GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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114話:さぁ帰ろう

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 「で、なんでついて来るの?」
 「なんでダメなん?」
 速攻で質問返ししてきやがった。
 王都行きが控えているので、それが済んだら支店の準備などにまた来訪すると伝えてドワーフ村を出た俺たちだったが、気が付くとミーアが付いてきていた。
 自由過ぎないか?
 キューーーーー
 「なぁ!グリポンなんな!逃げるのな!」
 お迎えのエースに慌てふためくミーア。
 隠れようともしない俺たちを引っ張ろうとする。
 一応自分のことだけじゃないんだな。
 エースにはドワーフ村を発つ前に伝書鳩で連絡を取っていた。
 あまりいい思い出の無い伝書鳩・・・伝書魔鳥か、だけど、遠出の時は強制的に準備させられている。
 めんどくさいって言ったら怒られそうだったから素直に従ったけど、従っておいてよかったな。
 まさか、ドワーフ村にお邪魔する機会に恵まれるなんて、出発前は思ってもいなかった。
 「スゲェのな!グリポンがシャテーなのな!」
 鞍をつけておとなしく降り立ったエースに大はしゃぎするミーア。
 しかし、ここで悲しい事実を告げなければならない。
 「残念だったな、エースは二人までしか乗せられないんだ。
 ってことで、ここでお別れだ。」
 分かってたから何も言わずについて来るまま放っておいたんだけどね。
 「問題無いんな。」
 そう言うと、ミーアはぴょんと飛び上がり、クルリと一回転。
 次の瞬間、普通の猫の姿で見事な着地を決めていた。
 「これなら邪魔にならないんな。」
 なるほど、妖精ってのはこんなこともできるのか・・・あ、むしろこっちが本来の姿か、今までは人里用の仮の姿って言っていたし。
 残念ながら、連れて行かなければならなくなったようだ。
 やかましいミーアを連れての空の旅を余儀なくされた俺たち。
 5分でいいから黙ってほしい。
 実の無い話を聞き続けられるほど耐性高く無いんだよ、俺は。
 「シンさん!アレ。」
 レインの声で我に返った。
 レインが指さした先には、バズーノーフがいた。
 ダチョウのような姿の魔獣で、その足は太く筋肉の塊のよう。
 鋭いかぎづめと共に繰り出されるキックは、重装備のヒトを軽く蹴り飛ばしてしまう。
 鋼鉄の鎧も紙のように引き裂くうえ、長い首は目にもとまらぬ速さで振り下ろされ、くちばしの一撃で兜ごと頭を粉砕される。
 翼は小さく、長距離を飛ぶことはできないが、10m程度なら上にも前方にも飛ぶことができる。
 脅威度としてはグレートベアに劣るものの、魔石の希少さと大きさ、純度は遜色ない。
 それに肉はなかなかうまいらしい。
 初遭遇なので全て”常識”さん情報だ。
 レインの献上品にするには申し分ないだろう。
 一気に急降下すると、バズーノーフの頭上でレインが飛び降りる。
 同時にナイフを投げつけた。
 ギェイェエェ!!
 けたたましい鳴き声を上げ、レインが投げつけたナイフを蹴り飛ばそうとするバズーノーフ。
 しかし、ナイフは蹴り上げた鋭い爪ごとバズーノーフの足を切り裂いた。
 レインが投げたナイフは、スロークが独り立ちのお祝いにとレインにプレゼントした、エイルヴァーン製のアサシンスローナイフだった。
 強化されたナイフは、投擲時にのみ防御無効という強力な追加効果を付与されていた。
 レインは着地と同時に剣を抜き、片足に深手を負ってバランスを崩していたバズーノーフの首を切り落とした。
 さすが、グレートベアを単独で仕留めるだけのことはある。
 しかし、やっぱりとんでもないチートだよな、俺たちエイルヴァーンの貯蔵庫って。
 中身がほぼそのまんま残っていたからこそだけれど、ゲーム時代に作った強力な武器やアイテムがそのまま使えるなんて。
 お気に入りの装備とか便利なアイテムは装備欄や最初から使えるアイテム欄の消滅で失われたけど、それでも反則レベルで重宝している。
 もちろん、俺たち以外でも、アイテム欄やインベントリをゲーム内で拡張していくタイプのゲームなら、拡張した先にはアイテムが残っているだろう。
 ユーキやアオイ、クリフトにマスター、アカネにカイト、ミサもそういったタイプのゲームだったが、残念ながらまだ拡張できていない。
 ユーキ、アオイ、アカネ、カイトは拡張のために特殊なアイテムが必要で、この世界での入手はほぼ不可能ではないかと思われる。
 クリフト、マスター、ミサはイベント攻略によって拡張するタイプで、ボスキャラ討伐がイベントクリアの条件というマスターを除くとまだ可能性はあるが、こちらも困難を極める。
 スキルとして拡張できるゲームはそんなにないと思うけれど、襲撃者たちのように敵対するグループの中にって可能性もあるし、今後のためにも警戒しておいた方がいいかもしれない。
 「おぉ~、レインちゃんも実は強かったんな。
 お酒弱いけど強かったのな?・・・でもお酒弱いからダメなのな。」
 ミーアの基準は良く分からないけれど、どうやらレインはダメらしい。
 「シンちゃんはいいのな、すごくいいのな。」
 ?
 なんで俺は良いの?
 ・・・あ、俺、自分にキュアしながら飲んでたからか。
 酒、メチャクチャ強いと思われてる。
 キュアしてなきゃレインとどっこいどっこいだと思うけど。
 ま、いいか。
 魔石と肉を回収すると、再びエースに乗って一路みどり村へ。
 いろいろありすぎて報告が面倒だな・・・誰か代わって。

