも、効果範囲はそれほど大きくはないし、魔力がもたない。
 物量に少数のチートで当たるには、この村の戦力では足りなすぎる。
 全滅させるのでは無く追い返す。
 なるべくこちらの被害を少なくするには短期決戦が絶対条件。
 ただ、相手もそうすんなり撤退はできないだろう。
 撤退に見合った打撃。
 やっぱり大将首しか無いだろう。
 その上で彼らの欲望を崩せるだけの損害を出せれば、あとは勝手に崩れていくはずだ。
 単純?
 いやいや、組織とはそう言うものさ。
 元々忠誠心が低い名ばかりの騎士団だ、指揮官を潰せば、戦術的行動は取れなくなる。
 どうせ、その指揮官は監視の役目も担っているだろうし、監視の目が無くなったと知れば余計に指揮系統はバラバラに、こちらにとっては戦いやすくなる。
 割に合わないと感じれば無理に戦わずに逃げ出すだろう。
 そのためにも、見晴らしの良い平原を戦場に選んだ。
 だったんだけどね。
 このズタボロ騎士団相手なら、速攻で攻め入って一撃すれば退散しそうだぞ。
 こんな状態なのに行軍を続ける所はちょっと気になるけど・・・。
 でも、撤退しないならそのまま力押しで勝てそうだ。
 俺は偵察を切り上げて村へと引き換えした。
 作戦変更を伝えないと。
 
    **
 
 「ほう・・・」
 はるか上空を飛び去る鳥を見つめながら、良く手入れされた鎧を身にまとった少女が歩を止めた。
 「予想はしていたけどやっぱり正解だったな、あれは飛行ユニットか従魔かのどちらかだろう。」  
 「へぇ、アレが姉御の言っていた異世界人とやらってことですかい。」
 隣についていた男が少女のつぶやきに反応した。
 「姉御言うな。」
 ムスッとした少女が男に反論する。
 この世界では珍しくも、2mを超えるほどの身長に弾けそうなほどの筋肉でガッチリと固められた巨躯を相手にするので、少女は完全に見上げるように睨みつけた。
 「で、どのくらいになった?」
 プイッとそっぽを向いて完結に問うた。
 男の性格から、任せていた仕事を済ませたからやって来たに違いない。
 「60人のうち50人程ですかね、そのうち20人程が疑い有りです。」
 男は元々、大規模な施設の建設を行う際に職人たちの取りまとめを行う仕事に従事していた役人だった。
 荒っぽい職人たちに舐められないようにと体を鍛え、無理して食べ続けたことで、いつしかこの世界では珍しいガッチリとした大男になっていた。
 誠実で勤勉だった彼は、職人たちからも慕われていた。
 彼の罪状は横領と殺人。
 前者は冤罪で、後者は事故だった。
 しかし、横領の真犯人にとってその事故は都合がよかった。
 彼が気づいた時には、横領の罪をなすりつけられた上、事故も証拠隠しのための殺人へとすり替えられていた。
 横領の真犯人は分からぬまま、ロクに裁判すら開かれずに獄中で処刑か黒犬騎士団かの2択を突きつけられ、騎士団を選択した。
 その巨躯からも、団の中でも一目置かれる存在になるのに時間はかからなかった。
 その経歴を知った上で、団員の餞別を依頼していたのだ。
 彼のように、明らかに冤罪によって投獄された者が60人程。
 その中でも、少女に従う者が30人。
 従うそぶりは見せても、信用できない者が20人。
 反発する者が10人。
 残りは全て根っからの犯罪者たち。
 この場に及んで餞別を始めた理由は、彼らの様子に現れていた。
 進軍を始めて3日後、黒犬騎士団団長、元盗賊団の首領だった男が少女に切られた。
 理由は、団長が少女を手籠めにしようとしたからだ。
 本来黒犬騎士団に女性はいなかったが、今回の出征では突出した少女の戦闘力を役立てるようにと、半ば強引に編入されていた。
 団長は死の間際、ある貴族から少女を戦乱に紛れて殺害するよう指示を受けたと漏らした。
 依頼主は想像できる。
 少女が投獄されることになった原因でもある事件の被害者、とされる者だろう。
 性根の腐った貴族の息子を切った。
 少女を捉えようとした兵も切った。
 その後も追跡の手は衰えることなく、1週間ほどで50人は切ったが、結局数には勝てず投獄された。
 処刑はされなかった。
 少女は、この国で多くの人々を救ってきた。
 危険を承知で、多くの市民が減刑を嘆願してきたため、さすがに処刑することができなかったのだ。
 最後まで処刑を進言し続けた男が依頼主だろう。
 彼女にはどうでもいいことだ。
 団長を切ったことで、彼女が団長を引き継ぐことになったが、納得しない者も多かった。
 彼女が、それまで許されてきた無法のほとんどを禁止したためだ。
 その結果、半数ほどが謀反を起こし内乱になった。
 内乱を起こした連中の目論見と違ったのは、全て彼女が予測し、準備万端で待ち構えていたことだ。
 瞬く間に10人を切り伏せ、高らかに宣言した。
 「反意のある者は黒犬騎士団にあらず、ただの野党である。騎士たる者は剣を手に取り賊を殲滅せよ!剣を取らぬ者もまた野盗の一味、一人残らず切れ!!」
 この宣言が、状況についてこれていなかった者たちを動かすことになった。
 もちろん、少女が信用できる者達へ事前に情報を流し協力を取り付けてもいた。
 それらの協力者たちにあおられるように、再び追われる者になるのだけは勘弁だと剣を取る。
 反乱側に加担しかけていた者たちも、宣言後も次々に切り伏せられていく元仲間たちを見て浮足立ち、鞍替えする者も出た。
 結果、反乱はわずか30分ほどで制圧された。
 100人の反乱者は一人残らず処断され、一人で20人を切った少女を団長と認めない者は誰一人いなくなった。
 反乱鎮圧後、直ちに進軍を再開したが、疲れ切ったままの進軍は足取りも重く、団の士気は見る間に落ちてゆく。
 そしてとうとう、少女は確証を得た。
 噂に聞いた標的の村は、異世界人たちの村だ。
 少女は、空を飛ぶ小さい鳥が実ははるか上空を飛ぶ巨大な鳥で、背には人を乗せていることまで看破していた。
 「とりあえず50人以外はみんな戦死してもらうつもりだから。」
 「はい。」
 冷たく言い放つ少女に、男は短く答えた。
 冤罪であると判断された60人以外は、騎士とは名ばかりで処刑されてもおかしくないほどの大罪を犯した無法者たちだ。
 しかも、冤罪だったが少女に反抗的な者10名を含む無法者たちは、ひとたび任務で牢獄を出れば各地でやりたい放題、犯罪行為も当たり前のように繰り返してきた。
 そんな者達にかける慈悲は無い。
 「たぶん、この状態を見たら速攻で仕掛けてくると思うから、配置よろしくね。」
 「もう済んでますよ、ある程度やられたところで50名と共に敗走します。そのうち30名は適当な所ではぐれて姉御と合流、そっちにはリッケンを同行させます。俺は残りの20名を連れて王都に戻ります。」
 「姉御言うな・・・いいの?それで・・・。」
 戻ると言うことは、この先も犯罪者として黒犬騎士団で汚れ仕事を続けさせられることになる。
 それどころか、おそらくは今回の責任を取らされて処刑される可能性も少なくない。
 「まぁ、戻る20人も素直に従うか信用しきれないってだけで冤罪の被害者ですし、話を持ち掛けた俺が同行しないわけにもいかんでしょう。」
 大男はそう言ってニッと笑った。
 「まぁ、次の任務あたりでうまく抜け出して見せますよ。」
 あんについて来いと伝えた少女に、軽口で応えた。
 二人共、今生の別れになることを理解していた。
 
