GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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116話:ファン?

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 ぬぬ?
 なんで俺がゲームで使ってた名前知ってるんだ?ロン毛。
 コイツがエイルヴァーンプレイヤーだってことは察しがついたけれど、シングルゲームだからMMOみたいに名前が広まるはずないんだけどなぁ。
 俺のブログは閑散としていたし・・・ごく一部を除いて・・・まさか、その極一部なのか?
 「”真なる闇”に”禍ツ焔”を従魔にしたというブログ、感動しました。
 さらには炎龍たちも従魔にしたとか・・・ずっとファンだったんです!」
 ・・・やっぱり極一部だったか・・・。
 ほんとにたま~にしか、成果の上がった時しか更新してなかったんだけど・・・。
 「私も、なんとか”真なる闇”と禍ツ焔を従魔にしようと頑張ったんですが、あえなく断念してしまいました。」
 なんて感じで、ロン毛がいかに俺のファンだったかなどを語りだしてしまった。
 置いてきぼりの二人は、また始まったかと言わんばかりにソファーに戻っている。
 なんかごめんね。
 仕方ないからクロウに密談で、ラサの実ジュースを出すように、とかお願いしたよ。
 「うっま!なにこれ?」
 「まじかぁ、やっぱ来てよかったぁ。」
 うん、もうキャラやめたのね、二人とも。
 一通りまくし立てて満足したのか、ようやくロン毛が落ち着いたので話し合いが始まった。
 「目的っていうか、ここに来たのは食い物のためだな。
 正直、何喰ってもクソまずくてグロッキーなんだよな、この世界。」
 相変わらず態度はデカいが、素直に話し出した赤髪のゲイル。
 デカい態度は素なのね。
 「リーダーからは、ちょっと高圧にあたってビビるようならそのまま制圧しちまえって言われてたんだよな。
 王家も管理放棄してるような森なんだろ?そのままヒノモトの飛び領地としてしまえ~、なんて感じでよ。」
 うっわ、ゲスいリーダーだな。
 国盗りしたくらいだからな・・・要注意だ。
 「広場の守護神像を見たとき、エイルヴァーンプレイヤーがいる、もしや!と期待したのですが、先にお会いしたスロークさんは明らかにアサシン系のいでたちでしたから、ガッカリしてたんですよ。
 それがまさか、本当にお会いできるとは。」
 そう言うロン毛のイェン。
 転生した時にプレイしていたのはエイルヴァーンではなく戦術メインのシミュレーションゲームで、エイルヴァーンはセカンドゲームとして、かなりたってから起動したのだという。
 彼はPCにはあまり明るくなく、MOD導入を断念、エイルヴァーンをバニラ(MODが導入されていないメーカー出荷のままの)のままプレイしていたという。
 ま、それはウソだろう。
 今更バニラでやっているプレイヤーなんていないいない。
 エイルヴァーンが10年以上たってもプレイされ続ける最大の要因は、開発メーカー自らがMOD導入と開発のためのツールを無償提供しているからに他ならない。
 難しいと感じる要素は無い。
 それに、マガちゃんのことを知っている時点で・・・”禍ツ焔”を従魔にしようとした時点でMODを導入していることは確定事項だ。
 禍ツ焔は、MODで作られたシナリオでしか登場しないのだから。
 つまりこいつもMODを導入している。
 しかも、かなりのヘビーユーザーだと考えて間違いないだろう。
 ”禍ツ焔”がMOD産のモンスターだってことを忘れているくらい、いろんなMODを入れまくっているんだろう。
 危険だ。
 経験値アップ、成長アップ系のチートMODを導入していたとしたら・・・。
 しかし、俺のファンだという言葉は嘘ではなさそうだ。
 なんせ、俺ですらはっきり覚えていないブログの内容をベラベラとご高説賜ったくらいだ。
 しかも、イェンという名前は、俺がブログへ乗せるための検証用に作ってあったサブキャラ、シン・イェンからとったのだと言うんだから。
 ちょっと引くぐらい筋金入りだ。
 ってかドン引きだよ。
 ゲイルは予想通り、無双旅団という無双系ゲーム出身らしい。
 槍の一振りで複数のモブが吹っ飛ばされていく、爽快感メインの無双系ゲーム。
 俺、やったこと無いんでよくわからん。
 ライアーは詳しそうだから、念のため後で情報収集しておこう。
 少女のリタは、銃道(ガンドウ)という漫画原作のFPSをプレイしていたんだそうだ。
 女子校生が銃撃ちまくる漫画って・・・今、そう言うのが流行ってるの?