    **
 
 村へ着くと、なんだかミーアは大人気だった。
 ゴブリンやオークたちに・・・。
 資材の在庫管理をしていたゴブリンのハゾルに理由を聞いたら、
 「ケット・シーは精霊の眷属ともいえる妖精です。
 妖精が訪れる村は幸運に恵まれると言われているのです。」
 ということだった。
 なるほど、よく見れば、ミーアをもてはやしているのは魔者たち、この森の出身者たちだ。
 ドワーフ村でも、シレっと勝手に食事していたりしていたけど、誰にもとがめられず当たり前のような感じだったのはそのためだったのか。
 ・・・そのミーアが震えあがった奥方って・・・失礼の無いように気をつけようっと。
 レインはマスターの元へと駆けていった。
 バズーノーフの肉は貴族にも好まれる食材らしいので、一緒に献上できないか相談に行ったのだ。
 さすがに生のまま持って行くわけにはいかないからね。
 この世界でも使える長期保存の技術で何とかならないか頼んでみるって言っていたけど・・・無理じゃね?
 王都までどれだけかかると思ってるんだか。
 ま、レインにとってこれも勉強になるだろうさ。
 あ・・・報告するの俺しかいなくなったじゃん。
 面倒だけど仕方ない。
 ソンチョーとスロークに話だけ通せば・・・というわけにはいかなかった。
 夜にワタリビトと村会メンバー全員が集まって説明会となってしまった。
 巨大白トカゲとの戦闘から始まって、ドワーフ村での出来事、交易が出来そうなことから新たな脅威に対する協力関係の構築などなど。
 「なんか、シンさんが遠出するたびに大事が舞い込んできてません?」
 ぐっ・・・
 「じゃぁ、おじーちゃんが村から出なければいいんじゃない?」
 ぬぬ・・・
 「拠点もできたんだし、ヒッキー生活の準備は万端だもんね。」
 なんでそうなる・・・
 「まぁまぁ、ドワーフにリザードマンに獣人たちに・・・僕らだけじゃあ出会えなかったようなファンタジーなヒトたちと交流できるなんて、シンさんのおかげなんだし。
 それに、シンさんが遠出するときは何かあるって思うようにすれば、いきなり問題が起こって慌てるよりいいじゃない。」
 ・・・ソンチョー、それ、フォローしてくれてるようで完全に問題児扱いなんですけど・・・。
 とにかく、今回の話し合いでは大きな決定はなく、王都でスロークにどの程度の権限を与えられるかによって再度ちゃんと会議を開こうということで解散された。
 まぁ、大人はこの後大切な儀式があるんだけどね。
 ・・・
 ・・
 ・
 「ひでえっス・・・シンさん・・・。」
 死屍累々・・・ではない、を受けた面々が転がっている。
 まだ子供のカイトとアカネに街道警備に出たユーキとライアーが不在だけど。
 全員一斉に、一口で飲み切るのが作法だって言っておいたから漏れなく洗礼で、中である。
 「よく考えれば、ドワーフがいないんだから飲む必要なんてないじゃない・・・。」
 額に手を当ててキッと睨みつけるマナさん、いまさら気が付いても遅いです。
 「ど、ドワーフたちはこんなものを飲んでいるのか・・・。」
 完全グロッキーなスロークを見るのも珍しいな、是非スクショを撮っておきたいところだけど、後で怒られそうだしやめとこう。
 範囲系のキュアサークルを発動してみんなを解毒。
 「このドワーフ火酒なんだけど、たぶん300樽くらい貰ったよ。
 中には100年物のビンテージもあるから楽しみにしてね。」
 「するか!」
 