    **
 
 慌ただしく村を出立する兵たちを見送り、キタガワは村を放棄するための準備に戻った。
 意識を取り戻し、会話できるまでに回復したこの世界の住民たちの意思も確認した。
 みんな、彼らと共に国を出ることに同意した。
 残ったとしてもこの国では未来が無いと理解している。
 設置したまま使用していなかった建造物や、荷物の搬出が終わって空になった建造物を解体してゆく。
 「持ち出せない物は諦めるんだ!住民が回復し次第ここを放棄することになる、迅速に動けるように、講堂と防壁以外は全て解体する。」
 見送りを済ませると、その場で指示を飛ばしながら作業を再会した。
  キタガワの能力で設置した建築物は、能力で解体すれば建造に必要だったポイントの半分ほどが戻ってくる。
 そのポイントで移住後に素早く生活を再開できるのだから、出来る限り解体したかったが、それぞれの所有物をどうするか、が最大の問題になっていた。
 インベントリのような便利な能力を持つものは少なく、あっても容量が限定的でとても収納しきれるものでは無かったのだ。
 (だいたいなんでゲーム通り忠実なんだよ、異世界転生って言ったら、無限の収納がお決まりのパターンじゃないか。)
 キタガワのミニチュアガーデンにはインベントリのような能力は無く、全てがポイントとして記録される仕様のため役に立たない。
 レイクルオンラインのカタシナとキチセは自由度の高い収納機能を持つが、特殊なアイテムを使わないと拡張できない仕様なので初期のまま、15枠しかない。
 同じアイテムなら30までスタック(1枠にまとめる)できるが、スズメの目に涙だ。
 漂流日誌のエグチ、フォレストのアベも似たようなもの、しかもこのうちカタシナ、キチセ、エグチの3人は今、戦場へと向かっている。
 カタオカ、ムラヤマ、フカセ、テラヤマはそこそこの容量があるものの、入れられる物が限定されている。
 ミコト、コンドウにいたっては完全に特定された物しか保管できない。
 馬車や荷馬車もあるにはあるが、長期間の移動を覚悟しなければならない以上、病み上がりの住民たちを歩かせるわけにもいかず、大半がそれに使われることになる。
 諦めなければならない物の方がはるかに多い。
 「食料品は放棄、オオノさんのコンビニに頼る。家具類も諦めろ、また作ればいいんだ。」
 短い期間とはいえ、苦労して開拓してきた。
 重症化までには至っていなかった何割かの住民は、何とか体に鞭打って作業を始めている。
 しかし、家財の選別は進まないようだ。
 思い入れのある家財も少なくない。
 十分わかるのだが、それでも心を鬼にして言わざるを得なかった。
 「諦めてくれ。」
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