GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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102話:反省しない人

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 理不尽だ。
 俺は今、ソンチョー宅にて正座させられている。
 「なんでこんな事させられているんだって思ってるでしょ。」
 ギクリ。
 マナの抑揚のない声が突き刺さる。
 「ユーキ君と別れて3か月、最後の連絡はいつ?」
 う・・・忘れてたのは確かだけど。
 「一か月前くらい?」
 たぶん・・・だったような・・・。
 「2か月半前です。」
 あう・・・
 最初の頃は、どうせ連絡を忘れてるんだろう、フブキもいるし、オヤカタ達も普通だから心配ないだろうと放置していたみんなも、3か月を過ぎる頃には我慢も限界と、即席でスローク、ユーシン、ユーキ、ライアーの捕縛部隊を結成して乗り込んだ。
 「やぁ、みんなもレベリングに来たのかい?」
 なんて、のんきに挨拶した俺は、まばたきする間もなく拘束(簀巻きに)されて、村まで強制連行されたのだった。
 
 「最低でも一週間に一度は連絡するように言ってあったはずでは?」
 感情を一切込めないマナの圧は、感情MAXでぶつけてくるアオイよりもキツいものがある。
 「あ~、でもね、あの連絡方法って、すごく手間なんだよね。」
 使ったのは、エイルヴァーンのイベントアイテム、伝書鳩の調教キットだ。
 木製の小さな鳥かごに捕まえた鳥を入れてしばらく世話(ゲーム上では餌を6回与える、エサは1回与えると数時間食べなくなる。この世界では約2日間世話をしなければならない)をすると、1回だけ望みの場所に手紙を届けてくれるというもので、離れた場所から拠点などに配置した従魔に簡単な指示を出すことができた。
 問題は、鳥かごが鳩用のサイズだということだ。
 この森に、そんな小さな鳥はイネェ!
 正確に言えば、そのサイズの鳥型魔獣はいるが、捕まえるのが大変なのだ。
 ビュンビュン高速で飛び回る小さな鳥を捕まえるのはかなり大変だった。
 しかも一回使い切りだし。
 そんなわけで、明日でいいやと先延ばしになり、気が付いたら・・・過剰戦力のタスクフォースによって村へと連行されていた。
 ボクガワルインジャナイヤイ。
 もっとましな連絡手段があれば忘れなかったに違いない。
 なんて言い訳が通用するはずもなく、代わる代わる説教を受けてしまった。
 一番驚いたのは、ノエルさんまでお説教に来たことだよ。
 お説教というか、みんながどれほど心配してたかとか、もう少し周りの人の気持ちを考えようとか、そんな風に諭された感じだったけど。
 う~ん、村のみんな、特に女性陣からは、一応役には立つから仲間意識はあるけど、なんだか煙たがられているって感じていたんだけど・・・本当はそうでもない?のか?
 イヤイヤ、良い方に勘違いしない方がいいな。
 きっと、面倒事山積で押し付ける相手がいなかったに違いない。
 うん、本気で心配してもバカ見るだけって感じのオッサンだもんね。
 ・・・いちおう連絡怠ったことは反省します。
 以後気を付けます。
 覚えてたらね。
 
    **
 
 途中で連れ戻されたとはいえ、それでも3か月だ、なんだかんだレベルも60台に到達したよ。
 やっと死ぬ前に追いついたかな。
 これが他の職業だったら・・・もうとっくに100になっててもおかしくないんじゃないかなぁ。
 格上ボーナスも考えたら、籠って1か月で100達成もあったかもなぁ。
 まぁ、仕方ないさ、超越者ってのはそういうもんだ。
 ちなみに従魔たちは・・・まだ呼んでない。
 思い出したんだ。
 俺の従魔って、オヤカタ達以外はみんなデカいかクセがあってうまく使えるか不安だったんだよ。
 使えそうな中で一番小さいオーガロードだって2m以上、デカいと洞窟内では圧倒的に不利だからね、呼び出すのを躊躇したまま連れ戻されちゃった。
 オヤカタ達のように退化したうえレベルダウンもしているだろうから、フォレストオーガとかヒルオーガあたりのレベル20くらいになってるんだろうし、最悪使いづらい上に通用しないなんてことも・・・。
 とりあえず拠点に戻って、じっくり腰を据えてから従魔を呼び出せばいいや、って感じになっちゃってたんだよね。
 呼べるようになったんならとっとと帰れって?
 もう一レベル、もう一レベルって欲かいちゃった。
 テヘペロ案件である。
 「って、お前なんでまだいるの?」
 俺の視線の先には、ドアの陰からこちらをうかがうレインがいた。
 「ひど!帰ろうにもシンさんがいないから帰れなかったんじゃないですか!! 戻る際には医師助手として一緒に報告をって、城を出る時言われてたでしょ!」
 ・・・そうだっけ?
 そう言われると言われたような気もしないでもないけど。
 メンドクサイ。
 また行くの?やだなぁ。
 「ひとりでいいぢゃん。」
 ボソリとつぶやくと、食い気味に「そういうとこですよ!」と言われてしまった。
 なにが?
 
