GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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077話:激戦?

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  なんかこれ、戦闘って言うより虐殺になっちゃうんじゃね?
 いざ前線に出てはみたものの、戦況は一方的なものとなっていた。
 組織だった敵の反撃は全くと言っていいほど無い。
 開戦直後から烏合の衆だった・・・何かおかしい。
 こんなことあるだろうか。
 ひょっとすると、こいつらは完全に捨て駒の犯罪者たちで、本当の黒犬騎士団は別にいるんじゃないか?
 この戦場を迂回して直接村を、とか、挟撃を狙っているとか。
 コイツらが囮だとすると、この統一感のないあり合わせのような装備にも納得できる。
 でも、空からの索敵をかいくぐって・・・いや、俺素人だからなぁ、プロなら裏をかくくらいできるかもしれん。
 そんな不安を感じて悩み始めた俺の視界に、異様な人物が映った。
 剣を抜きもせずに地面に座って、ボーっと周囲を見ている男。
 「えーっと、何してるのかな?」
 何とも場違いなセリフだなと思いながらも、なんとなく声をかけてみた。
 「おう、殺るならなるべく痛くないようにしてくれよ。」
 色以外統一感の無い鎧を着た小柄な男は投げやりに返してきた。
 (やっぱりか?
 コイツ、最初からあきらめている。
 捨て駒だと自覚しているからじゃないのか。) 
 「ずいぶん投げやりだね、いいの?そんなんで。」
 喧騒の中、どうしてもこの小男が気にかかった。
 「しょうがねぇさ、俺だって死にたくはないけどよ、結局はもう用済みなんだろ?頑張ったところで敵わねぇ。」
 ?
 もう用済み?
 「さぁ、やってくれ。
 俺も随分とやらかしてきた、貴族どもがもう黒犬はいらねぇって言うんなら諦めるさ。
 だが忘れるなよ、後釜のお前らだって、いつかは俺らと同じ道をたどるんだぜ。」
 後釜?
 俺らが?
 なんか変だぞ。
 「ちょっと待て、お前ら、マジで黒犬なの?あまりに手ごたえ無いから、てっきりおとりの生贄かと思ったけど。」
 ウソを言っているようには聞こえない。
 俺らを後釜と言ったことからしても、どうやらこいつも何か勘違いをしているようだ。
 「おいおい、この期に及んで何言ってやがる。
 無理やり女を入れさせられたと思ったら、団長殺してすげ代わるわ、反抗した連中も反乱に加担した連中も皆殺しにするわ、休みなしで行軍させられたうえ目的地に到着する前に待ち伏せ、しかもどいつも化け物ぞろいと来た。
 学の無い俺でも、貴族どもが俺らをつぶすつもりだってのはわかる。」
 (女、すげ替え、反乱?
 やっぱり、俺もこいつも盛大な勘違いをしてるのかも?)
 ドサリ
 いきなり小柄な男が倒れた。
 よく見れば、こめかみに小さな穴が開いて出血している。
 (おお、結構距離あるけどヘッドショットかますなんて、どっちだろう?)
 狙撃したのはウシオかトノウチか、とりあえずは狙撃用の塔の方角を向き、手を上げて謝意を伝えた。
 そして、シンはこの状況を作ったと思われる人物を探して戦場をさまようことになった。
 
    **
  
 「フッ、この僕と戦おうなんっっぶねぇな!」
  地面に突き刺さった剣先をスンデのところでかわしたはいいが、バランスを崩して尻餅をついたミコト。
 何事もなかったように立ち上がるが、赤い顔が心情を表していた。
 「フッ、この僕とた」
 「くそ! 何がどうなってやがる、動けねぇぞ。」
 騎士が必死に何も無い場所を押したり、叩いたりしている。
 「フッ、このぼ」
 「おい! お前らも動けないのか?」
 「新手の術式杖か?俺等には使い古しのガラクタしかよこさねぇくせに!」
 「フッ、こ」
 「おいテメェ!姑息な手ぇ使ってんじゃあねぇぞ!!」
 ミコトの口上を再三にわたって遮り喚き立てる3人の騎士。
 「最後まで聞けよ!」
 とうとうミコトもキレた。
 「おい、手ぇかせ!!おかしな術式杖を使いやがった、そいつをぶっ殺してくれ。」
 その声に応じた2名の騎士が、ミコトに迫る。
 が、1mほど手前で何もないのに壁にぶつかったかのようにはじき返された。
 「神聖なバトルフィールドに入れるのは定められし戦士のみ、諦めるがいい。」
 このような乱戦は初めての経験、安全だと頭ではわかっていたが、実際には恐怖で緊張していたミコト。
 しかし、これで外部からの横槍が入ることがないと確信を持てた。
 (すげぇ、これ、マジ無敵じゃん。)