 これもいまいちよくわからん。
 誰か知ってるかな。
 あ、うぃきネットでも情報確認できるかな。
 「で、どうするんだ?侵略か?」
 そう言って怖い笑顔を見せるスローク。
 うん、役者が違うね、迫力満点。
 「あぁ、とんでもないです。
 複数体のドラゴンにデモンロード、確か、フェンリルも従魔にされてましたよね、こちらの全戦力をもってしてもかないませんよ。」
 と、両手を上げて降伏宣言。
 これも嘘だな。
 ヒノモト側には、ワタリビトが少なくとも10人以上はいるって聞いている。
 ヒノモトだなんて名前にしたのも、ワタリビトを引き付けるためだろう。
 今はもっと増えていてもおかしくない。
 ドラゴンたちは強力だが、あくまでも敵キャラ、シングルゲームで倒せる存在として調整されている。
 それに、俺のブログを見ずとも情報サイトには従魔の元であるモンスター状態の性能や攻略法が公開されていた。
 割に合わない、くらいに思っている程度だろう。
 テルグリナのことはこいつらには隠しておいた方がいいな。
 「あぁ、まだ知らないようだから言っておこう、村の代表を任されていることもあって、自分は旗爵位を与えられているし、近々伯爵位を賜り正式にこの森はグリンウェル伯爵領として独立することになっている。
 つまり、ここを責めるならサンザ王国との全面戦争を覚悟するんだな。」
 スロークも何か感じとったみたいだ。
 降伏宣言をする相手にもしっかり牽制している。
 上爵はまだ行動前で決定すらしてないんだけどね。
 「いえいえ、そんな気は無くなりましたって。
 元々、リーダーからも絶対に、とまで言われているわけではないので。
 まぁ、食事が素晴らしすぎて、これが制限なく手に入れば御の字、と思ったのは事実ですがね。」
 完全否定からの、本当はちょっと思ってたってか、何かで見たことあるようなテンプレ回答だな。
 何で読んだか忘れたけど、否定だけより信用されやすいんだっけ?
 やっぱり胡散臭い。 
 「なんだ、久しぶりに暴れられると思ったのに。」
 ライアーが、右手だけ炎に包んでさぞ残念そうに、ハッキリと皆に聞こえるようにつぶやいた。
 (お、とうとう部分発火できるようになったんだ。)
 ゲームでは、オープニングムービーでチラリと流れるだけの部分発火。
 正式に映像として採用されていたなら再現できるはずだと、かなり気合を入れて特訓してたもんなぁ。
 ライアーの軽い挑発で再びピリついた話し合いは、特に何も決まることなく終了した。
 一応、正規に来て正規に買い物する程度なら不問にするけど、余計なことをしたら潰すと警告はしたよ。
 うん、良い感じで終わった。
 戦争を辞さないような連中だ、できるだけ関わりたくないものだよね。
 彼らが退出するときに、
 「お仲間の3人にもよろしくね。」
 と、お伝えしておいた。
 槍使いがピクりと反応してたから正解かな。
 クロウには、ジュースを出すように密談した時こっそりと、村と周辺にこいつらの仲間らしきものがいるかどうか調べてもらうよう頼んでおいた。
 クロウの配下10名が調査して、ネズミに擬態できる悪魔がクロウに報告、クロウの密談によって、今さっき俺に、侵入者は6名と伝えられた。
 つまり、こいつら以外に3人いるってことだ。
 とりあえず、情報を掴まれている、これは侮っちゃいけない、と思わせられればOKだ。
 うまくいったんじゃないかと思う。
 でも、何か気になるんだよなぁ。
 ロン毛がつけていたネックレス・・・性能思い出せないくらいだから低レベル品なんだろうけど、なんでわざわざ付けていたんだ?