    **
 
 とりあえずレインのことはさておき、拠点に戻るとさっそく運動場で従魔たちを呼び出すことにした。
 そのためのレベルアップだったんだしね。
 たしか、オヤカタ達は呼び出した後しばらく何の反応も無くて、諦めかけた時になってから、歩いてやってきたんだよな。
 あの時はなかなかやってこないんで不安だった。
 どっかり胡坐をかくと、貯蔵庫整理をしながら待つことにした。
 う~ん、知らない(忘れてる)アイテム多いなぁ。
 エイルヴァーンには異世界のお守りみたいに、効果の無いテキストだけのアイテムとか、アバター装飾用のアイテム、ジョークアイテムなどなど、使用せずにコレクション意欲を刺激するだけのアイテムもやたらと多かったんだよなぁ。
 そういうのって、手に入れたら満足しちゃってすぐ忘れちゃうんだよね。
 なんてやってると、真上から突風が。
 見上げるとそこには、焔龍のフレイア、氷結龍のブリザイア、暴風龍のデストームの3頭が上空から降りてきたところだった。
 あれ?退化してないぞ?
 だけじゃない、レベルも90、85、87とかなり高いままだ。
 みんなMAXの100にしていたから下がってはいるけれど。
 なんで?
 ・・・ひょっとして、退化&レベルダウンじゃなくて、捕獲した時の状態になってたってことか?
 オヤカタ達を登録してあったのは、MODで拡張させた制限枠だった。
 鍛え上げて最終形まで進化させていたけど、従魔化は2次進化までの魔物で、人型Mサイズ(人間大)と限定されていたんだった。
 捕獲した時のレベルまでは覚えてなかったけれど、みんな同じ20だったってことだったんだな・・・とんだ勘違いをしていた。
 龍たちは派手に砂煙をまき上げながら降り立つと、3頭とも頭を下げて俺に敬意を表明してくれた。
 「来てくれてありがとう。
 気に入ってくれるといいけど、みんなの住処も用意してあるからね。」
 拠点内に作った4つの塔、竜舎として作ったそれらの3つを使ってもらう。
 最後の1つは、この世界で竜並みの存在を従魔にできた時のための予備だ。
 龍たちに続くように、続々と集結する従魔たち。
 半端じゃない時間をかけて、最上級の従魔をそろえたかつての俺、グッジョブ。
 
 焔龍のフレイア、火竜系最強のドラゴン。レベル90
 頭の先から尾の先まで30m、翼を広げると20mもある巨大な龍。
 エイルヴァーン最強ボスの一角。
 噴き出すオーラで周辺の木々は燃え尽き、炎のブレスは岩も溶かした。
 ゲームでは、ブレスの当たった地面や壁が溶岩になり、長引くほどに足場も逃げ場も失われていった。
 
 氷結龍のブリザイア、氷雪竜系最強のドラゴン。レベル85
 焔龍より一回り小さいが、エイルヴァーン最強ボスの一角。
 存在するだけで周辺は極寒の凍土と化す。
 無数の氷の針を高速で噴射するブレスは、分厚い石の壁も貫通する。
 直線的で射角が狭いながら装備の耐久をゴッソリと削り、数多の装備を破壊して、プレイヤーたちからはクラッシャーの二つ名で恐れられた。
 