 ミコトがプレイしていたゲーム、ライジングレイオンでは、最大3対3のバトルがシステム化されていた。
 1対1を基本とするトレーディングカードゲームでは異例の、協力プレイができたのだ。
 そのルールに則って、プレイヤーであるミコトが指定した騎士3名が交戦の意思を示したことでデュエル(決闘)が成立、部外者はバトルフィールドに入ることすらできなくなった。
 そして、バトルの行動順はステータス、素早さによって決定される。
 レベルアップによって補正のついたミコトに、この世界の住人がかなうはずもない。
 「セットアップ。」
 左腕のカードホルダーを開くと、浮かび上がる5枚のカード。
 それを見て、ミコトは勝利を確信した。
 「召喚、ブルームベア。」
 カードが一枚光りながら霧散すると、同時にミコトの正面に黒く大きな熊が現れた。
 光の加減で紺色にも見える。
 「な、ド、どこから出てきやがった!?」
 「くそ、出しやがれ!」
 半狂乱になって逃げ出そうとする騎士たち、しかし、彼らがもとから居た場所の周囲1m程の狭い空間から出ることができない。
 「スキルセット、攻撃強化。」
 ブルームベアが後ろ足で立ち上がり、両前足を左右に大きく広げる。
 と、ブルームベアの両前足が緑色の光に包まれた。
 「た、たた助けてくれ!」
 「テメェ! 必ずぶっ殺してやるからな!」
 腰を抜かした騎士が命乞いを始め、他の騎士が喚き立てる。
 「お前たちは、命乞いする人々にどうしたんだ?」
 (くぅ~、一度言ってみたかった。)
 「行動セット、ターゲットオン。」
 そう告げると、ミコトは3人の騎士を指さしてゆく。
 すると、指さされた騎士の頭上には、照準のような映像が浮かび上がった。
 「ウインドブレード発動!」
 その声に、ブルームベアの広げた両前足が一気に閉じた。
 緑に光る3枚のブレードが騎士たちを襲い、3人同時に輪切りに、騎士だった物がドサドサと地面に落ちた。
 (うっ!)
  平静を装いつつ目を逸らした。
 (このスキルはヒト相手に使うのやめよう。)
 胃からこみ上げるものを必死に抑えてそう誓ったのだった。
 「面白い力だね、新作の術式杖かい? 高いんだろうねぇ。」
 背後からかけられた声に驚いて振り向くと、目の前に知らない男の顔が。
 「な!」
 飛びのいて離れようとしたミコトの右足に激痛が走った。
 「いっっってぇ!」
 その場に膝をついたミコト。
 信じられない量の血が、太ももからダラダラと流れ出している。
 「なるほどなるほど、今は切れるんだねぇ。」
 男の声にゾッとする何かを感じたミコトは、男の全身を視界にとらえると
 「バトルフィールドオープン!」
 即座に叫んだ。
 ほぼ同時に、首筋にナイフの刃先が触れた。
 「ざぁ~んねん、今の言葉が発動の条件?変わった杖だねぇ。」
 そのナイフが、ミコトを仕留めようと突き立てられたものだと理解したミコトは、無事な方の足で地面を蹴って転がるように距離を取った。
 (くそ、うかつだった・・・一瞬でも発動が遅れていたら死んでいた。)
 全身から力が抜けてゆく感覚。
 ハッと気が付いて足を見た。
 (血が・・・これ、ヤバいんじゃ・・・ポ、ポーションを・・・)
 慌てて懐を探るが、事前に渡されたポーションに触れることができない。
 (そうか、バトルフィールドを発動させたから・・・)
 一度発動させたら、決着するまではライジングレイオンのルール通りにしか動くことができない。
 ポーションはアイテム扱いで、カードデッキからしか使うことができないのだ。
 「どうしました?急いで治療しないと出血のし過ぎで死んじゃいますよ。」
 ナイフをもてあそびながらニヤニヤとミコトを眺めている男。
 「セットアップ。」
 カードデッキが開き、5枚のカードが表示される。
 それを見た途端、ミコトの心は絶望した。
 (召喚カードがコモンのコボルトだけ・・・ウソだろ。)
 他にも、この状況を打破できそうなカードは無い。
 唯一の救いはアイテムカードのハイポーションが1枚あったことだが、アイテムカードは召喚と同じパートで宣言しなければならない。
 つまり、それを使えば召喚ができず、無防備なまま自分が敵と対峙しなければならない。
 (よりによって、なんでこんな時にクズカードばかり・・・)
 「ふふふ、シェトアゥプですか、どんな意味かは分かりませんが、それもスイッチの一つみたいですね。
 さぁ、もっと見せてください、そして安心して死になさい。
 貴方の杖は、私があなた以上に使いこなして差し上げまっ!」
 男のこめかみ辺りで火花が散った。
 「なるほど、私も守られているようですね。」
 狙撃による援護が、バトルフィールドによって敵を守る結果になった。
 (くそ!なんなんだよこのルールは!敵を守ってどうするんだ!)