 う~ん・・・。
 
    **
 
 「で、いいのかよ、何が何でも食い物の秘密手に入れろって言われただろ?なんなら関係者攫って来いって。」
 街道を行く馬車の中で、不満顔のゲイルがイェンを問い詰める。
 「無理ですよ、無理無理、あそこはサンザ王国も統治していない無法地帯だからって話だったでしょ?
 なんですか、グリンウェル領って。
 それにこっちの戦力も正確に把握されてたじゃないですか。」
 これが素なのか、足を投げ出しふてくされたように答えるイェン。
 「チッ!でぇ、マジでいたのかよ、ドラゴン。」
 ゲイルは正面に座る迷彩柄の服を着た男に視線を移した。
 「いや、村の周辺にはいなかった。
 しかし、東に向かう道が整備されていたからその先に何かあるかもしれん。
 10Km程はたどってみたがドラゴンは見なかった。」
 「かぁ~!マジか、つかえねぇ。」
 派手に声を上げるゲイル。
 それをうっとおしそうに見ながら迷彩服の男は続けた。
 「だが、道の先に不釣り合いなものがあった。
 円錐状で浮いているように見えたんだが、あれは何かわからん。」
 はぁ~、と大きなため息とともに、イェンが頭を抱えた。
 「それ、たぶん聖域巨神ですね。
 従魔化できたのか・・・たぶん、プレイヤーとしては世界中で彼だけでしょうね・・・従魔化できないが定説だったので。
 ほんと、とんでもない人だ。」
 「それ以上は踏み込めなかった。
 狼の魔物も複数近づいてきたのでな、撤退した。」
 「逃げたのかよ、情けなっ。」
 「始末してよければ殺っていた。
 なんでも荒らすしか能の無いおまえとは違う。」
 「あぁ?」
 一触即発、剣悪なムードになりかけた時、突然車内が黒で塗りつぶされた。
 「あ、てめ、やめろよな!」
 「それですよ、それ。
 あの時はリタが機転を利かせてくれたので真なる闇を従魔化できていないと信じさせられた、と思いますけど、ちょっとは考えて発言してください。」
 車内が元に戻ると、イェンは傍らに座る黒一色の人影の頭をなでた。
 人影は、少女のようなシルエットをしていた。
 「三人とも発見されていたってことは、その従魔もだろう?嘘はバレているのではないか?」
 「あ、それは大丈夫ですよ。
 本来真なる闇は試験官をひっくり返したような姿なんです。
 私はMODで従魔の外見を変えてますから。
 MODは使っていなかったと伝えていますし、彼はブログで見た限り従魔の外見を変えていないようなので、興味が無いのでしょう。
 あの部屋にいたデモンロードと禍ツ焔もバニラのままでしたし。
 自分に興味がないことっていうのは、意外と気が付かないものですからね、とりあえずは問題無いでしょう。
 この子の調査結果では、農場と果樹園らしきものも発見しているそうですが、周囲に遮蔽物が無く人手も多いということで接近しての調査はできなかったそうです。」
 「その後施設関連の調査をしようとしたのですが、狼系の魔物とオーガ系の魔物が複数警備にあたっていたそうです。
 視覚は誤魔化せても狼の嗅覚と聴覚までは難しいということで、こちらも断念したそうです。
 あ、ちなみに、真なる闇との念話が成立しているのもMODですので、通常は真なる闇からの意思疎通はできません。
 つまり偵察に使うとは想像の範囲外のはずです。」
 ここで一息つくと、イェンはまじめな表情で一同を見回した。
 「で、私が知る限り、聖域巨神の従魔化は彼のブログには乗っていませんでした。
 ドラゴンの従魔も、私が知るのは3頭までですが、この分だともっといるかもしれません。
 エイルヴァーンの従魔化最大数はMOD込みで25、しかし、私が知る彼の従魔は10です。
 最新すぎてブログにアップされていない、もしくは同種を複数所持している可能性を考えても、限界の25体まで強力な従魔で揃えている可能性が高いでしょう。