 暴風龍のデストーム、空竜系最強のドラゴン。レベル87
 スリムな体つきで、巨大な翼をもち飛行能力に優れたドラゴン。
 純粋な戦闘力では焔龍や氷結龍には及ばないものの、空を縦横無尽に飛び回り、暴風や雷を操る。
 とてつもなく戦いにくい相手。
 攻略には空を飛ぶ騎乗用モンスターが必須で、ブレスこそないものの、暴風で視界も操作性も極端に悪いコンディションを強いられたうえ、竜巻や雷をかわしながらの攻略は長期戦を強いられた。

 フェンリルのハクア、ファンタジーで有名な狼系の最上位モンスター。レベル80
 白銀の馬ほどもある狼で、フブキより一回り大きい。
 風と雷を操る神獣。
 ゲームでは相当な強敵で、なんでこれがボスじゃないんだとクレームをつけるプレイヤーが続出した。

 デモンロードのクロウ。レベル83
 黒衣に身を包んだ悪魔で、ゲームでは巨大な黒いオーラに身を包まれていたけど、今はそれが無く優雅に一礼している。
 「ここではご迷惑になると思いましたので閉じさせていただいております。」
 出し入れできたんだ、アレ。
 洞窟でも活躍してもらえばよかったな。

 ヘルナイトのカムイ。レベル88
 真っ赤な鎧に身を包んだ黒馬と、真っ黒なフルプレート、中身は空洞な騎士。
 名前の由来は背にした長剣、神裂きの剣から。
 剣の達人で、装備破壊系のスキルを多用する嫌われ者。
 馬の横で恭しく片膝をついている・・・馬から降りられたんだね、洞窟で使えたぢゃん。
 
 真なる闇のヤミ。レベル79
 光の反射が一切ない真っ黒な人型、というか、試験官をひっくり返したような感じ。
 かろうじて首のくびれと、薄い腕らしきものが確認できる。
 ゲームではメーカーにバグだとクレームが殺到したという変わり種の魔物。
 なんせ、戦闘に入ったとたん画面が真っ黒になって、何の表示も無いまま戦わなくちゃならなかった。
 ストーリー進行に影響のない隠しボスだったので、たぶん90%以上のプレイヤーが回避していたと思う。

 聖域巨神のトールは、5mにも及ぶ巨大なゴーレムだ。レベル82
 ゴーレムと言っても人型をしているわけではなく、浮遊する円錐状の建物だ。
 様々な装飾が施されていて、起動させると地面に降り、半径10m以内に雷による無差別攻撃を行う。
 実はこの建物の中には、身長1mほどの人型の魔者が乗り込んでいる。
 4本腕の亜人族で、ゲームでも1個体しか登場しないオリジナルの魔物。
 種族名は無く、異世界からの来訪者と記載されていた。
 俺が名付けたトールとは、ゴーレムではなくこの亜人の名前だ。
 聖域巨神はトールが作った家兼乗物で、トールは発明家という設定だった。
 が、その情報はネットにも出ていないので知るのは開発者と従魔化に成功した俺だけなのかもしれない。
 普通に戦うと、聖域巨神と共に中の亜人も死んでしまうから。
 絶対不可能と言われた従魔化に挑戦し続けて半年、疲れて操作ミスしたことでかけてしまったスリープが、何千分の一かの確率で効いたことで中に潜む魔物の存在を発見した。
 従魔化できたのもそのおかげ。

 禍(マガ)ツ焔(ホノオ)のマガちゃん。レベル90
 和風をモチーフにしたシナリオMODのラス前ボスとして登場。
 黒い髪に真っ白な肌の幼女で、巫女装束風のゴスロリ衣装。
 近づこうとすれば遠ざかり、遠ざかろうとすれば近づく。
 それも自キャラと同じ速度で。
 近距離で切りつけると空を切り、遠くで狙撃しても素通りする。
 正解は一定の距離(10m)離れた位置で禍ツ焔を正面に捉えて近接武器で攻撃すること。
 距離感が狂う、非常にやりづらい相手だった。
 従魔化すると見られるステータス画面で、備考欄に書かれた一文「猫好き」がなんかほっこりしたのを覚えている。
 