 出血と焦りによって、ミコトは正常な判断ができなくなっていた。
 「召喚!コボルト。
 スキルセット、パス。
 行動セット、ターゲットオン、アタック!」
 現れたコボルト、犬の頭を持つ毛皮に覆われた亜人が男に向かって走り出した。
 手に持つ棍棒を振り上げて、男へと振り下ろす。
 男は難なくその棍棒をかわすと、ナイフをコボルトの首へ突き立てた。
 砂のように崩れ去ったコボルト。
 ミコトが召喚したコボルトは、たった一撃で敗北した。
 「なるほど、反撃は自由にできるようですね、で、次はどうするんですか?」
 狙撃による援護は続いているが、歯牙にもかけていない。
 安全だと分かっていても、皮一枚の距離で火花が散るというのに全く動じていない。
 この男も、この世界では強者と呼ばれる者の一人だと言えるようだ。
 (?こいつ・・・そうか、気づいてないんだ、このまま時間切れを待てば・・・)
 システム上無駄な時間稼ぎを防止するため、5分間行動を起こさないとそのターンはパスしたことになる。
 (ポーションだ、次のターンはポーションで足の傷を治す、焦るな!)
 少しでも出血を減らそうと、痛みをこらえて傷口を手で圧迫する。
 その行動に、男は違和感を察した。
 「おお、動けるじゃないですか、また一つ理解しまし・・・た?」
 数歩、ミコトとの距離を縮めようとした男だったが、再びそれ以上近づくことができなくなった。
 (助かった、ギリギリ5分たったか。)
 「アイテム使用、ハイポーション。」
 宣言したカードが消えると同時に、足の痛みがスッと消えた。
 脱力感が消えないのは血を流しすぎたせいだろう。
 デッキを確認する。
 消費したコボルトの代わりに、アンコモンのスノーウルフが追加されている。
 スノーウルフは戦闘力こそコボルトと大して変わらない、いわばハズレカードだが、固有スキルとして増援召喚がある。
 このターンをしのぎさえすれば・・・。
 「本当に不思議な術式ですね、それとも、複数所持しているんですか?
 これは、残念ながら殺してしまうことができなくなってしまったようですね。」
 考え込む男。
 (いいぞ、もっと悩め、5分、悩み続けろ。)
 「必要なのは頭と口と胴体・・・目も鼻も耳も、手足も不要ですね。」
 背筋がぞっとするほどのおぞましい笑みを浮かべた。
 (集中しろ、どんなに強くてもこの世界のヒトならスキルは持っていない、一撃、一撃だけしのげればいいんだ。)
 初動に対応できるかどうかで決まる。
 ミコトは、体を低く構え、一挙手一投足まで見逃さないように全神経を集中した。
 男の体がブレる。
 瞬間、ミコトは膝をつき、体をのけぞらせるように全身を落とす。
 真上を見るように落ちてゆくミコトの顔、その目の前をナイフが通り過ぎた。
 眉毛が数本切れた。
 恐ろしく研ぎ澄まされたナイフは、ミコトの目を貫こうと突き出されたものだった。
 (勝った!)
 と思った瞬間、肩のあたりでバチンとはじけるような音。
 男のナイフは、目を貫けないと感じ取るや否や、持ち手を反転させて肩に突き刺そうと引いていた。
 本当の実戦であれば、そこで終わっていただろう。
 しかし、ここはバトルフィールド。
 1ターンに攻撃は1回までしか許可されていないのだ。
 何かに引っ張られるように距離を取った男。
 「全くもって厄介ですね。
 一度に攻撃できるのは一手のみということですか?
 それに、せっかく近づいたのにこんなに距離を取らされるとは。」
 初めて苛立ちを見せた男。
 両手にナイフを持ち、身をかがめた。
 (次は本気で殺しに来る。)
 男の雰囲気が変わったことを感じたミコトは、召喚のためにデッキを確認する。
 !
 デッキには、ハイポーションの代わりにレア召喚カード、レッドキャップが。
 ゴブリンの上位種であるレッドキャップは、速度重視の攻撃特化モンスターだ。
 奇しくも敵の男と同じ、両手にナイフを持つ戦闘スタイルだが、レアカードのモンスターはこの世界の基準よりも高い能力を持つことが分かっている。
 「召喚!レッドキャップ。
 スキルセット、パス。
 行動セット、ターゲットオン、アタック!」
 ためらうことなくレッドキャップを召喚し、通常攻撃を選択した。
 スキルカードがデッキに無い以上、固有スキルを使うか通常攻撃を行うかの2択になる。
 レッドキャップの固有スキルは”隠密”と、通常使えない状態の”暗殺”。
 ”隠密”で隠れて、その後のターンで使えるようになる”暗殺”でクリティカルヒット確定攻撃を行うというもの。
 他にモンスターが召喚されていない現状では、隠密を使うとまたミコトは無防備になってしまう。
 そのため通常攻撃しか使えなかった。
 が、レッドキャップの戦闘力はミコトの認識を超えていた。
 一飛びで肉薄すると、事も無げに男の首を切り落としていた。
 何が起こったのかもわからなかっただろう、一瞬前の表情のままドサリと首が落ち、次いで体が首に覆いかぶさるように倒れた。
 (はぁ、帰ったらみんなにからかわれるんだろうなぁ。)
 最強ともいえる能力を持つのに、不甲斐ない戦いをした自分を、きっとみんなが笑いものにするに違いないと落ち込んだミコトだった。

 彼は知らない。
 みんなの彼への評価はそれほど高くなく、きっとピンチになったら泣いて逃げ出すかもしれない、くらいに思われていたことを。
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