 さらに、フェンリルやオーガロードなどは配下を召喚できます。
 それらまで含めると、彼一人でも戦力は計り知れないほどの脅威と言っていいでしょう。
 あぁ、どうして私はこの森に転生しなかったのでしょう・・・。」
 「はいはい、それはもういいから。
 商店街の方はすごい活気だったよ。
 食料品でも売られてたのは干し肉とドライフルーツにミード酒だけだったけど、とりあえず買えるだけ確保したよ。
 職人街はなんか忙しそうだった。
 装備品とかの質は良さそうだけど、食べ物みたいに特筆するほどじゃなかったよ。」
 そう報告したのは、リタの横で足をプラプラさせている少女だ。
 「あ、あと、お金がすごい奇麗だった、ほら。」
 ポケットに手を突っ込むと、中から数枚のベル硬貨を取りだして見せてきた。
 「これを通貨にしちゃってる辺りも恐ろしいんですよね。」
 イェンは硬貨を一枚とると、まじまじと見つめながら感嘆する。
 いったい、どれほどの技術があればこの硬貨を量産できるのだろうか。
 魔石を埋め込むなど狂気の沙汰だ。
 「全種類持って帰りたかったなぁ。」
 そう言う少女はうっとりと金貨を見つめている。
 「お土産用の額縁買わなかったのかよ、あれ、全種類揃ってるんだろ?」
 渡された硬貨を、つまらなそうに正面の迷彩男に投げるゲイル。
 「アホゲイルぅ~、あれは偽物なんですぅ~。そのくせプレミアついちゃって高いんですぅ~。」
 そんな、賑やかな帰途、どうやって任務失敗の報告をしようかと頭を悩ませるのはイェンだけだった。
 
    **
 
 「ん?・・・またか。」
 急いで準備のために戻る途中、小さな紙切れが服に挟まっているのを見つけた。
 「あ!」
 紙切れに書かれていた物を見て思わず声をあげてしまった。
 <魅惑耐性のネックレス>
 あまりにも安直な名称のアイテム。
 そして思い出した。
 あのロン毛がつけていたものがそれだと。
 初期の頃に手に入るマジックアイテムで、すぐにそれ以上のものが手に入るから不用品扱いになる。
 魅惑系の精神異常にちょっとだけ耐性が付く。
 ・・・なんであんなものを?
 アクセサリーとして身に付けるにはデカいしデザインもいまいち、いかにも安物って感じのアイテムだった。
 エイルヴァーンで魅惑の状態異常はあまり脅威では無かった。
 ごく短時間で効果が切れてしまうし、ダメージを受けただけでも切れてしまう。
 だからこそ不用品として記憶から消えてしまっていたわけだけれど、それを常に装備しておく必要があるってことか?
 きな臭さがストップ高だな。
 注意するとしよう。
 それにしてもこの紙きれ、何なんだろうな?
 クソ悪魔の仕業じゃあ無いだろう。
 あいつなら、もっと直接的で俺を苛立たせるような手段を使う。
 また厄介ごとが増えるのか?
 目的も手段も分からないけれど、一応ヒントっぽいものが多いようだから利用させてもらってるけど、いつかこれの正体も調査しないと・・・。
 いずれ分かるようになる、そんな気はするんだけどな・・・まっそういうことにしよう。
 拠点へ帰宅後、俺はもう一枚の紙きれを見つけてひどく落ち込むことになった。
 これからは、もっとちゃんと周囲を確認しようと誓った。
 紙切れは、ドワーフ火酒のアレンジレシピが書いてあった紙を見つけた場所の隅に落ちていたらしい。
 掃除をしていたメイドさん(グレーターデーモン)が見つけて俺のデスクの上に置いてくれていたんだが・・・今まで気が付かなかった。
 <白いオオトカゲにはスラりん>
 ・・・これ、気が付いてたらあんなに大変な思いしなくて済んだのに。
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