    **
 
 王都に行くのだからと、礼服も作らなきゃならなくなった。
 採寸を済ませるとノブロフが取り寄せていたこの国の一般的な礼服、の型紙を使って縫製所で仕立ててもらう。
 すでにスロークの分は完成済みみたいだけれど、ちょっと派手めなタキシードって感じだった。
 ネクタイではなくヒラヒラの飾りなのが俺的にイヤンな感じ。
 どうせなら商品アピールってことでスレッドスパイダーの生地でって思ったけど止められた。
 あまり上等すぎるのも不敬に当たるってことらしい。
 それほどなんだね、この素材って。
 なので、領都から取り寄せたお高めの生地で作成。
 ただし裏地と下着には防御面を考えてスレッドスパイダーの糸に、加工して糸状にしたミスリルを織り込んだ特製の生地を使った。
 これでいきなりブスリとやられても大丈夫だ。
 「王城でそんなこと起こりませんよ。」なんてノブロフに呆れられていたけど。
 「あるとすれば毒殺か濡れ衣を着せられて投獄か・・・あ、いえいえ、そんなこともありませんからね、今回はほぼ誰もお二方のことは知らないでしょうし、ご心配されるほどのことは・・・ないかと。」
 その間は何だよ。
 毒消しとかもすぐ使えるように貯蔵庫から出しておかなくちゃ。
 濡れ衣は・・・最悪逃げよう。
 あぁ、マジ誰か代わってくんないかな。
 伯爵からは紋章を考えておけと言われたけれど、センスの無さはノエルさんにプレゼントした魔道具作成で思い知ったのでソンチョーに丸投げしてあった。
 結果、得意そうな何人かに頼んで、一番良かったウシオ作の物を採用したみたいだ。
 みどり村の名にふさわしく、大樹をモチーフにした紋章だった。
 非常に良いと思います。
 それを、礼服や護衛の装備品、馬車、献上品を治めた入れ物などに付けていく。
 誰が見ても、グリンウェル旗爵の関係であると分かるようにだ。
 馬車は2台編成、俺たちの乗る物と、献上品を積むものだ。
 俺たちが乗る物は、設計士のガディオンに贈呈した奴より少しだけ豪華に、武力を目立たせたいので無骨なデザインにした。
 通常貴族の長距離移動は複数台の同じ馬車を引き連れてリスクを分散するのがこの国の常識だけど、旗爵があまり派手にすると悪目立ちするそうなので、俺たちが乗る馬車一台と荷馬車一台、という編成にした。
 あえてダミーを作らず一台にすることで、やれるもんならやってみろ、というアピールにもなる。
 武を誇る貴族なんかは、あえて自分たちが乗る馬車だけ豪華に目立たせる、なんてパターンもあるそうだし。
 お付きの執事やメイドもみんなクロウの配下にお願いした。
 帯剣させてシルバーウルフに騎乗、服もただのタキシードやメイド服じゃない、所々鎧をイメージするような仕立てにしてある。
 うちは執事もメイドも戦うぜ!な演出にしてみた。
 争うことは損だと思わせるのも今回の目的だしね。
 服のデザインはプチメタのライブを見せてアカネにデザインしてもらった。
 非常に良い出来だ。
 良い出来過ぎて、主人より派手過ぎて目立ちまくる。
 でもこれは”有り”なんだって。
 貴族本人と直属の配下って立場の俺は、いわゆる格式だのなんだのって言うしがらみやら序列やらのせいで服装には気を遣わなければならない。
 しかし、新興の貴族にとってまわりにアピールできるチャンスはそうそうあるものじゃない。
 ならば、実際にロビー活動を行う執事やメイドを使ってアピールしようって風潮があるんだそうだ。
 これでもかってくらいに貴金属で着飾らせて財力をアピールしたり、特産品をモチーフにした服装で挑ませたりと、しきたりに従わなければならない主人達より派手になることはよくあるそうだ。
 やりすぎて失敗する例も多いみたいだけどね。
 過去には武をアピールしたい若手貴族が、執事にフルプレートを着させてアピールしたこともあったみたいで、そんな姿で何と戦う気だ?と笑いものにされたとか。
 今回アカネのデザインした衣装は、布地はスレッドスパイダーの糸で作った生地(スパイダーシルクという商品名をつけることになったようだ)、執事、メイドとしての動きを阻害しない程度につけられた鎧部分はミスリルに、意味は無いけど大きめの魔石を埋め込むことで武力、財力、特産品を大いにアピールできるだろうと、ノブロフも興奮気味に評論してくれた。
 荷車の方は、内装は空でサイズもかなり大きい。
 ざっと、俺たちの乗る馬車の2倍。
 外装もシンプルだけど、足回りはトールが設計した物を、職人たちが作りあげた逸品だ。
 そのまま、馬車ごと献上する予定になっている。
 造るには非常に高度な技術が必要だが、俺たちの乗る馬車に比べれば乗り心地はかなり劣る。
 だけれど、この世界の馬車とは比べ物にならないほどの安定性。
 しかも、この世界の職人たちでも一流の腕を持つ職人が頑張れば再現可能なのだ。
 つまり、献上するのは馬車そのものだけじゃなく技術だ。
 理解してくれるだけの頭脳は・・・あると信じたい。
 王がダメでも、周りにはいっぱいブレーンがいるんだから誰か一人くらい気づくだろう。
 もちろん村で販売する馬車には、この世界ではまだまだ再現不可能なパーツも多く使っている。
 ゴムタイヤや金属バネのサスペンションとかね。
 そこら辺は秘匿事項、村で製造した物の優位性と高付加性を確保しておかないとね。
 着々と王都行きの準備は進んでゆく中、俺もいったんテルグリナの拠点に戻ることにした。
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