 九尾のコン。レベル95
 マガちゃん同様、日本風シナリオMODのボスキャラで九尾の狐。
 9本の尾を持つ巨大なキツネの姿。
 8本の尾がそれぞれ武者、美女、虎、獅子、狗、蛇、烏、猿に変化して、連携して襲ってくるという迷惑この上ない敵だった。
 尾の変化を倒すと尾に戻る。
 尾に戻るごとに本体が強くなり、9本揃うとほぼ無敵状態になってしまう。
 倒すには尾の変化を無視して本体だけを狙うのが近道。
 ものすごく大変だけど。

 デモンスライムのスラりん。レベル86
 スライム系最上級の魔物で、見た目は半透明の大福。
 物理無効、魔法半減の上、属性変化を持つ厄介な相手。
 画面から消えるほど高く飛びあがると、急降下して押しつぶしにかかる。
 避けても、直後に酸の玉が無差別に降り注ぐ上、それにあたるとランダムで状態異常にかかる。
 この世界のスライムと比べるとかわいいものかもしれないけど。
 
 オーガロードのコクエン。レベル72
 オーガ系最上位のオーガキングに比べて基礎能力が劣るものの、スキルが多様で無属性のコクエン(黒炎)系のスキルが強くて好みだったので、キングよりもロードを選んだ。
 オーガロードも、5体のダークオーガを配下に呼び出せるのだけど、こちらの体制も整っていないのでしばらく呼ばないでもらおう。
 
 うんうん、従魔化直後にリセットされてるけど、思ってたよりはるかに心強いよ。
 「世界征服でも始める気か?」
 半ばあきれ顔でスロークがやって来た。
 よく見たら、遠巻きにテルグリナの住人達も覗き込んでいる。
 遠慮しないで入って来ればいいのに。
 「あれ?村からドラゴン見えちゃった?」
 これだけ離れてれば気が付かないと思ったけど・・・ひょっとして、龍たちみどり村の上空を飛んで来たとか?
 「いや、たぶん呼び出すんだろうなと思ったから見に来たんだけど・・・まさかとは思うけど、真なる闇?」
 思いっきり嫌な顔で言われちゃったよ。
 「うん、ヤミちゃんだよ。」
 「ヤミちゃんって・・・。」
 同じエイルヴァーンプレイヤーのスロークには真なる闇の恐怖が良く分かるようだ。
 「まさかドラゴンより驚くことになるとは。」
 従魔の紹介を終えると、スロークは「くれぐれも一般住人に見られるなよ。」と言い残して帰っていった。
 
 「配下である我々にこれほどまでのご厚意、全霊をもってお返しさせていただきます。」
 竜舎付きの塔に案内すると、デストームが頭を地面につける勢いで下げてきた。
 「いやいや、そんなかしこまらなくていいから。
 4棟あるんで、好きなのを使ってよ。何か要望があれば直していくからね。」
 そう言って龍たちに好きな塔を選ぶように指示して、他の従魔たちにも住居や施設の案内をした。
 聖域巨神は大きすぎるので開いている竜舎へ、と思ったけど、工房の近くがいいというので工房入り口の横を使わせることにした。
 まぁ、彼にとっては聖域巨神が家みたいなもんだしね。
 工房の近くを希望したのは、設定にある発明家の血がうずくのだろう。
 スラりんもどこか住処を、と思ったけど、用意してあった部屋に入り込むと、ぴったりと詰まってしまった。
 なんとなく落ち着いているようだしいいのかな?
 彼らにはとりあえずの仕事として、拠点とテルグリナ周辺の警備巡回を頼んだ。
 これで、テルグリナの安全面も何とかなりそうだ。
 あとは、落ち着いたら改めて引き合わせるとしよう。
 なんて思っていたんだけど・・・
 「ドラゴン! スゲェ、本物だ!」
 五月蠅いのが来た。
 遠巻きに覗いてるだけだったからまた後日、と思っていたけど・・・。
 キチセにヒスイに・・・って、みどり村に手伝いで出ている連中意外のワタリビト全員かよ。
 結局その日のうちにテルグリナの住人と顔合わせを済ませることになってしまった。
 ミリアがカムイに突っかかってボロ負けしていたのにはちょっとスキッとしたけどね。
 これでしばらくはのんびりできるかな・・・あ、レインの件があるんだった。
 仕方ない、行くかぁ。
 めんどくさいなぁ。
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